ドラゴンボールF   作:月日火

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未来の齟齬

コルドが地球へと侵攻する前

ナメック星人達はフリーザから渡された書類を見つめ議論をしていた。

 

議論はその破格の条件に賛同する者、罠だと断じて反対する者とに真っ二つに

裂け、混沌を極めていた。

 

賛成派は星の環境や空気に至るまで全く類似しているこの惑星の景観、更に立て直しのサポートまで着く、資金も援助する。といった正にこちらにとって降って湧いた幸運であり手離すわけにはいかないという意見。

 

反対派はそもそも与えたフリーザという者が我々家族を殺戮して回ったクウラの弟であるという事。

そのフリーザが我々の持つドラゴンボールの存在を知っていてもおかしくは無く、それをいいように利用されるかもしれないという意見。

 

議論の決着は中々付かず、ついには今は亡き最長老から新たにこのナメック星人の長を任じられたムーリが決着をつける。

 

ムーリの出した答えはイエス。

ナメック星人特有の底知れぬ優しさが原因かどうかは不明だが

わざわざ星だけを与えるのならクウラの弟とも名乗らずとも、あの瞬間に

来なくても良かった。

そして、フリーザがクウラと全く同じとは限らないという可能性を信じたのだ。

 

結果、ムーリは通信機でフリーザの部下から案内を受け新たなナメック星で

スタートを切った。

育ている農作物は前の惑星よりもスクスクと育ち、資金も困らない。

フリーザがドラゴンボールを求めてやって来る様子も無く、ナメック星人達は穏やかに過ごしていた。

 

…その遠くで、ナニカが迫ってくる事になど気付きもしないで。

 

 

♠︎

 

時間は戻り、フリーザが自らの執務室へと戻った後に舞台を移そう。

 

フリーザはクウラが死んでから更に増加した部下達の配備とクウラが破壊したであろう星の修復作業、そして今から死ぬコルドの遺産である金と星の整理作業に入っていた。

 

宇宙は粗方フリーザが治めていたとはいえクウラ、コルドが治めていた地域も未だ残っておりその彼らが死んだと知った途端反乱軍を形成されては面倒でしかない。

故にフリーザは早急に鎮圧と再統治へと乗り出す事にした。

 

幸いにして、あの汚点共が支配していた所の人々は従順では無いにしても

戦闘力は雑魚にも等しく、オツムが少し足りていなかった。

故に鎮圧してから飴と鞭を使い分ければ直ぐさま忠誠を誓う星が続々と現れる。

言い方を変えれば、フリーザという名の安心を得る為に人々が甘い毒の沼に自ら飛び込んでいくという事。

 

こうして、フリーザ軍は僅か1ヶ月にして汚点共の征服地区を塗り替えた。

それから少しして、コルドが地球に到着したとの情報が斥候部隊により

伝達された。

 

無論、コルドが着ている戦闘服にも超極小サイズのカメラ付きドローンが内蔵されており、戦闘開始と共に発射。

フリーザは、コルドが未来から来たベジータの息子であるトランクスにあっさりと敗北し、命乞いをした挙句、真っ二つからの乱れ切りにエネルギー波での消しとばしというなんとも無様な最期を遂げた事を仕事の合間に見ていた。

 

「……あれが、私の父とは…無様過ぎて涙すら出そうです…くくっ!」

 

フリーザはコルドの死に様に侮蔑と侮辱。それでもって清々しい別れを告げ

トランクスの未来の情報を聞き取る事にした。

 

♠︎

 

トランクスは困惑していた。

何故ならば、本来この地球に現れたと言われていた人物がコルドだけでは無かったからだ。

 

そんな彼の姿もまた、コルドの気を察知し駆けつけた戦士達にとっては

驚愕するものではあった。

何故ならば悟空とターレスしかなれないと思われていた超サイヤ人に突然現れた謎の青年があっさりと変身してしまったからだ。

 

特にベジータは己がいつまでたってもなれない超サイヤ人に何処の骨ともわからぬガキがなっているのはベジータにとってプライドを大いに刺激するものであり、その身を怒りで震わせていた。

 

「ど、どうなってやがる…!あんなガキが何故超サイヤ人になれている…!

