sideメルダ
あの日あの後、私は安全な場所という名の、屋敷の中で寝泊まりをした。それはとても豪勢な物で、正直な話私の家よりも立派であった。
その中で彼自称デスラーの甥は、私に告げた。
『私に協力するかしないかは、君が決めることだから強制はしないよ。でもね君はきっと我々と合流する。今は君の思うまま動いて見ると良い。』
と。
そこで相変わらず警備がお留守な、総統府までやって来たのだが父の部下であり、私の恩師であるヘルダー中佐が拘束され、連行されていく最中であった。
そこで私が中佐を呼び止めようとしたところ、ちょうど到着したのか私の護衛の二人が私を引き留めた。
私は中佐が連れていかれるのも、父が連行されていくのも止めることもできず、ただ自分が追われるのを必死で逃げるしかない。
ならば私は、あの悪魔のような青年を利用しようか。
彼の力は実に絶大なものであるのが、屋敷を見るだけでわかった。あれは、デスラーとは違う歴史のあるという重みと、説得力だ。
それでも私は彼を利用する立場を一貫していなければならない。彼に呑み込まれ、彼のマリオネットになってはならない。彼とは対等な立場でなければ。
そうと決まれば、彼等と行動を共にするのが最善手であろう。私に謀略は似合わないが、自分を家族を守るためなのだ、私は悪魔をも欺こう。
sideドメル
私が勾留されてから幾日が経ったであろうか。
後一歩でヤマトを仕留めることが出来たというのに、私はこうして牢の中にいる。
彼等は今どうしているだろうか、まるで天命に導かれるように、都合よく私はこの牢にいる。
戦に運は付き物というが、これほどの運は私とて聞いたこともない。
そう思案していると、私は牢から解放された。
総統が私の嫌疑を晴らしてくれはしたものの、妻の罪状は相も変わらず晴れぬまま。
そして、再びヤマト討伐を言い渡された。
今の私にはかつての艦隊を運用するほどの信頼はない。
私に委譲された艦隊は旧式の空母群。
兵は新兵、そして歴戦の老兵たち。
顔馴染みが昔からの顔馴染みや、かつて私を指導してくださった方々も中にはいた。
更には私がもっとも嫌いな搦め手を行うための、特殊任務部隊がいた。彼等はシュルツの同郷の者たちで、構成されている。テロン人は彼等と同じ肌の色をしているからこその選抜であろう。総統もお人が悪い。
私たちは航空隊を主体とした作戦を行うが、総統から頂いたテロンでの銀河方面軍の航空戦闘の公式記録を幕僚達と共に参照していた。
その中では驚くべき事もあった。初期の戦闘からある機体による損害が、日に日に増加していく様子だ。
この存在によりシュルツ達は、遊星爆弾によるアウトレンジ爆撃をする程に、航空隊が追い詰められていく。
時には未帰還機が、投射兵力の凡そ4割を越えていきその破壊されたブラックボックスからの情報には全て、同じエンブレムと01の数字が描かれた機体が写っていた。
時には艦艇すら奢るそれに、シュルツ達はこれに名を付け、最大の警戒を寄せていた。
名は『凶鳥』白く酷く目立つ機体に、赤色の塗装で施された獲物を捕らえようとする鳥類のエンブレム。
機体が変わろうとも、色とエンブレムだけは変わらず戦場を駆ける姿はまさに狩りだ。
幕僚であり、エースパイロットでもある、ライルに至ってはあの冷静な男とは思えないほどに興奮する始末だ。
これほどの存在が、テロンには多くいるのだろうか?
ヤマトの指揮官しかり、このパイロットしかり。
この戦い、どちらが勝つか見えない。
side岩本
これから向かうのは決まっている場所、決戦の地『七色星団』か。
艦の全体をブリーフィングで、決定した航路は原作通りだ。
航空隊の連中の練度も上々だが、彼等には足りないものがある。母艦の軽視だ。
彼等は本来基地航空隊、つまり基地の防空と敵への攻撃を行うものだ。
彼等は『移動する基地・耐久力のない基地』という概念がない。
それによって防空戦闘は、ある程度の損害を良しとされる場合がある。
だが、ヤマトは耐久時間が決められていて、地上基地よりも脆い。防空戦力は厚くなければならないが、限られた数しかいない。
しかも空母戦での敵機の誘引という方法を知らない。
簡単に言えば、母艦から離れすぎるという事で
例えるならば、小学校低学年のサッカーのようにボールに一直線だ。
その癖を何とかしなければと、そう訓練をやっているんだが、如何せん染み付いた染みを落とすのは並みの努力じゃ無理のようだ。
「何度言えば解るんだ?敵にくっついてノコノコ出ていって、ヤマトを沈められては意味がないんだ。」
全員からはそんな無茶なという眼差しが来る。
もっと前からやっておけば良かったと、俺自身後悔している。
「いいか?戦闘機は無理矢理にでも振り払え、まずはヤマトを攻撃する攻撃隊を落とすんだ。最悪戦闘機だけを相手取るチームを組め。そうすれば役割分担できるからな。」
「俺だってこんなこと言いたくないが、俺も出る。
最低でも40機は落として見せるが、それでも二百機来たら残り160機だ。しかも一方向から来るとは限らない。俺達がいるのは、直すのが容易な基地じゃなくヤマトだ。何よりもヤマト第一に考えてくれ。」
こんなことして意味があるのだろうか。
彼等を守るのは地球のためだ、少しでも被害を減らせば地球に帰還する可能性も大きくなる。
そんな訓練が終わり、自室に戻ろうとした時、百合亜君?いやユリーシャがいた。こんなところで何をしているのやら。
「ねぇ。貴方は、何のために戦っているの?」
「唐突だな。そりゃ、地球の為だが?」
「嘘よ。貴方は彼女のために戦っている。貴方の恋人のために。」
「死人は関係ない。俺は今ある地球のために…」
「いいえ?でも、彼女はそれを望んでいない。彼女は貴方が貴方のやりたい事のために、戦ってくれる事を望んでいるの。」
「どういう事だ。では彼女は俺の直ぐ側にいると?」
「でも、貴方とは今日でお別れ。だから、真っ直ぐ生きて欲しいそうよ。」
彼女との会話のあと、物思いに耽っていた。
そんな中でも食事はせねばと、食堂へ。
そんな時、玲君が食堂へ現れた。
そして、説いた。自分のやりたい事のために戦うとはどういう事か。と。
答えは単純だった。かつての復讐心で動いていた彼女は、今ではメルダとの再戦のために生きようとしていること。恋をしたことを言われた。
ああ、単純な事だった。俺は死者との約束のために今まで生きてきた。恋や、生者との約束などこれっぽっちもなかった。
そう。誰かを守りたいという気持ちが、足りなかった。
だからこそ、変えよう。少しずつ、まずはメルダにもう一度会うこと、そして教え子達を守ろう。
「ありがとう。答えが見つかったよ。俺は前へ進めそうだ。」
玲君がキョトンとした顔だった。
後日
「さあ、今日もやろう。俺が教えたいことは、一つだけ全員が生き残る方法だ。」
さぁ、再スタートだ。
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