ドラゴンボールF   作:月日火

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魔神

地球では魔人ブウの脅威が続く中

宇宙ではフリーザ軍の管制班がある一般兵士の救難信号を受信。

フリーザはそれに対しギニュー特戦隊を派遣する。

 

だが、4日経ってもその星から帰還の連絡が一向に無い。

曲がりなりにも軍内でも五本指に入る実力者である彼らがたかが救助で

遅れをとる事はまずなく、忠誠心も高いので裏切りや脱走はあり得ない。

というよりもフリーザ自身彼らの気を今もなお感じられるので死亡という事も無い。

 

ならば、何故こんなにも時間をかけているのか。

多少なりの疑惑を感じ取ったフリーザは自ら向かう事を決断する。

だが。

 

「……おや?」

 

ギニューの気を辿り瞬間移動しようとしたものの、何かに阻まれたかのような

感触とともにフリーザはその星から弾き出され、宇宙空間へ放り出される。

ダメージは無いところから己を害するものではない事、瞬間移動を弾くという事は相手はこちらの手札を粗方知っている事がわかる。

 

そして、改めてその星に目を凝らしてみれば星の周りに薄い膜のようなものができており、軽く豆粒程度の気弾を当ててみればその防壁は魔法陣を展開し攻撃を防ぐ。

それはつまり魔術的要素が絡んでいるという事。

だが、暗黒魔界の者達は全滅したはず。

なのに何故……いや、見当はもうついている。

 

「出てきなさい。」

 

人差し指を立て後方を撃ち抜く。

すると背後の空間に亀裂が走り、ならない筈の音を立てて崩れ落ちていく。

 

「流石…というべきだな。フリーザ。やはり貴様を注意しておいて正解だった。」

 

中から出てきたのは杖を持った赤髪の男。

空間ごと撃ち抜いたのか心臓付近には穴が空いており、男の体にノイズが走っている事から、魔術で生み出した幻影だとわかる。

 

「何者ですか、貴方は。」

 

「私の名は魔神ドミグラ…いずれ神となりこの時空、否全てを収める男だ。」

 

「全てとは…随分と大きく出たものです。それで何故私の名を?」

 

「知れたこと。私は全てを見ていた。それだけの話だ。」

 

「そうですか…ではさようなら。」

 

フリーザがその幻影を完全に消失させようと手を翳し、ドミグラの幻影を

完全に粉砕する。

霧になりながら霧散していくドミグラは笑いながら

残った指でギニュー達がいる星を指差す。

 

『フハハ……!私の幻影を破壊した所で魔術が解けるだけだ…!そしてよぉく見てみるがいい!』

 

そして、ドミグラが消失すると星を囲んでいた膜も消え去り

その全容が明らかになる。

幾分かマシであり自然もそこそこあった星の姿が霧散し、炎に包まれた

無残な姿へと変わっていく。

 

「これは……。」

 

星に降り立ち周囲を確認すれば、負傷しているギニュー特戦隊と気絶したタピオンの姿、魔術師ホイの死体。そして既に完全体となっているヒルデガーンの姿が見える。

 

どうやらドミグラが先に宇宙を彷徨っていたホイに接触し

魔術によりオルゴールの保護を解除。

復活したタピオンに干渉してヒルデガーンを解放し、更にもう一つ魔術を

ヒルデガーンにかけ一気に完全体にさせたのだろう。

 

理由はきっと単純。

ギニュー特戦隊が思った以上に強かったせいだろう。

メタル戦士の訓練は彼らに大きな刺激を与えたようで彼らは著しく成長した。

特にギニューの成長は素晴らしく、執念というべきその血を吐くような努力により今では組織ナンバー5の戦闘力を有している。

 

しかし、彼らの真骨頂は個別の戦闘力でなく特戦隊としての連携力にある。

簡単に言えば、彼らは格上殺しであり、格下殺しなのだ。

フリーザとの訓練により何が自分達よりも上の存在へ通じるのかを見極め

そして惑星侵略により格下への油断を消した。

 

特戦隊としてならば、彼らはスラッグにも対抗しうる存在。

その実力に戯れと言わんばかりに相手したであろうドミグラは焦った。

このままでは、ヒルデガーンはあっさり殺されてしまうと。

余談だが、本来ドミグラが介入しなければ時期は違えどヒルデガーンはその羽化を果たすこと無く特戦隊により消滅していたという背景もあった。

 

そうして復活した幻魔人ヒルデガーンは、実力も格上ながら一番の難関である

幻影化を巧みに駆使してギニュー特戦隊と事態を把握出来ないながらも彼らに

加勢したタピオンを圧倒。

 