サイヤ人の生き残りは俺たちだけでは無かったという事なのか……!!くそったれ!」

 

しかし、そんなベジータの怒りさえトランクスは動揺で感じとる事が出来ない。

 

そんな中、大きな宇宙船が地球へと上陸し中から悟空がひょっこりと姿を出す。

 

「あれ?おめぇ、誰だ?」

 

悟空は帰ってきた仲間の喜びよりも先に

近くにいた見知らぬ青年に声をかける。

その青年は悟空の声に反応し、悟空に近づき小さな声で話す。

 

「……孫さん、少しお話しがあります。そこの丘まで来てくれませんか?」

 

「ん?…あぁ、いいぞ。」

 

悟空は焦りを覚える青年が何か事情を抱えていると直感で感じ

青年が先導する先へと向かう。

 

着いた先はさっきの場所から少し離れた小さな丘が近くにある岩場。

トランクスはまず、これだけは確認しようと悟空に話しかける。

 

「……先ずはお伺いしたいのですが、孫さんは自分の意思で超サイヤ人になる事が出来ますか?」

 

これが第一前提。

トランクスは、僅かに息を飲んで尋ねる。

 

「あぁ、最初はダメだったが…苦労して何とか出来るようになった。」

 

悟空の返答に僅かに安堵したトランクスは

 

「今、ここでなっていただけませんか?」

 

「え?」

 

「…お願いします。」

 

悟空に超サイヤ人への変身を要求する。

その言葉に何かを感じた悟空は僅かに力を溜め。

 

「……ふっ!!」

 

その解放によって、瞬時に超サイヤ人へと変身する。

その気の大きさはトランクスの想定以上の気。

同時に天津飯を始めとする戦士達は超サイヤ人の気の圧に押されるが

一度フリーザの気を味わったベジータ、ピッコロ、悟飯は耐性が出来た為

普段通りの態度で悟空の変身を見守る。

 

「では、僕も超サイヤ人に。」

 

トランクスもまた、気を解放し超サイヤ人へと変身する。

 

「!おめぇもなれんのか。」

 

「…失礼します!」

 

悟空が僅かに驚いた瞬間、トランクスは剣を引き抜き悟空へと斬りかかる。

悟空はそれを気を集中させた指一本で防ぐ。

 

「たぁぁ!!」

 

繰り返されるコルドの身体をも切り裂いた剣の乱舞を悟空は容易く受け止め続け、最後は首の攻撃を僅かに首をずらして指一本で受け止める。

 

トランクスは悟空が予想以上の戦闘力を有している事に驚きながらも

柔らかな笑みを浮かべ、超サイヤ人を解除し剣を上に放り投げ鞘に収める。

 

「やはり…貴方の力は僕の想像以上でした…!!」

 

「おめぇが本気を出してなかったからさ。」

 

悟空もまた、超サイヤ人を解除する。

 

「貴方なら信じられる!……全てをお話しします。…どうやら僕の知る世界とは少し違うようですので。」

 

トランクスは悟空の信頼の眼差しをするとともに自らの素性を明かしていく。

 

自らが、約20年後の未来からタイムマシンによってやってきた事。

自らの名はトランクスであり、ベジータとブルマの息子だという事。

そして。

 

「今から3年後の5月12日。恐ろしい2人組が現れます。…そして更にその2ヶ月後の7月12日。今度はその2人以上……いえ、もしかしたらそれ以上の力を持つ3人組の化け物がこの地球を荒らしてしまうのです。」

 

「……何もんだ、宇宙人なのか?」

 

「いえ、彼らはこの地球で産み出された人造人間…いわゆるサイボーグという奴です。…作り上げたのは元RR軍の狂人的科学者…Dr.ゲロ!」

 

「RR軍…!」

 

悟空は少年時代にそこへ乗り込み滅ぼした軍の名前を思い出す。

 

「何が目的だ?例によって世界征服なのか?」

 

「……恐らくは、そうだったのだと思います。しかし、彼らは違った…!!

