たとい、エースと呼ばれても   作:丸亀導師

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カ号の裏で…

西暦2192年12月25日

 

この日は普通であるなら、聖なる日として世界中で祝われるはずの日である。しかし、いまここ、国連宇宙軍極東方面軍のドック内部では、異様な緊張感で満たされていた。

 

ガミラスの艦隊が再度火星に向け前進を開始したという知らせが、地球へともたらされたからだ。

現在地球にある艦隊は修理中のものから、新造のものまで全てを駆り出す。そんな雰囲気が形成されている。

 

そして、我々第二機動艦隊はそことは違う、もう一つのドックに終結していた。

 

 

第二機動艦隊作戦司令艦ブリーフィング

 

諸君、忙しいところ集まってくれてありがとう。長い休暇はどうだったかな?

さて、我々は新しい装備を手に入れ、遂にガミラス艦に対抗可能な空対艦ミサイルを導入した。

これにより我々機動艦隊はますます、宇宙軍の主力となり得るものであろう。

 

さて、新兵器の話はここまでだ。諸君らも聞いている通り、ガミラス軍が行動を開始した。

接敵は、およそ一月後だと言われており、また火星沖での戦闘となるだろう。

 

火星沖で行われる艦隊戦は、戦艦を主軸とした編成がなされており、対ビーム撹乱剤を散布して敵を待ち構える魂胆だ。しかしながら航空機に対しては無力というのは変わりない。

 

航空戦力に関しては、第一機動艦隊及び火星基地のグラディウスが担当することとなっている。

それでも敵の航空機の総数がわからない以上、敵の航空機を引き付ける必要が出てくる。

 

そこで、我々第二機動艦隊が火星~木星間のアステロイドベルトへと、突入。ガミラスの前哨基地へと強襲を仕掛ける事となった。

我々は派手に動かなければならない。そして、カ号作戦と同時に動き出さなければならない。

 

一見矛盾するも、これを行わなければ航空機が火星へと殺到することだろう。

よって、アステロイドベルト内での敵航空機の誘引を行う。

 

航空機は戦闘機のみ使用される。我々はあくまでも囮である。そこは充分に気を付けるように。

 

 

そんな感じで言われたとしても、どう気を付ければ良いのだろうか。それが皆の考えだ。

我々はいつも通りに戦うだけ。

気掛かりなのは、航空隊に新米が入隊していることだろう。

 

あいつは何割生きることが出来るのだろうか。それだけが気がかりであった。

乗艦である旗艦翔鶴へと門をくぐる。

後はいつも通り、自分の部屋へ行き荷物を整理するだけだと思っていた。

 

だが、ルートである格納庫へ入ったとき、何やら整備員が大勢一ヶ所に集まっているのだ。

よく見ると、一ヶ所だけでなく複数箇所塊が出来ていたが。

 

一番近くの塊から聞き覚えのある声が聞こえる。

覗くと、整備兵に機体の変更点や癖を教えている彼女の姿があった。気が付くと体が動いていた。

 

「何でいるんだよ。」

 

向こうもこちらに気が付いていたらしく、

 

「私は命令されたから来ただけ、それに新しい機体は一見すると元の機体と同じだけど、色々と変更点があるし画像だけでは説明しきれない部分もあるからかな?」

 

こんな危険な場所に彼女が来るとは予想していなかった。

何と言うことだろうか。

 

まあ、彼女の性格だ、説得は無意味なものとなり、結局アステロイドベルトまで、何事もなく到着した。

そう何事もなくだ。恐ろしいことに、一度たりとも小惑星が艦の近くへ接近することがなかった処か、望遠画像でも、一ヶ所にしか見当たらなかった。

 

小惑星を一ヶ所に固めたような大型の岩塊が存在している。それの内部から光が漏れている。

岩塊に対して巡洋艦、駆逐艦が攻撃体勢に入る。

そこから待つこと一時間、国連から攻撃命令が発せられた。

 

光学迷彩を解き、艦隊が姿を表し、攻撃を開始する。ミサイルと粒子砲の雨が岩塊に直撃していく。

火星からの報告により火星に向かっていた敵航空部隊がこちらへ向かってきているという。

 

我々の作戦は概ね成功と言うところだろう。

さて、ここからは俺たちの出番だ。

航空隊が発艦準備に入る。オペレーターと更新をしていざ出撃と言うところで横槍が入った。

 

『岩本君聞こえる?敵はこの一年間私たちと同じように機体をアップグレードしてるかもしれない。だから気をつけて。』

 

「俺だけじゃなくて皆にも言ってやってくれよ。」

 

向こう側はどうなっているんだろう、気になるがそれは後回しだ。

 

『総員発艦作業を続けつつよく聞け。敵航空機の総数が判明した。およそ600だそうだ。対して我々の艦隊は8隻が全力投射して586機。第一機動艦隊がこちらへ航空機を飛ばして来ると連絡があったが、連中の手助けなしでかたずけるぞ!!爆撃機を優先的に攻撃せよ!!』

 

艦から射出される衝撃を受けながら考える。果たしてこの作戦は上手く行くのだろうかと。

 

その懸念通り最悪の事態となった。

機動艦隊が帰還命令を受信したのだ。それを発艦した全ての機体に通達した。だが守る奴は誰一人いない。

 

『小隊長何故、誰も帰還しないのですか?』

 

新米の俺の僚機が疑問を投げ掛けた。

 

「このまま帰投しても、空母が必ずやられる。なら待機して敵機を落とした方が、艦隊の損害は少ない。それに、帰投は帰りながらでもできるからな。」

 

目の前の空間には既に、敵機が群れていた。

 

 

第二機動艦隊 空母翔鶴

 