特に封印されていた恨みがあったのかタピオンを集中的に狙い、最終的に気絶させた。

ギニュー特戦隊は何とか攻撃を当てようと連携したものの攻撃が命中するのは

精々がグルドが時間停止し、攻撃している時のみ。

グルド自身は実力の限界を感じ、特戦隊の中でもサポートに回った為

そこまで強い訳では無く、主な時間停止の使い道はヒルデガーンの攻撃を避けさせたり、念力で攻撃の妨害をしたりする事しか出来ない。

勿論、何度も連続して使える訳でも無いので徐々にギニュー特戦隊は追い詰められていった。

 

…とまぁこんな所だろうと飛行中のフリーザは思考を打ち切り、ギニュー特戦隊の元へと辿り着く。

 

「フリーザ様!?」

 

「ギニュー隊長。戦況の報告を。」

 

ギニューは突然現れたフリーザに驚くもまずは言われた通りに報告する。

これまでの経緯とあのバケモノの特徴を。

 

「はっ!あのバケモノはどうやら霧になっている間は一切の攻撃が通じないようで…ですが姿を現した一瞬だけは攻撃が命中するようです。私達では実力不足で始末するには至りませんでしたが…フリーザ様は何故ここに?」

 

「あなたたちが出動してからもう4日です。流石に遅いと様子を見に来ただけだったのですが…これは仕方ないですかね。さっさと始末して帰還しましょう…ところでギニュー隊長、戦闘において一番重要なのはなんだと思いますか?」

 

フリーザは特戦隊による足止めをくらっているヒルデガーンを軽く見て

ふと思い出したかのようにギニューに尋ねる。

 

「……やはり、力でしょうか。」

 

一瞬考え込み、ギニューはそう返答する。

力を持つ。

それは戦いという場に立つ上で最も重要な物の一つだ。

上に立つ、敵を圧倒するなど、これが無ければ話にもならない。

 

しかし、それにフリーザは付け加える。

 

「確かに力を持つ事は大事です、雑魚は戦闘に立つ事すら許されず搾取される。ですが、私はもう一つ付け加えましょう。…情報です。」

 

「情報…ですか。」

 

「あのバケモノを例にたとえてみましょう。ヤツの事前情報があるか、それとも無いか。どちらの方が楽だと?」

 

「当然、前者の方かと。」

 

そう2人が会話していると他の特戦隊のメンバーが足止めしていたヒルデガーンの姿が突然搔き消える。

 

「そうでしょうとも。ですがそれはヤツも同じ事です。本能で動いているとはいえヤツも生物ですので、知らない事を知る為に戦いの中で相手、つまりはあなた達の動きを分析し最善の行動を図ります。それはつまり…。」

 

そして、ヒルデガーンはフリーザとギニューの背後に立ち、フリーザに向かって拳を振り下ろす。

 

「フリーザ様!!」

 

いち早く気づいたギニューが叫ぶ。

だが。

 

「こういう事です。」

 

フリーザは一瞬で振り向き、接近。

約50%の力をもってヒルデガーンを殴り抜く。

その衝撃は凄まじく、燃えていた炎が消し飛び、同時にヒルデガーンの首から上が文字通り消え去り、首があった所から噴水のように血が流れ出し

脳を失った肉体はそのまま糸が切れた人形のように倒れこむ。

それらを気のバリアで防ぎつつフリーザは講義を続ける。

 

「突然現れた私の情報を得る為に私を襲うという事です。…ほら、当たっていたでしょう?」

 

自分達が苦戦していたバケモノを片手間に始末し

得意げに話すフリーザをギニューはやはりこの人こそが

全宇宙の王に相応しい存在なのだと尊敬の念を強める。

そして、この騒動のきっかけとなったドミグラの事を思い出し

奴がフリーザに伝えろと言っていたメッセージを伝えた。

 

「そういえば…フリーザ様はドミグラとかいう魔術師には…?」

 

「ええ、会いました。…どうかしましたか?」

 

「いえ、奴から伝言を。…また会おう…と。」

 

「…いいでしょう、今度はきっちり殺して差し上げましょう…!」

 

フリーザはそう遠く無いドミグラとの再会を予感しながら

ある種コケにされた事に怒りを覚え殺意を高めていく。

そして、ホイの死体と気絶したタピオンをその星に置き去りにし

フリーザ達は一休みの為惑星リゾートへと帰還。

特別ボーナスを与えられた特戦隊のメンバーは最近リニューアルしたリゾートを隅々まで遊び尽くすのだった。

 

 

 

 

一方で新たなドミグラの分身は地球へと侵攻。

Mr.サタンの功績、そして心無い屑どものベエへの銃撃により

善と悪に分かれた魔人ブウの悪の部分が神殿に襲来した瞬間に洗脳。

 

悟空の最後の教えであるフュージョンに成功したトランクスと悟天の合体であるゴテンクスの超サイヤ人3を本来ならば圧倒される筈が逆に圧倒。

 