破壊と殺戮だけを目的としたマシーンたる彼らは創造主たるゲロさえ殺して、

今も…!!」

 

「更に、それだけでは終わりません。今度は宇宙からやってきたヒルデガーンという怪物と、ターレスとブロリーというサイヤ人を始めとしたクラッシャー軍団が地球へと侵攻し、既に地球は地獄と化しました…。」

 

「勿論、僕1人ではどうする事も出来ず……今は彼らの間で争っている中何とか地球人はひとかたまりで息を潜めて生き残っている状態です……!」

 

「ま、待ってくれ!おめぇ1人なのか!?他の皆は?」

 

「……いません。20年後の未来にはもう、彼らに抵抗出来る戦士は僕しかいないんです…!!」

 

「僕の父のベジータ、ピッコロさん、天津飯さん、ヤムチャさん、クリリンさん……!皆、地球を取り戻そうと必死に戦いましたが……彼らの前では及ばず…唯一生き残った悟飯さん。悟飯さんは僕に闘い方を教えてくれた師匠でもあったのですが……やはり、4年前に。」

 

トランクスは、拳を震わせて孫悟飯が豪雨の中、残酷な死を迎えたあの時を思い出す。

 

「オ、オラは?オラはどうなったんだ?オラもやられちまったんか?」

 

悟空は自らの名が無い事に気付き、自身がどうなったのかを尋ねる。

 

「いえ…貴方は今から間も無くして病気で亡くなってしまう。」

 

「いい!!?」

 

「ん?」

 

「ウイルス性の心臓病だそうです。…流石の超サイヤ人も病気には勝てなかったんです…。」

悟空が病気で死ぬ。

その言葉に悟空、そして遠くから聞いていたピッコロが反応する。

だが、その直後悟空は身を震わせ。

 

「くっそ〜!オラ死んじまうんか…!!悔しいなぁ〜!オラもそいつらと戦いてぇのに〜!」

 

「……恐ろしくはないのですか?」

 

「そりゃ、怖えけどよ?でもつえぇんだろ?そいつら!やってみてぇよ〜!!」

 

トランクスはその悟空の様子を見て、母と師が間違ってなかった事を確信し

あるカプセルを渡す。

 

「やはり、母さんや悟飯さんが言っていた通りの戦士だ…!頼もしい人です。だからこそ、僕はこれを届けにきたんです。今は不治の病でも約20年後には特効薬があるんです。症状が出始めたらこれを。」

 

「これが?」

 

「はい。」

 

「なぁ〜んだ!あるなら早く出してくれりゃあいいのによぉ!オラびっくりしちまったぞ!」

 

喜ぶ悟空にトランクスはもう一つ重要な事を尋ねる。

 

「そして、もう一つだけ。これが僕がまず貴方にだけ伝えたかった事なんです。……クウラ、という人物を知っていますか?」

 

「……あぁ。」

 

「…僕のいた歴史ではクウラはコルドと共にこの地球に現れ孫さんが倒したらしいのですが…僕が見たのはコルドだけでした。…何かが違うのかもしれません。」

 

「…わかった。おめぇはこれからどうするんだ?」

 

「先ずは未来へ帰ります。母さんを安心させてあげなきゃならないので。」

 

「また、会えるか?」

 

「わかりません、今回の往復もかなり危ない物でしたし、エネルギーが集まるのも時間をかけてしまうのです。…生きていたら必ず駆けつけます。…3年後に…!」

 

「生きろよ…いい目標が出来た。オラ達も3年間みっちり修行して待ってるからな。」

 

悟空とトランクスは握手を交わし、トランクスはそのままタイムマシンへと

乗り込み、悟空は皆の元へと戻っていく。

 

そこでピッコロが悟空にナメック星人の聴力で全てを聞いていた事を悟空にバラし。

説明下手の悟空の為にトランクスの部分だけを伏せ、ここから先にあらわれる

恐怖の存在を伝えた。

 

皆が修行へと決心を固める中、生き残る事を渇望したベジータはふとある事に気づく。

 

(ブロリーとやらは知らんが、ターレスは俺の知る限りフリーザの部下だった。…あの狡猾なフリーザが便利な駒である奴の手綱を離すわけが無い。なら……。)

 

ーーフリーザは一体どこに消えやがった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・未来
まだ全容は明らかになってはいない。
まぁ、どっちもベリーハードなのは確か。

・地球組
未来通りなら原作+劇場版コンボ。

・超極小サイズカメラ付きドローン
ぶっちゃければDr.ゲロの監視ドローンの上位互換。
微生物にも満たない大きさのドローンは情報をフリーザへと直通で伝達する。
勿論、1080。

・クウラ
???

・コルド
無事、無様に死亡。

・トランクス
生き残ったほんの僅かの人々を守る守護者。
但し、実力はあの未来最弱。

・フリーザ
答えに気付いた。


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