ドラゴンボールF   作:月日火

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「F」

 

 ーー時はフリーザ軍が地球へと侵略を開始する少し前に遡る。

 

 力の大会後、更なる成長の可能性を感じ、そしていつか来るであろう新たな強敵に対抗するために

悟空とベジータは今日とてビルスの星を訪れウイスの師事の元で修行におよんでいた。

 

「だだだだ!」

 

「ふん!」

 

そんな彼らは今組み手の真っ最中。

悟空は力の大会で引き出した身勝手の極意を再び出すために。

ベジータは独自の進化の更なる向上を目指して。

 

悟空のラッシュをベジータは裏拳で弾いて懐へ潜り込んでボディブロー。

それを悟空は膝で防いで防御し気弾を生成し即座に起爆、バックステップで距離を取る。

爆風が晴れた先には無傷のベジータが立っており、それを見てさらに闘志を高める。

 

「へへ・・やっぱベジータとの勝負はワクワクすんなぁ・・」

 

「ふん・・そう思うんだったらさっさと身勝手の極意を完成させるんだな・・」

 

ベジータの姿はブルーを進化させた状態となっており

更に彼は既にこの状態を自由に維持できる事から現在戦力的にはベジータが悟空を上回っている状態。

そういう事もありベジータは多少の余裕を持って戦っていた。

 

悟空もまた、ベジータとの間にできた僅かな差を理解しそれを埋めるため

チチから頼まれた農業をスルーして修行に明け暮れていたのだった。

 

だが、そんな一時も一瞬で崩れ去る。

 

「っ・・!?な、なんだこの気は・・!?」

 

「こ・・これって・・!?」

 

突如として、激しい気の重圧が2人の体にのしかかる。

気の荒ぶりとぶつかり合いは徐々に増え続け遂には。

 

「これは・・ピッコロ・・!?どうしてピッコロの気がどんどん小さくなってんだ・・!?」

 

「これは・・ま、まさか!?」

 

感じられる気が多すぎるせいで探知能力が混乱しているが

悟空はピッコロの気が小さくなっていく気配を感じ

ベジータはトランクス・・ではなくフュージョンしたゴテンクスかつその気がどんどん減っていく事に最悪の想像が脳裏に浮上する。

 

「カカロット!貴様が1番今探知できる気はなんだ!!」

 

「ベジータ・・?何を・・?」

 

「いいからさっさとしやがれっ!!」

 

ベジータは声を荒げ、悟空はそのただならぬ気迫に圧倒され即座に気を探し始める。

そして、悟空は今正に気が跳ね上がった気を探知する。

 

「あった!これは悟飯の気だ!」

 

「なら急げ!!さっさと俺を連れて瞬間移動しやがれ!!早くしろっ!!間に合わなくても知らんぞーー!!」

 

「わかった!!ベジータ!オラに捕まれっ!」

 

悟空がそう言い、ベジータは悟空の肩に手を乗せたのを確認してから悟空は瞬間移動。

その場には遠くから観察していた破壊神と天使だけが存在していた。

 

「ふむ・・ビルス様。この勝負どう見ます?」

 

「さぁね・・けどまぁ、どっちが勝っても・・」

 

「なんです?」

 

「僕の遊び相手が減るのは・・少し残念かな」

 

「・・そうですねぇ。私も貴重な次の破壊神候補が減るのは残念です」

 

「おい」

 

 

♠︎

 

 10億の白銀が空を覆い尽くす。

ソレらはやがて散開し、未だ存在する戦士達のもとへ降り立つ。

 

「これは・・どうなってるんだい」

 

「来るぞ18号!」

 

「やれやれ・・こんな老いぼれを狙ってどうすんじゃ全く・・」

 

カメハウスに。

 

「全く・・随分な量の客だ。子どもが目を痛めたらどうする」

 

自然保護区に。

フリーザ軍に仇なす戦力となりうる存在のもとにその戦士達は降り立っていく。

 

しかし、唯一そのメタル戦士が降り立たない場所があった。

 

「私が思うに、あなたはいつも何か1つ足りていないんですよ」

 

「あああああ!!!」

 

そこは、地球内で最も気が高まっている場所。

フリーザがウォーミングアップと称して悟飯と戦っている戦闘地である。

 

フリーザは片手で悟飯のラッシュを捌きながら、ゆっくりとしかし確実に耳へ届く大きさで説明を始める。

 

「ベジータさん、セルさん、魔人ブウそして・・私」

 

