ドラゴンボールF   作:月日火

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前座

…それは最早、超が付くほどの達人の視界ですら捉える事が不可能の領域へと突入していた。

 

「……」

 

「……っ!」

 

耳から伝わる拳がぶつかり合う音は一瞬にして何百、何千と重なり。

目から送られる情報は既に幾分かの情報を見逃していく。

 

ベジータが、そしてターレスが見ている戦闘は正に神を超えた先にあるモノ。

一撃が必殺となるジレンの攻撃の全てが、悟空には一撃も当たらない。

 

これが破壊神すら習得が困難と言われる身勝手の極意のまだ入り口だとは誰がどう見積もったとしても想像出来ないだろう。

 

ジレンの拳が弾幕となりながら悟空を襲うも、その一切を回避あるいは受け流しこちらもと言わんばかりに拳の弾幕によってジレンと拮抗する。

 

やがて、その攻防が互いの拳が弾かれ体勢が崩れる事で決着するもジレンはすかさず拳に気を纏い一閃。

だが、気付けば悟空は既にジレンの背後。

 

「だりゃぁぁぁ!!」

 

ここで初めて悟空が咆哮し、ジレンへと回し蹴りをするもジレンは最低限の動きをもってこれを回避。

蹴りの軌跡が一瞬煌めいたかと思えば即座に爆発を起こした。

 

「……」

 

今度はジレンが悟空との距離を即座に詰め乱打。

悟空もまた迎撃に転じるも悟空の目が一瞬瞬くと同時に戦況はジレンへと一気に傾いていく。

 

「ぐっ……くっ……!!」

 

拳がぶつかり合う残像が徐々にジレンの拳を希薄にし、それと比例するようにして悟空の拳の軌跡を露わにしていく。

何故かと言えば、実はこれは単純な話であり悟空の純粋な経験値の不足がこの戦況において大きく影響を及ぼしている。

 

悟空の瞬きは、言ってしまえば身勝手の極意が僅かに揺らいだ証。

 

回避、受け流しにおいては悟空の身勝手の極意は完成されており、証拠として今までは手も足も出なかったジレンのあらゆる攻撃を時に避け、時に躱しとその時と状況に合わせた無意識下の最善手をうっている事からもそれが伺える。

 

だが、問題は攻撃。

拳を、蹴りを、気弾を、カウンターを。

繰り出そうとする瞬間、悟空の脳内では一瞬の内に何億通りの攻撃手段が浮かび上がる。

だが、身勝手の極意とはそれすらも無意識下の最善手を打つもの。

思考、そしてそれに対する判断が。本来絶大な威力を生み出す筈の身勝手の極意に枷を付ける事となる。

 

結果、技の精度が鈍りジレンに攻め込む隙を与え、こちらは一向に有効打を打てないという悪戯に体力と時間を浪費する最悪の展開へと進んでいるのだ。

 

だが、ここで悟空を非難できない。むしろ賞賛されて然るべきだ。

彼の身勝手の極意は未完成ながらもその精度はビルスをして驚嘆させるもの。

この場において、最も恐ろしいのはその神々の究極と対峙してなお拮抗どころかそれを上回るジレンの方だ。

 

無論、ジレンとて決して手を抜いて闘える程今の孫悟空は油断ならない強敵である事を理解してはいる。

むしろ、今まで闘ったどの相手よりも手強く、巧く、そして恐ろしい敵であるとジレンは確信した上で闘っている。

 

それでも、彼はたったひとりでプライド・トルーパーズの強豪たる面々の頂点に上り詰め、破壊神すら超えた先にある頂へと立った男。

そして、強さの先を今もなお追い続ける求道者たる彼にとっては今の悟空ですら不足の相手だったというだけの事。

 

これが、最強の体現。

 

全宇宙最強たる彼の真骨頂は、未だ見えず。

 

ここで悟空は乱打による攻防を強制的に中断、拳の衝撃波を利用して後方の残された壁に着地し、彼が出せる最大の技を繰り出す準備を始める。

 

