ドラゴンボールF   作:月日火

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聳える強さの壁

 

「オラァ!!」

先んじて繰り出すターレスの拳をフリーザは右手で首を掴んで受け止める。

ただ、フリーザも若干後ろへとずらされているのを見るにその威力は相当ではあるがフリーザの顔色は一つも変わらない。

 

「どうしました?さっきの威勢は何処にいったのですか?」

 

「…チッ。流石に強いな、だが…そらぁ!」

 

ターレスは首を掴まれながらも手に溜めた気弾で煙幕を張り

フリーザの視界を砂埃で出来る限り狭める。

そこから後方へとバックステップし両手を合わせて輪っか状の気弾を作り上げて投擲。

 

「喰らいやがれ!キルドライバー!!」

 

この気弾の利点は切断性能があるという事。

ここにおいての切断はこと格上相手にだろうが通じる事がある。

例に例えるならクリリンの気円斬あたりが妥当だろうか。

切断という性能を極めれば格上殺しになり得ることは間違いはない。

 

しかしフリーザは見えづらい視界の中で気の流れを読み

正確に気弾を把握し受け止めそれを上方向へとなんでも無いように投げ捨てる。

 

それにはターレスも驚きを隠せなかったが直ぐに気持ちをリセットし

 

「こい!フリーザサマよ!!」

 

いつもの不敵な笑みでフリーザを挑発し

自らのテリトリーへと誘い込もうとするべく最高速で飛行する。

その誘いに気付いたフリーザではあったがこの程度では

興醒めも良いところであったのでそのまま彼の誘いに乗っていった。

 

ターレスの後を追いたどり着いた先にはこの惑星で唯一の自然である

神聖樹。

既にターレスの手にはその実の一つが握られており

その顔は自らの勝利を確信した顔になっていた。

 

「……俺の勝ちだな。」

 

そして神聖樹の実を一口食べたターレスの身体は

豪快な音と共に更に強靭になり、発せられる気もまた大幅に増幅する。

しかし、神聖樹の実はあくまでも神の所有物として星のエネルギーを得る為に

作られた兵器。

本来ならば連続で使用する事は無く、一つの実を一口食べ

慣らしていく事でその実に順応するものである。

 

よって、ターレスにとってもこれは賭けであった。

彼自身も連続で食べた事は無く自身にどの様な影響が出るかわからない。

だが、最初の一撃で己の実力とフリーザの実力にあまりの差がある事を

自覚したターレスにとってこれしか方法は無かったのだ。

 

「ほう、いいですよ!これならば私の部下に相応しい戦闘力です!」

 

だが、フリーザにとっては前と今とでも同じ事。

余裕そうに並みの戦士なら即死するであろうターレスの連続攻撃を

捌いていく。

ターレスとって攻撃の全てが全力。

時には超至近距離からの気弾を多様な方法で使い分けながら

フリーザへと迫っている。

 

ーーだが届かない。

 

攻撃は全て受け流されるか最小限の動きで躱される。

全力の中で織り交ぜられるフェイントにすらフリーザは対応し

まるで子供と遊ぶ親の様に反撃などは一切してこない。

ターレスが猿とするならばフリーザは肉食恐竜 。

天と地の差が多少縮んだ程度では到底届く筈も無い。

 

「おおおおお!!!!」

 

ターレスが更に吠え、その攻撃はその速度を増す。

これならば昔のフリーザならばダメージを与える事ができるだろう。

空は空気が振動され衝撃波が起こり、岩はその余波で崩れ去る。

神聖樹もその衝撃の元その大きな幹がゆらゆらと激しく揺れる。

常人では最早何が起こっているのすら分からない

その攻撃の嵐はフリーザの一言で終わる。

 

「……飽きましたね。」

 

嵐の中で確かに響いたその一言はターレスの予期していた事を現実にする。

昔、惑星ベジータでフリーザを見た時に感じ取ったナニカ

ターレスはそのナニカを今再び感じ取ったのだ。

 

その瞬間。

フリーザはターレスの攻撃を尻尾で掴みそのまま地面へと叩き落とす!

