たとい、エースと呼ばれても   作:丸亀導師

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毎回毎回、誤字報告ありがとうございます


英雄と呼ぶな、敗北者と呼べ

地球に帰還することおよそ6日、傷付いた艦艇が全てドックに入れられている。

しかし、この程度の被害で済んだことは実に良いことではないだろうか。なにせ、第一機動艦隊は空母3隻を失い駆逐艦・巡洋艦合わせて26隻も失ってしまい、今や戦力の半数が消えたことになる。

 

だが、第二機動艦隊は駆逐艦・巡洋艦が合わせて4隻沈んだ程度、戦力の低下は免れないが最悪の事態は免れた。

 

逆にカ号作戦参加艦艇、特に戦艦を有する連合艦隊は、戦力の7割を失い最早艦隊としての行動に支障をきたすレベルである。

 

これも沖田艦隊によるカ2号作戦の成功によって、帳消しに何とかなっている。沖田艦隊は非常に練度が高いだけでなく、良い司令官に恵まれた艦隊だ。

だが、我々の誘引作戦のお陰で敵の航空機は、戦線に投入されなかったのは見るに、我々も無駄ではなかった。

しかし、時は刻一刻と迫ってきていた。

 

 

国連軍極東管区

 

その日、俺は彼女と共に俺たちの戦闘データから、敵の航空機のデータを抽出していた。

戦闘で得たデータを機体の制御cpuに組み込み、無人機として自立戦闘をさせようという試みだ。

 

このcpuは、俺の戦闘データを元に造られるため、非常に強力になると思われた。

だが、いざ実証機に組み込むと予想外の出来事がおきた。機体が機動に耐えられず、空中分解を起こすのだ。どうやら俺は無意識の内にセーブすることによりこれを免れテイルようだ。

 

試験は何度も何度も行われ、次第に機体の形状も定まって来ていたある日のこと、遂に運命の時がやって来た。

当日、俺も気が付く事が出来なかった。一月後が遊星爆弾の初到達の日になるとは知らなかったのだ。

 

その日も試験を行っていた。そこに一本の要請が入った。

 

「なんですって?今から艦隊へ合流しろ?」

 

『そうだ、悪いが至急集まってくれてこれは命令だ。君に拒否権はない。』

 

「ちょっと待ってください。何処にいくかくらい教えて下さい。」

 

『火星だ。さあ、早くしろ。』

 

あの焦り様はなんだ。

 

「どうしたの?」

 

「至急艦隊へ帰還することになった。悪いがデータの収集はまた俺が戻ってきてからになる。」

 

「大丈夫。貴方が帰ってくるまでは、AI同士で戦わせるから。自己進化って素敵でしょ?」

 

「かもな…。必ず戻る。それまで待っていてくれ。」

 

「わかってる。あなたは必ず戻ってくる。いつもそうだから。」

 

これが彼女の最後を見たとき。

会話は、宇宙から交信で行えたから。

 

艦隊へ到着してからの一言めは

 

「おめでとう。君は二階級特進で今日から三佐だ。」

 

である。何故にと思ったが、聞いてみれば

 

「これから我々は火星において、一大航空作戦を行う。ガミラスが火星へ航空部隊を発進させたのが確認されたからだ。そこで、我々国連軍は総力を上げてそれを撃退することとした。本土の迎撃部隊も加えて。」

 

「要するに新兵に毛が生えた程度の連中を、指揮下に置いて被害を最小限にしたいと?無理な話です。彼らの練度は日増しに良くなっているのに対して、我々はどんどん下がっています。」

 

「だからこそ、今やらねば我々は本土を失うことになる。ここで叩かねば時間すら稼げない。」

 

「わかりました。艦隊の指揮官は誰ですか?」

 

「ニコラス・A・アンダーセンだ。彼ならば上手く立ち回れるだろう。」

 

「そうですか。地球を頼みます司令。」

 

「そうだな。お前も艦隊を頼むぞ?坊主」

 

昔からの付き合いと言うものは上司と言えど変わらぬものなのだろうか。

私に飛び方を教えてくれた、彼もまたこのときに帰らぬ人となる。

 

何事もなく港を出る艦隊。見送るものはおらず、ただむなしく夜空を天へと登っていく。

それは死出の旅となると艦内の人間は誰しもがそう思っていた。

 