「か……」

 

即座にジレンは拳圧を撃ち出して、壁を破壊。

悟空はそれを跳躍する事で回避し、壁が崩れた事で出来上がった瓦礫へと着地する。

 

「め……」

 

一点集中では無意味と判断し、ジレンは広範囲に及ぶ乱打を選択。

次々に瓦礫が塵となる中悟空のかめはめ波は更に収束する。

 

「は……」

 

遂に瓦礫が完全に無くなり、空中に放り出された悟空ではあるが、落下しながらもジレンの攻撃を滑るように回避。

遂にジレンの真上に到達する。

 

「め……!!」

 

そしてかめはめ波が最大の収束を迎え、今まさに解き放たれようとする中においてもジレンは不動のままそれを睨む。

 

「波ァァァァ!!!」

 

悟空のかめはめ波が解き放たれ、ジレンへと迫る。

会場はその余波で大量の穴が空き、ある部分ではその穴によって部分ごと崩落する所まであるほど。

今までの悟空が放ったどのかめはめ波よりも熱く、そして強い。

正に最大にして最強のかめはめ波。

 

だが。

 

「………」

 

その一撃もジレンにとっては片手でこと足りる。

 

「むん!!」

 

ジレンから放たれた気弾は容易くかめはめ波を貫き、悟空を巻き込んで天へと昇る。

やがて、頂点に達した気弾はそのまま爆発。太陽もかくやという熱さをもって会場を照らした。

 

やがて、その気弾が晴れ中からかめはめ波をバリアーのように変形させる事で何とかジレンの一撃の直撃を防ぐ事に成功した悟空が現れる。

 

だが、その目には先程のような光や威圧感は無く普段の優しき黒目に戻ってしまっていた。

 

「くっ……」

 

そして、バリアーが崩れると同時に悟空は落下し地面へと追突する。

 

墜落した悟空の近くにはベジータ、そしてターレスがおりその全員が満身創痍。その近くにジレンが降り立ってもなお立ち上がる事すら既に困難であり、特にサイヤパワーを全開まで使い切ったターレスは起き上がり意識を保つ事すら危なげとなっている。

 

「……終わりだ、サイヤ人」

 

悟空との戦闘を終えてなお、ジレンの表情には余裕が残っており傷という傷は精々が右腕に出来た打撲痕。

そんな絶望的な状況においてなお悟空の闘志は揺らがず。

むしろ、不敵な笑みをもってジレンを見つめた。

 

「……へへ、そうでもねぇさ」

 

「……な」

 

にを。と、ジレンが言葉を紡ぐ事は無かった。

何故ならば、ジレンの全身を一瞬にして鋭い痛みが襲ったからだ。

 

「ぬぐぅ……!!?」

 

いかなジレンといえども全くの無防備であるならば明確なダメージを受ける。

現にジレンが今受けた傷は先程の物のどれよりもその強靭な肉体に色濃い痣を残していた。

 

とはいえ突然の襲撃、更に己が全く気付けなかった攻撃ともありジレンは目の前のサイヤ人よりもその不可視の敵に対し最大限の警戒を放つ。

紅蓮の気が迸り、次は喰らわんと直感と観察眼をフル回転させ、一撃の元に屠らんとする。

 

だが、一瞬。

ジレンの思考に僅かな停止時間が起きたかと思えば、目の前にいたサイヤ人はジレンの前から姿を消し。

先程まであった嫌な威圧感は消えていた。

 

「………小賢しい奴だ。第7宇宙の奴め」

 

自らの戦士としてのプライドが傷ついた事と、折角追い詰めたサイヤ人を仕留められなかった事における自分の怒りで流石のジレンも怒りを隠す事は出来なかったようで、半ば八つ当たりのように地面を陥没させ直ぐさま遠くから感じ取れた悟空の僅かな気を察知し、今度こそ回復も何もさせずに纏めて武舞台から引きずり落とさんとジレンは地面をかけるのだった。

