メルダが去ってから数日後、我々は銀河系から飛び出し、大マゼラン銀河との空白地帯を進もうとしていた。
それに際して、首脳陣による会議が開かれていた。
真田と、新見によりこれから先ガミラスの攻撃が薄くなるという説明がなされていた。
それに呼応して、古代が楽観的意見を発したが、それに島が怒りに任せたような返答をしたため非常に嫌悪なものとなった。
これもメルダの一連の言葉による波紋が広がるどころか、俺の言葉によってさらに拡大されていたせいでもあろう。要するに俺のせいだ。
未だに島は、自分の父親がしたことを心から信じることが出来ないでいるようで、それがこの喧嘩の元となったのだろう。
しかしながらそんな事で喧嘩をするとはガキか?
まあ、納得しかねることもあるだろうがそれを受け入れるのも大人というものでないだろうか?
そんな事より、俺には真田と新見に言わなくちゃならないことがある。
そう考えていると、沖田艦長が二人を叱りつけた。
二人は艦長の言葉に押され息を飲むように静まり返った。そんな中俺が更なる波紋を呼び起こす?
「艦長がいった通りだ。餓鬼じゃあるまいし、そんな事で喧嘩をするな。
それよりも、私は副長と新見君に言いたいことがある。」
新見がこちらを厳しい目で睨み付けてきた。
「何でしょうか。私達の推論が宛にならないとでも良いいたいのでしょうか。」
俺は首を縦にふって言った。
「ああ、君らは大切な事を忘れている。ガミラスは、ワープ航法を我々よりも高い精度で成功させることが出来る文明であるということ。
そして、この艦が進むうちに敵艦の数が俄然増えてきていると言うことを。」
驚いたようにこちらを見ているな
「まさかと思うが計算式だけに頼った訳じゃないよな。大マゼランだって立派な銀河だ。ああいう文明があったって可笑しくはないだろ?」
それに対して新見が反論する。
「ですが、文明の出現確率は恒星系の数に比例すると考えられ、そうなると自ずと銀河系内に文明がある確率が、高いはずです。」
「要するにどうやっても銀河しかあり得ないと?
巨大なワームホールを維持できる技術があれば、理論上は銀河間を行き来出来るそうだが?」
それに対して真田が答えた。
「確かに理論上は可能だ。だが、それには莫大なエネルギーを必要とする。それこそ太陽のような恒星を丸ごとシステムにしない限り、エネルギー供給が間に合わない。」
「なら、可能性は零じゃないんだな?」
「そうです。」
「なら、古代。君は楽観過ぎた。警戒は持続していなければならない。少々時間をとってしまった。すまない。」
会議終了後、俺は真田と共に研究室に行った。
と言うよりも、メルダとのことを聞きたいようだ。
「先ほどの言葉なのですが、なぜ我々の推論を頑なに否定しようとしたのですか。やはり、彼女との話に何かしらのヒントを得たのですか?」
「ああ、そうだな。故郷はどんな星なのかと聞いてみただけさ。そしたら何と答えたと思う?
はるか彼方にあるとそう言ってたんだ。」
「それが、我々の推論を否定する切っ掛けですか。」
研究室をぐるぐると歩き回りながら、俺は返答した。
「その昔、ス◯ーウォーズという映画があって、その代表的なフレーズが『遠い昔、遥か彼方の銀河系で』
というものだったんだ。そこからだよ、もしかすると別の銀河から、我々の銀河へ攻撃をしているのではと考えたのは。」
真田が思考に入った。遥か彼方という言葉がやはり気になったようだ。
「では、なぜ我々に言わなかった。」
「君なら必ず新見君に言うだろう?