それから十数日後、火星に艦隊が到着する。

火星と言っても衛星軌道だ、火星とはある程度の距離がある。

そこから機が次々と発艦していく。

 

迎撃部隊の連中は円筒回転シリンダー式簡易輸送船から、発艦していく。(ヤマト艦内の原型)

目の前の火星には、前々回の戦域で破壊された艦船が、スペースデブリとして前を塞いでいる。

 

それでも航空機にとって隙間はある程度あるため、戦闘は可能だ。

暫くすると、編隊の向こう側から赤い光のようなものが見え始めた。ワープしてきたのだ、ガミラスが空母(ヒトデ型)を連れてやって来たか。

 

それだけではない、ゴマ粒のような小さな点々がとてつもない数こちらへ向かってきている。あれが、敵の本命か。

 

『いいか、各隊相互支援を忘れるな。一人十機を落とすまで死ぬことを禁ずる。良いな!』

 

「了解、よく聞いたか?大隊各機新人はとにかく逃げろそして、生き延びろ。尻についたのはベテランが落としてくれる。だから今は生き延びる事だけ考えろ。ベテランも一人で戦おうとするな。そういうのは俺一人で十分だ。みんな勝とうぜ!」

 

『了解。思う存分暴れるとしよう。』

 

『本当に隊長は鼓舞が下手だな。』

 

『戦闘ではあんなに頼りがいが有るのにな。』

 

「言うじゃないか。じゃあ誰が一番多く撃墜出来るか競走でもしようか?」

 

『『ハハッ冗談言わないで下さいよ。』』

 

周囲を見渡せば多くの編隊が形成されている。

その数およそ五千。火星における戦闘に投入できる最大戦力だ。

だが、その半数以上が新兵からなるもの、対してガミラスはそれをAIで補っている。

数はこちらが敵の倍。しかし、性能と練度は覆す事が難しい。

 

宇宙空間では早期発見から敵に捕捉されずに行う攻撃は正直言って不可能に近い。

センサーの性能もさることながら、肉眼で捕捉する事が出来るのがその大きな要因だ。光学迷彩は、一度のみ使用できるが、今回は奇襲でないし何より敵の方がレーダーでこちらを捕捉している。

 

よって、航空機同士の超至近距離での格闘戦がこの戦いの勝敗を分ける。

そして、相法の先陣が激突した。

まるで戦国時代の足軽が戦い会うが如く、次々と突撃していく。

 

色が混じり合い、乱戦が始まる。

右も左も乱戦状態。どうやら言い付けどうりに編隊を組んで戦闘を行うものが殆どで、たまに見るエース級は単機で複数を相手取り戦っている。

 

そして、各言う俺も複数機が俺を追いかけ回す。

執拗に俺だけをつけ狙うこの機体は一機は確実に有人機だ。しかも腕が良いやつ。後の6機?は無人機だ、機械的なランダム性を有する動きをしていやがる。

 

「ファルコ隊全機、まだ生きてるな?敵のエースを引き付ける。」

 

話をしている最中今度は正面からおそらく有人機がこちらに来る。

 

「俺は正当な評価を受けているらしい。俺の事は援護せず他の隊を援護せよ。拒否権はない。」

 

各機了承したのか俺から離れて、別部隊へと向かう。

さあ、追いかけっこの始まりだ。

ヘッドオンした敵にミサイルをお見舞いするが、そらされる、それは計算の内。

エンジンの出力を上げてスペースデブリに突っ込む。続けて同じコースに飛び込んでくる敵機が2機デブリに衝突する。

 

艦艇の残骸を糸を縫うように飛行する。やはりAIは処理が追い付いていないようだ。

デブリの不規則な動きに幻惑され次々と爆散していく。だが、やはりエース級は一味違うようだ。憑いてくる。

 

だから、機体をギリギリまで奴に近付ける。後ろから機銃で撃たれるが気にする必要はない。

そして、次の瞬間機体を一挙に減速、やつ等の真後ろに着き形勢は逆転。

 

たとえエースたちと言えど、俺は半ば人外に足を突っ込みかけている、彼等に負けるわけがなかった。彼等はデブリからの脱出を試みた。だが、私がそれをさせまいと撃墜した。

 

