エイジ728年、遂にその時がやってくる。
長らく星内で支配者層と労働者層の関係を巡り
小競り合いを繰り返していたツフル人とサイヤ人だったが
決着を付けるべく当代のベジータ王が軍隊を率いて惑星プラント中枢へと侵攻
ツフル人は強大な科学力によってこれを迎撃する。
「行け!我がサイヤ人の力を今日こそ思い知らせてやる!!」
「サイヤが来たぞ!各自迎撃せよ!」
暴力のサイヤと科学のツフル。
初めはその科学力によるツフルが優勢だったものの夜になり満月になった瞬間
形勢は逆転する。
そう、ベジータ王は満月の日を狙ってここの反逆を決行していた。
科学力は全宇宙で屈指だとしても、素の戦闘力が低いツフルは一堪りも無い。
暴力の化身である大猿に次々と身体を潰されていく。
その侵略の中、監視を命じられたフリーザは配下のギニューに一時的な軍の指揮権を与え惑星プラントへと足を伸ばす。
そうして、ある人物と接触を図っていた。
「だ、誰だ!貴様は!」
「私の名はフリーザといいます。…一つ貴方に提案があるのです。」
ーーDr.ミューさん?
さて、今回のフリーザの目的はツフルの科学力…ではない。
Dr.ミューとDr.ライチー。彼等のスカウトがフリーザの目的だ。
彼等はツフルの中でも有数の科学者である。
ミューはベビーやルードといったマシンミュータント。更に超17号などのオーバーテクノロジー。
ライチーは自らすらも媒介とした怨念増幅装置ハッチヒャックそしてデストロイドガス。
両者ともサイヤを憎んだ敵として悟空達を苦しめた至高の科学者である。
そんな彼等を逃す手は無いと睨んだフリーザは父の命令を利用しフリーザ軍の更なる増大を目論んでいた。
特にベビーは戦力としても余りに貴重な存在。
いずれ彼を利用したある作戦の為にせめてミューだけでも必ず迎え入れたい。
そんな思いを抱えフリーザは今彼の前に立っていた。
因みにフリーザは今自身を2つに分けている。
1人はこちらにおりもう1人をライチーへと差し向けている。
既にライチーはこちらへの参入を決めており後はこちらのみなのだが
こちらのフリーザは知る由も無い。
ミューと言えば、唐突に現れたフリーザを信用する訳もなく
疑惑の目を向けフリーザへと問いを投げかける。
「…貴様もあのサイヤ人の仲間か?」
「いいえとんでもない。私は貴方を助けに来たのですよ?」
「戯言を…!!仮にそれが真実だとして私が頷くと思ったか?」
「ええ、勿論。貴方の様な優秀な科学者ならばこの星の運命も予想できるはず…違いますか?」
ミューはその言葉に黙り込む。
フリーザの言った言葉はミューが既に予測していた事に知っていたかの様な口調だったからだ。
確かにミューは既にこの星がどの様な結末に至るかを予測している。
彼の優秀な頭脳はあらゆる可能性を弾き出しそのどれもがツフルの滅亡であると確信したが故に自らのラボに篭り、サイヤという嵐を耐えようとしているのだ。
「…確かに私はこの星がどうなるか想像した。だがそれが貴様に何の関係が…」
次の言葉を言おうとした瞬間。
「
フリーザの言ったその言葉に絶句した。
何故だ、何故お前が私のソレを知っている!!?
未だ開発段階にあるミューの最高傑作となるベビー。
情報隠蔽は完璧で、王以外の他のツフル人はその存在すら
知らなかったその情報を何故知っていたのか。
ミューの頭は酷い混乱状態に陥る。
その隙をフリーザは見逃さない。
「彼を完成させたくはありませんか?」
「私の軍に入れば最高の環境を約束しましょう。金を惜しむ必要もありません。」
「あぁ、貴方専用のラボも作ってあげましょう。少なくともここよりはきっと快適になるはずです。」
フリーザの投げかける、甘く溶け落ちる様な誘惑にミューは次第に引き込まれていく。
一度、ハマってしまえばもう抜け出す事は出来ない。
ミューはもうフリーザの掌の上だ。
それを確認したフリーザはトドメを放つ。
「そして、見たくはありませんか?己の最高傑作がサイヤ人を無残に殺す所を。」
そして、ミューは。
「…あぁ。勿論だとも。」
完全に欲望の底へハマっていったのだった。
♠︎
フリーザがミューとライチーを自らの宇宙船へと引き入れた数分後。
大猿の雄叫びがそこら中に響き渡り侵略の終わりを高々に告げた。
滅んでいく星を見ていたミューとライチーの手の平は硬く握った所為で血が滲んでおり、その憎しみを抑えきれてはいなかった。
フリーザはその姿を見て己の更なる増大を確信する。
その予想は的中。
ツフルの高度な科学力によりスカウターを始めとした様々な道具が生産され