「そのいずれにおいてもその欠如があなたの決定的な弱点になっている・・理解していますか?」

 

「だりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

悟飯の回し蹴りをフリーザは眼力で念力を発動させ停止。

悟飯がいくら気を開放して力を込めようとも足も体もフリーザの顔面近くから少しも動きはしない。

 

「ぐぎぎぎぎ・・・!フリーザァ!!!」

 

悟飯は激昂するもフリーザは涼しい顔で受け流す。

 

「覚悟、慢心せずいる器、注意力。そして・・」

 

フリーザはそのまま、手刀で悟飯の心臓を貫く。

 

「力量」

 

「ご・・ごはぁぁぁぁん!!」

 

そして、その有様を悟空が認識し絶叫したのはほぼ同時であった。

 

悟空の姿を確認したフリーザは薄らと笑う。

そうして悟飯から手刀を引き抜いて蹴り飛ばし

悟飯はそのままかつてセルゲームの会場があった大草原へと激突していく。

 

「おや、お二人方随分と遅いご到着で」

 

「だまれ!!」

 

悟空は悟飯のもとに向かい、ベジータはそのままフリーザへと殴り込む。

だがそれを片手で受け止めてフリーザは笑みを深くする。

 

「おや、随分と血気盛んですねぇ」

 

「今さら地球に何のようだ!!」

 

「決まっているでしょう・・侵略です。むしろそれ以外の何があるというのです?」

 

そう煽れば、ベジータは即座にブルーに変身しその気の圧でフリーザの手は弾かれる。

が、それを利用して腕を横薙ぎに振って周囲一帯を爆破。

ベジータは後方に退避するもその瞬間に結界が発動。

 

「なっ・・!?」

 

更にベジータの後ろには謎のゲートが出現。

べジータは結界ごとそれに飲み込まれていく。

フリーザはそれを悪辣な笑みで見送る。

 

「随分やる気なベジータさんには申し訳ないのですが・・私、あなたには興味無いんですよねぇ」

 

「く、くそったれぇぇぇぇ!!」

 

ベジータは何度も結界を破ろうとするも結局は無駄に終わり

 

「はぁ〜い、それじゃあ一名様地獄へご案内〜!」

 

という21号の声を最後にゲートは閉じた。

 

それを見届けたフリーザはゆっくりと地上へ降り立ち悟空に歩み寄る。

悟空の目線の先には既に息絶えた悟飯が倒れ伏しており、悟空からは尋常ではない程の怒りの気が放たれている。

 

「フリーザ・・おめぇ・・!!」

 

悟空は立ち上がり背後に立つフリーザを睨む。

が、それを意に解す事も無くフリーザは指を2本立て衝撃の事実を告げる。

 

「・・この数字が分かりますか?」

 

「・・・」

 

「後2人・・それが今この地球にいる地球人の数です。

そして、貴方をここでぶっ殺せば晴れてこの宇宙の支配はこのフリーザの物になる」

 

「・・おめぇは本当にどうしようもねぇ奴だ・・!おめぇはオラの大事なもんを全部奪っちまった

・・おめぇだけは・・絶対に、絶対に許さねぇ!!」

 

悟空はブルーに変身、そして界王拳も限界の20倍まで引き上げ激昂する。

 

「オレはおこったぞーーーッ!!フリーザーーーーーッ!!」

 

悟空の生涯最大の怒りを真っ正面から受けながらもフリーザは不敵に笑ってゴールデン化。

同時に加速し

 

「だりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「おおおおおお!!」

 

全力の右ストレートが両者に突き刺さる。

その影響で空が大きく割れたのを合図として決戦が始まった。

 

拳が突き刺さった両者は僅かによろめくも直ぐに立て直し次の攻防へ移る。

一瞬立て直すのが早かったフリーザが先制し右の拳で殴り抜こうとする。

悟空はそれを僅かに首をそらして回避し右肘の横薙ぎ。

しかしフリーザは頭を下げて躱し、起き上がりに左肘からの右アッパー。

これを体の重心を後方にする事で回避。

フリーザのボディがガラ空きになった所に左ブローを差し込むがこれは受け止められる。

 

「ふん!」

 

そしてその拳を引っ張られる事で当然悟空の体も引っ張られる。

それに合わせてフリーザは頭突き。

その衝撃で悟空が仰け反った瞬間、顔面に右拳が突き刺さって悟空は大きく吹き飛ばされる。

 

「はぁぁぁ!!」

 

