神の駒   作:海苔 green helmet

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病1

 3ヶ月前....

 

 その男は絶望していた。膝から崩れ落ち、病院の床にに両手をつく。涙を流し、嗚咽をもらす。

 男の妻は病弱だった。その妻は赤ん坊と男を残して、出産直後に死亡してしまったのだ。

 取り出した赤ん坊も心臓が止まっていた。流産だった。

 

 男は泣き疲れた。病院内のベンチで横になっていると、廊下から足音がした。

 男は起きあがり、ベンチに座り直した。まだ喪失感残っており、心にぽっかりと風穴が空いていた。

 

 男はふと自分が奇妙な体験をしていることに気がついた。廊下の右を見ても左を見ても人の姿は無い。足音のみが近づいてくる。

 男は椅子から立ち上がり、もう一度左右の廊下を確認する。

 突然左奥の電気が消えた。

 男は振り返る。男は半ばパニック状態に陥っていた。しかし、心には喪失感が残っている。

 

 右奥の電気が消える。聞こえていた足音は、徐々に大きくそして速くなっていく。まるで高まる心臓の鼓動のようだった。

 

 次々に電気が消えていく。左、右、左、右、左、右、左。

 そしてついに点灯している電気は、男の頭上の一つだけになってしまった。そして不気味なことに、いつの間にか足音は男の真後ろに迫っていた。

 男には後ろを見る勇気は無かった。足音は振動と共に男の後方で鳴り響いている。まるですぐ後ろで足踏みをされているようだった。

 

 ???「登場の仕方をもっと考えるべきだったかな?」

 

 後ろから声がした。若く中性的な声だ。

 

 男の背筋は氷ついた。妻と子が死んだ上に、異常な現象が起き、確実に人間ではない悪魔の類いの何かが自らの背中にいる。状況を整理しようとするが、尚更混乱するばかりである。

 

 突然足元がぐらついた。男は直立している筈なのに、身動き一つしていない筈なのに、周りの景色が右方向に回転し始める。どうやら男を中心に、周りの物が回転しているようだ。

 周囲の向きは180度回転し、男は先程真逆の方向を向いていしまう。

 

 目の前には継ぎ接ぎだらけのタキシードを着込んだ、巨大な体あった。ニヤついた口と、ギラギラとラメのように輝く目が、男の顔を見下ろしている。

 ニヤついた口が言葉を垂れ流す。

 

 ???「やあやあやあ!私は夢を売るセールスマン!宜しく頼むよぉ♪」

 

 夢を売るセールスマンと名乗ったその人物は、放心状態の男の手を掴み無理やり握手をした。男の体がガクガクと揺さぶられる。

 

 ???「さてと、まずは自己紹介から始めよう!なんせまだ私のカッコの前が[?]で埋まってるからねぇ」

 

 セールスマンはモスグリーンのスーツケースを何処からともなく取り出した。

 スーツケースを開け片手を突っ込むが、「あれ?無い」とか「ここじゃないな」とか言い、腕をスーツケースの奥へと忍ばせる。スーツケースの容量から考えて、物理的にあり得ない腕の入り方、どんどんと腕は入っていき、遂にはセールスマンの巨大な上半身がまるごと入ってしまった。

 

 男はこの状況から逃れようとしていた。実は空間が回転をし終えた辺りから、逃げようと後退りしているのだ。しかしある一定の距離、具体的には光の届かない場所へ移動するとそこから先へ進めないのだ。

 暗がりへの恐怖故進めないとか、そういう単純なものではなく、物理的にそれ以上行けない。まるで暗がりが、影がさも固形物であるかのように壁を形成しているのだ。

 男は自分の体験していることが夢なのでは無いのかと疑い始めた。いや、夢であると思い込まなければ正気を保てなかった。

 

 ???「あったあった、はいッ!名刺だヨ♪」

 

 男の手にはいつの間にか名刺が握られていた。

 

  [哀洞 流(アイドウ ナガレ) ○夢を売るセールスマン]

 

 流「私は哀洞 流(アイドウ ナガレ)という。さあ!夢のある話をしよう!

