ドラゴンボールF   作:月日火

38 / 52
宇宙最恐の娘

 

時とばしの正体は言ってしまえば映像のフィルムの抜き取りだ。

時という映像はヒットの力により0.1秒という僅かな時間を切り取られ、他の誰もがそれに気づく事は無い。

唯の一般人であればそれはきっと大した事はなく気づきもしない一瞬に過ぎない。

だが、一流の領域に立った戦士達にとって0.1秒という時間はそれだけで決着が着くといっても過言では無い。

ならば0.1秒というアドバンテージを得られ続けるという戦士は正に無敵の一言。

生きた伝説とまで称されるヒットという暗殺者が今まで一度も訓練しないのも当然だ。

 

だが、そんなヒットの無敗神話も今日で崩れ去る。

 

「なっ……!!?」

 

とんだ時の中、それは自身だけが自由に動ける時間…そんなものはもう過去の話だ。

今ヒットの前に立つのは数多の宇宙の科学の叡智をその身に受け継ぎ、そしてモロという何百世紀も生き続けた至高の魔術師の魔術知識を喰らったハイブリッドの頂点。

そんな彼女がたかが時間の技程度に翻弄される筈が無い。

 

ヒットの僅かな動きとほんの少しの違和感から謎を解析し、対抗できる魔術を即興で創り出すのなどは訳無い事である。

21号はその掴んだ腕を引っ張り、ヒットが僅かに前のめりになったところを理想の形で正拳突きを正確にこめかみに打ち抜く。

 

「がっ……!!」

 

悟空達から見れば、2人が消えた途端ヒットが吹っ飛ばされるという謎の展開だ。

だが、彼らはそれを気にする余裕は無い。

何故なら彼女の姿が悟空達にとって忘れもしない悪の魔人ブウとあまりにも類似していたからだ。

 

「いい!??ど、どういうことだぁ!?」

 

「おい!説明しやがれフリーザ!!」

 

魔人ブウと戦った悟空とベジータがフリーザに問い詰める。

フリーザはそういえば忘れていたと言わんばかりに2人に説明をする。

 

「あぁ、そういえば説明するのを忘れていましたね。彼女の名前は人造人間21号。今まで地球にいた全ての戦士、そして私の軍の全てを詰め込んだ傑作でもあります。つまりは悟空さんやベジータさん。そして私の細胞を取り入れた最強の娘、という訳ですね。いやはや親として鼻が高い。」

 

「な、なんだと…!!?」

 

そんなフリーザの説明に驚愕する2人を無視してフリーザは再び武舞台へと視線を落とす。

 

「ほらほら!!どうしたのかしら!!?」

 

「ぐっ……!!」

 

武舞台では21号がヒットを完全に圧倒する形で試合が進んでいた。

ヒットが先手を打とうと時とばしをしようとも。

 

「それはもう見飽きたのよ!!」

 

急所へと拳が直撃する瞬間に21号の魔術が発動し後方に回転し回避。

その状態から足を伸ばしてヒットの顎を蹴り上げる。

そして時とばしが解除されヒットが宙に浮くのを今度は腕を伸ばして足首を掴んで叩きつける。

 

「ぐぉぉ!!?」

 

叩きつけられたヒットが立ち上がろうとした瞬間。

世界が灰色へと染まる。

あらゆるものが停止し、その中でたった1人21号だけが立ち上がらんとするヒットへと近づき、彼を立たせて棒立ちにさせる。

そして、人体の急所たる全ての部分を抉るように乱打し

 

「ぷはぁ!!」

 

「……やるな。」

 

21号は息を止めるのをやめ、時の停止を解除。

急所を打たれ目眩や立ちくらみがする中ヒットは素直に彼女を称賛する。

ヒットからしてみれば、産まれて初めての強敵たる彼女。

故にヒットは。

 

「…お前なら使っても良さそうだ。」

 

使わなければ自身よりも強いこの戦士を倒すことは出来ないと決断し

僅かに離れた距離から拳を構え、放つ!

 

「……しっ!!」

 

「あら?」

 

ヒットが放った不可視の気は21号の腹を容易く貫き、彼女の腹に穴を開ける。それに僅かにヒットの目が見開く。

だが、直ぐにその穴は塞がり彼女はニヤリと笑う。

 

「へぇ…なかなかやるじゃない。それじゃあ……。」

 

そして、彼女は先ほどのヒットと全く同じ構えを取る。

その行動にヒットは最悪の事を予想する。

 

(まさか…。)

 

「お返し!!」

 

その予想は的中。

21号はヒットと全く同じ技を魔術によって再現し、不可視の気を飛ばしてくる。

とはいえ、自身の技である以上その技の特徴や弱点を知り尽くしているヒットは僅かにブレる空気の波を読み、時とばしによって回避する。

その時とばしの中を21号が突撃し、殴り掛かろうとするが

21号の攻撃は何故か外れヒットの気を纏った攻撃が表面に浸透するように直撃。

 

「ふん!」

 

「ギッ……!!」

 

21号にダメージが入ったのを見逃さずヒットの攻撃が21号へと連続で命中。

時とばしが解除され、21号が僅かに地面を引きずる。

 

「なるほど…確かにお前は強い。だが、戦闘経験は全くのゼロという訳か。

恐ろしい奴だ。お前がこれから成長していくのがな…だが、ここは俺が勝たせてもらう。」

 

「……言ってくれるじゃない!!はぁぁぁ!!」

 

ヒットが冷静に21号を分析し、勝利宣言を下す。

それに激昂する21号が攻撃をヒットに繰り出すもヒットは煙のようにそこから拳が突き抜ける。

 

