艦長たちと共に、解析したデータを真田の説明で聞きに来た。まず現在の航海日程は戦闘や諸々のトラブルにより大幅に遅れているという。
そこに来て、古代が持ち帰ったデータ上の亜空間ゲートを使用することで、旅路を更に短縮し三万光年先に進むという計画だ。ただ、それにともない一つの問題があった。
それはこのゲートを管理する種族がガミラスであること、そしてゲート付近の敵の排除、掃討。
そしてゲートコントロール衛星の制圧だ。
これらは、現在付近の宙域でのガミラスの反応が無いことを考慮し、航空隊の防空網を形成しつつ索敵を行うこととし、速やかに衛星を制圧する事が決定された。
その後、俺と真田、沖田艦長、佐渡先生と共に自動航法室へと行き今後の身の振り方、特にいかにして真実を公表するかという事を話した。
特に自動航法室の中にはユリーシャが眠っている。今は身体だけがここに有り、心?魂?は百合亜君の身体を乗っ取っている状態だ。たとえ仮宿と言えど百合亜君は体の異変に気付いて来ているようだから、心労が心配だ。
そんな事もあったが、航海は何事もなく順調に進んでいく、たまには新見君の事でも見に行くかと、行き当たりばったりで行動する。正直な話暇なのだ、戦闘の高揚感というものが足りない…。
ん?俺はこんなにも戦闘狂だっただろうか。
「失礼する。新見君に話があって来たんだが、開けてくれるかな?」
「新見一尉にですか?しかし、艦長の命令がない限りたとえ一佐と言えど、勝手に出すわけには行きません。」
「だろうと思って許可をとってある。これでも駄目かな?」
そう言うと、どうぞどうぞと扉を開けた。
そこには体育座りをして角で丸くなっている新見君がいた。片手には写真を持って。
「やあ、思い出に浸るのに邪魔だったかな?」
声をかけるとこちらを向いた。
「一佐ですか。いったい私に何のようで?」
「君にとって最悪の結末を話に来た。」
「最悪の結末?ですか?いったいどういうことですか。」
「ああ、ここに真田くんが解析したデータがある。
あのビーメラで見付けたものだが、そこにはガミラスの情報があったよ。奴等は銀河の外からやって来たという仮説を証明するのにうってつけの存在だった。」
「まさか、ガミラスが外からやって来ていると?」
彼女は少し青い顔をしている。
そりゃそうだろう。彼女はガミラスを銀河系の内部の方から来ていると考えていたようだから、もし計画が成功した場合。
彼女は人類を死地に追い込んで、自滅する道を歩ませた存在になってしまうだろう。
そう考えた彼女は自分の事を責めているようだった。
「一佐、それだけでここまで来てくれたのですか?」
「いいや、少し昔話をしたくてね。真田はゲートの方へかかりきりだし、君らが学生の頃の事を聞ける相手が今は、君しかいないのでね。」
そう、彼女たちとの出会いは遊星爆弾が激しくなってきた頃、我々機動艦隊が戦略的大勝利を納める数年ほど前のこと。
3人組は学校のなかではかなりの有名なものであった。
稀代の天才、努力家の秀才、卓越した奇才
誰がどれに当てはまるか、天才は真田、秀才は新見、奇才は古代(守)。
当初、天才と秀才はピンと来たが奇才だけはパッとしなかった。
彼等は学生にも関わらず、非常に優れていた。
正直な話、俺なんかよりも余程優れている。特に学者がわからない俺は、守の才能だけはわかったほどに。
負けない戦い方を知っている。それだけでも凄まじい。
そんな彼等との接点はなんと、食堂だった。
当時は特別講師として行った学校の中でまさか出会うとは思わなかったが、意外と三人とも打ち解けていた。
ある種の仲間意識が芽生えるほどに。
そんな話をしていたら、時間が経過していた。確かそろそろゲートが開く頃か。
「新見君面白いものを見よう。ゲートが開くどうだい?」
「遠慮しておきます。」
「そうか。」
一人で見るゲートの開通は寂しいものだった。
sideメルダ
『いたぞ!止まれ!』
ハァハァ、まだ、追ってくるか。いい加減諦めてほしいものだな。
私は逃避行を続けていた。
ドメル将軍の反乱罪の通告を受け、父は総統府へと参じたそうだが、なんと言うことだろうか。事もあろうに共謀の罪に問われていた。
あの父を拘束するなど、総統府の連中の頭はどうかしているのではないのだろうか。
だいたい父がそのようなことをするはずがないのだ。
何かの謀略かはたまた陰謀か私にはわからない。しかし、父が拘束されたことは事実だ。
そして、娘である私にも追手がやって来たのだ。
私への追手は昔馴染みのものが、危険を知らせてくれたおかげで、私は何とかこうして逃げているのだが、如何せん数が多すぎる。
デスラーの爆殺後、首都の警備はいっそう強化されて、今では都市一つがまるごと要塞のようだ。
それでも裏道まで網羅することは難しいようで、何とか追っ手を掻い潜ることが出来た。
私はフェンスの前にいた。
目の前の光景にある種の絶望と、忌避感を抱いて。
彼等は、反乱分子と特定されたものを輸送艦に押し込んで、収容所惑星へと送り込む。
私がそこで、立ち尽くすわけ、それはエリーサ・ドメルがいたことだ。録な尋問を受けないまま、そのまま収容所惑星へと移送されていくのだろう。
もしかすると他の人々も皆そうなのかもしれない。
今ここにいても私は見守ることしか出来ない。
何故このようなことになったのだろうか。
私の帝国への不信感が、ピークを迎えようとしていたとき、私の後ろへ一台の車が停車した。
親衛隊ではない、いったい何者であろうか。
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