たとい、エースと呼ばれても   作:丸亀導師

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第27話 七色を血で染めて

ヤマトが七色星団に到達した。

一時的に磁気乱流に巻き込まれ、艦の安定を失ったがそこは流石に慣れたもので直ぐさま体勢を立て直す。

 

パイロット連中が、機に搭乗しているなか俺は艦橋にいる。正直な話俺も準備はしてある。

機体は最後に出撃する順番であるから、問題はない。

服もパイロットの着る服装ではあるが、今回はちょっと違う。

 

空母乗りの着る、緑を主体とした服装をして艦橋へと入った。艦長以外は実際に初めて見る服を着ている俺を、珍しそうに見ている。

 

するとレーダー手から敵発見の報がはいった。

緊張感が艦内に充満する。

 

「艦長、俺は機体の方へ行きます。」

 

「わかった。」

 

「この戦い、激しいものになりそうです。」

 

扉を前に台詞を言う。

艦橋から出ると皆慌ただしく、戦闘配置に付いていた。

俺も急いで格納庫へ向かう。

 

船外から振動が伝わってきている。始まったようだ。

第一波攻撃は艦直上からの不意討ちから始まる。

艦を守る防空隊は敵艦への攻撃に熱心になっているから、防空任務に付いている奴が誰一人いない。

 

格納庫へと到着した、俺の機体と予備機だけが残っている。

 

「岩本だ!今から出撃する。後部ハッチを開いてくれ。」

 

『待ってくれ!攻撃されているのに今から開けるのか!?』

 

「一瞬だ!艦長が出撃のタイミングを計ってくれている。頼む!」

 

『了解しました!』

 

機体に搭乗して出撃を待っていると

 

『山本、コスモゼロ行きます!』

 

彼女が出撃した。あの出撃方法なら弱点を下さずに済むのだが、こちらを選んだのが悪かったか。

 

『出撃カウント始めます。五秒前、4,3,2,発信どうぞ!!』

 

「ファルコン1出るぞ!」

 

後ろ向きに射出され、エンジンを一気にふかす。

俺が出た瞬間ハッチは閉じられた。

そして、心地の良いGが体にかかる。レーダーに写し出される敵機を確認し、脅威度の高いと判断したもの即ちまだ攻撃手段を所持しているものたちへ、攻撃を開始する。

 

 

side ドメル

 

「第一次攻撃隊の攻撃は成功しました。しかしながら、敵艦の損害軽微なり、再度の攻撃の要求。」

 

流石にあれだけでは落とせぬか。

 

「司令!!第二次攻撃隊の損耗率現在2割、なおも増大中!こんな損害率なんて見たことない!」

 

やはりヤマトに乗艦していたか、凶鳥という名も伊達では無いわけか。

 

「第三次攻撃隊を急がせろ。奴が第二次攻撃隊に目を奪われている間にヤマトを沈める。」

 

だが、どんなに強くともたった一人では百以上の敵を相手に動くことなど到底不可能だ。

この凶鳥が、人間の範疇で収まるのであればの話だが。

いつの世にも必ず出てくる、戦争神話の英雄が彼等の側に産まれたか。

 

 

side名も無きパイロット

 

今回の戦いには自分で志願したけどさ、こんな…こんな事になるなんて思いもよらなかった。

目の前にいる味方が一機また一機と、落とされていく。

何なんだ、連中の赤い機体はわかる。動きが人間の動きだから。

 

でも奴は違う、ああ!!また一機落とされた。次は俺か?それともまた別の…くっ来るな!!

うわぁ!もうダメだ。あれ?生きてる、何で…。

 

外を見ると僚機が俺の身代わりとなって落ちていく姿がある。

ああ、何でこんなにも死ななくちゃならないんだ。

気が付いたら、俺だけが生き残っていた。

隊長も、友人も皆いない。

 

爆弾を外した俺にまるで興味を無くしたかのように、翔び去っていく奴の尾翼には“赤い鳥”が描かれていた。

 

 

sideメルダ

 

私は今奴の館にいる。つい最近協力関係を築いた少年だが、やはり不気味にも程がある。この年齢で当主というのもあれだが、何よりも年齢相応の感情の昂りとかそういうのを微塵も感じない。私でさえ、抑えられない時があるというのに。

 

「これで僕らは正式な協力関係になったんだけど、僕は形式上、メルダ少尉の雇い主と言うことになるね。それで、早速だけどある任務についてほしいんだ。」

 

無邪気に言うが、その顔は私を値踏みするかのような目をしている。

 

「では、その任務の説明をお願いしたいのですが、司令殿?」

 

「ハハ、そうだね。では君の念願の、父上の奪還を行うつもりなんだ。そこで君には偽名と、特務中尉の階級を授けたいと思う。詳しくは、作戦本部の二人に聞いて?結構長くなるし、今手元に資料はないからね。デスラーが見たら最悪だからね。」

 

そうは言うが、諜報部は手中に納めている癖によく言う。さらに、こいつの話からして、現在のガミラスでこいつを支持する勢力はなかなか多く、兵器開発局や、財務局何かはこいつの傘下に収まっているようだ。

 

「そうそう、ドメルがまたヤマト討伐へと向かったそうだよ。旧式の空母を四隻も持っていったんだから、今度はどうなるだろうね。僕はヤマトは、勝てないんじゃないかなと思っているんだけど、君はどうかな?」

 

「率直に言えばわかりません。ただ、もしかするとヤマトが勝つと言うことになるでしょう。ヤマトには、彼等がいますから。」

 

そう、負ける訳がない。彼等には妥協できない理由がある。そういうものたちが負けるのならば、この戦争で私たちが反乱勢力となる筈がない。

そのまま叩き潰されるのが落ちだろう。

 

「私は、彼等に掛けているのです。私たちの運命を。」

 

奴の目は私を真っ直ぐに見つめていた。

 

 

side山本

 

良くやった。そういう言葉が皆から聞こえてくる。悲しみを堪えてそういうのを聞いていると、やはり心が痛む。

 

私なんかよりも、遥かに一佐の方が敵を落とし、あまつさえ敵に振り回されていた味方までも救って見せた。

あの人間の出来ないような動きは、一佐ならではだが、正直いって悔しい。一佐のような操縦が出来ていたのなら、私はもっと多くを救っていたのではないだろうか?

 

だが、そんな力を持っていても救えないものが有ることを再度認識させられた。

 

森船務長を奪われてしまった事だけは変わらない。古代さんは、大丈夫だろうか。

古代さんにまとわりついていた、忌々しい影がなくって嬉しく思っている自分に反吐が出る。

 

慰めにいこうとも思わない。下心見え見えだから。

それよりも、一佐の事も気掛かりだ。あんな運動をしたのだ内臓が破裂していても可笑しくはないのに、平然とデブリーフィングで私たちを、メタメタに言いはなった。自分のせいでもあると、言ってはいたが。

 

もしも、またこんなことが有るなら私は、次こそは一佐に荷が、古代さんに傷がつかないよう。限界を越えて見せなければならないんだ。




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