たとい、エースと呼ばれても   作:丸亀導師

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誤字の訂正いつも有難うございます。


第22話 満たされぬ旅路

『総員戦闘配置に付け!!繰り返す、総員戦闘配置。』

 

その声が聞こえた途端に布団から飛び起き、パイロットスーツを着て格納庫へと直行する。

 

到着すると既に幾人かがファルコンに搭乗完了し、いつでも出撃出来るようにしていると、

『戦闘体勢を解除します。繰り返します…』

 

ふーん、これで何回目だろうな、おちおち寝れもしない。搭乗していた連中も、搭乗しようとしていた連中も一様に疲れたようなそんな顔をしている。

無理もないだろう。銀河系から離れてここ数日の間、ガミラス艦が威力偵察を行っているのか頻繁に来るようになった。

 

戦争なのだからまあ、こんな事結構珍しくも無いのだが、若い連中はこれに辟易しているようだ。

実際、彼等はガミラスと拮抗状態だったころ空軍学校にも入っていなかったやつらもいるくらいなのだから、初めての出来事で対応が後手に回っているのだろう。

 

それ以外にも色々と理由はあるが…。

 

「おい、玲君ロッカーに罪はない。あまり蹴らないでくれよ?皆もな、ここ数日敵があまりにも散発的に来るから、おちおち寝れもしないのだろう。

君らが航空隊に入る前、こういう事は良くあった。だから何だと言われればそれまでだが、敵がこちらを正当に評価していなければこういう動きにならないのも事実だろう。だからまずは胸張ってくれ。」

 

「では、いつになったら向こうから仕掛けてくるんですか?」

 

「そうさな、近日中に攻撃を仕掛けてくると俺は思う。それも、これまでの規模を遥かに越える、そういうのが。まあ、冗談だけどな。しっかりと休めよ。」

 

ガヤガヤと話し声が聞こえてくるが、不満のある声は聞こえなかった。

ただ、このあと加藤君に『岩本さんも冗談言うんですね。』なんて言われて、『まあ、人間だからな』と返したのは俺の心に余裕が有るからだろうか。

 

そんな事よりも今オムシスが大変な事になっている。度重なる戦闘の末、遂にオムシスへの負荷がピークを迎え壊れてしまったのだ。そのため数日間の修復作業を行っているが、修復の目処はたっていない。

 

それどころか食料の枯渇が懸念されるようになってきた。

食事とはこの艦の数少ない娯楽の一つ、そのため徐々にではあるが、艦内の雰囲気が悪くなっていっている。

 

こんな時にイズモ計画派は着々と力を溜めているのだろうな、移住可能な惑星を彼等は探していた、そして銀河系から離れた場所を、敢えて選定していたはずだから、この付近の惑星へ移住を計画しているのかもしれない。

 

やることが多いなぁ

 

『ねぇ、何を考えているの?』

 

「今後の展望、と現状の不安要素の取り除き方とか。…?誰だ?」

 

目の前にいるのは岬百合亜?いや、違う髪型が若干違う?いや?纏う雰囲気もか、だとすると

 

「本当に君は誰だ。その体に入っているのは岬君じゃないな?」

 

「そう、私は私。でもあなたはどうなの?」

 

「どうとは?」

 

「あなたの体はあなたのもの?それとも貴方のもの?あなたこそ何者?人?幽霊?」

 

何だと?俺の正体に薄々気がついているのか?

 

「俺は俺だよ。それ以上でもそれ以下でもない。たとえこの身体を乗っ取っている亡霊のような存在であろうとも、俺は生き残ってやる。君の事は誰にも話さない、君が自主的に話さない限りは。」

 

「そう、私は別に構わないのだけれど。」

 

そういうと再び歩きだした。

何だったんだいったい。イスカンダル人は本当に不思議な存在だな。

 

まあ、良いだろう。さて、書類仕事にでも戻るとするか?部屋で書類(電気的な)を片付けた。

 

 

 

それから暫くした後、艦橋へと入った。

副長、真田がいた。

 

「岩本一佐、今は非番ではないですか。」

 

「いやー、非番なんて言ってられないからね。私なりに、オムシスと、食料の計算をやってみたんだが、ちょっと見てくれないか?」

 

「いや、私は畑違いですので私が見ても意味がないのでは?」

 

「まあ、そうなんだがね?艦内の現状を見てみてさ、食事が無くなる恐怖というのを改めて実感したんだ。

それに目を通すのも悪いことじゃ無いさ。」

 

二人して考え込んでいる。そのとき、

 

「レーダーに感有り、ガミラス艦です。」

 

真田が直ぐ様ワープに入るよう命令する。

 

「まて、敵は何隻でどの程度の距離だ!過去のデータと照らし合わせてくれ。」

 

照らし会わされたデータでは、今までよりも追跡距離。

そして、その規模が多くなっていた。

そう、まるで魚を網に追い込むように布陣している。

 

「真田、もしワープした場合重力の影響で進路が曲がる可能性は?」

 

「確かにあります。まさかそこに敵がいると仮定しているのですか?」

 

無言で頷く。

 

「だが、ワープしなくても敵はこちらを包囲しているだろうな。なら敵中を突破するしかない。どうやら敵さんも本気で潰しに来たらしい。」

 

「…。」

 

驚愕の顔でこちらを見ている。

どうした?顔を触ったときわかった。俺は笑っていた。

ああ、俺は渇いているのか?だからこうして、戦うのがこんなにも嬉しいのだろうか。

 

 

sideメルダ

 

最近同僚たちと、話をする機会が増えた。

父上からしたら嬉しいことなのだろう、最近父上が家にいるときに帰ると、嬉しそうに笑っているのが良く目に入る。

 

そんな日も長くは続かない。ある日あろうことかあの

ドメル提督が総統へ爆破テロを行ったと言う、情報が駆け巡った。

 

上層部は何とか箝口令を敷いているが、末端までその話で持ちきりだ。これは士気にも関わるであろう事態だ。

 

ヤマト討伐に向かっていはずなのだから、ヤマトの情報も手に入る。ヤマトはドメル艦隊の旗艦へ肉薄攻撃を行って来たようだ。しかし、術中の内であったことからあと一歩に追い込んだそうだが、そこでドメル艦隊に召集が入ったようだ。

 

やはり安心する、彼等が生きてくれて。やはり、ヤマトはイスカンダルへと向かってきているのだろう。

あれほどのエネルギーを得られるのは、オリジナルの設計だからかもしれない。

 

それよりもだ、ヤマト討伐に赴いていたドメル艦隊が到着する間、私たちは経理や、もろもろの書類仕事でてんてこ舞だ。

これならばパイロットをやっていたほうが遥かに楽で、私の性にあっている。ああ、コックピットが懐かしい。

上からの命令には逆らえない。特に父上の命令では。

 

これが今の私の日常。しかし、まさかこの出来事が私にまで波及するなどこのときの私は考えもしなかった。

 




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