昨日の彼女との話は実に良いものだった。何よりガミラスの食文化は、ヨーロッパ圏に非常に良く似たものであることがわかった。
糖に非常に敏感なのである。
ヨーロッパでは中世、砂糖を白い黄金と例えていたほどのものであるから、砂糖自体が存在しないガミラスにとって、砂糖はどれ程の価値になるだろうか。
戦後はこういう食料の方からアクセスを広げて行くのがベストだろうな。
報告は、まあ今すぐにはしなくても良いだろう。
尋問した内容何て言われたら、彼女や後のガミラス人に悪い印象を持たれかねない。
ただでさえ俺の手はガミラス人の血で濡れているのに、そこから信用まで無くしたのなら、交流なんて不可能だ。
で、確か今日は血液の検査だったか?
じゃあ、今日も行くとしようかな?
この宙域ではガミラスも出てこないから、正直暇なんだよねぇ。恒星と恒星の間だと休める星がないから当たり前だが。
次のワープで原作では彼女を解放する筈だ。
それまでに、少しでも友好的になってガミラスと地球の架け橋になってほしいな。
と医務室に行くと、なんだなんだ保安隊がいるじゃないか。まあ、捕虜の扱いだから本来は彼等の管轄だから、別に不思議なことじゃないが、どうもしゃくにさわる。
特に伊藤は、憎しみでどうなっているか分かったものじゃないしね。
「保安部の方々ご苦労。」
「これは、岩本一佐。」
こちらが声をかけたら敬礼された。伊藤はいないようだ。なら安全だろう、
「岩本一佐何故こちらへ?」
「うん、捕虜の事を観察しに来た。君らは下がって良いぞ?それとも、私の護衛をしてくれるのかな?」
怪訝な顔を少しして、
「はい、岩本一佐の護衛を勤めさせていただきます。」
一人が護衛としてメルダと私に付いてくるようだ。
「私が何をしようとも他言無用だ。いいな?」
二人は頷いた。そうと決まれば行くとしよう。
「やあ、体調はどうかな?」
「体調は万全だ。ただ、実験動物にされた気分ではあるが。」
当然だろう、俺だって血液から骨格、果ては肉体の機能全部調べられたらそう思う。
今日は監視がいるから寄り道もしないで行くとするか。
部屋へ向かう途中、
「そういえば、君の処遇が決まった。次のワープ後、解放だそうだ。」
護衛の連中は目を見開いた。この人何で敵にそんなことを言うんだ?敵な感じだろう。
「そうか、妥当であろうな。貴君等は私のような不穏分子を抱えていられる余裕は、無いのだろう?」
「そういうことだ。だが、私はひとつだけ聞きたい。ガミラスで、このようなことを行った場合、それは法律上有効なことなのか。」
「我々からしてみれば、捕虜をみすみす殺すことはしない。我々だって捕虜にこの様なことはしない。一番欲しいものは情報だからな。」
「だろうね、なんせ事実上死刑と同じだからな。
寧ろ死刑より酷い、最悪の場合君は宇宙で独りぼっちのまま死ぬことになる。私としては非常に残念でならない。」
「ふっ。敵の心配か?本当に貴様は変わっているな。他の連中は私への憎悪を多少なりとも持っているが、あなたはもっていない。」
「私は、もう吹っ切れているからね。喪ったものは帰ってこない、だから前を向いて行こうとね。」
そんな話をしていたら独房に到着した。
「今回もエスコートありがとう。あなたは、信用に足る人物だな。」
「そんな者じゃないさ。そうそう、きっと山本君が君を訪ねてくるだろうから、そのときは手合わせお願いするよ。彼女より腕の良い相手が欲しかったからね。君はその実力がある。」
「わかった。私からも質問がある。あなたもパイロットだと聞いているが、どの機体なんだ?」
「君を迎えにいった機体の色ちがい、灰色の機体で尾翼に鳥のエンブレムが付いてるやつだ。なんだ?まさか私と戦いたいのか?じゃあ、またこの艦に来たとき模擬戦をやろう。ボコボコにしてやるよ。」
「その言葉、そっくりそのまま返させてもらう。」
互いに笑いながら別れた。
「どうして、あれにあのようなことを言ったのですか?」
護衛の一人が話しかけてきた。少し怒っているか?
「なに、彼女たちも人類だと思ったからね。争いが終わったときの橋渡しをお願いしたいだけさ。」
睨み付けてくる彼の眼孔に私がどのように写っているのかはわからない。だが、一つだけわかるのは俺を憎しみの標的にしたようなそんな目だ。
さて、その後は原作通り山本君がメルダを格納庫に連れていき、彼女の機体を稼働状態にして宇宙空間で戦闘を無断で行うという、軍法会議もの(俺もかけられそう)のことをやってのけた。
ただ、原作と違うところはなんと山本君のエンジンが、故障しなかったこと。
おかげで機体を損失することがなかった。
戦闘は結局のところドローとなり、まあメルダ優勢の状態で終結した。
そして、彼女をとうとう解放する時が来た。
本当に大丈夫であろうか?原作と少しだけ違うことが起きてきているから、バタフライ効果みたいにヤバい方向に変わるんじゃないのか?
言葉に出してはならない。言霊があるかもしれないしな。だから、絶対に言葉にしてはいけない。
さあ、彼女の船出だ。
格納庫へやって来た。
「おい、メルダ君。達者でな、また会うときが来たら共に肩を並べられればいいな。」
タラップに足をかけながらこちらを振り向く。
「ああ、あなたと共に肩を並べられる日が来ることを願っているよ。」
最高の笑顔が帰って来た。
ガミラスの敬礼と共に、そしてこちらはヤマトの敬礼で返して。
sideメルダ
ヤマトでの出来事は私にとってとても良い経験になったのだろう。
特に、山本、岩本の二名とはとても良い友人になれた筈だ。
私が初めてあったとき、彼らを劣等な人種だといったが、今ならその私を否定できよう。
しかし、あの岩本という男。私にかなり良い待遇を与えてくれていた。
私へ憎しみの矛先を向けぬよう、自分の方向へ憎しみの視線を集中させるという技量。
空戦でもそのようなことをやっているのであろうことから、かなりのパイロットなのだろう。
やつ、いや彼は確かに兄の仇の筈だ。だが、自然と憎しみはわかなかった。それどころか、なんと言えば良いのだろう。好意?なのかを感じた。
互いの欠点を知りつつも話し合う、あのときはとても私の心を癒していた。心から話が出来る(敵)は彼が初めてだ。いったい何なのだろうか。
そう考えながら宇宙を飛んでいると、救難信号を聞き付けたのか艦隊がゲシュタムジャンプをしてきた。
願わくば彼と、山本と敵対したくはないものだな。
感想、評価、誤字等よろしくお願いします。