ドラゴンボールF   作:月日火

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たったひとりの防衛戦

 

それじゃあ、僕はベジータ王に会ってから寝るから。早めに頼むよと言い放ちビルスはウィスと共にあっさりとその場から姿を消す。

 

後に残ったのは

未だ情けない姿をしているコルドと

内心頭を抱えるフリーザ。

 

直ぐに探知しようとしたフリーザではあったがビルスの持つ神の気は高次元のクリアな気である為、探知をする事は出来ない。

 

そもそもフリーザも惑星ベジータの破壊に反対な訳では無い。

最近では隠れてコソコソとベジータ王が反逆の準備を整えているのは既に把握済みであり、正直サイヤ人から得られる物はもう殆ど奪った。

金も土地も誇りもだ。

 

故にフリーザとしても今回の提案はそう悪いものではなかった。

しかしだ、記憶と違い別段サイヤ人を滅ぼす理由がフリーザには無い。

超サイヤ人など伝説とはいえあそこのサイヤ人の誰がなったとしても部下のガーリックJrすら倒せない。

だからこそフリーザは理由探しのために頭を抱えていた。

だが、滅ぼす以外の選択肢は無い。

断れば破壊で一巻の終わりだ。

 

「………はぁ。もう超サイヤ人の伝説を探った末の結論。という事にしましょうか。」

 

5分弱悩み、結果として記憶通りの理由にする事とし。

フリーザはベビーの元へと瞬間移動する。

ベビーはまた何か無茶振りでも受けるのかと警戒しながら現れたフリーザに声をかける。

 

「……今回は何の用だフリーザ。」

 

「おや、今回は依頼ではありませんよ。」

 

目を細め、疑いの眼差しで見るベビー。

はっきりいってあの一件以来、無茶振りの依頼でしか来なかったフリーザを誰が信用できるというのか?

ベビーの目はそう訴えていた。

 

「…おやおや随分と警戒されているようで。では簡潔に伝えましょう。」

 

フリーザは淡々といつも変わらぬ胡散臭い笑顔で何てことも無いように

あっさりと。

 

 

「綺麗な花火を見たくはありませんか?」

 

ベジータ星の崩壊のパーティチケットをベビーに手渡す。

ベビーはそのチケットを手にし。

 

「…いいだろう。」

 

こちらもまた悪どい笑みを浮かべ承諾したのだった。

 

 

♠︎

 

2ヶ月後。

 

惑星ベジータに向かって小さな宇宙船が飛んでいた。

 

「チッ……なんだってんだ。」

 

男はある惑星の侵略中、星から指令が下っていた。

 

ーー総員、直ちに惑星ベジータへと帰還せよ。

 

男はその指令を受けた直後に急いで惑星を征服し

今正に故郷であるベジータ星へと戻ってこようとしていたのだ。

 

だが、そんな彼の直感はこの指令に得体の知れない何かが裏にあるとボンヤリとではあるが感じ取っていた。

しかしフリーザの命令は絶対である。逆らえばウチのに変な輩が付きまとってしまう。

変な輩自体は別にぶっ潰せば問題ではない。

 

しかし。

今帰らなければ後悔する。それだけは確実だと彼は確信していた。

 

 

男の宇宙船は真っ直ぐに専用の着陸地点へと着地する。

ハッチが開き男が出てくる。その姿を確認した別の男がその者へと笑みを浮かべ近づく。

 

「よく帰ったな…バーダック!!」

 

バーダック。

身分は下級戦士であるもののその実力はエリート戦士を上回り

持ち前の戦闘センスと直感で下級戦士の筆頭とまで噂される歴戦の戦士である。

 

そして、バーダックに近づいてたサイヤ人の名はリーク。

バーダックの相棒であるがバーダックの実力を尊敬しているが故に相棒というよりも舎弟と化している。

 

バーダックはリークに今回の招集について尋ねる。

 

「なぁ、今回の招集は何だと思う。」

 

「んー、かなり大きい惑星を見つけたとかか?俺たち全員でかかんなきゃ厳しいような。……いやねぇかな?」

 

「……。」

 

バーダックは思考する。

だが、余りにも情報が少なすぎる。

考えをうち切ろうとしたバーダックを同じサイヤ人であるタロが話しかける。

 

「おー!バーダック!帰ってきていたのか!嫁さんとこには行かなくて良いのか?」

 

「うるっせぇなぁ…後で行く。…そうだ。お前、今回の招集の理由知ってるか?」

 

「んぁ?あー。そういやフリーザの奴が…。」

 

「おい、スカウターを外せ。聞かれるぞ。」

 

「お、おうすまねぇ。んで続きだが…超サイヤ人について聞き回っているとか言ってたなぁ。」

 

「超サイヤ人だぁ?そりゃ唯の伝説じゃあねぇか。」

 

「まぁそうなんだがよ。」

 

「ったく……俺はもう行くぜ。」

 

「おう!ギネさんによろしくなぁ!」

 

タロの一言にバーダックは去り際に軽く手を振ることで合図した。

だが、超サイヤ人。そしてフリーザ。

 

バーダックの中で何かがハマった気がした。

 

 

♠︎

 

その惑星ベジータの上空には巨大なフリーザの宇宙船が滞在しており

その内部では夜に決行する破壊への最終調整をしていた。

 

「ザーボンさん。不在のサイヤ人は?」

 

