たとい、エースと呼ばれても   作:丸亀導師

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誤字の訂正毎度有難うございます。


第23話 余地無き未来

「なに?艦長が倒れた?で、容態は」

 

「命の別状は無いそうです。私もそれを聞くまでは、心配で仕方がありませんでした。」

 

「うーん。今は艦橋は任せろ、古代と一緒に行ってこいよ。恩師なんだろ?私は良い、それほど親しい仲という訳じゃないからな。」

 

「良いのですか?」

 

「真田君。君がそんな顔をしているんだ、よっぽどの事じゃない限りはそんな顔をしないだろ?それに、艦橋での仕事はお前が一番多く知っているのがちょうど良いからな。」

 

真田の顔は少し眉をしかめていたが、行けるとなるとそれも少なくなった。感情が少ないけれど、やはり人の子なんだなと、このとき思った。

 

暫く艦橋で、指揮をとっていると二人が戻ってきた。二人とも何と覚悟の決まったようなそんな雰囲気をまとっている。

他の連中はビーメラの方に気が行って気が付いていないだろうがね。

 

艦橋では新見君が不穏で仕方がないな、せわしなく動いてはビーメラの事を細かく分析しようと、躍起になっている。それどころか生き生きしているぞ?

 

特に居住可能惑星だと言うことがわかれば、移住が出来ることを口からこぼす、真田の機嫌が悪くなったぞ?

真田はヤマト計画に命をかけているからな、それほど地球が元に戻ってほしいと願っているのだろうし、その妥協案であるイズモ計画なんて、奴は許さないだろう。

 

うん?この場面何処かで見たような?まさか、あれか?アニメで見たやつか?最近記憶が薄れているからか、どうも思いだし辛い、確か…そう反乱の兆しだったかな?

 

そう思い出したとき、既に二人は艦橋から出ていた。

さあて、俺はどんな仕打ちを受けるのかな?反乱軍の諸君。

 

俺は反乱が起こるのを、ただただ艦橋で待っていた。まるでそれに気が付いていないかのように、俺にはそれを見届ける義務があると、というのは建前で実際のところ今更動いても遅い。既に反乱軍に加担する警備と此方側の警備の目星を付けてある。後は彼、星名君がなんとかするだろう。

 

っと。来たな。

艦橋の扉が開かれる。

中からは保安隊と新見一尉が現れた。

 

「なんだなんだ?騒々しいな、何があったんだ?反乱か?それとも今君たちが反乱を起こしているのか?」

 

「ええ、現時刻をもってこのヤマトを我々が占拠します。岩本一佐には、我々への協力をお願いしたい。」

 

「伊東よ、それは無理な話だ。ヤマトをイズモ計画に使用しようとしているのだろうが、それは許容できない。」

 

「英雄はもう一人の英雄を裏切ることが出来ない。という事で良いんですな?」

 

「英雄じゃない。英雄なら開戦の引き金を引くような命令は受諾しない。第一君らとは相容れない。」

 

「良いでしょう。おい、彼を尋問室へ連れていけ。」

 

両脇を固められ扉に入るとき言った。

 

「新見君、君は何一つわかっていない。」

 

彼女はどんな顔をしていただろうか。

そんなことより、今尋問部屋にいる。

何故かって?連中に協力するとき、俺を尋問したいヤツが交換条件で出してきたそうだ。

 

で、今対面に座しているのが件の俺を尋問したいヤツ。

彼女(草加飛燕(ヒエン)だったか?)は、俺に聞きたいことが有るそうだ、あの開戦の日の出来事の真実を。

 

「あの時我々は確かにガミラスヘ無通告の攻撃を行った。それがこの戦争の原因だが?」

 

「無通告?天王星の監視ステーションが、再三ガミラスヘの停船勧告を行っていたはずです。攻撃と撃沈を示唆することも。それでも近付くガミラスが悪いはずですが?」

 

「半分あっている。確かに停船勧告は出した。だが、我々は攻撃に関する通告をしていない。特に何処までが限界ラインだとは言っていない。だからこそ、我々も悪いんだよ。」

 

