これは夢か。ああ、昔の住んでいた家か。
目の前に立っているのは若い頃の俺と、華奈か。
『行ってくるよ。』
『まって、どうして貴方がいかなきゃならないの?』
『それはね、君を守るためだから。俺に出来るのはこれしか無いんだ。』
『他にも、防空隊だって有るじゃない。』
『防空隊は駄目だよ。あれでガミラスを止めることなんて出来ない。だから、外征して敵を叩くんだ。
そんなに悲しまないでよ。俺はまだ生きてるよ?
そうだ、帰ったら式を挙げよう。な?』
『必ず帰って来て。』
『勿論さ。』
いつも、ここで目が覚める。いい加減この呪縛から逃れないとな。
ヤマトはかなり銀河系の外縁に進んでいる。
もう幾度もワープを続けているため、操艦もタイミングも手慣れたもので、熟練という感じが漂っているが、不安材料がある。
ヤマトの航法装置には、ユリーシャが入っているはずだ。現在彼女が眠りから目覚めている。
これが何を意味するのか。そう、彼女の気分次第でヤマトの行き先が変わってしまうということである。
ワープに入ったが、なんだ?周囲の時が止まっているかのようにいや、捻れている?のか。
まさか、航法装置に異常がみられたか。となると、あの娘が勝手に動き回りだすぞ。
そう思っていると、真田からこの空間に付いての情報が提示された。曰く次元断層に入り込んでしまっていると。
更に機関室の方からは、波動エンジンからエネルギーが放出され続けているという事までも入ってきた。
「艦長このままでは波動エンジンの完全停止の可能性があります。一時的に動力を補助エンジンのみに切り替えた方が宜しいのではないでしょうか。」
「私も副長と同意見です。波動エンジンが停止すれば我々は宇宙の漂流者となりましょうそうなったら最後、二度と外には出られません。」
こういう時、多数決がものを言うはず、それに真田の言っていることは9割正しかったりするからな。
艦長の方を向き目で確認し合う。
そして、艦長が森君に指示を飛ばし航法装置へと向かわせた。その後周囲の探索を続行していたが、どうも計器に頼りすぎるきらいがあるのが乗員の悪いところだ。
艦内放送でもするか。
「艦長少々艦内放送を行っても良いですか?」
艦長からの了承は驚くほどに迅速に出された。
「各員計器のみに頼るな。この空間では何が起こるか我々にはわからない。目視を使用しつつ艦外を見ることが出来るものは、外に注力してほしい。以上だ。」
さて、ここでガミラス艦が出てくると良いんだが、バッドエンドだけにはなりたくないね。
はたして、艦の左前方つまり11時程の方角からガミラス艦が現れた。レーダーよりも目視による発見となった。
古代がすぐさま攻撃の指示を仰いでいた。
沖田艦長はガミラスの艦がこちらを攻撃してこないことを、わかっているかのように動く。
そして、回線を開いた。
向こう側の艦長との話の結果、ガミラス側からこちらに使者を寄越すことになった。
流石の交渉力、切り札がこちらには有ることを利用したその手腕、正直軍人でなかったらきっと偉大な人物になったんだろう。
ちなみに先導役を選抜するのに私が口を出し、強引にだが山本君に決定した。古代でも良かったんだが、山本君の方が腕が良いし、何より俺の弟子ということにすれば良いかなぁと思ったからなんて言えない。
左舷格納庫へと移動したんだがなんだこれは、
「なんだこれは、使者に対して失礼だと思わないのか?こんなにも大勢の保安隊を入れる必要がどこにある。
それに、銃を持っているなど…。」
それに伊東が反論する。
「相手は異星人です。なにより、敵対勢力の使者です。警戒するのは当たり前ではないですか。」
「君は政治がわからないのか?こういう交渉ごとはな相手にこちらが対等だと思わせなければならない。特にこの場合はな。だからこそ今すぐ保安隊をここから外せ、これ命令だ。艦長からの指示でもある。」
数分睨み合うが諦めたのか、格納庫から出ていく。
これで悪い印象ではなくなるはずだ。と、格納庫がゆっくりと開き赤い機体が入っていく。
止まるとキャノピーが開きパイロットが現れる。
女性型の人間か、ガミロイドではないな。
ヘルメットが取られる。
「華奈に似ているな」
「それ誰なんですか?」
「榎本さんあなたには関係ありません」
そうひそひそとしながら見る。
さあ、俺も行くとするかな?
