ドラゴンボールF   作:月日火

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限界を超えて

 

 身勝手の極意。それは破壊神ですら為し得なかった技の極地。

攻撃、防御を含めたあらゆる面において最適かつ最高の動きを無意識下に選択。

更にその極意すら極まり完成された今、その一撃一撃が致命の攻撃にまで昇華。

 

仮に神という次元があるとするならばその最高位に悟空はこの土壇場において到達したのだった。

 

「・・・」

 

その目には先程まであった怒りはなく、静かな闘志の炎だけがそこにはあった。

 

「・・・」

 

フリーザもその目とそれに伴って別次元にまで跳ね上がった気を感じとり

静かに破壊神の力を解放。

 

両者はその気を昂らせながらその時を待つ。

気の奔流は瞬く間に空は暗黒に包まれ地球史上例を見ない異常気象に陥る。

2人の足元にある海は激しく渦巻き、更にその中心からは気の熱によって蒸発し続けている。

 

「・・・!!」

 

先に仕掛けたのは悟空。

神速を超えたスピードでフリーザへと突撃。

その際につき出された拳をフリーザは破壊のエネルギーを操作して前方に集中。

無意識を逆に操ってズラしてみせる。

 

悟空はそのまま海を裂いてフリーザの背後で急停止して回し蹴り。

これはフリーザが同時に横蹴りを繰り出して相殺する。

フリーザは悟空の足をシッポで巻き取ろうとするがそれは回避され

ならばとシッポから破壊玉を発射。

が、これも最低限の動きで躱されて逆にシッポを掴まれる。

 

「ちぃ!!」

 

フリーザは破壊を纏わんとするも、そんな暇すら与えないと言わんばかりに超高速のジャイアントスイングで投げ飛ばされる。

勢いよく飛んでいくフリーザは自身の背後に反射板を展開。

既に回りこんでいた悟空の攻撃を防御すると同時に自らすらも反射して体勢を立て直し悟空へと急接近する。

そのまま追いかけてきた悟空と手四つの状態になって拮抗。

 

「・・・!!!」

 

「く・・く・・くぃ!!」

 

フリーザはその状態のまま悟空の体を力任せに回し心臓に向かって膝打ち。

これは手に受け止められるもこれはフェイント。

即座に膝から気の刃を出して悟空の手を貫通させる。

 

「ぐぎっ・・!」

 

だが悟空も負けじとフリーザの側頭部を横蹴り。

 

「ぐぉぉ!?」

 

フリーザは気の刃が引き抜かれて海へと激突するも破壊玉を一発発射。

悟空は容易に躱すも、それは狙い通り。

悟空が躱したその瞬間に自身と破壊玉の座標を入れ替える。

 

「なっ・・!」

 

悟空はすぐさま気付くも既に遅い。

ソマーソルトキックで叩き落とされ更に追撃の気弾をもろに喰らってしまい

悟空はそのまま地球のコアへ一直線・・

となる前に、フリーザがその向きを調整。

深海深くを突っ切りながら、荒野の岩場で激突して爆発した。

 

フリーザはそれを見届けてから瞬間移動。

既に悟空は起き上がっており、ダメージもそこそこにフリーザへと接近する。

 

フリーザは先程と同じように受け流そうとして。

 

「ぐふっ・・!?」

 

自らの失敗を悟った。

そのまま神速の攻撃は舞踊のように美しい流れを描いてフリーザを的確に抉っていく。

だが、それを大人しく受け続けるフリーザではない。

殴られた際によろけた足を利用して罠を設置。

即座に発動し、自身と悟空との間から破壊の槍を出現。

悟空の攻撃を強制中断させて自身は天高く上昇。

 

「調子に・・乗るなぁぁ!!」

 

フリーザは激昂し、四方八方から気弾を放出。

それら全てが悟空1人を殺すために追尾してくる。

悟空はそれを避ける、あるいは捌くなりの最適な行動を取りつつフリーザへ迫る。

 

「おまけだ!」

 

しかしフリーザは更に切断性が高い円状の気弾を三発悟空に向かって放り投げる。

追尾性があり切断力も高いそれは身勝手の悟空でさえも確実に追い詰めんと迫っていく。

悟空もそれを消滅あるいは逆にフリーザに当てんとするもそれを読まれるかのように数多く配置されている気弾がその行手を阻む。

数えるのも億劫になる程の数、その全てが孫悟空ただ1人をまるで意志を持ったように追い詰めていく。

 

