ヤマトから飛び立つやいなや、まるで渡り鳥の群れのように機体を隊列に組んでいく。
その一糸乱れぬ動きは、ひとつの生き物がごとく動き始める。
『後二分で無線封鎖です。各機必ず帰還してください。』
「山本隊長、気負い過ぎる必要はない。みんな気楽に行こう。」
山本君やその他のパイロットからは、緊張感が伝わってくる。どうもぎこちない。
それはそうだろう。なんせ彼らは一度たりとも帰還が出来ない空域で戦闘を行ったことが無いのだ。
本来は防空隊。即ち本土での戦闘を目的とした部隊の出身者たちで構成されているために、こうやって、敵地に乗り込んで戦うことや、母艦から発艦しての制空権争いをしたことがない。
それゆえに緊張していて、焦りも出てくるだろう。
本来ならば私が指揮をとり、制空戦をすれば良いのであるが、戦闘に専念せねば彼らが被弾したとき、守りきる自信がないのが本音だ。
明夫君が生きていて、この場にいてくれれば全幅の信頼を寄せるが、もうこの世にはいない。
だからこそ、視野角が広い女性で尚且つ精神的にも強い玲君を隊長に推すこととした。彼女ならば出来ると信じて。
彼等には話していないが、今回の作戦でヤマトは完全な囮と決まっている。艦長と副長そして、私しかその事実は知らない。
暫くしても彼等から笑い声を伴う会話はなかった。
無線封止が開始され、全機が冥王星へ向け宇宙を突き進む。やはりここでも艦船の残骸が散見される。
その中から反射衛星を突き止めるのは至難の技だろう。
たとえ見つけても、それでもこちら側からは連絡を取ることは愚か、電波を発することすらできない。
艦長たちの健闘を祈るしかない。沈まないとは限らない、それが戦争だ。
デブリ紛れ突き進む。
暫くして、冥王星の裏側からピンクか、紫の光が何かに衝突して曲がりながらこちらとは逆方向に進んで行くのが見える。ああ、発射されたか。あとは、時間との戦いだな。
第二射、第三射とたて続けに攻撃がヤマトを襲っているであろうその頃、我々はやっとのことで冥王星の裏側へ到着した。
そこからは、しらみ潰しの探索の始まりとなる。ヤマトが攻撃を受けていたがために、大間かな敵の基地の予測が付いていたが、どの程度の基地であるか全くもって確認できていない。
基地の規模によっては、航空隊の弾薬だけでは足らない可能性がある。その場合、砲台をピンポイントで爆撃する必要がある。
古代の部隊は北側から、こちらは南側からの攻撃とし
二機で1グループの分隊での行動となった。
戦力の分散となってしまうがこれが確実な方法だ。
ヤマトが囮になっているからこそ可能なこの作戦は、必ず成功させねばならない。
いくつかのクレーターを越えた。どうやらこちらは外れのようであった。
すぐさま、分散した機と共に北上していく。
突如として無線封鎖を破ることとなった。
どうやら古代、加藤隊が敵と接敵し、戦闘を開始したようだ。
急ぎこちらも合流するため、巡航速度をあげる。
燃料はまだまだ十分にある。
暫くすると地平の彼方から弾幕が見えた。
戦闘が激化していく。
まだ迎撃機が、上がってきていないところを見るに、序盤であろう。
だが、当たりのハズレと言ったところか。
基地は基地だが、格納庫らしきものがない辺り功を焦ったか?山本君から通信が入る。
『ガミラスの迎撃機と接敵これより航空戦に入ります。各員、戦闘を続行し速やかに敵基地を攻撃せよ。』
それに対してこう答えよう。
「山本君、これはガミラス基地の中枢部ではない。
攻撃を限定的なものに留め、中枢部の攻撃を優先せよ。そうすれば迎撃システムも沈黙する。」
『しかし…。わかりました。各員、岩本機に続き敵基地に突貫せよ、ただし被弾したものはヤマトへ帰還してください。』
わお、こっちに着いてくるの?
やだね、こっちは制空戦闘で忙しいんだ。
「山本君、君が引き連れていってくれ、あの数は君では無理だ。」
渋々といった様子で、山本君は隊を引き連れて衛星砲台の方へ向かって行った。
それと時を同じくしてヤマトからのミサイル攻撃が基地を襲う。
さぁて、戦闘機隊のご到着かい?
全く原作よりも数が多いじゃないか。
さあ、天使とダンスだ。
side山本
岩本一佐に押し切られるかたちになってしまった。
あの人は強情だから、頑なにこちらを認めようとしない。
それよりも、敵機はオーロラの方角からやって来た。
古代さんもそれに気が付いたのか、私と同じようにオーロラの方角へ向かっている。
うっすらと後方を見ると、岩本一佐が敵機は複数機と一人で戦闘を行っているのが見えた。全機がオーロラに突入しようとするなか、たった一機で戦闘を行っているのだ。
誰一人それを咎めようとする人はいない。
まるで最初からそんな存在がいなかったかのように。
私も皆と同じように、咎めようとしていなかった。
だが、加藤さんだけが違った。
『あのままじゃ、あの人だって落とされる。
これより援護に向かう。』
と言って加藤さんは、何機か伴い岩本一佐の援護へ向かった。
そのとき思った。何故、岩本一佐の事を無かったように思ったのだろうと。それだけで背筋が凍る思いだった。
side岩本
空戦中突如として加藤君が戻ってきた。
わかるよ、心配なんだろう?大丈夫、大丈夫。この戦闘機たちそんなに強くないから。
機動だって常人レベルだし、同じ機動をとろうとするから落とすのは比較的楽なんだよなぁ。
フットペダルと操縦管を最大限使って、宇宙空間で捻り込みを行って後ろをとったり、ACESのヴィルコラクみたいな突如として停止する機動を使用したりと、敵を翻弄する。
そのたびに敵からの殺気が徐々に恐怖に呑まれて行くのが見えるのだ。実に愉快である。
と、同時に味方からも奇異の眼差しを感じたりと、面白いことこの上ない。
そんな戦闘をしていたら、ヤマトからの攻撃と航空隊の攻撃により、オーロラ内部の基地が破壊され、航空隊が基地から離脱した少し後に、ガミラスの艦艇が外に現れた。
全速力で逃走を謀ろうとするなか殿として、旗艦のワープ時間を稼いでいたガミラスの艦艇が沈んでいく。自発的な殿か…。
こちらも残りの敵を片付け、帰投する。
加藤君はやはり腕が良いな。明夫君が亡くなってから、更に腕が上がったか。
こうして、冥王星の戦闘は幕を閉じた。
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なお、今回の戦闘での主人公の戦価
戦闘機31機
基地対空陣地29機
加藤の撃墜数
戦闘機6機
基地対空陣地8機
ガミラスの戦力が増強されるという現象が起きているため主人公がいない場合確実に失敗する。