 

 

♠︎

 

一方、ジレンが鬼の形相で迫っている頃。

 

「いやー助かったぞ!」

 

「……ちっ!」

 

3人のサイヤ人は再び21号の元へと戻ってきており、悟空とベジータがアンドロイドチームからの治療を受けていた。

だが、既にターレスは協議の末に武舞台からの脱落を決意し時間稼ぎをする為に一番に今出来る最高の回復を施した上で既にジレンの元へと向かっている。

 

というのも、ターレスの超サイヤ人4には高濃度のブルーツ波とそれに伴って体内から創り出されるサイヤパワーが必須であり。

21号の頭脳をもってしても、サイヤパワーの生成は現時点では不可能と判断。

結果、ターレスはジレンと拮抗するという事自体が最早不可能でありターレス自身も絶え間ない疲労感は体力の回復だけでは拭えるものでは無いと確信した為捨て駒上等で己の意地を通しに行ったのだ。

それに着いて行く形で18号がサポート役として追従。

 

よって、今現在この場にいるのは悟空、ベジータ、21号、17号。

そして。

 

「さてと…そろそろ大詰めと行きましょうか」

 

「……うん」

 

3人を時間停止によって救出した張本人たるフリーザ、そしてそれより少し前に回収されたブロリーの6人である。

 

力の大会も残り僅かな時間となった今、下手に逃げ隠れの一手を打ったところでそれを成す力もジレンから言わせれば些細なものでしかない事を身勝手の極意の悟空との戦闘から推測したフリーザはそう結論づける。

 

もっといえば、そんなぬるい手を打つのは戦闘本能剥き出しのサルであるサイヤ人には到底肯定できる物ではないし、ここで仲間割れでもしてしまえば敗北及び消滅するのは自身だ。

 

ならば最速かつ最短の強襲をもって一気に決着を付けるというお粗末にも作戦とはいえない代物を提案するのは本意では無いにしろそうせざるを得ない状況ということには違いなかった。

 

ここにいるのがサイヤ人ではなく、ギニュー隊長やスラッグ、メタル戦士であればこんな無駄な事に頭を回す必要も無かったのだが…そこまで考え、無駄だと断じフリーザは思考を切り替える。

 

この選択にしたのは他ならぬ自身。更にその彼らは別件に回した以上今使える駒で確実な勝利を目指すだけ。

 

ただ、この提案するのに際してフリーザが歯痒かった事が1つ。

 

 

端的にいってしまえばサル嫌いは何があっても治らなかった、という事である。

 

 

♦︎

 

倒れ臥す2人を見つめ、躊躇なく場外に叩き落とせば再度思考が止まった感覚と自分の肉体に痛みが走る。

 

「………っ」

 

殴られた打点から恐らくいるであろう場所を推測し、そこを睨み付ける。

立っていたのは自分を見つめ嗤う小柄な人物、似たように嗤う女性、そして闘志を滾らせ唸り声をあげる大柄の男。

その中の小柄な人物を見たジレンは確信する。

こいつこそが、第七宇宙のいわばリーダー格であること。そしてこいつさえ打倒してしまえば第七宇宙は間違いなく瓦解すると。

 

ならばとジレンは即座にフリーザを打倒せんと、21号にもブロリーにも目を向ける事なく接近。

フリーザもまた時間停止にて回避、そして反撃を入れようとするが

 

「捉えたぞ・・・!」

 

なんとジレンがここにきて停止した時間を認知するに至る。

これにはフリーザも多少目を開くも、いずれ看破されたのが今だっただけと即座に解除。

迫るジレンの鉄拳を体を半回転させて回避し、両腕をジレンの前に突き出す。

 

そして、パァン!!と小気味の良い音をたてる。俗に言う猫だましだ。

 

