ドラゴンボールF   作:月日火

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上に立つ者

惑星ベジータが滅んでから数年間、フリーザ軍は更なる拡張を遂げた。

その数は既に万を超えて億単位にまで跳ね上がっている。

そうなってくると、フリーザが1番重視するのは時間だ。

 

同盟者との会合、惑星侵略の後処理、或いは商談。

クウラの後始末の他にも部下への報酬などフリーザの一日は実に多忙を極める。

その為、重力室200倍でのトレーニングとベビーへの無茶振りだけが今のフリーザの少ない楽しみである。

初期には僅か数名しかいなかったフリーザ軍もこんなにも大所帯となり

設立部署も大分多くなった。

こうなると宇宙パトロールすらも黙認する所か一部の者は情報を無償提供する始末。

今ではクウラさえ居なければ第七宇宙のほぼ全域はフリーザの手中となっていると言っても過言では無いのだ。

 

そんな多忙を極めるフリーザは現在ターレスと共に訓練室へと

向かい10倍の重力のまま超サイヤ人へのヒントを与えていた。

 

「さて、超サイヤ人には三つのトリガーがあります。

一つはそれにふさわしいまでの戦闘力。

もう一つは貴方の中にあるサイヤ細胞と言われるものの鎮静にあたります。

そして最後はそれを踏まえた上での激しい怒り。

貴方はまだ戦闘力はまだしも鎮静化なんて難しいでしょう?」

 

「…沈静化だぁ?そんなもん俺たちサイヤ人が出来るわけねぇよ。

暇さえあれば殺し合いだ。」

 

「…まぁそうでしょうから貴方はこれから自分のペースでやって行きなさい。」

 

「へーへー。」

 

「という訳で私が貴方に教えるのは精神統一です。

今からここの重力を100倍にしておきますので私が帰って来るまでには

そこで気の流れ、というものを捉えなさい。

それさえ捉えられればスカウターなんぞ必要なくなりますからね。」

 

「……俺のキルドライバーを受け止めたのもそれか。」

 

「おや、察しが良くて何より。それでは励みなさい。」

 

そうしてフリーザはこの部屋の重力を100倍へと変換し

さっさと退出する。

ターレスはというと100倍という初めての重力に押しつぶされかけていた。

 

「………こりゃあ先ずはここで自由に動けるようにしねぇとなぁ。

…重てぇ。」

 

 

♠︎

 

フリーザ軍は完全実力主義の世界である。

要は強い者が弱者を従え、その強者同士もまた強さによって

軍での位に差が発生する。

 

だが、ここで言っておきたいのは別に戦闘力が高いだけの木偶の坊は

フリーザの目に敵わないという事である。

確かに戦闘力が高いのは一種のステータスであり

重宝されるべき対象ではある。

 

しかし、闘うだけが強さでは無い。

知識、人望、戦略眼そして一経営者という自覚。

それらを含めた強さこそがフリーザの求める部下の在り方だ。

 

サイヤの王子たるベジータはこの数年

癪ではあるがフリーザに従ってみてそれがよく分かっていた。

成る程、父が無残に殺される訳だとも。

 

ならば己はどうか。

サイヤとして、強さこそが絶対の自分は果たしてどうなのか。

この大宇宙を制覇するに足りる戦士なのか。

当然、イエスだ。

このベジータ様こそが王となりうる存在なのだ。

 

ベジータは日に日に続く惑星侵略により高まる戦闘力を感じて確信を持っていた。

 

…弁明しておくがベジータはこと戦闘に対しては無類のセンスを誇る。

だが、己の強さに対する傲慢が油断を隙を生み格上に対する対策を怠ってしまう。

 

よって。

 

「おうおう、サイヤ人の奴らがやっと帰ってきたぜぇ。」

 

「ふん、あんな星に三日もかかるとはな。」

 

今ベジータの前に立つ、ドドリアとザーボンが己の何十倍という戦闘力を有したがそれを何故隠しているのかすらも理解しようとしていないのだ。

 

今のベジータの戦闘力は18000。

サイヤ人とすれば正に超エリートである事は間違いない。

 

左隣に立つナッパの戦闘力が4000。

右隣に立つラディッツの戦闘力が1200と表記すればその強さが明確に

分かるだろう。

 

しかし、ドドリアの戦闘力は昔のモノとは遥かに違う。

強さこそ至上というドドリアの思考はフリーザのそれと同種。

ならば、ドドリアの忠誠は絶対的なものでありフリーザの元で

その力を更に伸ばした。

 

ザーボンは更にその上だ。

変身を嫌うザーボンにとってフリーザの特訓は非常に有益な物だった。

ドドリアとは違い美しさとこそというザーボンにとって

同じ変身タイプでありながら敵の血を浴びる事無く蹂躙するフリーザは

正に羨望の対象であった。

故にザーボンは自らの変身を捨てこのままの姿で強く、美しく闘う術を

フリーザに教授されたのだ。

 

 

そんな彼らを知らないナッパは激昂する。

 

「んだとぉ……!!じゃあテメェらならどのぐらいかかるってんだ!!?」

 

「ナッパ!!」

 

ベジータはそれを諌める。

それは部下を気遣うものではない。

フリーザとの決戦での駒が無くなることへの苛立ちのものだ。

 

