ドラゴンボールF   作:月日火

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強者の素質

「オオオ!!」

 

「オラァ!!」

 

ブロリーの剛腕とケフラの細腕がぶつかり合う。

身長が約二倍近く差がある2人、当然長身であるブロリーがケフラを押し潰すような形になっているのだが、驚くべきなのはそれを多少汗を流しながらも受け止めているケフラの方か。

 

お世辞にも筋肉質とは言える筈もないその細身の肉体から溢れ出るパワーはさっきまでブロリーに圧倒されていた少女達とは到底考えられない程の増幅を果たしている。

いくら、ブロリーが超サイヤ人になる事が出来ずケフラはフルパワーの超サイヤ人に変身しているとはいえ縮まった差というのは余りにも大きい。

 

「はぁ!!」

 

「ぬぅ……!!」

 

ケフラがもう片方の腕でブロリーの拳を弾き、ガラ空きになったボディに一撃。

それを受けて初めてブロリーは仰け反るが、そのダメージは僅か。

すぐさま反撃といわんばかりに更に力を増した一撃をケフラに振るう。

ケフラは咄嗟に防御態勢を取るもその上からブロリーの剛腕が突き刺さる。

 

両腕にヒビが入る音が耳に入りながらケフラは数十メートル吹っ飛ばされる。

だが、すぐに立ち上がり高速移動を繰り返しながらブロリーへと迫る。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

迎撃に入ったブロリーの剛腕を今度は避けて、懐に入り込みラッシュ。

一撃、また一撃がブロリーに突き刺さり不動の体勢であったブロリーの肉体が次第に揺らいでいく。

 

「な……にぃ……!!」

 

「ははは!!!すげぇぜ!この力!あのバケモノをこんなにも!!だがまだだ!アタシの…いや、アタシたちの力はこんなもんじゃねぇぞ!!」

 

みなぎる力を込めた一撃でブロリーを殴り抜き、数歩下がらせた瞬間

両手に3つの赤き気弾を作り出して投げつける。

それはふらつくブロリーに着弾、彼を中心として大爆発を引き起こす。

 

別の世界ではブルーさえ圧倒したケフラの実力は今この場に残った選手の中でもトップクラスであり、更にケフラの力はまだまだ上がある。

このままケフラの成長が止まることなく続けば、悟空やベジータ、ターレスといったサイヤ人の中でも最高峰のメンバーにも牙を立て喰らいつく事が出来るだろう。

 

だが、忘れてはいけない。

ケフラの前に立っているこの男こそ、フリーザが手中に収めてるべきだと判断した唯一にして最凶の成長スピードを誇る文字通りの規格外であるという事を。

 

「オ、オオオオオオ!!!」

 

爆風が晴れると同時にしてブロリーが吠える。

その咆哮に呼応する形でブロリーの纏う気が今までとは比較にならない程爆発的に上昇し、ブロリーが発する何百倍に匹敵、否それ以上の重さを誇る気の圧がケフラを襲う。

 

「……っ!!上等だぁぁぁ!!」

 

その余りの圧にケフラは無意識に一歩下がってしまう。

一拍置き、それに気付いたケフラは持ち前のプライドが刺激された怒りと目の前の強敵に対するサイヤ人の闘争本能が刺激された悦びが奇跡的に組み合わさりケフラのステージもまたブロリーの気に応える形で上昇。超サイヤ人2へとその姿を変えスパークを放ちながらブロリーへと突貫する。

 

ブロリーはそれを受け止める形でケフラを待ち構え、ケフラの拳をガードする事なく己の肉体だけで完全に防ぎ、ケフラを全力で殴り抜く。

それに血反吐を吐きながらもケフラはそのどう猛な笑みを更に深め、ダメージを気にする事なくとにかくブロリーを殴る。

 

その繰り返しは最早戦いではなく猛獣の奪い合いだ。

 

殴り、殴られ、殴り、殴られ、殴る!!