そんなある意味突然の奇襲に怒り、そして数々の打撃を受けたことで研ぎ澄まされたジレンの意識と視線の全てその両手に向く。

そんな僅か0,1コンマにも満たない隙はこの超戦士にとっては致命的。

 

即座にフリーザが顎に膝、更に回転を加えた踵落としを頭頂部に打ち込みジレンは地面へと激突。

爆発するように砂埃が舞うがジレンの気でそれはすぐに消え失せ、それに乗じて挟み込むように追撃しようとした21号の加速をつけた蹴りとブロリーの剛腕を掴む。

 

「邪魔だ!」

 

そう言い、そのまま地面に叩きつけ、双方の体を勢いよくぶつけ合わせた後にその腕力で投げ飛ばす。

 

「かはっ・・!」

 

「ぐぅ・・!」

 

痛みに苦痛の声を漏らす2人に見向きもしないままジレンはすぐさまフリーザへと突貫。

 

それを21号は今にも飛び出しそうなブロリーを抑えながらもまるで悪戯が成功した子供のような顔で見ていた。

 

 

迫り来るジレンに拳を突き出す。ジレンはそれを受け止め流し、殴る。

それを両腕をクロスさせガードし、腕を掴んで背負い投げ。

しかし、宙に浮いたジレンは気を解放してそれを拒絶。逆に利用する形で空を蹴って鳩尾へと拳を突き刺す。

が、それを半歩下がり同時に気の膜で衝撃を緩和するも。

 

「ふんっ!」

 

ジレンは尻尾を踏みつけ、動きを制限。

剛腕から繰り出されるラッシュ全てをその顔面目がけて叩き込む!

 

尻尾を踏みつけられ衝撃も緩和できない状態で殴り続けられるが、ジレンがとどめの1発で気弾を放とうとした瞬間。

超能力で近くの地面をくり抜き、ジレンを挟み込む。

 

「ぬぐっ・・!小賢しい!!」

 

すぐさま砕き、懐へ潜り込んでボディブロー。

からの気の薙ぎ払いで、強制的にその圧力で停止させる。

 

「これで・・・終わりだぁぁぁぁぁ!!」

 

そして本気の気を拳に纏わせ、一閃。

込められた気は、懐で圧縮し爆発。気が体を吹き飛ばしていく。

 

やがて、解放された気は霧散しジレンは場外へ落とそうとして気付く。

 

(・・・違う!!これは奴では・・)

 

 

「その通りです」

 

声が聞こえたその瞬間、ジレンの視界がグニャリと曲がり周りを見渡せばさっきまで戦っていたはずのフリーザ。

そして、21号とブロリーが周りを囲んでいた。

 

同時に倒れている者もグニャリと曲がり、その姿がフロストであることがわかる。

 

「・・・何をした?」

 

「あなたの脳をほんの少しだけ弄らせていただきました。・・まあ、それも微々たるもの。

ですが、あなたという男の戦闘を観察するには丁度良かった。そして・・」

 

フリーザがジレンに向かって指を指す。

すると、ジレンは突然激しい疲労状態に陥る。

 

 

「っ・・・!?」

 

先ほどまでとはうって変わり夥しい程の発汗にジレンは戸惑いを隠せない。

 

だが、それに対しての疑問を思考する余裕を与える事なく前方からはゴールデン化したフリーザ。

左右からは21号とブロリーが迫る。

 

「くっ・・舐めるなぁ!!」

 

流石のジレンといえど乱れ続ける気を通常に戻すのは容易ではない。

しかし、その問題を無理矢理気を最大限に引き上げるという荒療治で強制的に上書きすることで解決。

 