 ・・・おっと流石におっかな過ぎたかな?腰も抜けてちゃってるし、まともに口が聞けないかな?」

 

 流は空中に手を置き、何かを操作するようなパントマイムをする。するとそれまで閉じたままだった男の口に隙間でき、男の意志とは関係なくパクパクと動き始めた。

 次に流はボリュームのつまみを操作するような手の動作を行う。男の声が徐々に大きくなる。

 

 男「お、俺に夢は無い...妻とその子供ごと夢も消え去った......」

 

 流はわざとらしい仕草で驚いた。

 

 流「なななっ、なんッだってぇー!

 それじゃ、それじゃあ二人は亡くなってしまったのかい?」

 

 男の口はそれ以上動かない、男は静かに頷く。

 

 流「それは可愛そうにぃ...なんだか私も泣きたくなってきたよぉ~、おぉよぉよぉよぉぉ...」

 

 男の口がまたも勝手に本音を語りだす。

 

 男「俺は...まだ自分の子供の顔すら見れていないんだ....出産の時に立ち会えなかったんだ!」

 

 男は風穴の空いたバケツのように本音を漏らす口に嫌気がさしつつも、揺れ動く感情からか、流れ落ちる自らの涙は誤魔化せなかった。

 男の目から数滴の雫が落ちる。声も口もワナワナと震え、感情が露になる。

 

 男「お、俺が..もっと優秀なら、せめて娘の顔を拝むくらい....妻の手を握ってやるくらいできた筈なのにッ!クソッ!クソッ!」

 

 男は病院のの床に自らの拳を叩きつける。虚しく、音のみが響いた。拳が赤く腫れ、涙で濡れる。

 流が男に近づき、そっと拳を手に取る。ハンカチで涙を拭き取り、まるで聖母のような笑顔で、悪魔の囁きを始める。

 

 流「わかります。わかります。悔しいですよね...虚しいですよね...歯がゆいですよね....

 でも、もしかしたら...私の持ってきた物を使えば、娘さん生き返るかもしれませんよ。」

 

 男は訳が分からずただ聞くことだけしか出来なかった。

 流が立ち上がる。スーツケースをベンチに置き、中身を漁る。

 

 流「まず必要なのは方法!」

 

 流はスーツケースから、なにやらパイプやら、配線やらが付いた金属の塊を取り出した。それは手のひらサイズで、気味の悪いことに塊全体が脈動している。

 

 流「そして材料!」

 

 廊下の奥の方から何かが飛んでくる。男の素人目からでも、それが赤ん坊の死体であることはわかった。

 赤ん坊は流の手に収まると、白い煙を上げ、一瞬で金属製の人形のようになってしまった。

 

 流「これはあなたの娘さんです。娘さんは体のパーツが欠けている。この装置があればパーツを作り出せます。

 さて、ここで支払い、あ、つまりはこの装置のお値段なのですが...なんと格別プライス15000円とさせていただきます!ですが...なんとお試し期間中ということで、満足いただけないようでしたら、返品!返金共に可能!」

 

 男の目が装置に釘付けになる。

 

 男「た、対価は本当にそれだけなのか!?怪しい呪いとか、面倒な等価交換とか無しか?」

 流「ええ、なんせ私の仕事は...夢をぉ、与えること...

 さて、如何なされます?たかが雀の涙程のはした金、その程度で人一人の命が甦る。安いものでしょう?

 あと必要なのは..あなたのぉ...強固なぁ..決心..だけ....」

 

 男(金などどうでもいい...

 どうせ夢なら、どう転んだって...最後には覚めるさ..)

 

 男の手は自然と財布へと伸びていた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 3ヶ月後...

 

 水色のスバル360カスタムが落ち葉を蹴散らしながら走って行く。

 青い鳥は幸せを運ぶとされているが、この秋塚 弧竜の所有するこの360の場合、大抵は悲劇かご馳走が待っている。今回はどうやら前者のようだ。

 

 神奈美「申し訳ありません、このようなお粗末な車でしかお送り出来なくて...」

 

 前席に座ったモッズコートを着た少女は、後席の女性に話しかける。

 

 ???「いえいえ、とても可愛らしいお車で...ちょっと音はユニークですけれど、そこも愛嬌として見てしまえば、小鳥のように可愛く見えてきますわ。」

 秋塚「ほぉらなッ!見る人が見ればこの車だって輝けるんだ。」

 

 神奈美は秋塚の言葉を無視し、メモ帳にペンを走らせる。

 

 神奈美(中山 加織 29歳 職業は農家、これから向かう霧払(キリハ)村の村長の娘

 髪型ショートボブ 黒淵眼鏡に上下芋ジャージを抜群のプロポーションで着こなす 推定身長160cm、何で私よりも背が高い!? そして、そしてまた...む、む..)