そして、デブリ内部を通って敵本体に到達し、そこでも空戦が行われていた。

相法が相手側に殴り込みをかけるような闘いが数時間にわたって行われ、徐々にではあるが数が減っていきデブリの仲間入りをするものたちが多くなっていく。

 

そんな中で、地球もガミラスも母艦を攻撃することが出来ないでいる。あまりにも航空機の密度が高すぎるため援護すらままならず、ましてやデブリによって主砲すら届かない。

 

地球側に苛立ちはない。なぜなら本来の目的である敵航空機部隊の壊滅を達成できればそれで良いのだ。

あわよくば母艦を破壊する。どうせ航空機を失った母艦はただの箱にすぎないのだから。

 

そして、俺の目の前で味方を食い潰そうとする敵がいた。非常に良い動きをしている。さぞ名のあるパイロットなのだろうか。

だからここで落とすのが後々良いことになるだろう。

 

まとわりつく敵を交わし味方とやつの間に割り込む。注意がこちらに向いたようだ。

 

『あ、ありがとうございます。』

 

「礼を言うくらいなら戦え、敵はまだまだたくさんいるんだ。さて、」

 

彼は俺を殺すことに躍起になるだろう。彼を眼中から消し仲間を落としていけば自ずと俺だけを狙うようになるさ。

 

彼の機体を無視し、有人機だけを狙い落としていく。

一機また一機と落とすとともに彼の動きも鋭くなっていく。

ああ、そうだそれで良い、俺だけを狙えそうすりゃこっちの被害は少なくなるんだ。

 

俺は既に60を越える数を落としていた。

推進剤も心許なくなってきたそして、彼が動き出した。

最早止まることなどしない。ただ闘牛のようにこちらに来る。腕は良い、だが感情的になれば自ずと動きが単調になる。

 

やはり彼等も我々と同じ《ヒト》であると言うことか。感情があり、怒りが存在する。何の感慨も無く彼との戦いをしたが流石に、機体の限界が近い。短時間で終わらせなければ、と言ったところだがなにやら向こうも動きがおかしい。

 

疲れだろうか?終わりはあっけないもので、何と敵のコックピット上部を掠めるようにこちらの銃弾が真横から当たった。そしたら首が消えていた。

 

様子がおかしいのは、敵の全体だったようだ。何故か帰還していく。まるで潮が引くが如く、去っていく。

俺にとっての問題は燃料が底を付きそうだということだ。

 

幸いなのだろうか、先ほど首を跳ばした機体は風防が壊れているだけだ。要するにあれを飛ばせば帰還できる。

 

「まさか死人の機体に載るとはな。うん?これはタグか?文字が書いてあるが、読めないな。顔も跳ばしたせいでわからないしな。すまないな、機体を借りるぞ。」

 

うん、作りは似てるか、同じような生物が作るものは似ているものが多いからなこれもそれなんだろう。

よし、何とか行けるか。その前に通信を入れとかなきゃな。

 

「あー、こちらファルコ1。翔鶴応答願う。」

 

『こちら翔鶴。どうした。』

 

「敵が撤退して余裕が出来たのは良いのだが、燃料が底をついた。ただ帰還する方法はあるので土産とともに帰る。くれぐれも撃たないでくれよ?」

 

『本当に帰ってこられるのか?』

 

「大丈夫だ。問題は無い。」

 

『了解した。貴君の帰還を楽しみに待っている。』

 

そこから母艦へと戻る。艦隊に近付いたら警告を受けた。バンクと手信号で合図をしたら着艦を認められた。

勿論警備が出てきたが仕方の無いことさ。

 

それから生体検査して本人と確認されてから、ブリーフィングルームへと入室した。

皆は絶望した顔をしている。なぜだ。

 

「どうしたんだ?そんな暗い顔をして…。」

 

「地球に…、遊星爆弾が落下したらしい。」

 

「何だと?どういうことだ。まさか、俺たちは囮にされたってことか?何処が被害を被った!!」

 

一人が苦虫を噛み潰したような顔で言った。

 

「極東方面の技術開発部、種子島付近だ。」

 

その時の記憶はそれで跳んでいる。

後から聞いたが大分俺は取り乱したようだ。

 

この戦いから地球は更に劣勢にたたされることとなる。




次回 機動艦隊壊滅


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次回で外伝終了です。

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