神の駒   作:海苔 green helmet

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青い思考3

 教室の窓に夕日が差し込んだ。教卓に腰かけた女生徒の顔が夕日で橙に染まっていく。余裕のあるしたり顔が照らし出された。

 

 神奈美「何をしたか、ですか...」

______________________

 

 秋塚「悪い(と思ってない)、遅れた」

 

 秋塚は会議室ドアを足で閉めた。ざわめきが聞こえる。潜入任務開始数日前、会議室での出来事である。

 

 対策課1「あれ誰?何処の所属?

 対策課2「開発室に出入りしてたから開発課じゃない?

 対策課3「俺知ってる、アイツ確か民間人だぞ...

 

 秋塚は両手で持ったダンボール箱を島川原の使っている長机に置くと、神奈美の傍に座った。

 

 島川原「これで全員だな?よし、始めよう。」

 

 対策課の面々はそそくさとメモ帳やペンを取り出した。

 

 島川原「今日対策課と回収課の諸君に集まってもらったのは他でもないOツール出現の為である。」

 

 島川原はダンボール箱を開けると、何やら一枚の巨大な紙を取り出した。よく見るとそれは地図で、表示の上から油性ペンで書き込みがされていた。島川原はホワイトボードに地図を貼り付けた。

 

 島川原「近頃この地区でOツールによるものと見られる現象が頻発している」

 

 島川原はホワイトボードに幾つかの写真を貼り付けた。

 

 島川原「一枚目、これは市内のゴミ捨て場の付近にて発見された烏の死骸だ」

 

 烏の体には大量のトゲが刺さっていた。グレーのアスファルトに血溜まりが出来ている。

 

 島川原「そしてこれが回収されたトゲだ」

 

 箱から取り出されたビニール製の小袋の中にはボールペン程の大きさのトゲ入っていた。

 

 島川原「成分を調べたところ、主な構成物質カルシウムであるようだ。

 何かの骨の可能性を疑って調査したが、これ程の大きさで、この形状、しかも刺さっても抜けないよう返しの付いた骨。生物学上このサイズ、そして形状のトゲを持つ生物は地球上には存在しない。」

 対策課1「加工の可能性は?」

 島川原「無い!そして発言の際は挙手すること!」

 対策課2「はい!他の目撃等は?」

 島川原「この地区のある高校の生徒複数名が烏に対しこのトゲを何らかの方法で射出しているのが目撃されている。

 目撃者に関しては隠蔽課が対応した。」

 

 被害状況の確認は淡々と進む。酔っ払いの男がまたもトゲまみれになったとか、穴だらけにされた野良猫だとかと。

 

 島川原「被害については以上である。大まかに見れば極めて小さな被害であるが、いずれも法則の崩壊を招く可能性を孕んでいる。侮らぬよう注意するように。」

 

 島川原はホワイトボードから地図を剥がす。それにならって対策課の連中はメモ帳等を仕舞い始めた。

 

 島川原「更に今回は」

 

 対策課の連中の慌ててメモ帳やらペンやらを再び出す音が響いた。

 

 島川原「[ディーラー]が絡んでいる可能性がある。」

 

 ざわめき声が聞こえた。

 

 島川原「知っての通り、ディーラーとはOツールをばら撒いている連中である。

 何名で何を目的に動いているか等は不明。接触時の危険性は高く、我々の仲間も命を奪われている。」

 

 島川原は淡々と、語りつつ、机の間を抜けて神奈美の傍へやって来た。

 

 島川原「しかし、そのディーラーと接触し、生き残って帰ってきた者が居る。」

 

 視線が神奈美に集まる。

 

 神奈美「は?私?」

______________________

 

 私達には時間があるわけでも、ましてや無いわけでも無かった。今現在の被害が明確に表されていないからである。兎に角情報が欲しかった。故に潜入である。

 そして潜入に際してなるべく早く情報を集め、状況を把握する方法が導き出された。それは、相手の懐へあえて突っ込んで行くというものだった。

 なるほど。手っ取り早く水面の下が知りたければ水に飛び込めということのようだ。

 

 私(神奈美)がこの学校へ潜入して2日。あるクラスのカースト上位の、ある一人の女生徒がOツールを所持している事を突き止めた。後は入手方法を聞き出す。

 

 のみだったのだが、どうやら私は怪しまれているようで、なかなか接触することが出来なかった。

 そのまま数日が過ぎ、流石に焦らざるを得なかった。

 少々焦りすぎたかもしれないと、ちょっと後悔したのはまた別の話。

 

 

______________________

 現在に戻る。

 

 神奈美「何のことかしら?説明してくれないと解らないじゃない。心が読めるわけじゃあるまいし。」

 笹川「よくも私のストレスの捌け口を学校から追い出してくれたわね!」

 神奈美「人はサンドバッグの様に扱うべきじゃないわ。いくらストレスが溜まっていようともね。

 そんなことよりちょっと尋ねたいのだけど」

 