 秋塚「そのメモの内容、仕事に関係あんのか?」

 神奈美「人のメモ帳を勝手に見ない!」

 

 神奈美は秋塚の横腹を軽く肘で突く。

 

 加織「何を書いてるんですか?」

 神奈美「風景ですよ風景、紅葉が綺麗な山道だなぁって。」

 

 神奈美はページ適当にめくり、窓の外の風景をメモ帳に描いていく。

 

 秋塚「そうそう、この神奈美さんはこういう美しい自然の風景に敏感でね、特に山だね二つ並んだやm」

 

 またしても秋塚の横腹に神奈美の肘がヒットする。

 

 秋塚「いでッ!ハハハッ!嫌いな場所は断崖絶壁ってか?いでッ!いでッ!」

 加織「確かに紅葉も美しいですが、私達の村は霧の作り出す風景が売りなんですよ!そこらの山に登って、霧のかかった村を見下ろす景色は圧巻なんです!

 年々霧が薄くなっていたのですが、3ヶ月ほど前から昔みたいな濃い霧が戻ってきまして...とっても美しいんです!」

 神奈美「それについては写真を一回見たことがあります。ちょっとした画用紙でも持ってきていればよかったですよ、その圧巻の景色を是非とも描いてみたかった。

 そういえば依頼の詳細を聞いていなかったのですが、どういったご用件で我々に連絡を?」

 加織「はい、単刀直入に申しますと私共の村、つまり霧払村で最近妙な病が流行っているのです。」

 神奈美「病?ですか?」

 

 神奈美はメモ帳のページをめくり、ペンのインク残量を軽く確認し、聞き耳を立てる。

 

 加織「私は仮に病と呼んでいます。一部では呪いと呼んでいる者も。」

 神奈美「ふむふむ。して、その病、あるいは呪いの症状とはどういったもので?」

 加織「はい、その症状なのですが.....あっ!そこを右です!」

 秋塚「ほいさっさ!」

 

 山道を抜けると寂れた村があった。

 

 加織「あれ?様子がおかしい...」

 

 そのようだ、村に入ってすぐの民家に人が押し寄せている。

 秋塚はその民家の近くに車を停めた。

 

 神奈美「行ってみましょう。」

 

 民家に近づくと、白衣を着た男が人混みを押し退け出てきた。

 

 白衣の男「加織さん!こっちです!」

 

 加織は白衣の男の方へ足早に近付く。

 

 加織「またなの!?」

 白衣の男「はい、ですから早くこちらへ!」

 加織「お二人も!速く!」

 

 三人は白衣の男に連れられ民家に通される。漬け物の壺がところ狭しと並べられた玄関を抜け、奥の部屋へ。

 

 部屋の前までくると、襖から女性のうめき声が漏れ出てきた。まるで麻酔無しで手術をされているような声。

 白衣の男が襖を開けると、更に音量が増す。うめき声は鋭く耳に刺さる叫びに変わっていた。

 

 中を覗くと、酷く血の気の引いたの女性が、手足を縛られた状態で布団に寝かされていた。手足を縛られても尚暴れる女性は、親族であろう老夫婦に押さえつけられている。

 

 神奈美「失礼します。」

 

 神奈美は部屋へ足を踏み入れる。

 

 白衣の男は部屋へ入るや否や、持っていた革製の鞄から茶色の小瓶と、注射器を取り出す。

 

 白衣の男「取り敢えず麻酔を打ちます。しばらくはこれで落ち着くでしょう。」

 

 老夫婦は静かに頷く。叫び、暴れる女性の体制を無理矢理変え、服を少しめくった。

 

 白衣の男は注射器を女性の腰に当てる。しかし...

