我々はバランへの道をゲートを使用することによって短期に終わらせる事が出来るようになった。
しかし、問題は未だに残っている。
我々は向こう側を知らない、向こう側にはどれ程のガミラスがいるのかそれを知る術は敵の偵察機による偵察しか存在しない。
艦長室にて、バラン開通の報告と今回立案された作戦の検討を行っている。
俺には選抜権は存在せず、加藤が選抜権を所持している。
正直言って俺が志願するつもりであった。
それなのに、艦長に止められた。何故かと問えば、自分の命は恐らく長くはないこと、何時死ぬともわからぬこの身では、この艦を支えるには足りない。この艦には柱が必要であるという事を。
それでも、俺は答えた。条件を付けて、志願者が現れない場合、俺が偵察の任に付く。正直言って志願者は現れないであろうと、そう思っていた。
だが、一人志願者が現れた。篠原だ。
篠原弘樹一見チャラチャラした外見をしているが、内面は筋の通ったやつだ、正直な話嫌いじゃない。
だが、こういうやつ程生き残って欲しいものだ。
何故彼は志願したのだろうか?普通ならば、皆嫌々かヤケクソでやるだろうに。
まるで、『俺がやらなきゃ誰がやる』なんて顔をして話をしている。
作戦まで後、15分。何か言ってやった方が良いか?
そう、あいつの生存率を上げるような。
「おい、篠原君。」
機体の近くにいた連中が一斉にこちらを見た。彼の機体に近付き矢継ぎ早に言う。
「大変な任務に就いたな。私から一つだけアドバイスがある。もしも、ばれたらまずは敵艦にへばり付け。そうすれば攻撃は自ずとしてこなくなる。信用するかは君次第だが、これだけは言おう。必ず帰ってこい、これは命令だ。」
ヘルメットを被っているから声は聞こえないし、どんな表情をしているかわからない。ただ、静かにしかし、しっかりと敬礼が返ってきた。
こういうやつは絶対に死なない。
そうこうしている内に出撃の時間だ。
彼は地獄のなかを突き進むべく機体を加速させていく。
タイムリミットは、後二時間、何処まで彼は出来るだろうか。
そんな緊張の中でも、パイロット連中は陽気?である。何故かって?篠原の帰還祝いを計画しているからだ。
あいつの好物を密かに調達し、調理をしている。
最近出来た有事での炊事を全員が出来るからか、非常に旨いものを作るだろう。
だが、そう上手くいく筈もなく、彼等が待っていた篠原は現在昏睡状態である。
佐渡先生曰く、それほど重い怪我ではなく、極度の緊張状態からの離脱に伴う気の緩みが深い眠りを誘ったのだとか。
昏睡状態というよりノンレム睡眠に近い状態のようだ。ただし数日は目を醒まさないだろうと、航空隊の連中には知らせないが、もし知ったのなら篠原を叩き起こしに来るだろうからな。
篠原が持ち帰ったデータから、作戦を練り始めるが、正直な話、艦長、俺、古代、真田だけで作戦を練るのは非常に困難なことがある。
かといって加藤は戦術よりも、航空隊の指揮官があっているし、森君や島君は門外だから頼りになり辛い。
だから、もしも次に作戦を練るような事があれば誰かを推薦して、共に模索するようにしよう。
と、今回の作戦終了後に艦長に直談判しに行くとしよう。
そして、ヤマトは敵中に単身突撃をかます。
当初の予定通りとは行かなかったものの、バラン内部への突撃へ成功。
その後バランを突っ切り、大マゼラン銀河方面のゲートへと直行。
波動砲で敵艦隊もろとも、銀河系方面のゲートの破壊に成功した。
篠原の持ち帰ったデータがなければ、今回の作戦は成功しなかっただろう。
今回の任務に参加した彼には沖田艦長からの訓示と、俺からの勲章を与えた。
勲章は、死んだ友人が持っていたものを仮で採用した。
地球へ帰還した後で、正式のものをと約束した。
sideメルダ
私が収容所護送船を見送った後、訳のわからぬものたちから接触があった。
彼等は、反デスラー主義を掲げたものたちで、言ってしまえば、今回の騒動の原因でもある。
そんな彼等が私に接触を謀ってきた。要するに私を利用しようとしているのではないだろうか?
私はこれでもガル・ディッツの娘だ。いい御輿になるんだろうさ。
だが、それでも彼等を利用するしか現状を打開する術はない。そちらが私を利用するのならば私もそちらを存分に利用させてもらおう。
「ん…メルダさん?」
「んあ?すまない少し考え事をしていた。」
「そうですか。そう言えば、今貴女の事が軍の一部で話題になっていますよ?敵と内通した裏切り者だと。」
彼等の所持する車の中で聞かされた。
現在の私の立ち位置、そう私はガミラスの裏切り者だと、情報の出自はわからないが、大方総統府の中で私や父と派閥争いをしていたやつらからであろう。
「確かに私は彼等ヤマトの乗組員と接触をした。だが、その情報は大きな間違いだ。彼等とは次元断層からの脱出の折り、一時的に休戦を結んだだけなのだ。」
「それにしては、ヤマトの情報をここ数十日の間調べ続けていたようですね。」
こいついったい何処まで私の事を知っているんだ?
背筋が凍る思いだ。
「まあ、僕らには関係有りません。むしろ好都合です。何れ彼等との接触を図らなければなりませんので、その時はご助力お願いしますよ?
それと、貴女には良い知らせです。ヤマトが単身バラン星を抜けて、ガミラス本土へ接近中だそうです。良かったですね。
あっと、そう言えば銀河方面軍のことで調べものをしていましたね?確か、『凶鳥』の事ですか?航空隊の連中は、肝を冷やしていたそうですよ?」
凶鳥?私が調べていたのは、彼の事だ。戦場伝説の登場人物のような非現実的な存在ではない。もっとも、凄まじい腕ではあったが。
「そんな伝説は調べていない、私が調べていたのは一人のパイロットの事だ。」
「二人ともその辺にしておけ、付いたぞ?」
なんと運転席で運転していたのはあの日出会ったアインハルト中佐、そしてよく見ると助手席にはヴァイセンベルク中佐だった。
だとしたら私と話をしていた彼は、いったいどれ程の階級なのだろうか。
「ごめんね。名乗るのが遅れたよ。
僕の名前はヴィルヘルム・ヴァム・デスラー。
アベルトの甥に当たるものだよ。」
私はとんでもない者たちと接触してしまったのではないだろうか。
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