ドラゴンボールF   作:月日火

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蒼紅決着

「んじゃあまぁ・・いっちょいくぜ!」

 

「今さら何をしようが俺は負けん!!誰にもだっ!!」

 

瞬間、紅蓮に燃える赤と蒼炎に煌く蒼とが空でぶつかり合い火花を散らす。

繰り出される攻撃は徐々に熱く、鋭く、そして進化していく。

 

ジレンの燃え盛る剛腕がゴジータを殴り抜ければ、負けじとゴジータもアッパーを顎に叩き込む。

が、これは大した一撃にはならなかったのかすかさずジレンが一撃。

だが、ゴジータは拳の起動を鮮やかに逸らし懐へ入って肘打ち。

からの渾身の横蹴りをジレンの頬へと直撃させ叩き落とす!

 

「はああああ・・・!!ずうぇりやぁぁぁぁ!!」

 

更に追撃の流星群にも勝る気弾の嵐を天高くから発射。

 

「おおおおお!!!」

 

ジレンはこれを全て拳で撃ち落とし、ゴジータへ肉薄。

再び2人は落下しながらの拳のぶつけ合いへと突入。

目に止まらぬ攻防の中、ジレンがゴジータの攻撃を強引に薙ぎ払う。

 

「しまっ・・」

 

弾かれたゴジータは大きな隙を晒してしまいその土手っ腹に乱打の嵐をもろに喰らい

顎を下から殴り抜かれ、更に脳天へと回転を加えた踵落としを受けて地面へと激突する。

 

すぐさま受け身をとるが上空ではジレンが既に高出力のエネルギー波を発射。

回避は不可能と判断し、こちらもかめはめ波で対抗する。

 

「ぐうううう!!」

 

「ぬああああ!!」

 

だが、ジレンの業火はゴジータのかめはめ波すらその圧倒的な力でもって押し通る。

 

「終わりだ!!」

 

そう言ってジレンが拳を握ればかめはめ波は霧散。

ジレンのエネルギー波はゴジータを巻きこんで地面へと着弾。

辺り一面全てを更地にする程の大爆発を引き起こす。

 

が、ゴジータはその起爆を逆に利用。

岩場に着地したジレンに奇襲を仕掛けるもギリギリの所でジレンが回避。

その回避を先読みした蹴りはジレンも同時に繰り出した蹴りと相殺して弾かれる。

だが両者が離れたのは一瞬で直ぐに接近手四つをもって拮抗する。

 

「・・どうやって俺の攻撃から逃れた・・!!」

 

「種明かしをしてやろうか?」

 

「戯言をっ!!!」

 

挑発するゴジータに激昂したジレンだったが、膝打ちが腹に炸裂。

後方に一歩大きく下がる事で衝撃を緩和し先程よりも更に威力を増したエネルギー波を放つ。

 

「ふん!」

 

しかし、ゴジータは前方に気のヴェールを張りこれを反射。

ジレンがそれを叩き落とし爆風が舞った瞬間

高速で回転し威力の増したゴジータの回し蹴りがジレンの顔面ど真ん中へと炸裂。

 

乱立した宙にある岩場をいくつも破壊し地面を抉り抜きながら激突。

直ぐさま起き上がるジレンに対しゴジータは両手に高密度の気弾を携え猛スピードで接近する。

 

「ぬぅぅぅぅ・・!!おおおおおお!!」

 

ジレンはそれを数多の気弾で応戦するが、ゴジータは最低限の動きだけで全て躱し

 

「ぐぉ!!??」

 

接近したその瞬間に不可視の乱打で背後へ

更に後頭部に横蹴りを二発。振り向いた瞬間に顎を蹴り上げ脳を揺らす。

 

ジレンはよろめき体勢を立て直そうとするが、それをさせじと二発の気弾が直撃。

 

「はぁぁぁ・・!!だだだだだだだだだっ!!」

 

それを好機とみたのかゴジータは畳みかけるように気弾を乱射。

その全てがジレンへと着弾し起爆。

そして、右手へ虹に輝く気弾を収縮させ投げつける!!

 

「ぐがぁぁぁぁぁ!!???」

 

その凄まじい威力にジレンは絶叫。

虹の軌跡が煌く爆発にその身体を晒す事となった。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・くはっ・・!」

 

爆風が晴れ、全身が焼けボロボロなジレンが姿を現す。

明らかに肩で息をしているその姿には先ほどまでの覇気はなく

そして疲れとダメージが大きいのかジレンは自らの身体を支え切れずに膝をついた。

 

そう、膝をついた。

それはこの大会で無双の力を誇ったジレンの限界が遂にきたという事。

第7宇宙の戦士というこの大会でも屈指の強さの相手を前にしてもなお最強を示したジレン。

 

だが、幾多のダメージや疲労、精神的ダメージが重なりゴジータの一撃がトドメとなって

遂に無敵の城は瓦解した。

 

つまり。

 

「・・・・・」

 

強さを信じてきたジレンの心もまた瓦解したのだ。

 

♠︎

 