それを聞いた彼女は更に顔を怒りに満ちた様子で言った。

 

「嘘だ!父がそのようなことをするはずがない。父は、ガミラスに殺されたんだ。」

 

「それを見捨てたのは私たちの世代だ。その事実を受け入れる事が出来るかは、人それぞれ努力が必要だと思う。受け入れるかどうかは君次第だ。」

 

まるで受け入れられない。そんな感じが漂ってきている。それに、今にも銃で頭を撃ち抜かれそうな、そんな感じだ。

回りの保安隊の連中もそわそわし始めている。大方どうしてこんなことになったのか、わかっていないのではないだろうか。

 

「君たちも言ってくれよ。私が言ったことは真実だ。にもかかわらず、彼女は私を殺そうとしているぞ?これは、立派な規律違反だ。助けてくれよ。」

 

こっちをチラチラ見ているから、迷っているのか?

もう一押しか?

 

「君たちの行いは立派な反乱だ。君たちにはわからないと思うけど、今帰っても人類は確実に絶滅するぞ?

変わりの星なんて見つからない。『喋らないで!!』何故なら銀河系の外こそがガミラスの勢力範囲なのだから。」

 

全員目を大きく見開いている。

 

「薄々感づいていたんじゃないか?銀河を離れてからの方が、ガミラスの動きが活発なことに。だからこそ、今ここで帰還しても、人類をぬか喜びさせるだけなのだ。さあ、選べ。彼等と共に帰り人類を殺すか。我々と共に一縷の望みを掛けてイスカンダルへ行くか。」

 

「だからなんだって言うの?私はガミラスを殺せばそれで!」

 

周囲の保安隊員が彼女へ銃を向ける。

 

「俺たちは家族を助けたいから、連中に協力した。だが、今の話を聞いて心変わりしたよ。死者と心中なんてごめんだ。」

 

そのとき、通信音声が流れ出す。

始まった。奪還作戦が今始まった。

我々は彼女を縛り上げ、動けないようにすると部屋の外で待機しているものたちを懐柔した。

 

戦力として我々は徐々に大きくなっていく。

遂には機関室へと到着し、波動エンジンの推力を停止し、ワープさせないようにする。

 

そのとき、再び艦内のアナウンスが流れた。

どうやら艦橋でも事態が起こったようで、我々は勝利したのだ。

 

そして、艦橋であった森君のユリーシャ疑惑。それを私は否定した。

 

 

sideメルダ

 

デスラーを引き摺り降ろせ!我々は決して屈しない。今なお多くの者が命を落とし、殺し殺されている。

見よ!この帝都を、嘗てのような美しい姿も、今では軍のデスラーの主導で統制され、見るも無惨ではないか!」

 

最近帝都ではこのような事を口にするものが、増えた。そして、それを取り締まる親衛隊も大動員されている。

 

「この戦いにより我々ガミラスは…?!」

 

スッと彼の頭を何かが抜けていく。狙撃されたのだろう。今では、このような事をすれば裁判など無しに射殺される。

 

今日は聖イスカンダルの日であったはず。軍歌が流れそれを市民が旗を振って祝う。私が小さい頃はこのようなものではなかった。

もっと厳かで、心が洗われるようなそんなものだった。

 

私は今勉強をしている。

ガミラスの政治体制の変貌を、嘗て大公国であったときガミラスは他の星系との連合体制を行っていた。その時は、ガミラスが他の星系を保護する形でいた。

 

しかし、内乱の後デスラーが総統に就任すると外部への圧力を強め完全な植民地とし、完全な帝国となった。

それによって外へ外へと外征を進め、今では誰の得にもならない戦争が続いているという。

 

私には今この国は末期なのではないかと思うところがある。一人の英雄に全てを背負わせたツケが回ってきたのだと。

 

こんな事をやっているからか、最近尾行されているような気がしてならない。私も彼等と同じような事になるのだろうか。

 




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