会談を行う部屋へとパイロットが移動し始めた。
護衛と称して後ろに付いていく。
古代は何やら驚いた様子でこちらを見ていた。まあ、予定では俺は部屋に入らないからな。
こっちは正直別の用事だからね。
まあ、だから会談の内容如何によっていきなり中に入ろうと思う。
話は順調に進んでいるようだが、遂に初接触の話になった。こちらの先制攻撃に対しての非難が語られる。
それに対して古代たちが反論をしようとしているが、頃合いだろう。
「失礼するよ。」
「岩本一佐どうして…。」
「うん、君たちの話している内容が気になってね。」
「貴方は何者だ。」
「自己紹介が遅れた。私はこの船の実質No.2をやらせていただいている、岩本鉄郎一佐、君たちで言う大佐だ。
以後よろしく頼む。」
「これは失礼した。私は、今回連絡将校として貴艦に乗艦した、メルダ・ディッツ少尉です。」
「さて、彼女が言ったことは概ね正しい。皆は知らないがな。勿論沖田艦長もご存じだ。
ただ、ディッツ少尉、貴君等とは少々事情が異なるがな。」
メルダがこちらに対して何か言いたげだが、言わせずにそのまま言う。
「あの時私は、貴艦隊に対して攻撃命令を受けていた。
上層部が設けた一線を越えた場合のみ攻撃を行うと言う内容だった。そして、あの時我々が先制攻撃を行ったんだ。つまり、君たちが我々の指示に従わなかったからこそ、我々は攻撃せざるを得なくなったということでもある。これは艦長も知らないことだ。」
「では何故貴君はそれを知っているのか。」
「私は、航空機による奇襲を命令された特殊攻撃隊に所属していたからだ。その命令を私は実行した。」
周囲に沈黙が訪れる。
「まあ、要するにそちら側にも非はあるということだ。それだけは忘れないで頂きたい。言いたいことはそれだけだ。それと、時間があればで良いのだが、後で貴女に渡したいものがある。古代君、続きを頼む。」
身勝手に乱入してかきみだして後は丸投げ。本当に勝手だな俺は。だから上層部から嫌われるんだよ。
俺が断ち切った話は再び始まる。
原作よりもメルダの警戒心が薄いのが救いだな。これなら山本君が暴走することもないかな。ただ、俺の背中が危なくなるかもしれないが。
おっと話が終わったか。時間はまだあるな。
「先程渡したいものがあると言ったが」
ポケットからドッグタグを出す。
「これなんだが、解読したところディッツという部分だけわかった。君の名字が入っていたから、親族かと思いここに持ってきた。」
メルダへテーブルの上で渡す。
「これは…。兄の名前だ。銀河方面で行方不明となっていたがまさか、このような形で知ることになるとは。どこでこれを。」
「第4惑星沖海戦だろうか君たち風に言えば。そこで交戦したなかに、君の兄の機体があった。こちらも随分と墜されたよ。私がやらなきゃ損害は遥かに出ていた。君の兄を殺したのは私だ。だが、君の兄に救われた。」
古代が既に退室し、山本君だけが残っているなかこんなことを言う。
「兄がどうしておとされた後に貴君を救えるのか。」
「操縦が非常に上手くてね。被弾が殆どなかった。お陰で機体をそのまま使うことができた。それで、自分の艦に戻ったんだ。だから、君のお兄さんに救われたということだ。」
「では、貴君は私の仇ということか?」
「それを言ったら、この艦の人間は全員ガミラスが仇だ。」
「お互い様ということか。」
「ああ、そうさ。なあ、山本君。」
「は、はい。」
山本君には強引にでも納得してもらわねば。
「では、私は退室するよ。女性同士、異種族交流でも頑張ってくれ。」
そして、ヤマトはガミラス艦に曳航されて波動砲を発射された。これによって我々は脱出に成功。
しかし、外に出て早々ガミラス艦隊により攻撃され、共に進んだガミラス艦は撃沈された。見事に時間を稼いでくれたのだ。
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今回でヒロインが誰かわかりましたか?