前方と左右からの猛攻を神速を超えた打撃の嵐で逆に押し返し

その勢いで後退したその一歩を見逃す事なく、三方向同時に大量の気弾を速射。

フリーザは気弾を壁を張って反射するも即座にかき消され、その壁ごと拳が突き刺さる。

21号は時ずらしや一瞬だけの時とばしを使いわけ回避するも一瞬で背後に回られ脇腹を砕くような重い蹴りを受け吹っ飛ぶ。

ブロリーはバリアを張りながらそのまま突進。

フリーザ、21号が吹っ飛ぶ中彼はジレンに迫り、その顔を掴んでヘッドバット。

だがそれにひるむ事なくお返しといわんばかりにヘッドバットを繰り出し、仰け反ったブロリーの顔面を真っ直ぐ殴りとばす。

 

だが、すぐさま気弾の嵐がジレンを襲い当然叩き潰すが、瞬間ジレンの足元の地面が切り取られたように消失。

同時に強烈な重力がジレンにかかりジレンは高速で落下していく。

ジレンは、重力の魔術をかき消し空中に飛散する僅かなカッチン鋼のカケラを蹴って、武舞台に戻ろうとする。

 

だが

 

「オオオオオオオオ!!!」

 

ブロリーが壁を蹴って空高く浮かんでからジレンに向かって急降下。

ジレンを巻き込んで場外めがけて落下していく。

 

しかしここで幸運はジレンに微笑む。

近くに浮遊した岩場を見つけジレンは体を捻りながらブロリーごとそこへ激突。

 

「グゥゥゥゥ!!!」

 

頭から激突した事で完全に激昂し、理性を殆ど失ったブロリーはさっきとうって変わりその本能のままがむしゃらな攻撃を繰り返す。

重量級の2人の激突を受け、少しずつではあるがヒビが入り始めている地面を確認したジレンはそんな獣の剛腕を受け流す。

同時に気弾を胴体にめり込ませ爆破。更に仰け反ったブロリーの顎を踵で蹴りぬいて脳を揺らす。

焦点がズレ始め意識朦朧とし始めたブロリーだったがその蹴りがむしろプラスに働いたのかその目はジレンを正確に捉える。

そして蹴られた足を掴んで引っ張りあげ

 

「しまっ・・」

 

そのまま、4度叩きつけ上に放り投げてから頭を掴んで跳躍。

再び地面へと叩きつけトドメに口を開き全力の光線を放たんとする。

 

だが、ジレンはあえて岩場を気で破壊。

これにより手足が自由となったため爆発波で強引に手を引き剥がし

空中で暴れるブロリーを足場として跳躍。

 

「グォォォォォォ!?」

 

その勢いでブロリーは脱落。

ジレンは武舞台への復帰に成功するのだった。

 

 

岩場での戦闘を遠視で把握していたフリーザ、21号両名は即座に作戦を次段階へと移行。

武舞台へと着地したジレンの前へと立つ。

 

「おや、随分とお疲れのようですね?そろそろ立っているのも辛いのでは?」

 

そう言うフリーザの目には見た目はそれほど大きな違いは無いが気の乱れは尋常ではないほどに荒ぶっているジレンの姿が映っている。

それもそのはず。

ブロリーからの猛攻の最中もジレンへの干渉は続いており内外の気の調整に集中を取られていた。

そこに先程の攻撃によって決して無視できないダメージが加わり、一瞬だけ気が減衰した事により更にその負担が増えていた。

 

 

「・・それがどうした」

 

とはいえ、肉体的ダメージはそこそこでまだまだ余裕が残るジレン。

猛火を滾らせフリーザへと迫る。

 

 

「お気づきではない?あなたからは先程のような絶対的な力は全く感じません」

 

「・・何が言いたい」

 

「あなたは敗北するということです。・・この私達にね!」

 

破壊の力を覚醒させそう宣言した瞬間、ジレンの顔があからさまな憤怒となり勢いよくフリーザへと突撃する。

 

「あらあら・・単純脳なのね!」

 

ジレンの拳を受け止めたフリーザを尻目に21号は3人に分身。

1人をフリーザのサポートへ、残りの2人は隅に散開し光線の結界を展開。

ジレンの行動範囲を限定させ最高の牢獄へと閉じ込める。

 