だが、そんなナッパの激昂も今のザーボン達にとって

仔犬の鳴き声のようなもの。

 

「あー?あんな星、半日もあれば充分だぜぇ。なぁ?」

 

「私は3時間で充分だがな。」

 

「んだとぉ?」

 

「なんだ?」

 

「「………ぶはっ!!」」

 

2人は睨み合いの末に爆笑する。

その事が更にナッパの頭に青筋を増やしていく。

 

だが、その苛立ちも

 

「おや、ザーボンさんにドドリアさん……そしてサイヤ人の皆さん。」

 

フリーザが来た事によって鎮火していく。

 

フリーザを見たサイヤ人は臣下の礼をとるが

ザーボンとドドリアはそのまま笑いながらフリーザに近づいていく。

 

「フリーザ様聞いてくださいよぉ。サイヤ人の奴ら、あの星に三日もかかったそうなんですよぉ。くくっ!」

 

「ふむ…ベジータさん。」

 

「…はっ!」

 

「侵略した惑星の映像はキチンと撮影しましたか?」

 

「…ナッパ。」

 

「す、すまねぇベジータ。」

 

「……その様子を見るに忘れてたか壊してしまったか…まぁいいでしょう。

ザーボンさん後で確認してきなさい。」

 

「了解しました。」

 

「しかし、罰は罰です。サイヤ人の皆さんは今月の給料を減らしますので。」

 

 

そう言い残しフリーザはハンドサインでザーボンとドドリアを背後に立たせ

その場を去っていく。

 

その後ろ姿を見たベジータはいずれ倒すべき敵に不敵な笑みを浮かべ

闘志を燃やしていた。

 

(そうやって仰け反っていろ。いずれ貴様はこのベジータ様が倒すのだからな……!)

 

 

 

 

「ではフリーザ様。この減らした分は……。」

 

「……また新しい化粧品でも見つけたのですか?」

 

「ま、まぁそんな所です。」

 

「…まぁいいでしょう。その分しっかりと働きなさい。」

 

「はっ!!」

 

 

 

♠︎

 

「休暇願……ですか。」

 

「はっ!どうやらサイヤ人のラディッツからですね。」

 

フリーザがいつものように商談を終え、部下の訓練をこなし

ターレスの面倒を見て、クウラの機嫌取りをして

デスクワークへと向かっていたある日。

 

部下のアプールから手渡された書状にはラディッツの休暇願が

書かれてあった。

中身を見れば、そこには

 

『ベジータとナッパのいびりに精神がおかしくなりそうなので休ませて下さい。』

 

と書かれており、フリーザはヒエラルキー最下層の不憫さに

ほんの少しだけ同情した。

 

とはいえ、大して強くもないラディッツが多少抜けた所で

大した損害になるはずもなく。

 

「まぁ、いいでしょう。」

 

そう言い、フリーザはウィンドウを開きラディッツの回線に

認可のメッセージを送信した。

だが、何かが引っかかったフリーザはある指示を出す。

 

「アプールさん、ラディッツさんのスカウターの盗聴をお願いします。

彼のことですから何も無いとは思いますが万が一、というのもありますからね。」

 

「了解!では失礼します!」

 

ラディッツのスカウターの盗聴を命じられたアプールはそのまま敬礼を取り

フリーザの執務室から退室する。

だが、その際誰かにぶつかってしまい謝罪すべく振り向く。

 

「おっと、すまねぇな。」

 

「あら、気にしないで頂戴。」

 

「……フン。」

 

相手からの返答を聞き

録音室まで歩いた先でアプールは思う。

 

「……あんな奴らフリーザ軍にいたか?」

 

 

そして、執務室。

フリーザの目の前には1組の男女が立っていた。

赤い衣装を見に纏い、彼らの纏う気はフリーザが感じたのとはまた異質なもの。

顔を見ただけで彼らの正体は明確だったが

あえてフリーザは名を訪ねた。

 

「ふむ…何者ですか?貴女方は。」

 

「私はトワ、こっちは私が創り出したミラ。」

 

「では、トワさん。貴女に問いましょうか。要件は?」

 

トワは妖艶に笑う。

その言葉を待っていたように。

 

「フリーザ、貴方と取引をしに来たのよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・フリーザ軍
超実力主義の社会。
フリーザ軍に貢献すればする程給料やボーナスが豪華になる仕様。
勿論弱者にも福祉は充実させる、総勢5億程度の大軍隊。
侵略した惑星の写真は取引の際に必要としている。
部署や部隊が幾多にも分かれ、その統括をフリーザが担っている。
幹部に上がるにつれてフリーザへの口調も変化している。

・ドドリアとザーボン。
本作においての彼らは悪友。
フリーザとの特訓により
ドドリアはザーボンの強さをザーボンもまた強さという名の美を
学んだ為、お互いの悪口を言いながらも切磋琢磨しあっている。
そんな彼らの戦闘力は現在気のコントロールプラス原作の約1500倍程度には上がっている。

・ベジータ
彼はまだ蛙。
龍となるのはもう少し。

・ラディッツ
弟に会う為、割と本心を書いて地球へ。

・時系列
ラディッツの休暇届の時点では
マジュニアを倒してパオズ山まで帰った所。

・時空の犯罪者
「フリーザ、取引をしに来たわ!」
Dr.ストレンジ風

・時空の守護者
アップを始めました。

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