「誰も命令を受諾しません。艦長。」

 

「それもそうだろう、艦は対空戦闘に移行する。

艦隊司令に通達、指揮を委譲せよ。君では役不足だ。」

 

「返信来ました。《フザケルナ》です。それと、全艦艇に対空戦闘用意です。巡洋艦タイコンデロガ、データリンクを送ってきました。護衛艦隊迎撃を開始します。ミサイル到達まで580秒。また、航空隊接敵まで620秒」

 

「敵要塞の動きは」

 

「ありません。完全に沈黙しました。旗艦から入電、《輪形陣を維持しつつ取り舵一杯、戦線を離脱せよ。》です。」

 

艦隊が動き出す、地球へと帰還するために。

 

「ミサイル到達まで5.4.3.2.弾着!今!レーダー上からおよそ40機消滅を確認。航空隊交戦に入ります。」

 

 

 

岩本機

 

完全な乱戦だ。右を見ても左を見ても上を見ても、敵と味方が入り乱れ、航空戦を行っている。

各言う私もその一部、目の前の敵を落とすのみ。

動きがやけに単調だ。二度目のロールをしようとしたので、動きをあわせで機銃で落とすと、後方からの攻撃を左に反らしつつ機体の噴射を利用して背面に回る。

急なGが体にかかるがそんなもの今はどうでも良い。

 

「ファルコ2生きてるか?お前は爆撃機のみを攻撃しろ。」

 

『攻撃しろったって何処にいるんですか。』

 

「何?」

 

攻撃を流れ弾を避けつつ周囲を確認する。爆撃機が見当たらない。まさかと思い望遠を最大にする。しかし、それでも見当たらない。そうか…敵もこちらと同じと言うことは…。罠か。無線のスイッチを切り替える。

 

「翔鶴!聞こえるか!これは罠だ。はじめからこっちなんて眼中にない。爆撃機なんて一機もいない!」

 

『どういうことだ。』

 

「言った通りだ。」

 

 

 

空母翔鶴

 

『翔鶴!聞こえるか!これは罠だ。はじめからこっちなんて眼中にない。爆撃機なんて一機もいない!』

 

「どういうことだ。」

 

『言った通りだ。』

 

「レーダーに感あり、この反応は未確認の艦隊です。

艦隊が…突如として出現しました。」

 

「成る程、そういうことか。敵はワープ航法を使用することが出来るということか。であるならば、最大出力で進むしかない。少しでも被害を抑えるために、なんとしてでも。」

 

強制的に戦闘室に入ってくるものがいる。

「失礼します。技術士官の佐々木三尉です。お話があります。この状況を打破する考えがあります。」

 

「技術士官が何かね我々は今忙しいんだ!とっとと出ていけ。」

 

「いやまて、聞こうじゃないかその方法を。」

 

「はい、それは」

 

 

岩本機

 

「おい、司令室損耗率どのくらいだ!?こっちはもう30機は落としたぞ。」

 

それでも宇宙にはまだまだ敵機がうようよと飛び交う。

 

『全機に通達、帰還せよ。これより、反物質兵器を使用する。効果半径に入るな。』

 

マジかよあれ使うのか。確か2発しかなかったやつだよな。

だが、殿として時間を稼がなきゃな。

 

「ファルコ2,3帰還しろ。殿は、俺たちACESが引き受ける。なぁに、みんな一騎当千だから大丈夫さ。なあ、ジョン、チャック、フェルナンド」

 

『そうさ親友さて、しっかり時間を稼がなきゃな。』

 

『当たり前だろ?ああ、俺の愛しの艦に傷を着けさせる訳には行かないからな。』

 

『愛しいかはさておき、艦は失いたくないからな。』

 

「さあ、いこうか?イナゴの群れの中に。」

 

 

結果として、大激闘の末敵の足止めに成功し全員が艦に帰投した。翔鶴並びに空母はほぼ無傷で巡洋艦、駆逐艦は損傷艦を自動操縦に切り替えて囮の艦隊を編成し最短ルートを取らせた。

 

元々損傷艦の推進剤は底を付きそうだった事もあり、廃棄処分と兼ねて一石二鳥だな。

帰還までの間に敵の艦隊が来ることはなかった。

未確認の情報だが、反物質兵器で敵艦を2隻ほど撃沈に成功したそうだ。コストがバカにならないからそんなに使えないが。

 

格納庫を出て休憩所に一時退避する。

俺の行動を予測していたかのように華奈が表れた。

 

「よかった。ほんとうによかった。落とされてなくて。」

 

「あの程度じゃ撃墜されないさ、まあ2割は死んだが。それよりも、まさか彼処で反物質兵器の使用を打診するとは、君も肝が座ってるね。」

 

「出し惜しみしても沈められるなら道連れが多い方が良いと思っただけよ。でもね、貴方のあの行動は赦せない。」

 

顔に怒りが浮かんでいる。

 

「殿になったことか?だが、あのときはあれが最善だったんだ。艦隊に取り付かれる訳には行かなかったからな。」

 

「全部戦闘機なら関係ないはずよ。」

 

「いや、無人機がいた。体当たりされたらどうなるか考えたくも無いだろ?」

 

それを聞くと黙って考えるように頭を抱えてしまった。

こうなると一時間は考えるだろうな。

休憩所だと邪魔になるんだがなぁ。

 

艦隊が地球に到着する頃には、カ2号作戦が行われていた。どうやら敵の航空戦力に大打撃は与えられた様であった。

 

しかし、それでも制空権を取ろうとガミラスは躍起になった。それが後にバトル・オブ・マーズという大規模空戦に発展していく。




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そろそろ外伝終わりかな?

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