「・・・」

 

悟空はその一つ一つに対し最適の一手を打つ。

が、その一手は次の瞬間にフリーザが看破し潰していく。

打って、潰し、打って、避ける。

 

そして悟空が数にして億を超える気弾を対処したその瞬間であった。

一発の気弾が悟空の腕を掠める。

するとそこを基点として暗黒空間が発生。

悟空の左腕を喰い潰す形で圧縮。

 

悟空がその事を目で認識する前に肉が引き千切られ

骨が砕けちる音を耳にし。

 

「・・・」

 

ーー静かに次の手を打つ。

 

ただ対処するだけでは先程の繰り返しになってしまうと判断した悟空の細胞。

 

「かぁぁぁ!!」

 

ならばと最適の行動を一度排除し、肉体の限界を凌駕する気の開放をもって全てをかき消した。

自身の攻撃がかき消され、一瞬目を見開いたフリーザではあったが悟空の左腕の状態を思い出しすぐに冷静を取り戻す。

そのまま、地面へと降り立ち冷酷に嗤ってみせる。

 

「おやおや・・惜しい」

 

フリーザはぐちゃぐちゃになった悟空の左腕を見ながら更に悟空を動揺させんと言葉を重ねる。

 

「その出血量、長くは持たないでしょうねぇ・・もって後3分ほどでしょうか?」

 

「・・それがどうした」

 

「これだからサルは・・ま、良いでしょう。ではもう1つだけ」

 

「もうあなた以外はいません・・流石にこの意味はわかるでしょう?」

 

「・・・」

 

悟空の心に乱れは無い。

だが、悟空の体はズシリと何かとてつもない重圧がのしかかったのを感じた。

多量の出血からくる血圧低下や疲労からではなくもっと別のナニカ。

 

だが、悟空はそれから無意識に目を逸らす。

更に体はそれから逃げるようにしてぶれる。

 

「む・・」

 

悟空の多重残像が一瞬にしてフリーザの周りを囲み突撃。

即座に本体の気を探り迎撃せんとするフリーザだったが

 

(探れなっ・・・!?)

 

それは叶わず全方位からの同時攻撃をモロに喰らってしまう。

 

「かはっ・・!ちぃぃぃ!!」

 

フリーザにしても決して無視できないダメージを受けて咄嗟に破壊のエネルギーを放出。

だが

 

「ふっ!!」

 

悟空はなんとフリーザと同じ破壊のエネルギーでそれを突破。

霧散したエネルギーに僅かに動揺したフリーザの水月に拳が突き刺さる。

 

「ごはぁ!?」

 

その勢いのまま吹き飛ばされ

海を水跳ねする石のように突き抜け

氷壁に激突する事で停止した。

 

「・・ぷっ!」

 

起き上がったフリーザは口の中に溜まっていた血を吐き出し

未だ痛みがひかぬ傷を考慮して破壊神化を解く。

 

「ごほっ!ごほっ!・・ちっ」

 

傷を触れば、数カ所の骨折が確認でき

フリーザはここにきて初めて命に関わる可能性のあった傷を負った。

つまりは動けば気のコントロールが大きく乱れ

破壊の力が制御できずに自滅する事は時間の問題。

 

故に解除したのだが

これで悟空との戦力差は完全に逆転してしまい

フリーザは自らの失態を悟った。

 

(・・使いすぎましたか)

 

フリーザは何も手を抜いてた訳ではない。

付け入る隙も先程までは一切与えてはいなかった。

 

だが、驕りはあった。

戦略には大きく幅があったはず。

だが、破壊という概念の便利性に依存した結果がこれだ。

フリーザが悟空に唯一勝っていたものは今台無しになった。

 

悟空が保有している性質上、もう破壊は使えない。

しかしまだ策はある。

 

フリーザは息を整える。

自らの純粋な力で神を超えるために。

 

 

一方で悟空は。

 

「づぅ・・!」

 

腕の切断面を気で焼き止血。

フリーザへ追撃せんとするも

 

「っ・・」

 

視界がブレ、その場に膝をつく。

だが直ぐに立ち上がり、フリーザへ迫る。

その時がゆっくりと自分に迫るのを感じながら。

 

 

♠︎

 

戦場は変われど戦いは終わらない。

 

迫る悟空を待ち構えていたフリーザは

予め用意していたものを展開する。

 

一手目。

 

