ドラゴンボールF   作:月日火

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絶望の未来

時の歯車というのは何とも不思議なものだ。

ほんの少し、何かを違えるだけで決定的に変わってしまうのだから。

 

きっかけは些細な事。

コルド大王がクウラの事を危惧せず、ビルスや魔人ブウに目を向けなかった。

よって、フリーザという帝王は産まれる事は無く。

特異点たるフリーザがいなければ彼に集った悪は未来の飼い主を失い

無駄に宇宙を荒らして暴れ回る。

 

そして、クウラがナメック星にて倒された時。

本来ならばコルドはフリーザに頼り復讐へと走った。

しかし、フリーザという存在がいない以上

コルドは頭部だけでギリギリ生き残ったクウラを発見、治療する。

 

そうして、メタルではなくメカとなったクウラは地球へと侵攻。

地球が破壊される前にヤードラットから帰ってきた悟空によってコルド共々完全消滅した。

 

……ここから、世界は大きく歪み始める。

 

フリーザ一族が滅んだ事を知ったターレスは、丁度辺境の星で発見した

パラガスと伝説の超サイヤ人であるブロリーと同盟を結成。

 

ターレスが星の土壌を神聖樹で根こそぎ奪い取り、ブロリーが枯れた星を破壊しつくす。

そうして、ターレス達率いるクラッシャー軍団は宇宙随一の戦闘集団と化していく。

 

同時に魔族たるガーリックjrが魔凶星と共に地球へと侵攻。

それに伴ってDr.ライチーがデストロンガスとハッチヒャックを引き連れ同じく地球へ侵攻。

 

そんな事を露にも知らぬ悟空達であったが

パオズ山で悟空の容体が謎の病気により急激に変化し床に伏せてから状況は一変する。

 

先ず、ガーリックjrが神殿を占領。

アクアミストという一滴浴びるだけで魔族となる液体が地球中に散布。

 

更に、ピッコロ、悟飯、クリリンがガーリックjr達魔族を相手取っている隙にDr.ライチーによってデストロンガスが地球に蔓延する。

 

アクアミストそしてデストロンガスによって汚染された地球だったが

アクアミストを弾き飛ばし、超サイヤ人へと覚醒したベジータが参戦。

 

ガーリックjrを一瞬で消しとばし、ハッチヒャックの怨念が溜まる前にDr.ライチーを粉砕。

 

地球に僅かな平和が戻った…はずだった。

 

 

孫悟空が死んだ。

 

正義の英雄と悪の英雄が消えたこの時をもって、この世界のレールは完全に崩壊する。

 

悟空の死から3年後。

Dr.ゲロによって発明された人造人間17号、そして18号が各方面への都市へと破壊行動を開始。

その範囲は東、南、北に及び、彼らが破壊した都市は完全更地と化した。

 

ベジータを始めとする戦士達がこの騒ぎに直ぐ気付いたものの

気を捉えられない人造人間は破壊しては消えを繰り返し、見つけられたのは2ヶ月後。

 

西の都のすぐ近くの都が荒らされているのを知り、そこへ向かうも

Dr.ゲロがセルのプロトタイプとして制作された人造人間13号、14号、15号がベジータ達の前に立ち塞がる。

 

殺害対象である孫悟空は既に死したものの、人造人間13号達はゲロの遺言に従い、孫悟空の仲間を殺すミッションを遂行しようとする。

 

ベジータ、ピッコロが14号、15号を倒すも13号が彼らのパーツを取り込みパワーアップ。

 

その騒ぎを聞きつけた17号達も集まり、戦場は混沌と化す。

この時人造人間17号達によって天津飯、ヤムチャ、クリリンの地球人達が

命を散らす。

 

ベジータは合体13号に手も足も出ず、最後の希望として悟飯とピッコロを逃し約1時間の間、執念の時間稼ぎをしたが最期は13号の圧倒的な力の元にその命を散らす。

 

それから15年、ピッコロの指導と精神と時の部屋で急成長を遂げた悟飯。

最早ドラゴンボールを使おうとも無駄だと判断し決意を固めた神と融合し別人のようなパワーアップを果たしたピッコロ。

そして、赤ん坊から成長し戦士としてその身を開花しつつある新星、トランクス。

 

大幅な戦力の上昇を果たした地球の戦士達だが、ここに来て更なる絶望が

投下される。

 

ターレス達、クラッシャー軍団の襲来。

既に地球以外の星を粗方食い尽くした彼らが遂に地球へと足を伸ばしてしまった。

 

直ぐさま、ターレス達の元へ向かい戦闘を起こす地球の戦士達。

ダイーズなどの雑魚達は一掃できたものの、パラガスが死んだ瞬間ブロリーの封印が解放。

 

制御装置によって押さえつけられた力を解放した伝説の超サイヤ人は、悟飯、ピッコロ、トランクス。

そして、その場を破壊しようと目論んでいた17号、18号を圧倒。

 

人造人間達と協力するという異例の事態。

だが、伝説の超サイヤ人は戦えば戦う度に段違いに強さを増していく。

地球の戦士達も段違いの強さを遂げてはいたが、ブロリーの急成長には耐えきれずトランクスを庇って悟飯は左腕を喪い時間稼ぎを買ってでたピッコロの死によって何とか撤退を果たす。

 

その後、大暴れをするブロリーは17号、18号を粉砕。

やがて、地球全土を破壊尽くしついでとばかりに合体13号を完全に消滅させ

ターレスは地球のど真ん中に立てた神聖樹の実で着々とパワーアップしながら

ブロリーの破壊を己の身をもって誘導し自由気ままに破壊を楽しんでいた。

 