最近な新見君の様子がおかしい。何か良からぬ事を考えているかもしれない。だから、あえて言わなかった。
それに、彼女は元イズモ計画の立案者の一人だったからな。」
「まさかと思うが、新見一尉がヤマトを占拠すると考えているのか。」
真田にしては感情を露にしている。信じられないという顔だ。
「警戒しておいて損は無い筈だ。」
真田はこちら側の人間だ、こちら側は情報を広めなければ、このままでは無意味な犠牲が出るかもしれない。
「話はこれくらいにして、そろそろ良い時間だ。どうだ?一緒に食堂でも。」
「いや、オムシスの食事は正直好きではありませんので。」
「わかった。」
悪気はなさそうだな。まあ、オムシスの原料は俺たちのクソみたいなもんだからな。
「艦長には話していないのですか。」
「あの人にこれ以上心配事を押し付けたくはない。」
そして今日も寂しく飯を食う。というより、誰も食堂に居ないだと!!そうか、一時間早かったか。
食事を済ませぷらぷらと歩き、格納庫へ行って操縦訓練を数時間行い、パイロットたちとの意見交換をして
ルーティーンである展望室へと向かう。
山本君が一人で黄昏ている。
「そんなところでどうした?失恋でもしたのか?」
無言だ。だが、どうやら図星だな。
「そうか、失恋か。初恋だったのか?」
「…。はい。馬鹿馬鹿しいですよね。パイロットになってからこんな感情を抱くなんて。正直自分でも驚いています。教官は恋はしたことはないんですか?」
何て質問するんだ。
「あるさ、しかも今だってしてる。」
「え?お相手は?」
「秘密だ。さて、俺はそろそろ持ち場に戻るぞ。失恋したって諦めるなよ?いざというときは奪ってしまえ。
なんてな。」
艦橋へ戻った瞬間。ガミラスからの攻撃を受けた。
帝都バレラス
sideメルダ
ヤマトからの解放から幾日か経ち、私も艦隊に救助された。それから、身体の異常の有無を徹底的に調べあげられ、ここ帝都に到着した。
なぜ、帝都なのだろうか。別の植民惑星や、拠点でも良かったであろうと思っていたのだが、どうやら父上の命令により帝都へ召喚されたようだ。
父上…。職権濫用はどうかと思います。
一目散に軍司令部に行き父の執務室へ入った。
目の前に父である、ガル・ディッツ提督がいる。
機嫌がすごく悪そうだ、いや悪いに決まってる。だって、あの座り方(足組)で椅子に座るのは決まって頭に血が上っているときだからだ。
「メルダ・ディッツ少尉であります。召喚に従いまいりました。」
「メルダか。こちらに来なさい。」
父が私を近くに呼び、すくと立ち上がった。そして、私を抱き締めた。
「良く戻って来てくれた。私は、嬉しく思う。」
ああ、父上もやはり親なのだな、声に嬉しさが滲み出ている。私がいなくなればこのディッツ家も無くなり、最後に残されるのは父のみ。
愛するものも、全て喪った父はどうなっていたのだろうか。暴走の果てに身を落とすのだろうか。
「すまない、取り乱した。何よりお前が無事に帰ってきてくれたことを嬉しく思う。
だが、軍人として何があったのか報告くらいまともに出来ないのか?」
ここから父親ではなく、ディッツ提督としての姿か。
私は絶対に言うことは出来ないだろう。言ったとしてもそれはきっと嘘に塗り固められたものだ…。
最近の私は何処か可笑しいのだろうか。
あの艦から戻ってからというもの、デスラー総統のやり方に不満を覚えて仕方がない。あのテロン人たちをこの目で見てしまったせいなのだろうか。
「どうしたメルダ。この父、ガル・ディッツにも言えないのか?」
「…すいませんお答えできません。私は話すことは出来ないのです。」
「なぜだ。」
「話したら最後彼らが攻撃を受けるのではと、考えてしまうから。」
「彼らとは?誰のことだ。」
慌てて口を塞いだ。どうして口から出てきたんだろうか。父だから安心してしまっているのか?
「それと、報告によればディルクのタグを持っていたそうだな。誰から受け取った。まあ、アイツが戦死したのはあの星系だ。言わずともわかる。どんなやつが、ディルクを殺したのか聞いたのか。」
ここまで来たら何を言っても無駄なのだろう。
「タグを渡した者が、殺したのは自分だと。そう言っていました。ただ、彼は悪気があったわけではなくそうせざるを得ない程に、戦争の中で生きているのです。本来はもっと優しい人です。」
「そんなやつか、お前が好意を寄せる人物なんだ。いずれ会ってみたいものだな。」
恐る恐ると言った具合に、話をすり替える。
「ところで何故父上は、帝都に帰還を?」
「ドメルの昇進祝いでパレードが開かれる。それに呼ばれたのだ。ドメルはテロン人の艦。ヤマトを叩くことになるだろう。」
ああ、なんということかあの名将ドメルがヤマトを狙うのか。どうにか彼らには生きて欲しいのに。
ガミラス人でありながら心配だ。
だが何故だろうか、あいつらなら出来ると信じている自分がいる、ことに驚きを感じなかった。
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今回、なんか書きずらかったです。