 

 白衣の男「こ、これはッ!」

 

 女性の叫び声が響く。

 

 加織「どうかしたんですか?」

 白衣の男「刺さらないんです!まるで皮膚の下に鉄板があるみたいだ!」

 

 その時だった。何かが破れる音がした。紙ではない。ビニール袋でもない。

 

 秋塚「肉が...裂ける.....音?」

 

 女性の腹の辺りから血が流れ出す。白い布団が赤く染まってゆく。

 老夫婦は女性の腹を見て気絶してしまう。

 

 女性の腹からは血を帯びた鉛色の、虫の足の様な物が突き出ていた。皮膚を破り、腹筋を引きちぎり、赤や紫の内蔵を絡めながら蠢いている。

 

 足は次から次へ腹から突き出て来る。四本目が出たところで、足は床に力を掛けて立ち上がろうとする。女性の体が浮き上がり、四本の足はその体重を支える。

 立ち上がった姿は四脚の蜘蛛のようで、B級ホラーに登場するクリーチャーに似た恐ろしさも兼ね備えている。大穴の空いた腹からは胃や腸が垂れ下がり、腹の穴が鍋のように血を溜めていた。

 しかし、力強く立ち上がったかに思われた足は、産まれたばかりの鹿の様に貧弱な動作をするとスッと力が抜け、女性の体を床に叩きつけ、それ以降動かなくなってしまった。

 腹の穴に溜まった血が床や壁に飛び散っている。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その後三人と白衣の男は村の病院へ女性の遺体を運んだ。

 木造の病院で、昔は学校だったらしい。手術室のみがタイル張りの床に変えれられている。

 遺体を手術台に載せると白衣の男が口を開いた。

 

 白衣の男「私は手術なんて大層なものやったことが無いんです。私に出来る治療なんざせいぜい風邪の治療くらいなもので.....

 村の者にこの症状現れると、私はその者が苦しまないように麻酔を打つのがやっとで....」

 秋塚「それ以上はいい、あまり自分を責めると、本当にお前のせいになるぞ。エグい物(モン)見たんだ、ちょっと休んでこい。」

 白衣の男「はい、すみません...」

 

 白衣の男は足取り重く、手術室から出ていった。

 

 加織は女性の腹から突き出た足を、暗い面持ちで指先を使って撫でる。

 

 加織「機械病。私はそう呼んでいます。

 ここを視てください。ほら、まるでロボットみたいな関節なんです。」

 

 確かに足の見た目は正しくロボットのそれであった。

 円筒状の関節に、金属光沢のある足、それにワイヤーやらがまとわりついている。

 

 加織「そして磁石を近づけると...」

 

 ガチッと音を鳴らし、磁石が足に張り付いた。

 

 加織「明らかにこれは金属なんです。

 ・・・おかしい、ですよね。人間の体から金属が生えるなんて....異常です....

 この病は数週間前から流行りだして、既に五人も亡くなっているんです。

 お願いです!助けてください!」

 

 加織は床に頭を擦り付け土下座をする。

 

 神奈美「えっ!?ちょっと?」

 加織「有名な病院の方にも、有名大学の教授や、悪魔払い、果てまでは占い師の方まで訪ねても、お金ばかり取ってあてにならないアドバイスをしていくだけで....

 風の噂で耳にした貴方がたしか、もう頼れる所は無いんです!」

 

 加織の涙が手術室の床に落ちる。拳を握りしめ、歯を食い縛る。

 

 神奈美「まず顔を上げてください。」

 

 神奈美は加織の前でしゃがみ、手を差し出す。

 

 神奈美「さあ、掴まって。」

 

 加織は神奈美の手を掴み、神奈美はそれを引き、加織の体を起こす。

 

 神奈美「勿論この悲劇は終わらせてみせます。だけどまずは調査が必要です。どんな探偵や刑事でもヒントがなければ謎は解けない、まずはヒント集めからです。」

 秋塚「あと寝床も。流石に幼女と車中泊はまずい。」

 神奈美「誰が幼女よ!背が低いだけでしょうが!」

 秋塚「えっ!?まさか自分の事幼女だと思ってんの?」

 神奈美「おめーかよ!お前は幼体以前に男でしょうが!背なんセンチだ?明らかに私よりデカイだろ!」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 二人は加織を帰したあと、白衣の男に手術室を借りると伝え、遺体の調査を開始した。

 

 神奈美「失血によるショックで死亡ってとこかな?」

 

 神奈美は遺体から突き出た金属の足に触れる。

 