 

防御など不要、戦術、戦略、小細工など無い唯の殴り合いだ。

骨が折れようが、肉が拳の威力で引きちぎれようが、その拳がボロボロになろうがそんなものなんて事無い。

 

これは2匹の獣の喰らい合い。

どちらがその痛みに耐えられずに一歩引くまでのタイマン。

身長差があろうが、気の大きさが違おうが、そんなものこんな場では無意味と同義語だ。

 

男も女も関係ない獣共の殴り合いは2人が尋常ではない成長と比例するように激化し、凄惨となる。

 

歯が折れるか欠けるかして、飛び散り。

肉が削がれた部分の骨が砕けてその場に舞う。

 

その光景は幾年も生きるビルスやベルモッドといった破壊神すらも目を背ける程だ。

 

だが、そんな猛攻を仮にも人の姿である者が耐えるにはいささか硬度というものが足りないのは明確な事実であり、決着が付くのはそれから間もない時だった。

 

ケフラが、一歩、仰け反った。

 

そんな隙を卓越した反射神経を有するブロリーが反応する事など最早当たり前。

その一歩下がった体にねじ込むように地を砕き、天を裂くブロリーの剛腕から放たれるブローが突き刺さり、ケフラは背後にそびえ立つ全てを破壊しながら吹っ飛ばされていく。

 

が、ケフラは場外ギリギリで意識を取り戻し、地面を抉り抜きながらなんとか脱落を回避する。

 

「ヒュゥ……ヒュゥ……。」

 

肋骨が折れ、恐らく呼吸もままならないまましかしケフラは意識をはっきりさせ手を握り拳を作る。

だが、誰が見ようともケフラの体力は最早風前の灯火。

どんなに振り絞っても後一撃が限界の状態だ。

 

「……上等だ。これにアタシたちの全部をぶつけてやる……!!」

 

覚束ない足を引きずりながらケフラは一歩、また一歩とブロリーに向かって歩きだす。

己の、ケールとカリフラが持てる全て以上を振り絞り両手に気の螺旋を収束させ。

 

そして、生涯の中でも最強の強敵の目の前へと立った。

 

 

「……。」

 

ブロリーは肩で息をしてはいるもののケフラと比べればまだまだましな方であり既に右手に迎撃には充分な気が収束されていた。

 

「………。」

 

「……。」

 

もう、2人の間に言葉は無い。

ただ、その時を待つだけ。ケフラの額から垂れるたった一滴の血が地面へと滴り落ちるその時を。

 

ーー血が、落ちた。

 

「ハァァァ!!!!」

 

先に放つはケフラ。

両手から放たれた自身の全てがブロリーの身体を飲み込まんと迫る。

 

だが、ブロリーは。

 

「オオオオ!!」

 

なんと、自らその気の奔流へ走り出し飲み込まれる。

それに好機を感じた否かは定かでなくともケフラは意識を保っていた残りわずかの気すらこの一撃に捧げて全力も全力で咆哮する。

 

「アタシたちの………勝ちだぁぁぁぁ!!」

 

 

「いや、オレの……勝ちだ!!」

 

ブロリーはあの気の奔流を真正面から突破してそれを打ち破り超至近距離からそのエネルギー波を解き放つ!!

 

「うぁぁぁぁぁぁ!!!!?」

 

緑の閃光に呑まれたケフラはそのまま抗う事も出来ず、そのまま場外へと一直線に飛ばされたと同時にポタラが砕け、そのまま観客席へと落下していく。

 

流石の神の道具と言うべきか、本来ケフラで受けた重症のダメージはかなり軽減されたらしくケールもカリフラも怪我はいくつかの骨折に抑えられ痛みを堪えながらケールはシャンパに謝り、カリフラはブロリーに再戦を求め吼えたてる所をキャベに宥められていた。

 

しかし、勝者となったブロリーのダメージも大きく大猿の気が霧散すると同時に膝をつく。

 

「はぁ……はぁ…。」

 

流石にブロリーであろうと受けた痛みと疲労の多大なる蓄積、そしてケフラとの戦いの最後に無茶をした傷痕は無視できるものではない。

 

寧ろ、ブロリーの成長が少しでも停滞していれば敗れていたのはブロリーの方であった。

それぐらいブロリーが受けたダメージは大きかったのだ。

 

だが、ブロリーは本能で悟っている。

真の闘いは今こそ始まっているという事。

爆音と轟音を上げ、今まさに皆が一斉に掛かっているあの男こそが最大にして最強の敵だという事をブロリーは感じ取り再び立ち上がろうとするも膝が笑ってしまいうまく立ち上がれず、逆にその場に倒れこんでしまう。

 

瞬間、強烈な眠気がブロリーを襲い抗いはしたもののその悪魔に打ち勝つ事が出来ずにブロリーはその場でゆっくりと眠りについたのだった。

 

♠︎

 

破壊が迫る。

 

一切合切何かもを万物全ての悉くを消し去る破壊のエネルギーだ、無論気を抜けばフリーザの全身を一瞬にして粒子へと変え、その存在を無へと変えるだろう。

 