その中でフリーザ親子の鮮やかな連携を的確に捌きながらも、結界から放たれる無数の気弾を躱していくジレン。

どんどん手数が増え、手段が増えていく親子の連携は悪質を極め幾多の悪党を退治したジレンですら思わず目を剥くほど。

拳を捌けば、死角から蹴りが飛び。

気弾は避けても異空間の裂け目がそれを回収し一面を覆う程の嵐が襲う。

 

極めつけには21号の不死身という性質を使い、羽交い締めからの自爆や彼女ごと巻き込んだ殺傷性の高い一撃。

更にはフリーザごと地面を破壊したり、破壊のエネルギーを精密操作し気弾を一切無効化するなど。

不死身と破壊の理不尽の権化コンビは一手づつ、しかし確実にジレンを追い詰めていく。

 

強者たる余裕は既に消え、あらゆる手を全力で潰さざるを得ないジレンは疲弊していく中でこんな考えがよぎる。

 

“もしかしたら、自分は負けるのではないか”

 

それを考えたその瞬間、ジレンにはある記憶が蘇る。

 

今なお尊敬する師の死。

弱さ故に離れていったかつての同志。

 

ジレンの強さの裏にはいつだって悪と敗北があった。

 

敗北は全てを失い、悪は全てを奪っていく。

 

強き者なら認め、それを打ち砕く。

悪ならば、その矜持を打ち砕いて正義を示す。

それを行える『強さ』だけが全てを亡くしたジレンの最後の拠り所だった。

 

しかしどうだ?

 

正義はまさに悪に敗れて折れそうになり。

強さという防波堤もまた挫かれ、脳裏には敗北が浮かんだ。

 

「・・・ふざけるな・・!」

 

追い詰められその敗北というトラウマが刺激されたジレンはナニカが切れた。

凄まじい気の嵐がジレンを包み、無意識下に眠っていた力を呼び覚ます。

 

「はあああああああ!!!!!」

 

その余波で結界は消失。

あたり一帯は火の海となり上半身があらわとなり鬼神と化したジレンがゆっくりと迫る。

 

フリーザはここで初めて冷や汗を流す。

ここまでは良い。

だが、ここから先は全くの未知数だ。

 

あのサル共がさっさと決めてくれなければ・・

 

こちらはいつ落ちてもおかしくはないのだ。

 

 

先程とは違い今度はジレンに戦いの天秤が傾く。

何でも利用してようやく優位に立っていたのにそれが一切無駄になっては更にだ。

 

拳と拳がぶつかり合い拮抗するも

 

「俺はどんなことがあっても絶対に・・負けん!!」

 

「ぐぁ・・!?」

 

力の差が出た以上、ジレンがあらゆるものを上回る。

それは気弾さえも例外では無く、ジレンの気弾は既にフリーザでは破壊しきれない程。

放たれた気弾を回避しながら、手加減の余裕もないと完全に殺しにいくフリーザと21号だったが。

 

 

「っ・・!?」

 

ここにきてフリーザは時間切れを起こし、破壊神化が解け体力が大幅に低下。

同時に21号もまた考えつく限りの策を出しきってしまう。

 

「はぁ・・はぁ・・」

 

「・・終わりだ」

 

ジレンがフリーザとそれを庇いながら回復に気を渡す21号の前に立つ。

 

だが、それでもフリーザは笑っていた。

 

 

「えぇ・・終わりですよ・・」

 

 

 

・・前座はね。

 

 

その瞬間、ジレンは咄嗟にガード。

流星の如く繰り出された拳を受けた衝撃で後方に大きく飛ばされるもその目はしっかりと最後の敵を見つめていた。

 

 

「・・何者だ」

 

 

 

 

「俺はきさまを倒す者だ!!」

 

 

 

宇宙の生き残りをかけた最後の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナーはお休み。
次回やります。

ここまで遅れた事を謝罪し、次回はもっと早く投稿出来るよう頑張ります。

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