 秋塚「多分な。正直医者じゃないからよくわからん。

 ・・・死の瞬間を見るの初めて?」

 神奈美「・・やっぱり分かる?雰囲気出てる?」

 秋塚「戦いと会話の基本は心理分析!....ってどっかのナルシストが自伝でほざいてた。

 まぁそのうち慣れるって。第一死体はもう見慣れてるだろ?」

 神奈美「ええ、そうね。確かに死体は見慣れてる。

 でも人が死ぬのは見慣れたくない....」

 

 

 神奈美は金属の足から手を放し、破れた腹の中を覗く。金属の足は背骨の付近から生えていて、根元は純粋な筋肉で出来ている。

 

 神奈美「筋肉の一部が金属に変化してる...のぉ..かな?

 根元を見ると...脊椎に直結か....だぁ~もうっ!よくわかんない!」

 

 神奈美は床に目を向ける。綺麗に掃除されたタイル張りの床には、手術室の様子が写っていた。床には神奈美の姿も反射されている。

 

 神奈美「[真実鏡]!」

 

 反射の中の神奈美の手に楕円形の鏡が握られる。鏡は反射の神奈美の手からずり落ち、現実の床から迫り上がってくる。

 

 秋塚「早速か?」

 神奈美「手っ取り早い。」

 秋塚「でもランダム。」

 神奈美「そうね。」

 

 鏡は光を放ち、遺体を照らす....

 

 

 神奈美「うッヅ!...」

 

 神奈美は頭を抱え、鼻血を垂らしながら崩れ落ちる。

 

 [畑仕事] [麓の病院] [コーヒー] [トースト] [目玉焼き]

 

 神奈美「クソがっ!余計な情報まで寄越すな...!」

 

 神奈美の所有するOツール[真実鏡]はその名とおり、隠された事柄すなわち秘密を暴き、真実をさらけ出す。

 明かされた情報は直接神奈美の脳へ記録される。

 しかし、欠点があり、取り出せる情報は全てランダム。そして複数の情報を一度に圧縮して脳に記録するため、脳に負担がかかってしまう。

 

 神奈美「そして少しくらい相棒の心配くらいしたらどうなの?」

 

 神奈美は秋塚を睨む。

 

 秋塚「悪い、昼飯の事考えてた。何か解ったか?」

 神奈美「さっぱりよ!このすっとんきょうが!」

 

 神奈美は手術室の扉を蹴飛ばすようにして開き、ズカズカと足を鳴らしながら廊下へ出る。

 

 秋塚「まてまて!俺はそんな宗教に入信した覚えはない!」

 神奈美「聞き込み行ってくる!!」

 

 神奈美は鼻血を垂れ流しにしながら、メモ帳とペンを手に何処かへ行ってしまった。

 

 秋塚「あ~あ、行っちゃった。多分相当なゴミヒントだったなありゃ。

 さぁてと、俺は俺でやれる事やりますか~」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 日も落ち辺りが影に呑まれる頃、神奈美は病院へ帰ってきた。その足取り重く、猫背でコートのポケットに手を突っ込み、悪態混じりの独り言を発しながら歩いてくる。

 

 例の手術室へ入ると、麻酔を打とうとしていた白衣の男がメスピンセットの手入れをしていた。

 神奈美と男の視線が合う。

 

 神奈美「あっ、どうも...ええっとぉ~(あちゃーっ、名前聞いてなかった)」

 白衣の男「どうも.....あっ私竹田と申します。」

 

 竹田は布とピンセットを台に置き、手を差し出す。

 

 神奈美「辻 神奈美です、昼間はお疲れさまでした。」

 

 神奈美もそれに応えるように手を握り、握手を交わす。

 神奈美は手術室を見渡す。遺体が無い。

 

 竹田「たしか辻さんは泊まるところを探しているんでしたっけ?この病院、休憩室が幾つか余っていますので一つ二つ貸し出しますよ。」

 神奈美「いえ、それは別にいいんですけど、うちの相棒と遺体は何処へ?」

 竹田「ああっ!それなら今から火葬されるところですね。場所はたしか...」

 

 場所を聞き出した神奈美は一目散に病院から走り出た。

 

 暗い農道を抜け、所々明かりの灯った墓地へ入る。墓地には村人達が大勢集まっていた。そこには秋塚の姿もあった。

 

 神奈美は秋塚に駆け寄る。

 

 神奈美「ぜぇ..ぜぇっ、げほっげほっ」

 秋塚「おぉ、カナーミンどうしたそんなに咳き込んで」

 神奈美「あ"え"ーっ、あ"え"ーっ、げっげっげっ」

 秋塚「何だって?[どうして火葬の連絡をしなかった!?バーロチクショウ以下放送禁止ワード]だって?