それは全軍に支給される。
これをミューとライチーは己の作品の片手間に作ってくれるのだからこの世界の科学者は誰も彼もがおかしい。
その三年後のエイジ731。
サイヤ人の王ベジータ王がコルド大王の元へと推参し服従を誓う。
どうやら、ツフルへの侵略時にコルドへの服従を約束とした密約がかわされていたそうだが、反対派の粛清に思ったよりも時間が掛かったらしい。
この事をミューとライチーにも伝えはしたが特に反応は無かった。
ミューが言うには
「奴らの狂暴性からみてすぐに奴らはお前達を裏切るだろうさ。その機を狙って皆殺しにすればよい。それに…」
ミューの背後に浮かぶ培養液にはベビーらしきものがその命の息吹を吹かせていた。
「こやつももうそろそろだ。」
邪悪な笑顔でミューはそう告げる。
ライチーは既にハッチヒャックを完成させており今後はフリーザ軍への発明品をメインにおいてくれるそうだ。
その間、フリーザはコルド大王から更なる指示を受ける。
「フリーザよ。どうやら、我が領土である惑星を違法に改造している魔族がいるらしい。その魔族を服従あるいは抹殺するのだ。」
「わかりましたよ、父上。」
フリーザはその魔族の気を即座に探知。
瞬間移動によってその者の目の前に立つ。
「ん……何者だ…?貴様は?」
目の前にいた物はかなり年老いていた。
フードで隠している顔は皺くちゃで目は今に落ちそうである。
見るからに寿命間近の老年であった。
フリーザはその顔を見てこの男はスラッグであると確信する。
となれば、彼の懐柔はそう難しくは無いだろう。
そう考えたフリーザはこうスラッグに告げる。
「初めまして、私はフリーザと言います。」
「フリーザ……あ、ぁあコルドの息子…か。」
「おや、よくご存知で。では話が早い。スラッグさん、若がえりたくは無いですか?」
スラッグはピクリと眉を動かす、余りにも真っ直ぐ言われた言葉に困惑の色を浮かべフリーザの真意を問いただす。
「どういう…事だ?」
「スラッグさん、貴方は日光に苦しんでいる。そうですね?」
「ぁあ…昔はそうではなかったが年を取り老いていくにつれ太陽が苦手になってな…今では1時間と持たない。」
「…貴方が永遠の若さを得られるとしたらどうします?」
「………本当に、そんなものがあるのか?」
スラッグの目に一つの光が宿る。
皮肉にも年を取った際に得た落ち着きがフリーザの言葉を信じるものだと直感してしまったのだ。
スラッグは老いによる死を何よりも恐れていた。
自らの野望も果たせぬまま日に日に衰えていく自分の体に吐き気すら覚えた。
だが、もしも己の最も力の溢れていた頃に戻れるならば?しかもそれが永遠なら?
スラッグはそんな吊るされた最後の希望にしがみつく程に耄碌してしまったのだ。
そんな老年にフリーザは更に蜘蛛の糸を垂らす。
「今、貴方がこの星の改造を辞め、私に服従するのならば貴方をその老いの苦しみから解き放って差し上げましょう。どうです?」
「……待て、まだその方法を聞いていないぞ。」
「貴方の選択が先です。」
スラッグはしばし硬直し
このまま従い若さを取り戻した時に奴を殺せばいいと結論付け答えを出す。
「わかった、お前に下ってやろう。」
「では、これからよろしくお願いしますね、スラッグさん。貴方の働きに期待していますよ?」
「…フン。で、方法とはなんだ。」
「…ドラゴンボール、7つのある特殊な球を集めると龍が現れ何でも願いを叶えてくれるそうです。」
「……裏切るなよ、コルドの倅よ。」
「ええ、勿論。」
♠︎
スラッグがフリーザ軍へと下って更に8年が経過。
コルド大王が引退する旨が決まる。
そして。
「フリーザよ、貴様にサイヤ人の指揮を任せることにしたい。」
「おや、私でいいので?兄上はどうしたのです?」
「……この俺に猿の世話をしろと?」
「いえ、別に。…確かに承りましたよ父上。」
エイジ739年。
フリーザはサイヤ人の指揮を任せられる事となった。
紹介コーナー。
・ツフル系科学者。
原作のGTやサイヤ人絶滅計画よりも設備が大幅に向上した為
ベビー、ルード、リルド将軍、ハッチヒャックの戦闘力上昇。
フリーザ軍設備も大幅に改善。宇宙船も某長寿宇宙映画並に早くなった。
因みにこれでもブルマ一家がいれば簡単に果たせるという謎。
・スラッグについて。
太陽の下では一時間はどう考えても変と考えてはいたのだが
そういえば同じく老年の最長老も室内に篭りっぱなしだったので
ナメック星人は老いれば老いる程太陽に弱くなる設定に。
これは独自設定なので悪しからず。