そんな理不尽にも程があるエネルギーの塊を、フリーザは。

 

ーー敢えて、何もせずに受け入れた。

 

「………っ!」

 

自分を構成する何かが薄れていく感覚と共に破壊のエネルギーが自らを飲み込まんとその活動を開始する。

その破壊の全てをフリーザはただ黙して叫びそうになるのを堪え、目を閉じる。

 

自らが生み出したものでは感じ取る事が出来なかった破壊という概念を敢えて喰らう事によって肌で感じ、自分では気付く事が出来なかった穴をゆっくりと埋めていく。

 

そして。

 

「……馬鹿な、馬鹿な!馬鹿な!馬鹿なぁ!!!?」

 

その光景を目にしたトッポは目の前の現実を受け止められずに叫ぶ。

自らの全てが無意味だったと嫌でも自覚してしまうほどのものが其処にはあったからだ。

 

「クク…さぁ、このゴールデンフリーザの真の力を見せて差し上げましょう!!」

 

破壊の中でフリーザが嗤い、徐々にその力を解放させていく。

すると、破壊のエネルギーはまるでフリーザの全身に纏わり付くような形で縮小。

 

「ハァァァァァ!!!」

 

トドメにその黄金の気を解放させれば、破壊は完全にフリーザの体へと吸収されていった。

 

「……ふぅ。これが破壊神の力……ようやく手に入れましたよ。」

 

それに伴ってフリーザの黄金の気にはトッポが纏っている破壊のエネルギーの濃密で禍々しいオーラが加えられ更なる成長を果たした事が目に見えて解る。

これこそが、フリーザの思い描いた完成形。

身勝手の極意を破りさる為の切り札。

 

ーー擬似的な破壊神化である。

 

「さてと、もう用も済んだことですし無様に落として差し上げましょう。」

 

そう言うとフリーザはゆっくりとトドメを刺すべく歩き出す。

この姿を得られた事で最早トッポなどという雑魚に利用価値は無い。

いわば、用済み。ゴミはゴミ箱に、というやつである。

 

「舐めるな、第7宇宙!!たかが猿真似如きで私に勝てると思うなぁ!!破壊!!」

 

再度、トッポから破壊のエネルギーが放たれるも、フリーザはそれを防ぐ事もせずにただ歩きながら、身に纏う破壊のエネルギーだけで破壊のエネルギーを文字通りの塵へと還していく。

 

「何ぃ……!!……破壊!破壊!!破壊っ!!!」

 

驚きに目を見開くトッポだったが直ぐに立ち直り破壊のエネルギーを乱射するが、もうフリーザにとってトッポの生み出す破壊なんぞ、吹き抜けるそよ風と大差ない。

 

「…もうそれはこのゴールデンフリーザの前では無意味ですよ!」

 

やがて、フリーザはトッポの眼前へと接近し終えると一瞬でトッポの胴体に5発のパンチ、顔面に2発のキックを叩き込む。

 

「ガッ……!!」

 

白目をむき倒れこむトッポの首を尻尾で巻き取り投げ飛ばし、追撃に1発気弾を打ち込んで、場外まで飛んだ所を確認した所で起爆。

 

トッポは全身が焼け焦げた状態で落下し、脱落の旨が大神官の口が告げられる。

 

フリーザはそれと同時にその破壊神化を解除し、大きく息を吐く。

何故、破壊神化を解除したのかというとぶっつけ本番故に安定性に欠けるそれをいつまでも展開したままでは近いうちに時間切れになり敗北を喫する事をフリーザは痛いぐらい識っていたからだ。

 

フルパワー化しかり、初期のゴールデン化しかり。

 

「それに、体力をこんな所で消費して勝てるほどジレンさんは簡単ではないでしょうし…まぁ、歩いていきますか。」

 

そう呟くとフリーザは最後の戦場へとゆっくりと歩を進める。

今までとは全く異質の気の奔流を感じ取りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・ブロリー
超サイヤ人化なしだと大体これぐらいかなと思った。
映画を見る限り、かなり成長したブルーと互角らしき描写はあったので。
現在疲労による気絶中。

・フリーザ
念願の対抗策をゲット、身勝手の極意が余りにも強いのでジレンのようにパワーによる押し潰しを画策した結果がこれ。
現在可能な展開時間はフルパワー化や復活の「F」のゴールデン化と同じ五分。

・ジレン
ジレン無双始まるよ。

・トッポ
生贄

・ケフラ
一言でいうなら相手が悪かった。
一応、ターレスに勝てるぐらいの計算ぐらいには成長した模様。




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