 そもそもここ携帯繋がらないじゃん。てかもういいでしょ、あの遺体もう調べられること無ぇじゃんよ。金属の足だって摘出したし。」

 神奈美「げぇえ"え"え"っ、ごほっごほっ」

 秋塚「[走りすぎて疲れた]って?車置いてったじゃん。あっ、お前免許持ってなかったか。」

 神奈美「ん"~~~んんあ"!」

 

 神奈美は両手で頭を抱えながら地面を何度も踏みつける。

 

 秋塚「とりあえず水飲め。ほらよお前の分の水筒。」

 神奈美「ん"ん"あ"おぅっ!(ありがとうっ!)」

 

 神奈美は秋塚から半ば引ったくるように水筒を受け取り、ゴッゴッゴッと音を鳴らしながらラッパ飲みし、余った中身を自らの顔にかけた。

 

 神奈美「あ"~恐ろしい!恐ろしい!ツッコミが不在ってオッソロシイわぁ!なんで通じてんだよコンチクショウ!」

 

 隊列の足音がした。音のした方を見ると、昼間の老夫婦を先頭に、死んだ女性の遺族が担架を運び歩いてくるのが見えた。

 辺りに霧が出始めている。霧のせいで葬式が妖怪の百鬼夜行のように見えてしまいそうだ。

 

 神奈美「それにしても葬式の序盤で火葬って早くない?」

 

 神奈美は声を細めて秋塚に話しかける。

 

 秋塚「病気説を推してる派が多くてな、感染したら困るってんでさっさと燃やしてしまうらしい。」

 神奈美「気持ちと理論は理解できるけど....まるで厄介者ね...」

 

 遺体は藁で作った台に載せられ、火が放たれる。遺体は一瞬で炎に包まれた。

 赤色、橙色。炎は高くそびえ立ち、蠢くガラス細工のようであった。

 

 神奈美(あれ?今何か凄く違和感を覚えたのだけど...それが何か分からない。)

 

 神奈美は炎や炎に包まれている遺体、台として使われている藁に視線を泳がせる。

 そして目撃した。遺体の腹部が時折青い炎を放つのを目撃したのだ。

 

 神奈美「私一旦病院へ戻るわ....」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 病院へ戻った神奈美と秋塚はそれぞれ休憩室を借り、夜を凌いだ。

 早朝、霧が一寸先の視界を妨げている。

 神奈美はブツブツと呟きながら思考を八周させ、足を進める。朝の空気に触れ思考を整理しようと思い立ったようだが、上手くいっていないようである。

 

 神奈美「青い炎...体から金属...畑仕事...でっ!どわ!」

 

 何かに躓き、転倒する。

 神奈美は自分の足元を目を凝らしよく観た。

 

 神奈美「加織さん?」

 

 足元に加織がうずくまっていた。加織は唸っていた。体を震わせ、汗を流し、目は涙ぐんでいた。

 

 神奈美「ごめんなさい!大丈夫です...か..?」

 

 様子がおかしい。震えが止まらず、手で口を押さえたまま唸り続けている。

 

 唸り声が大きくなる。口を押さえていた指の隙間から血が染み出てくる。そして加織は咳き込み、何かを吐き出した。

 

 神奈美「えっ?歯?」

 

 血反吐と共に吐き出されたのは、紛れもない歯そのものであった。

 加織の歯茎からは歯の代わりにネジが生えてきていた。ネジが歯を押し上げ、歯茎を切り、そこから出血している。

 濃い霧の中、その血はまるでキャンバスに落とした赤いインクのように毒々しさを放っていた。

 

 

 




 パイロット版でホラー要素が足りなかったんですよ。今回はホラー要素足してみました・・・足しすぎたかもしれん。
 てかこれR-15じゃなくて、もうR-18Gな気がする。
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