操作の主導権を片手へ集中させ

事前に前方へ展開していた氷の槍を射出。

 

悟空はそれを避ける事無く全弾粉砕。

仕込んでおいた氷による体への氷結も気の熱で蒸発させ

発生した水蒸気を突っ切って間合いへ入り一閃。

 

が、その攻撃はフリーザに届く前に防壁によって弾かれ

僅かに距離が開く。

 

二手目。

 

もう片方の手で超能力を展開。

気で練り上げた糸を球状に変形させて発射。

当然全て弾かれ、地面に激突。

再び防壁へ悟空の神速の蹴りが炸裂。

二度も攻撃を受けた防壁は紙細工のように砕け散る。

 

更に悟空の攻撃は続く。

壁を蹴った勢いを利用して大きく後退。

近くの氷山を蹴って加速。

彗星を幻視する軌跡を起こしながら拳を突き刺さんとする。

 

しかし、三手目。

 

悟空の拳がフリーザの顔面に突き刺さらんとする瞬間

先程叩き落とされた糸の玉が炸裂。

 

地面から伸びてきて悟空の全身を拘束。

引きちぎらんとするその一瞬で悟空の腹に膝打ち。

流れるようにダブルスレッジハンマーで叩き落とし

 

「キェェェッ!!」

 

全力のエネルギー弾を連続で放つ。

 

落下する悟空は、糸を引きちぎりそのままフリーザへ接近。

エネルギー弾の雨を僅かな隙間を縫うように回避し

そのまま右頬を殴り抜ける。

 

「ぐがぁっ・・!?」

 

四手目。

 

吹き飛ぶフリーザは体勢を立て直し弓を形成。

矢を番え追ってくる悟空へ放つ。

が、悟空は不規則な動きで矢を避けフリーザの後方へ。

 

そのまま両足で蹴りあげようとするも

それを読んでいたフリーザは尻尾で両足を巻き取り

前方に一回転しながら投げ飛ばす。

 

悟空は地面に激突する寸前で回転。

地面を蹴って加速しようとするも。

 

五手目。

 

悟空の腰を何かが掴む。

咄嗟に振り払おうとし顔をみて驚愕する。

 

「・・・っ!?」

 

「ゴ・・ゴク・・ウ・・」

 

「はっちゃ・・?」

 

「ニゲ・・!」

 

そのひび割れた正体がかつての友人だと認識した瞬間。

 

 

ーーその場に爆音が響いた。

 

間髪入れずに六手目。

 

その爆風目掛けて、特大の気弾を投げ込む。

が、既に地面を蹴って加速した悟空はそれを弾き飛ばす。

気弾はそのまま地面へ着弾。

残っていた人造人間8号の残骸を巻き込んで爆発する。

 

加速し続ける悟空は僅かに顔を歪める。

だが、直ぐに表情は戻りそのままの勢いで接近。

喉元に迫る貫手を急停止からのけぞる事によって

指先が僅かに喉に触れるギリギリで回避。

手首を掴んで握り潰す。

 

「ぎぃぇ!?」

 

そのまま手首を弾き、無防備になった所で

顎目掛けて掌底。

 

「ッ……!!」

 

だが、そこで追撃を受けるフリーザではない。

のけぞった勢いのままサマーソルトキック。

悟空が回避した所で煙幕をはり視界を塞ぐ。

 

「……っ」

 

さらに蜃気楼を発生させ自らの姿を誤認。

そして真っ正面から跳び蹴りをかます。

悟空はそれを背後からの奇襲と誤認。

 

回避は失敗。

鋭い蹴りが悟空の鳩尾に突き刺さり

肋骨が数本折れる音が体内で響きながら悟空は吹き飛んでいく。

 

「がっ…!?」

 

地面を跳ねながらも手を地面に置き

引きずりながらもなんとか着地する。

 

その間にフリーザは砕けた手首を切断。

異空間から補肉剤を引っ張り出して腕に注入。

 

瞬く間に腕は再生。

最後の一手を打つ。

 

七手目。

 

先ずは瞬間移動で悟空の背後へ。

悟空が振り向き、反撃しようとしたその瞬間に時間停止。

 

「かぁ!!」

 

そのまま、心臓を貫手で抉ろうとする。

が、悟空の指先が僅かに動いたのを確認し

直ぐさま次のプランに変更。

時間停止の空間を悟空の半径1メートルだけにして空間を凍結。

再び悟空の動きが停止する。

 