「はっ!我々の調査によるとベジータ王の息子であるベジータ。その付き人であるラディッツとナッパ。そして惑星支配から帰ってきていないターレスというサイヤ人が不在です。」

 

フリーザはその報告を聞き、ふむ。と軽く頷く。

そして、ザーボンに更なる指示を出す。

 

「わかりました。貴方は引き続きサイヤ人達の監視を命じます。1匹たりとも逃してはいけませんよ?」

 

軽く気を放出し、悪戯程度に脅しをかける。

その程度ですらザーボンは冷や汗を流し命令を受諾する。

 

「は、はっ!了解致しました!」

 

そしてザーボンは速やかにその場から離れ監視の任務へと戻っていった。

 

 

「さて。折角ですからねぇ。綺麗な花火を上げてみせますか…ホッホッホ……!」

 

 

 

♠︎

 

自宅へと戻ったバーダックを妻であるギネが迎える。

 

「あっ!お帰りバーダック!」

 

バーダックは帰るなり、自らの子供達の居場所を尋ねる。

このまま自らの予感が当たってしまった時がバーダックにとって危惧している事だからだ。

 

「おう、今帰ったぞ。ラディッツは?」

 

「ラディッツはまだ王子様のお守り中だよ。」

 

「…カカロットは?」

 

「…カカロットはまだ保育ポッドの中だよ?いきなりどうしたのさ?」

 

ギネはバーダックの僅かな感情の変化に気付く。

バーダックは自らの予感を告げる。

 

「今回のフリーザの招集には何か裏がある…こっからは唯の俺の予測だが…

フリーザは今日この日に俺たちを滅ぼす気だ。」

 

ギネはバーダックの告げた予測に驚愕する。

だが、バーダックの予測は外れた事が無いというのは長い付き合いの中で

ギネ自身が良く知っている。

 

だからこそ、バーダックの言葉を否定する事はしない。

 

「…で、本題はここからだが。…カカロットを辺境の星に飛ばそうと思ってる。」

 

「……うん。」

 

今度は逆にバーダックが驚く番だった。

と、同時にギネという女がこれ程自分を信じてくれている事が分かり

何ともむず痒い感情になる。

 

「……いいのか。」

 

「…うん。ほ、ほらさ!バーダックが間違ってるかもしれないだろ?」

 

「…おう。そんときゃ迎えに行けばいい。」

 

 

「…あぁ!」

 

 

 

その夜、カカロットを小型ポットに乗せ

サイヤ人の集落から外れた草原へとバーダックとギネは訪れていた。

 

そして、彼らは息子に最期の言葉を伝える。

 

「……またあとで迎えに行くからね!」

 

母の泣きそうな顔をカカロットは見た。

 

「…絶対生き残るんだぞ。」

 

父の優しげな笑顔。

そしてポットに置かれた大きな掌に自身の掌を重ねる。

 

カカロットが何かを言おうとした時ポットが宙に浮き、バーダックが事前にセットした地球という惑星へとポットは飛んで行ったのだった。

 

それを確認したギネは涙を流し崩れ落ちる。

 

「うっ…わぁああ…。」

 

「…。」

 

バーダックはそっと不器用ながらに手を置く。

 

「……先に逝ってる。…あばよギネ。」

 

そして、自らの最期の抵抗せんと宇宙へと滑空する。

 

 

「……さよなら、バーダック。」

 

 

 

♠︎

 

惑星ベジータの外。

そのフリーザの宇宙船には無数の死体が転がっていた。

その中である一つの死体には首から上がなく

体から判断して漸くその死体はベジータ王だったと分かるだろう。

 

何故ベジータ王が無残にも倒れているのか理由はいたって単純。

反逆し、デコピン一発で頭を吹き飛ばされたからだ。

 

そんな死体をフリーザはチラリと見て直ぐに興味を無くす。

 

「ザーボンさん、上部ハッチを開けなさい。」

 

フリーザがそう告げると宇宙船の上部ハッチが開かれ、フリーザはベビーと共に宇宙へとその身体を晒す。

 

その眼前には多数の部下に捕らえられたバーダックの姿があった。

バーダックは現れたフリーザにその激情をぶつける。

 

「フリィィィィザァア!!」

 

その声にフリーザは反応する事は無い。

指先に太陽が如き大きさであり高密度の気弾を生成。

惑星ベジータに向けて何でも無いように放り投げる。

 

それを迎撃せんとバーダックは右手に今持てる最大の気を集中させる。

そして、己の全てをかけて投擲する。

 

「オラァァァァァ!!」

 

だが、その健闘も虚しく気弾はフリーザの巨大な気弾に吸い込まれ

バーダックに直撃する。

その刹那、バーダックは見た。

 

自らの息子であるカカロットとフリーザが互いに向き合い拳を交える姿を。

そして、バーダックは笑う。

いつかカカロットが自らの後を継ぐと確信して。

 

「カカロットよぉぉぉお!!!」

 

 

その日、惑星の崩壊を免れたサイヤ人は何かを感じ取った。

それが何かはまだ誰にも分からない。

しかしだ、それはいつか巨悪に突き立てる牙であると誰かは言った。

 

 

そして、今日この日。

英雄となる星の子が遥か彼方へと旅立ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー


・バーダック
基本的には超ベースだが、多少旧バーダックもブレンドしてみた。
たったひとりの最終決戦はドラゴンボールでも屈指の作品だと思う。

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