俺は今、見事なまでの貴賓室にいる。
隣にはメルダが座っているが、軍服ではなくどちらかと言えばドレスのようなそんな服装だ。
そして、対面するは今だ幼い顔立ちをしている青年?少年?がいる。
あの緊急着陸を無事に乗り越えたのは良いものの、結局はガミラスの捕虜という事になったのだが、目の前の少年の力によりこうやってイスカンダルへ向け、出港した。
しかし、この少年。ものすごくきな臭いというか、同族のようなそんな気がするのだ。
こいつ、絶対に存在していない人物のはずだ。
この歳で貴族の長を勤め、財界にも顔が利き、何より軍への干渉が出来るだなんて、どう考えても同じようなやつであろう。
「ああ、そう固くならないで?私はヴィルヘルム・デスラー。君達が敵対していたアベルト・デスラーの甥に当たるものさ。以後よろしく。」
握手を求めてきた。こう言うときは、敵対の意思を見せてはならないだろう。なんせ今俺は籠の鳥だ。
無礼をしたら何をされるかわかったものじゃない。
「お初にお目にかかる。私は、岩本鉄朗一佐であります。国連宇宙軍極東方面軍所属のパイロット兼ヤマトの戦術アドバイザーをしております。」
「それは存じているよ。隣のメルダくんとは確か面識があったはずだね。
さて、積もる話もあるとは思うんだが、これから我々はイスカンダルへと向かうとする。
目的は君の配達、それとアベルトの尻拭いとでも言えばいいかな?」
「かなり野心家なのですかな?イスカンダルの姫君と面識があると見える。」
「私は政治には口を出さないよ、ヒスさんは優秀な内政家だからね。デスラーの目が外を向いていたときには、いつも国内を纏めあげていたのは彼だった。だから彼に任せた方が良いからね。
それと、二つ目の質問にはただ『はい』とだけ言っておくよ。」
翻訳機の影響だろうか、それとも根っからの言葉使いなのだろうか?俺の言い方も悪いだろうが、どうも上から目線の言葉だ。
「それよりも、本題に入ろうか?
君は、ウルトラマンだとか、イデオンだとかそういう名称を聞いたことが有るか?」
おいおいおい、ちょっとまてまさかの直球勝負か?あのさどう考えても部外者のメルダが近くにいるんだが、そんなんで大丈夫なのか?
「あると言ったらどうなります?」
「そりゃ、喜ぶよ。なんせやっと見つけた同郷のものじゃないか。本当に嬉しいよ。」
メルダが目を見開いているぞ?なんだ?まさかそういう外の世界から来た連中が昔いたのか?
だとしてもあまりにも順応が早すぎないか?
「君も困惑していると思うんだが、我々ガミラスの一部や、イスカンダルには宇宙の外からやって来たものたちの記録が、僅であるが残っているそうだ。
そこで我々は『流れ人』と呼ばれているんだ。
メルダ君も、最初はお伽噺だと思っていたそうなんだが、君や私の事をユリーシャ様から聞いたのだろう。
そこでやっと理解したそうだ。」
『流れ人』ね。で、メルダはユリーシャからそれを聞いたと。う~ん、ユリーシャの事を大分信仰していたからな、そりゃ信じるだろうさ。
「それは、理解できた。同郷のものと言うことはわかった。それよりもだ、どうしてメルダがドレスを着ているんだ?」
よく見ると頬を赤く染めている。軍人というよりも一人の乙女といったところか?まあ、どちらかと言ったら、ヴァルキュリアだが。
「それかい?それはねぇ」
今ガミラスでの流行りや、文化的な部分の話を長々1時間話してくれた。
その間メルダは、終始無言であった。
長話をしている間にイスカンダルへ到着してしまうとは。
sideメルダ
奴は何を思ったのか私にこんな服を着せるとは、こっこんな服を着せて何をさせようというのか。だいたい、私は軍人だ命令とあらば仕方がないと割り切れるが、『君の意思で』と言われたら、どうすれば良いのかわからないじゃないか。
本当に奴の心理はわからない。
それよりも、私にこんな服を着せておいて私には話もさせない。この二人がどういう接点があろうとも『流れ人』というものが、どんなものであろうが知ったことではない。
私は、岩本に彼に憧れにも似た感情を抱いている。
だから、こんな蚊帳の外で話を進められるのは非常に不愉快だ。
「おい、いい加減話を止めないか。もうイスカンダルへ到着したんだぞ!」
「おっとメルダ君、そんな口を聞いてもいいのかな?」
「貴様は軍属では無い、従って貴様に私への命令権は存在しない。だいたい、貴様は財界を裏で操るだけで、正式な政治家でも無い。であれば、貴様の命令に私が従わないのは当たり前の事ではないか?」
岩本がそうなのか?と言った途端に態度を替え始めた。
どうやら岩本と同様の存在で、なおかつ奴が政治家ではないと判断したのだろう。
それは大いに間違いだが、一流の政治家ではないからヒスには勝てない、そんなやつだと見抜いたのだろう。
そして、奴の恫喝は何を潜め一人の小心者がそこに現れた。
「さて、行こうか?メルダもそう思うだろ?」
全く動揺しないとは、まさしく歴戦の戦士か。
sideヴィルヘルム(以後ヴィリー)
苦手だ。なんなんだこの男、政治将校とは違って凄まじく肝が座っていやがる。
こっちの話をずっーと聞いていながらそれでも、こちらの誘導に載ることがなかったやつなんて初めてだ。
翻訳機のせいか?だがまて、俺だって元は地球人だ。
特にヤマトの乗員は皆日本人なんだから、効果が無いはずがない。
鈍感すぎるのか?それか、そういう部分だけ長けているのか?わからなすぎる。
俺が先導して艦を出ると、ヤマト乗員とちょうど同時に出たのだろう合流した。
あの岩本とかいう男、かなり慕われていたのか乗員たちから、無事の生還を祝いの言葉で迎え入れられていた。
俺も同じ人生だったらあんなになっていたのかな?
無理か、俺には屋敷の中で飼い殺しされてた方が性にあってる。
いかんいかん、マイナスになると駄目な事しか起こらないぞ。ここは、社交的に挨拶でもしておこう。
そして、俺たちはスターシャ様の元へと馳せ参じた。
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