そうした所で再び空間魔術で別空間と連結。

何処かに吹っ飛んでいた悟飯の死体を引っ張り出し

悟空の真っ正面に配置する。

 

そうして全ての工程を終了させたフリーザは

ゆっくりと気を充満させその時を待つ。

 

そうして数秒後。

凍結した空間はあっさりと粉砕され

再び悟空の拳が動き。

 

「……!!?」

 

そして止まる。

物言わぬ悟飯の体がふらりと悟空へよしかかり

悟空は咄嗟に抱きかかえる。

それは戦士として。

ではなく親としての本能が悟空の体を動かした。

 

そして、それすらも利用する外道がフリーザである。

 

指先に先程まで溜め込んでいた気を充填。

自身の全力のデスビームをもって悟飯もろとも悟空を撃ち抜いた。

 

「がっ……がぁぁぁぁ!!」

 

閃光が悟空の腹を貫く。

次に足、残った腕、胴体。

最後に脳天となったその時悟飯の首が僅かに傾く。

 

そのおかげで悟空は脳天の攻撃だけは何とか避ける事に成功。

だが、そのダメージは大きく悟空の体はそのままうつ伏せに倒れ込む。

 

悟空の隣には悟飯の死体が倒れ込み

悟空から流れる血が悟飯を紅くしていく。

 

「はぁ……はぁ…危なかった」

 

だが、フリーザもまた疲弊していた。

悟空とは違い気の消耗と研ぎ澄まされていた集中力が悟空が倒れたことによってぷつりと切れ、

追ってくる痛みにも相まって大量の汗と共に息を吐き出す。

 

実際の所フリーザもこの状況まで追い込むにはかなりの綱渡りだった。

もしも、悟空の消耗が自らの想定を下回っていたら。

もしも、悟空が記憶と違って甘ちゃんでは無かったら。

 

もしも、もしも、もしも。

 

そんな記憶頼りのフリーザらしからぬ博打の連続は何とか身を結んだらしい。

 

しかしフリーザはまだ気を緩めるわけにはいかなかった。

まだ悟空は死んでいない。

身勝手の極意が解除されていない以上油断は出来ない。

 

だが、自身も既に限界であるため

さっさと殺してしまおうと手をかざしたその時。

 

僅かに砂がぶつかり合う音をフリーザの耳が拾う。

 

「なっ…なんだと!?」

 

まだ死んでいないのも理解できる。

まだ立ち上がれるのも理解できる。

 

それは、孫悟空が孫悟空であるから。

フリーザの記憶には何度打ちのめされても立ち上がった主人公(ヒーロー)が確かに存在していた。

 

だが…だが!!

 

気が爆発的に増えるのだけは理解できない(・・・・・・・・・・)!!

 

動揺するフリーザを尻目に悟空は立ち上がった。

そして、悟空はその身に先程まであった何かが溶け合っていくのを感じた。

 

その正体は怒り。

神の領域に達した孫悟空でもなく

怒りによって覚醒するサイヤ人の孫悟空でもない。

 

地球で育ち。

多くの出会いと別れを繰り返した

仲間思いのただの孫悟空(ヒト)の怒りだった。

 

自分の星、自分の家族、そして自分の友。

それらを失った人としてならば当たり前の怒りが今神の御業すらも凌駕し

そして取り込んだのだ。

 

人間はいつしか神を超える。

 

幾多の人類が多くの研鑽と挫折の上で成し遂げたそれを。

孫悟空という男はたったひとりで成したのだった。

 

勿論そんな事をフリーザは知る由も無い。

フリーザは善人でなく、記憶の中でしか孫悟空を知らないからだ。

彼はずっと記憶の中の孫悟空を現実の孫悟空と混同して見ていた。

 

だから、フリーザには分からない。

 

悟空は咆哮する。

当たり前の怒りを力に変えて。

天国から微かに聞こえる仲間の声をも力にして。

 

「くたばれフリーザァァァァ!!!」

 

そして、悟空の姿が消える。

否、消えてはいない。

攻撃された。

 

フリーザが攻撃を攻撃と認識する前に悟空は攻撃を成立させていた。

 

「がはぁ!!?」

 

フリーザからしてみればいつの間にかに激痛が走って

氷壁に激突している。

 

さっきまで捕らえられた悟空の姿が全く見えない。

 

「ちぃぃ!!」

 