「おやおや・・これはそろそろ決着ですかね?意外にも呆気ない幕切れでしたよ」

 

「ま、あれだけやられてれば当然ね。むしろ良くやったほうよあのゴリラ」

 

一方、体力もそこそこに回復し破壊神化は無理だがゴールデン化ぐらいならば出来るようになったフリーザと

自身のダメージを分身に肩代わりさせる事で全快した21号は戦いの場から一歩離れた岩壁から戦いの様子を眺めていた。

 

「・・終わったぞ」

 

そんな彼らの下に別件を終えた17号が合流する。

 

「おや、お疲れ様です。ですがこちらもそろそろ決着のようですよ」

 

「そうか・・まぁ、こっちが勝って何よりだ」

 

「ええ、全くです。それで?そちらはどうでしたか・・まぁあの席を見れば明白ですがね」

 

そう言ってフリーザが指差すのは観覧席。

そこには第7宇宙と第11宇宙だけが座り大分小さくなった席があった。

そう、17号の別件とはいわゆる生き残りの後始末だった。

人造人間たる彼にはこの舞台に立つ誰もが持つ気が存在していない

つまり、相手に気付かせる事無く武舞台から脱落させるという芸当が可能なのだ。

 

そんな初見殺しにも等しい行為に気付けるのはこの場においても一握り。

第7宇宙ではフリーザと21号。

他宇宙であればヒット、アニラーザ、そしてジレン辺りが該当するだろう。

逆を言えばそれ以外には対処はほぼ不可能。

更に最序盤でフリーザから受けた攻撃もあって他宇宙は全滅。

第7宇宙の戦士を除けば、残る敵はジレンただ1人となっていた。

 

そのジレンもこうして膝をついた以上、第7宇宙の勝利は確実。

現にベルモッドは項垂れ、ビルスは今にも小躍りしそうな雰囲気を隠そうともしていない。

そんな様子を17号は一目見て、僅かに顔を顰めて、そしてゆっくりと腰を下ろした。

この場が滅びをかけた生存競争だと分かった上で自分は参加したし、家族が守れたという事にも安堵しているのは事実。

故にこの感情に意味は無いと17号は結論し前を見る。

 

ゴジータがジレンへと近づき決着をつけようとしたその時。

 

 

「何をしている!!ジレン!!」

 

声が響く。

その声にジレンは反応する事は無くゆっくりと項垂れている。

 

「その情けない姿がお前の最期なのか!!?」

 

返事は無い。

ジレンの心は既に割れたガラス細工に等しい。

 

「今まで何の為にお前は全てを捨て力を磨いてきた!その磨かれた誇りは一体何処に置いてきたんだ!!」

 

僅かに指が動く。

だが、ジレンは動かない。

信じてきたものが砕かれたジレンはきっとこの場の誰よりも弱く、脆い。

 

「負けを確信し、自分が信じられなくなったか?・・オレもそうだ。

自分の正義の弱さを知り、オレはそれを切り捨ててしまった・・誇りを、捨ててしまった」

 

「だが!!」

 

 

「お前は違うだろうジレン!!」

 

瞼が僅かに開く。

 

「お前は強い!!何よりも!誰よりも!!お前が信じられずともオレは信じている・・最期まで!!」

 

「そうだ!お前は強い!!だから俺はお前に憧れ、強くなろうと努力した!!いつか、お前に仲間と認めて貰いたかったから!!」

 

別の声がジレンへ響く。

ディスポの声を皮切りにそれは更に増していく。

カーセラルがココットがクンシーが声をあげ、ジレンを鼓舞していく。

それら一つ一つが闇の底にあったジレンの心に少しづつ光を差していく。

 

弱者と切り捨て、蔑んできたはずの唯の仕事仲間だっただけの声。

裏切られたあの時から信じなくなった他人の声が、姿が今のジレンにはこれ以上に無いほど暖かい。

 

そして、今まで項垂れていたベルモッドも顔を上げる。

 

「頑張れっ!!ジレン!!」

 

破壊神の威厳もへったくれもない決死の表情で放った声。

それが、ジレンが閉じ籠もっていた最後の殻を木っ端微塵にぶっ壊した。

 

眼から一雫、涙が滴ったのがわかってジレンは笑う。

そして、最後の力を振り絞って立ち上がった。

 

もう、ひとりぼっちじゃない。そう信じられたから。

彼は彼のために・・こんな自分を信じてくれた者のために彼は再び立ち上がれた。

 

ジレンの眼前に立つゴジータはその顔を見て笑う。

そこに修羅はなく、ただの不敵に笑う戦士がいたからだ。

 

 

「・・・決着、つけようぜ」

 

「・・ああ!」

 

 

♠︎

 

「・・かぁぁぁ!!!」

 

「はぁぁぁ!!」

 

違いに突進し弾かれる2人。

だが互いに笑って再びぶつかり合い目にも止まらぬ攻防が始まる。

とはいえ、ジレンの体力はすでにギリギリであるため右ストレートを弾かれ

裏拳からの横蹴りで柱に激突する。

 