「え……?」

 

驚き、高速で思考を開始する21号だがそれは何処から訪れた強い衝撃により中断され、吹き飛ばされる。

 

「づぅ……!!」

 

即座にヒットを見る21号だがヒットは先程の位置から全く動いていない。

となれば。

 

「………ふぅぅ。」

 

21号は大きく息を吐いて深呼吸をし荒立つ気を鎮め、己の戦闘スタイルを思い出す。

自らの戦闘スタイルはあらゆる事を即座に解析し弱点を的確に狙う論理的なものだ。

怒りに任せてしまえば、得られるものなど何も無い。

故に21号はほんの一瞬の時間の中であらゆる可能性を思考錯誤する。

自分がもし彼ならどういう技、手段で追い詰めにかかるかを何百、何千通りも高速シミュレートしそれに適した自らの攻撃手段を構築する。

 

21号の構えが高速で動き、ヒットと全く同じ構えを取る。

そして再びヒットへ拳を繰り出すもさっきと同じようにすり抜ける。

だが。

 

「捕まえたわ!!」

 

21号は回転し何も無いところへと手刀を突き出す。

すると、空間に亀裂が走り砕け、中からヒットが首を掴まれ苦悶の表情で弾き出される。

 

「何っ!?」

 

そのまま21号は細腕から考えられない程の剛力でヒットの首を掴みながら武舞台の地面へと叩きつける。

 

「やっぱり…貴方の技の秘密は、切り取った時を蓄積させて別空間を創り出す事!!」

 

「…大した奴だ。ここまでの短時間でそこまで俺の技を見破るとは。」

 

「それで?貴方はここで降参かしら?」

 

「いいや…お前の力に敬意を表して俺も全力を出そう!!」

 

そう言うとヒットの気が爆発的に上昇する。

時とばしでは無く、自らのスピードとパワーにより21号の拘束から解放したヒットはそのまま21号へと迫り時とばしを行使。

そのまま21号もその世界へと介入し、ヒットと全く同じ攻撃を同時に繰り出す。

当然拳同士がぶつかり合い、それをきっかけに殴り合いへと移行していく。

お互いがお互いの急所を的確に打ち合い、その激痛はヒットの体に徐々に蓄積していく。

対する21号は魔人ブウと同種の肉体により、ダメージを大幅にカットしてはいるもののヒットの気の篭った一撃は神経に直接響いていくため徐々に息が荒くなっていく。

 

更にお互いがお互いを刺激しあい、武闘家として急成長している事もあり

その鋭さや威力は有り得ない速度で上がっていく。

そんな中、21号の中にある無数の細胞が闘争の中、21号の肉体で活性化し彼女の全身を刺激する。

 

「……ふふっ!!」

 

その高揚感に21号は嗤い、戦法を変えていく。

ただの拳のぶつけ合いではなく、気弾や尻尾、足技を使うのは勿論

フェイントを織り交ぜていく事によりヒットは徐々に追い詰められついに21号の猛攻をもろに受けてしまう。

 

「アハハハハハ!!!」

 

そこまできてしまえば、最早試合は一方的。

21号の殴打の嵐はヒットとの戦いの中習った人体の急所を的確に拳、脚、尻尾を使い何度も何度もヒットを打ちのめす。

 

ヒットも負けじと拳を何とか捌いて反撃を試みるも、21号はほんの僅か時を止めて回避する事で間髪容れずに攻撃をヒットに直撃させる。

それは、最早無呼吸での乱打。

 

それに耐えられなくなったヒットの肉体が悲鳴を上げ、ヒットの視界がぼやけふらついた瞬間に、踵落としでヒットの頭を地面へと蹴り落としたと同時に尻尾で脚を絡ませて仰向けに叩きつける。

 

「これで最後よ!」

 

仰向けに倒れたヒットに21号は馬乗りになり

両手を重ねて、エネルギー波を発射。

その威力に武舞台は完全に崩壊した挙句にバリアを木っ端微塵に消しとばし

爆風が発生する。

 

爆風が晴れ、立ちあがるのは21号。

ヒットは白目を剥き、完全に気絶している。

 

「ちょっと!審判!!?」

 

爆風により場外まで吹き飛ばされた審判に21号は勝利の宣言を要求する。

 

「は、はいっ!!勝者21号選手ーーー!!!」

 

審判の勝利宣言にビルスは立ち上がり、悟空は21号と戦いたくてウズウズし始める。

そして、フリーザはさも当然のように娘の勝利を拍手で祝うのだった。

 

その後、大会の勝利報酬として超ドラゴンボールがビルスへと進呈されるも

ビルスの願いは第六宇宙の地球の復活。

シャンパは感激の眼差しを向けビルスは気恥ずかしそうに顔を背ける。

なんだかかんだと言ってビルスも兄弟に対して素直では無いらしい。

 

その視線に耐えきれなくなったのか地球に戻って直ぐにビルスはウイスと共にフリーザと21号を引き連れ、悟空に絶対についてくる事を禁じた上で惑星リゾートへと向かい、やけ食いを開始したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・21号
当然の事ながらブロリーの細胞も組み込まれているので
技の物真似はお得意のもの。
あらゆる動きをトレースし弱点を的確に叩き出すのが主な戦法。

・ヒット
こちらは暗殺者としてではなく武道家として莫大な成長を遂げたものの
成長の速さで敗北。
人体の急所を的確に打ち抜く短時間戦が主な戦法。

・フリーザ
結局今回は出番は無かった。
念力や豊富な技で相手を圧殺するのが主な戦法。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。