頼れるのは攻撃する一瞬だけ聞こえる風の音のみ。

その音だけを頼りに咄嗟に気合砲を放つ。

 

だが気づけばフリーザの腹には悟空の拳が突き刺さっている。

 

「ごぱぁ!!!?」

 

フリーザは突き刺さる腕を何とか掴み

そして悟空の顎を蹴り上げて吹き飛ばす。

 

そして、痛みで僅かに首を逸らした所で。

先程までフリーザの頭があった場所に悟空の蹴りが突き刺さる。

 

「!!!?」

 

ほぼ反射的に反撃しようするフリーザだが

その前に悟空の反対の足の踵に横面を抉られ地面を転がる。

 

「この…くたばりぞこないがぁ!!」

 

先程までの余裕そうな仮面は一気に崩され激昂するフリーザ。

しかし、その瞬間には肘打ちをくらって体勢を崩され

背中を蹴り上げられて空を舞う。

 

「ばっ!!」

 

気功波を撃って何とか急停止するも既にそこに悟空の姿は無い。

 

「はっ!!?」

 

フリーザは異常な気を感知し上を見るももう遅い。

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

悟空の全霊のかめはめ波は既に放たれ

奇跡的に出していた両手でそれを受ける。

 

「こんな…!!こんなもの……!!こ……!!」

 

更に危険性すらも度外視して破壊神化。

文字通りの決死の覚悟でそれを押し返そうとする。

しかし、その抵抗も虚しくフリーザはその閃光に飲み込まれる。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そのまま、かめはめ波ごと地面に激突し爆発。

 

その場にはゴールデン化すら解け

地面に倒れ伏すフリーザの姿だけがそこにあった。

 

「はっ……はっ…!」

 

フリーザは何とか立ち上がるもそのダメージから直ぐに膝をつく。

見るからに重傷ではあるものの

ギリギリの状態で何とかフリーザは生き残った。

地面に着弾する寸前、なんとか破壊のエネルギーを生成。

 

僅かにかめはめ波を破壊して何十にも重ねた防壁がフリーザを生かしたのだ。

だが、既にフリーザの気は僅か。

立っているのも限界だった。

 

悟空はその眼前に立ち、気を掌に集中させる。

 

「終わりだ、フリーザ」

 

「終わり…?このフリーザが終わりだと…!!

それはどうかな……!!」

 

だが、フリーザはその笑みを絶やさない。

そして彼も残された気で悟空の気功波ごと悟空は殺さんとする。

 

そして、悟空の気が放たれる…事はなかった。

 

「かっ……!!?」

 

悟空は突然糸が切れたように倒れる。

そのまま苦しみ、もがき。

 

やがて、小さな息を繰り返すだけとなった。

その姿は身勝手の極意の象徴たる銀髪ではなく、孫悟空としての黒髪に。

気で何とか押し止めていた出血もその気が無くなったせいで溢れるように流れ出てていた。

 

その血は悟空の命の砂時計。

これが流れなくなったその瞬間悟空は死ぬだろう。

 

フリーザはそんな悟空に近づく。

 

「全く、危なかったですよ。

ほんの一瞬とはいえこのフリーザも死を覚悟しました。本当に…」

 

そのまま無慈悲に、両足の骨と腱を切断。

 

「よくもやってくれたな…!!」

 

「このまま貴様がくたばるの待つのも良いがそれではこのフリーザの気が治らん…!!」

 

その怒りのまま今度は腕の骨を砕き、腱を切断する。

そして、天高く飛翔し気を込める。

 

「貴様は…貴様だけはこのオレの手によって!!死ななければならない!!」

 

そのまま地上の悟空に向けてその憤怒のままに全力の気功波を放つ。

 

「オレに・・殺されるべきなんだーーーーーっ!!!!」

 

その一撃は悟空へと迫る。

悟空は薄れゆく意識の中で認識するも立ち上がる力は既に無い。

 

ならばその力を悟空だけに限定しないならばどうなるのか。

 

『悟空さ!!』

 

悟空の脳裏に聞こえたのはチチの声。

 

続くように仲間たちの声が響き悟空に力を与える。

その力は砕かれた右手を再生し、悟空は正真正銘最期の力で叫ぶ。

 

「オラの全てをこの拳にかける!!」

 

「龍拳ーーーー!!!」

 

そして、一発の気功波と龍が激突し・・・

 

 

ーーやがて、誰かの嘲笑だけが地球上に木霊したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回、最終回。

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