「くっ・・!」

 

柱に埋まり、痛みに苦しむジレン。

それを見逃さず、空中の岩場を高速にけって加速し飛び蹴りを繰り出す。

が、これを当身の応用でその勢いのままゴジータを受け止め

更にその一瞬で無数の乱打を叩き込み、裏拳で逆に柱へと叩きつけ更に膝撃ちでもっと凹ませた上で

ダブルスレッジハンマーで叩き落とす。

 

ゴジータは飛ばされる中で回転し、地面を引きずりながらも着地。

柱を蹴って急接近するジレンに合わせて気を解放。

 

「ぬぉぉぉぉ!!!」

 

「だぁぁぁ!!」

 

繰り出される互いの拳の衝撃は地面へと流され、大きな亀裂ができる。

ジレンは蹴りをガードさせ、その反動で距離を取る。

 

「ぬぅぅぅ・・・!かぁぁ!!」

 

そこから全力のエネルギー波を放出。

しかし、ゴジータはそれを滑るようにして接近、強烈な一撃をジレンへと叩き込む!!

 

「かっ・・」

 

更に蹴り上げ、膨大な気でジレンを固定。

 

「んんんんん・・・・!!かぁぁぁぁ!!!」

 

腕を交差させ、勢いよく開放。

すると浮いていたジレンの中央から特大の気が溢れ出し、蒼の柱となって爆発する。

ジレンは満身創痍になりながらも立ち上がるも僅かにふらつく。

 

「ぐぅぅぅぅ・・・!!ま、まだだ・・まだだぁぁ!!!」

 

紅蓮に燃えながら咆哮したジレンは残る気の全てを右手に収縮。

太陽さえも超越した熱さの気弾を生成する。

 

 

同時にゴジータもまた全ての気をかめはめ波へと乗せる。

 

「かめはめ・・・」

 

そして。

 

「オオオオオオオ!!!!」

 

ジレンはそれを全霊を込めて投擲。

 

「波ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ゴジータもまた全力のかめはめ波を放った。

 

2つの気功波はその場を焼き尽くしながら拮抗。

初めの内は執念からジレンが押すも

 

「ぐぐぐぐっ・・・・おおおおおお!!!」

 

「波ぁぁぁぁぁぁ!!」

 

やがて、蒼の光は紅蓮を焼き尽くしジレンはその光に包まれた。

 

(・・これが、第7宇宙の・・)

 

絆の力か・・

 

そう考えたのを最後にジレンは意識を失い武舞台から落下していった。

 

 

(またやろうぜ・・ジレン!)

 

 

「ジレンさん、脱落です」

 

そう大神官が宣言し、ここに力の大会は第7宇宙の勝利にて閉幕した。

 

 

♠︎

 

それからの事を簡潔に語ろう。

結果として最優秀賞を取ったフリーザであったが、超ドラゴンボールの使用を辞退。

 

「私は、大して興味もありませんのでご自由に」

 

ならばと、悟空がその権利を受け取り全宇宙の復活を願い

全ての人、宇宙は元通りへとなった。

 

悟空達は地球に戻って傷を癒し。

時には、互いに競い合ってその力を高めていく。

 

まさにみーんな幸せのハッピーエンドというやつだろう。

 

 

「まぁ、そんなものはありはしないのですがね」

 

 

力の大会から半年。

 

地球から、太陽が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・悟空
今度は一対一でジレンに挑みたいと願う戦士。
・・果たして願いは叶うのか。
合体に対しては割と寛容だった。
身勝手の極意が未完成に終わったため実力的には原作以下。

・ベジータ
まだまだ諦めないサイヤの王子。
実は魔人ブウ戦において件のNo. 1発言はしていない。
合体は最後まで渋った。
が、ブルマやトランクスのために泣く泣く決断した。
後、既に一回合体していてそんなに拒否感がなかった事も原因の1つだろう。


・人造人間17号
セルジュニアを狩れる、子持ちの一般人。
実は後始末の際、無傷で全員叩き落とした猛者でもある。
力の大会後ブルマから世界一周旅行のチケットを貰い家族サービスを達成。
お前のような一般人がいるか。


・ジレン
恐らく、今作において1番精神的に成長した枠。
第7宇宙をたったひとりで壊滅寸前まで追い込んだ。
因みに、一歩間違えれば逆転勝利もあり得た。
意図せずして師の願いを叶えた。


・人造人間21号
真のmvp。
恐らく21号のサポートが無ければ何回も全滅していただろう。
ヒット、ジレンとの戦いで細胞の活性化を果たし更に成長した。

・ブロリー
あの後、農場に帰りチライ、レモ、バアからの抱擁を受ける。
大猿の力を完璧にコントロールする事に成功し今では惑星の殆どを農場と化した。
家族は嬉しい悲鳴をあげている模様。
今作はこれでクランクアップです。

・フリーザ
ジレンとの戦いでさらに成長。
破壊神の力のさらなる発展、発掘、成長を遂げ
遂に・・・。



次回から最終章です。



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