悟空は回転して地面へ着地。

着地した衝撃を使って加速し、一瞬フリーザの目の前に来たと見せかけてから後ろへ回り込む。

そして横薙ぎの蹴りを放つもそれは読んでいたといわんばかりに裏拳で受け止められ。

更には裏拳に込められていたサイコキネシスで悟空の体は痺れてしまう。

 

「ぐぎぎぎぎ・・・!!!」

 

「おやどうしました?・・そんなところで立ち止まって!!」

 

フリーザは横回転しながらシッポで悟空の皮膚だけを鞭打という技術で三度抉ってから弾き飛ばし

吹っ飛んでいったところを瞬間移動で先回りして顔面に裏拳。

悟空はそれに耐えて反撃しようとするも振り向きざまに躱されて上空に蹴り上げられる。

 

「くっ!!」

 

悟空は上空で停止し、追撃のため上昇してきたフリーザを迎え撃つ。

 

「キィェェェェ!!」

 

迫り来るフリーザの肘打ちをガード。

右ストレートを繰り出すも目から放たれた怪光線を避けるため咄嗟に拳を引く。

が、それが隙を呼び逆に右ストレートを頬に受けて仰反る。

そのまま無防備になった腕を掴まれて地面に向かって背負い投げされる。

 

悟空はその勢いを殺し切れずに地面に激突。

しかし、すぐ様起き上がってフリーザへ接近した。

 

そこから起こるのは音速を超えた攻防。

あらゆる手、あらゆる手段を使って繰り広げられるソレは例えるなら色のない花火。

強さ故に本来見えるはずもない衝撃波は可視化し、しかもその余波で地面は崩れ去って海は先程からずっと裂けっぱなしだ。

地球もまた、その戦いに恐怖を感じているのだろう。

振動は戦いの激しさを増す毎に振動が大きくなっていっている。

 

だが、その激しさの一方で傷を増していくのは悟空ばかり。

対するフリーザは先程からずっと浮かべている笑みを一切崩さないまま攻撃の全てを無傷で捌き切っている。

 

「ふん!!」

 

ならば、この攻防を制するのもやはりフリーザ。

悟空は攻撃の僅かな悪手を読まれてしまい腹に膝がめり込む。

 

「がぁ!!?」

 

更にフリーザが繰り出したダブルスレッジハンマーを背中に喰らい悟空は再び地面へと激突する。

悟空は起き上がるもその瞬間、気で作りだされた鎖が地面から飛び出し悟空の体を縛りあげる。

 

「ぐ・・ぎ・・なっ・・!?」

 

悟空はなんとか引きちぎろうとするも外れない。

しかも、悟空の周囲には異常な程の気が収縮しつつあり。

 

そして。

 

「ばっ!!!」

 

フリーザがあげたその声によってその気は膨張、大爆発を引き起こした。

 

 

♠︎

 

フリーザはその爆心地を静かに見つめ

 

「・・キェッ!!」

 

その爆風に向かって、かつてメタルクウラを切り裂いた時と同じ技で斬りつけた。

だが、斬り裂かれ晴れたその場所に悟空はおらず。

代わりにフリーザの上空から気弾の嵐が降り注ぐ。

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」

 

「・・・・」

 

フリーザは上を静かを見上げ、バリアを展開。

その全てを防ぎ切りながらそのまま上空に向かって突進する。

 

「なっ・・!」

 

その勢いのまま悟空の更に上で停止。

 

「はぁぁぁ・・・!ふん!!」

 

片手で超特大の気弾を生成し発射する。

悟空もかめはめ波で応戦するも。

 

「ぐぐぐ・・・!」

 

「どうしたのかな?まさかその程度じゃないだろう?孫悟空!!」

 

フリーザが気の出力を更に上げれば、悟空のかめはめ波は徐々に押され。

 

「そらぁ!!」

 

もう1段階気を上げれば、かめはめ波は霧散し悟空はその気弾に飲み込まれていく。

 

「うわぁぁぁぁ!!!??」

 

それを確認してからフリーザは掌を握る。

するとそれは悟空を中心として圧縮。

 

「今度は・・死ぬかもね」

 

そのまま、もう片方の気弾で爆破されて射出され

地面を削りとりながらそれは進んでいき、海に到達してからそれは爆発した。

 

フリーザは今度は海を歩きながら、爆風が晴れた先を確認する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・!!くっ・・!」

 