更に1年が経過。

今度はナメック星がターレスによって滅ぼされる前にホイがナメック星人を騙しドラゴンボールを使って復活したタピオンがナメック星から逃れ、地球へと身を隠していた事を知ったホイが地球へと侵攻。

 

地球の戦士達はタピオンが隠れている事など地球の守護でそれどころではなく

結果、タピオンの封印は解けてしまい

幻魔人ヒルデガーンが完全復活してしまう。

 

ブロリー、ターレス 、ヒルデガーン。

 

三つ巴の争いの前に地球は最早、その輝きを永遠に失った。

人類は16年前の約1割にまで減少。

神聖樹はターレスが離れている隙を突き既に悟飯が破壊したものの

それで何かが進展する訳も無く、残された僅かな土地と食料と水で何とか飢えを凌ぎながら唯、救いを待つまでの日々。

 

悟飯は、その光景を見て思う。

 

もしも、父が生きていたのならば。

確証は無いし、それ自体が無駄な考えであっても。

孫悟空ならば、未だに背中を追い続けているヒーローならば、敬愛する父ならばこんな世界を救えた筈だ。

それが消えたのは己の責任、自分が父の異変に気付かなかったから。

悟飯の苦悩を理解していた師はもういない。

残ったのは未来を託せる希望だけ。

 

荒廃した大地の上、人類最後の防衛ラインの守護の為自らの命を捨てる事を決意した悟飯は、引き止めようとしたトランクスを気絶させ生き残ったブルマへと託す。

 

「トランクス……生きてくれ!俺の遺志を継いで立ち上がり、そして……!」

 

 

…その先は、言えなかった。

 

悟飯は口を塞ぎ、死地へと降り立つ。

ブロリー、ヒルデガーン。

そして、高みの見物へと洒落込んでいるターレスを睨みつけ悟飯は突進する。

 

「フハハハハ!!カカロットの息子!!今度こそ楽にしてやる!!」

 

「ゴァァァァァ!!!」

 

「……ふっ。」

 

悟飯は自らのフルパワーである超サイヤ人2へと変身。

ブロリーの攻撃をいなし、ヒルデガーンを気弾の攻撃によってわざと霧状化させ、そのままターレスへ一直線。

 

「……こいよ。ゴハン!」

 

「はぁぁぁあ!!!!」

 

拳と拳がぶつかり合い、その場に閃光が走った。

 

 

♠︎

 

トランクスが目を覚ました時、全ては終わっていた。

 

豪雨が降り注ぐ最早土地として再生不可能の破壊が起きた場所には、ターレスの死体と敬愛する師であった孫悟飯の死体。

トランクスは泣いた。泣いて泣いて泣いて。

気付けば、あれだけなりたかった超サイヤ人へと覚醒していた。

水溜まりに浮かぶ自らの姿を見てトランクスは怒る。

 

「何故……何故今なんだ!!どうして!!……どうして……!!」

 

最初のブロリー戦の時、悟飯の左腕とピッコロの死に直面したトランクスは

自身の戦力の無さを呪った。

だが、怒りよりも後悔が先んじた為か結局、今になるまで超サイヤ人になれず

悟飯の為にも、早く超サイヤ人になりたいと熱望していたトランクス。

 

だが、今となっては後の祭り。

もう、1番に見せたかった師は居ない。

己の成長を心の底から楽しみにしていたあの瞳はもう開く事は無い。

トランクスは悟飯の亡骸を抱え、その場を去る。

 

悟飯の死は、人類に更なる絶望を与えた。

特に夫と息子を喪ったチチは心を壊してしまい今では生きる人形だ。

しかし、悟飯は手厚く弔われ、地球を護らんとした英雄としてその墓はひっそりと最後の拠点の真ん中に建てられている。

 

あれから3年。

 

過去から帰還したトランクスは悟飯の墓の前に立ち、語る。

悟飯が尊敬していた孫悟空は聞いた通りの人だった事。

ブルマが愛したベジータは棘があって生え際が少しアレだった事。

初めての師であったピッコロの久々の姿。

 

天津飯、ヤムチャ、クリリン。

 

そして、平和と活気に溢れた地球を。

 

時に笑い、時に涙ぐみながらもトランクスは悟飯の墓に語り続ける。

 

 

ブロリーとヒルデガーンは未だ健在で決着の付かない戦いを続けている。

地球は、僅かに自然が戻ってきているがまだまだ今の人達の生活に追いつかない。

 

だが、それでも師から託された願いだけはこの身が滅びようとも叶えてみせる。

 

「必ず、この未来を変えてみせます……!!だから、だからもう少しだけそっちで待っていてください。悟飯さん。」

 

トランクスは悟飯の墓に背を向け歩き始める。

 

その姿は、死ぬ場所を決めた兵士のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・未来。
要はフリーザと悟空がいなくなった今作。
神聖樹で地球はボロボロ、ブロリーとヒルデガーンという決着がつきそうにない戦闘と、完全に詰み。
ナメック星を頼ろうにも既にターレスによって滅んでいる為もうドラゴンボールも使えない。

・トランクス
今作は原作よりも師匠に恵まれた為、強さで言えばこちらの方が強い。
覚悟も完全に決まっており、ブロリーとヒルデガーンを倒すならばどんな手でも使う孤高の戦士。
いつか、悟飯と再び会える日を心待ちにしている。

・ブロリー
あったが超版なら、こっちは旧版。
文字通りの伝説。
カカロットとターレスを勘違いしたが、制御装置でギリギリ押さえ込まれていた。が、パラガスが死んだ途端に覚醒。
現在、ヒルデガーンと果てのない闘争中。

・ヒルデガーン
あっちで出て来た場合説明。


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