その一撃だけで地面に大きな亀裂が走り

その一撃だけでターレスの意識は朦朧とし最早自分が何処にいるのかすら

覚束なくなる。

 

「ぐが………!」

 

地面に大の字で倒れるターレスをフリーザは再び尻尾を持ち上げ

こう告げる。

 

「いい事を教えようか。

中途半端な力を身につけ慢心した者は返って早死にする。

……よぉく覚えておきなさい。」

 

ターレスはその朦朧とした意識の中で自らの敗北を悟り

されど、決して絶望はしない。

最後までフリーザを小馬鹿にする様子でこう返す。

 

「………へっ、よぉく覚えておくぜ。フリーザ、サマよぉ。」

 

そしてそのままターレスの意識は糸が切れるように落ちていった。

 

 

フリーザがターレスを担いで

自らの宇宙船に戻れば、そこには他のクラッシャー軍団が

ギニュー特戦隊に捕らえられ、その手には戦闘力を極限まで抑え込む

手錠がかけられていた。

 

「ターレス!!」

 

軍団の長たるターレスが血塗れの状態で運ばれるのを部下達は心配そうに

見つめる。

その目には侮蔑は無い。

そこには唯の信頼があった。

 

「さて、戻りますよ?皆さん。」

 

フリーザがそう指示し特戦隊は一糸乱れぬ敬礼を以って返事する。

そのままフリーザの宇宙船は名もなき星を飛び立っていく。

 

そして本拠地である惑星フリーザへと到着すると

ターレスはそのまま治療室のメディカルポッドへと移送され、部下達は個室の牢獄へと

投獄されることとなった。

 

 

♠︎

 

ターレスが目を覚ませば、メディカルポッドは自動で開き地面へと降り立つ。

冷たい地面の感覚を気にすることなくターレスは辺りを見回す。

 

そして、目にしたのは空中に浮かぶ何かを操作し

指示を出すフリーザ。

 

自身が敗北したという事は理解しているターレスは

用意されてあった戦闘服に着替えフリーザの元へと向かう。

 

「よう、これはどういう了見だフリーザサマよ?」

 

そう話しかければフリーザはその何かをスライドさせ

ターレスへと自らの指先を向ける。

 

「言ったでしょう?私の目的は貴方だと。」

 

その指先からは小さいながらもターレスという命を奪うには充分な威力の

気弾が充填されている。

 

「さて、サルの貴方にまどろっこしい説明は必要ありません。

…選びなさい。ここで私に忠誠を誓うか、ここで命令違反者として私に処刑されるかの二択です。」

 

ターレスの顔に小さな汗が垂れる。

自分がいくら死の淵からのパワーアップした所とはいえ

フリーザに勝てるなどと微塵も思っていない。

更に部下達も恐らく囚われている事だろう。

 

実質一択。

要は自分の口から忠誠という言葉がフリーザは欲しいだけなのだ。

しかしそこは流石のターレスである。

忠誠を誓い、力を蓄え次こそフリーザという化け物を殺すという発想に切り替えて忠誠の言葉を吐く。

 

「…いいぜ、一応はアンタに従ってやるよ。」

 

フリーザの指先から気弾が消え、最初に見た胡散臭い笑顔へと変わる。

 

「おや、そうですか。では貴方をフリーザ軍の遊撃部隊に任命します。

私の為にキッチリ働くようにお願いしますよ?」

 

そして、フリーザはターレスに向かって最初の指示を出す。

 

「では、最初の命令です。ターレスさん超サイヤ人になりなさい。」

 

「……………………は?」

 

 

ターレスは初めて理解が及ばない驚きというものを味わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・ターレス
戦闘力で言えばベビーを除けばポテンシャルは高く
同時にサイヤの中でも狡猾な方に入る。
因みにこのターレスが劇場本編と同じ行動をとっても悟空を完封するぐらいの力を誇っている。

・戦闘力について
特に設定する気はありません。
というか設定したらしたで作者が混乱します。

・ツフルの科学力
宇宙二位。




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