「ぐへへ…オマエ、弱いな。」

 

「く、くそぉーー!!」

 

駆けつけたタイムパトローラーと、老界王神により潜在能力を解放された悟飯が参戦した事で形勢が逆転。

しかし、ブウはゴテンクスとピッコロを吸収しその直後洗脳が解除される。

ドミグラの洗脳が解けた事を不思議に思いながら帰還したタイムパトローラーだったが僅かな歴史の歪みを探知したトランクスが地獄に向かい重症を負ったという情報がクロノアより入りすぐさま地獄へと直行。

 

そこではドミグラが地獄へと進行しこの時代では発生する事の無かったスピリッツロンダリング装置の暴走を引き起こそうと魔術をかけている最中であり

側にはトランクスが倒れていた。

 

「ちっ…もう嗅ぎつけたのか…クロノアの飼い犬め…!」

 

「テメェの思い通りにはさせねぇぞ!ドミグラ!」

 

そして、ドミグラとタイムパトローラーの戦闘が開始。

巧みに魔術を扱いながら戦うドミグラに戦いづらさを感じるタイムパトローラーだが。

 

「おい、貴様のせいでこっちは地獄から出れなくてイライラしているんだ…!さっさと消えやがれ!」

 

1日だけの現世へ帰還する為、占いババの元へと向かおうとしていたベジータがタイムパトローラーに協力。

降り注ぐ魔術の隙をベジータが作り出し、タイムパトローラーがドミグラの幻を撃破。

 

『ちっ…だが、これも歴史に無かった戦いだ…。』

 

その後はベジータが地球へと帰還し悟空とポタラで合体。

ベジットへとその姿を変える。

 

「よっしゃぁーー!!」

 

悟飯を吸収し、更にドミグラの洗脳によりパワーアップしたブウをその圧倒的な力で圧倒。

鼻っ面を砕き、スピリッツソードで体を貫き、触覚を引きちぎってブウを激昂させていく。

 

「グッガッギィ!!くそぉーー!!」

 

ブウはその触覚でベジットを吸収するも、直ぐに苦しみだし

ブウの穴から合体が解けた悟空とベジータが悟飯やピッコロ達を連れて

脱出。

 

ブウはそのまま苦しみだし、退化する。

そうして純粋悪と化したブウの一撃により地球は消滅。

 

界王神界へと瞬間移動した悟空、ベジータそしてMr.サタンは

これまたドミグラの魔術によりなんと2つに別れたブウと戦う事になる。

 

「「ウギャギャギャオォーーー!!!」」

 

「うるさいヤツらだ…!!」

 

「やるぞベジータ!」

 

悟空は超サイヤ人3となって1人で魔人ブウと戦い、ベジータは駆けつけたタイムパトローラーと共にもう1人の魔人ブウと戦う。

先程とは違い極悪化を施されたブウに3人は苦戦。

サタンの挑発でブウから吐き出された善のブウも途中で参戦するものの。

 

「困った…ちょっと勝てない。」

 

再生力も戦闘力も桁違いな純粋悪には及ばない。

なんとか、2人のブウをぶつけ1人に戻す事には成功しても既に3人ともボロボロ。

そんな中ベジータは元気玉の準備を悟空にさせ

時間稼ぎの為、再びタイムパトローラーと共に魔人ブウへと突撃。

 

ナメック星のドラゴンボールにより復活した地球の人々に悟空は説得を試みるも失敗。

だが、Mr.サタンの呼びかけにより大量の元気が集まる。

そうして完成した特大の元気玉を魔人ブウにぶつける。

 

「くたばっちまえーー!!」

 

だが、悟空自身の気が足りないのか魔人ブウは受け止め

逆に元気玉を押し始める。

 

「ウガガ……!!!ガァ!!」

 

そして、ブウはあろうことか元気玉を押し返してしまう。

だが、ドラゴンボールの3つ目の願いで悟空の気が回復。

超サイヤ人に変身した悟空は元気玉に己の今の全開の気を込め

 

「またな…!」

 

「ガァ……カ……カ…!!」

 

ここに魔人ブウの脅威は消滅。

最後にドラゴンボールにより、魔人ブウの記憶が人々から抹消され

事件はこれで解決…とはいかない。

 

人から忘れ去られたとはいえ機械はそしてコンピュータには魔人ブウの詳細なデータが残っている。

データが残っている。

それは、フリーザとビックゲテスターの研究の最後の1ピース。

 

今ここに研究は完成する。

ソレが眼を覚ますまで後……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・ギニュー特戦隊
チームでならターレスにすら一矢報いる事が出来る程には
成長。

・ヒルデガーン
初見殺しに敗北。

・ドミグラ
彼の野望達成まで後。

・??
目覚めかけ。

・???
もうそろそろ起きる。

・フリーザ
完全に王手をかけた。

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