そこには何処か体が焦げ付いたのか煙を発し、着ていた胴着がボロボロとなった悟空がいた。

姿を見る限りブルーは維持しているものの、界王拳に関しては既に解除されており

その反動からか、悟空の息は大分荒いものとなっていた。

 

フリーザはその様子を見て嗤い、更なる絶望を与えようと悟空に対し最悪の事実を告げる。

 

「おやおや・・私はまだ半分の力も出していないのにその体たらくとは・・戦闘民族が聞いて呆れます」

 

「・・へへ、冗談きついぜ・・」

 

「冗談かどうかは貴方が1番よくわかっているはずでしょう?」

 

悟空はその事実に唖然とし、同時に今のままでは絶対にフリーザには勝てないと確信した。

 

(・・けど、こいつだけにはぜってぇ勝たなきゃなんねぇ・・!)

 

だが、フリーザに対する怒りと本能からなる闘志が悟空を奮い立たせある決断をする。

 

(・・この技はオラがあの世で使ってそれっきり・・けど、オラがフリーザに勝つにはこれしかねぇ!!)

 

「体もってくれよっ!!100倍界王拳ーーーーッ!!!」

 

悟空はかつてあの世で試し、そしてその危険度故に封印していた博打としかいえない己の限界を遥かに超えた100倍界王拳を発動。

その危険度は尋常ではなく、神の気を完全に制御出来るようになったブルーですらその影響は果てしなく大きい。

今にも体がはち切れそうな状態の中、悟空はフリーザへと迫る。

 

「だりゃぁ!!!」

 

その拳はフリーザが咄嗟に貼ったバリアを容易く砕き散らし、その頬に深く突き刺さる。

 

「うぐっ!!?」

 

「あああああ!!!」

 

吹き飛んだフリーザが体勢を立て直す暇すら与えずに後ろに回り込んで、三段蹴り。

からの蹴り上げで上空へ一気に吹っ飛ばし、フリーザの体は大気圏へつっこんでいく。

 

「か・・め・・は・・め・・!!」

 

が、ぎりぎりで停止したフリーザ。

だが、既に悟空の最高の一撃は用意済み。

 

「・・」

 

「波ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

フリーザが停止したその瞬間に放たれたかめはめ波。

体の負担を一切度外視し、かつ完成したブルーの気から放たれたその一撃を。

 

「かぁぁぁ!!」

 

フリーザはなんと片手で受けとめ、そして。

 

「破壊!」

 

破壊のエネルギーでもって、木っ端微塵に消し飛ばした。

 

「はぁ・・・はぁ・・はは・・」

 

飛散するかめはめ波のエネルギーを見て乾いた笑いしか最早出すことのできない悟空。

 

けれど、確かにダメージはあった。

フリーザの片手には決して無視できない火傷の痕が出来ていたのだ。

決して重いとはいえない怪我ではあるがそれでも悟空のかめはめ波はしっかりとフリーザに効いていたのだ。

 

「ふむ・・今のは随分と効いた・・けどそれでは到底私には敵いません。

・・どうやら手品もここまでみたいですし・・完全なるとどめを刺してしまいましょうか!」

 

だが、フリーザは手の火傷だけに対し悟空は最早満身創痍。

100倍という異常な倍率は悟空の体を蝕み、今の悟空にははっきり言って鼻くそをほじる気力も残っていない。

 

しかし、忘れてはいないだろうか。

サイヤ人は・・そして孫悟空という人間は・・

 

こんな極限にこそ、壁を壊して先に進む男だということを。

 

フリーザの気弾が悟空の体に接触しそうになるその瞬間。

悟空の体がブレた。そしてそれを認識すると同時にフリーザの背後へと回りこんでいた。

 

「・・っ!!」

 

咄嗟にガードしたフリーザの腕には多数の打撲痕が同時に浮き出たと同時に衝撃を発生。

その威力は完全に別人の域であり、ここにきてようやくフリーザの額に一滴の汗が流れる。

 

「・・これが、そうですか・・」

 

フリーザが振り返ったその先には。

 

白銀の髪、そして白銀の気を纏いし孫悟空の姿。

 

 

ーー身勝手の極意。ここに極まれり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 紹介コーナー。

現時点における被害者。

・全地球人
・神さま(デンデ)
・カリン
・魔神ブウ

他多数。


今回のメインキャラ紹介は最終話終了時に。

番外編に関する要望を今話投稿後の活動報告に載せておきます。
よろしければそちらもご覧ください。
最終話まで・・あと()話。
最後まで頑張ります。

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