 笹川は憤慨し、シワを作った。

 

 神奈美「あなた達ちょっと危険なブツを持ってない?」

 

 笹川の怒りに燃えた目が据わる。舞台のカーテン降りるように空気が重く伸し掛かる。

 

 神奈美「持ってるなら渡してくれない?」

 

 そんな空気のことなぞ読む価値が無いとでも言うように、神奈美は一方的に言葉を続けた。

 

 神奈美「ついでに配った奴の居場所と顔の特徴やらなんやら。顔写真があるならそれでいいわ。」

 笹川「何で私が渡す前提で話を進めようとしてるの?」

 神奈美「あら、持っているというのは否定しないのね」

 

 笹川は自身の唇を静かに噛み締めた。

 

 神奈美「口を噤んで何も言わない。今のミスからしたらとてもいい判断よ。でも私の持ってる力なら、貴方の口を無理にでも開けることが出来r」

 

 神奈美は背中に違和感を覚えた。何かが当たっている。

 

 ???「両手を上げな」

 

 後ろから女の声が聞こえた。神奈美は後方の人物に手のひらがよく見えるようにゆっくりと両手を上げる。

 

 神奈美「掃除用具入れに一人隠してたのね」

 笹川「物騒な物持ってると、物騒な人達が寄ってくるってのを聞いていたのよ。ありがとう真希(マキ)。」

 真希「さてと、どう口を割らせる?」

 笹川「そうね...」

 

 笹川が考えを巡らせていると、突然電子音のアラームが鳴り響いた。神奈美は後方からキーホルダーのジャラつく音を聞き取った。どうやら真希の携帯が鳴ったようだ。

 

 真希「もしもし、ハイ、ハイ、スピーカーですか?解りました」

 

 携帯のスピーカーからノイズが響いた。

 

 ⁇?[Bonsoir!あれ?これ聞こえてる?]

 神奈美「こんばんわ。わざわざエフェクトまで掛けてご挨拶?明らかな黒幕ムーブって感じで怪しさ満tっイタ!」

 

 背中を小突かれる。

 

 真希「今はお前が話すターンじゃない」

 神奈美「ターンエンdっ痛!」

 

 ???[さてと、いつまでも謎の人物を演じているのは趣味じゃない!名前だけでも知っておいてほしいから!

 私の名前!それは!ドラムロールスタートぉ!デケデケデケッドーン!私は皆からはリンゴちゃんと呼ばれているの!]

 神奈美「いや、完全に本名を言う流れを作っておいて他称を名乗るんkイデっ!オン...ターンじゃないのはわかったて、疑問が口からダダ漏れになってんの」

 

 リンゴ[さて質問なのじゃ!目的と仲間の人数を答えてもらうのじゃ!]

 神奈美「あっ?何?喋っていいターン?

 オーケー..それじゃぁま、ず、は。ちょっと気なったんだけど何で彼女ら二人は偽名を名乗られてるのに、このリンゴちゃんだかを信用してるの?」

 

 リンゴ[···はあ、あのさぁフエちゃん。本名かどうか知らないけど、質問に質問で返すなよ...日本語下手糞か?リンゴね、会話の成立しない奴とは話したくないの。

 もういいよ、真希ちゃん。少し眠ってもらおう。]

 

 神奈美は背中越しに何かが強く押し当てられるのを感じ取った。

 

 リンゴ[さてと、最後に何か話すことはある?やっぱり命乞いかしら?]

 神奈美「いや、それよりもちょっとした豆知識を幾つか...

 まず一つ、私の背中に当てている凶器が例のトゲを出す物なら、背中よりも頭を狙った方が確実に殺せるわ

 私の予想だと背中のそれは射撃が主な攻撃方法だと思うの。理由としては、刃物なら完全に背中に付けた状態から刺し込むなら、私の肩か何かを抑えながらでないと傷が浅くなる。差し込むと同時に体が動いてしまうからね。現状私の体に触れているのは凶器だけ。

 二つ、射撃武装は離れて使うこと。射撃である意味がないし、さらには...」

 

 真希と呼ばれた少女の目に違和感が走った。異変に気付くも既に遅く、違和感は痛みへ変わっていた。目から眩い光を迸らせながらお盆程の大きさの鏡が飛び出した。

 

 神奈美「接近状態では相手に反撃する隙きを与えてしまう。」

 

 真希は片目を抑えながら、床に倒れ込んだ。悶えながら机や椅子を蹴飛ばす姿は、さながら殺虫剤をかけられた虫のようであった。

 

 神奈美は足元に転がってきた白い筒を拾い上げると同時に、近くにあった椅子を持ち上げ、笹川に向かって走った。笹川も既に白い筒を構えて射撃の体制に入っていた。

 

 神奈美(やっぱり二本以上あったのか!)

 

 神奈美は椅子の背もたれを両手で掴み、足を刺股のように構え、突進する。筒からトゲが連射されるが、椅子の座板に全て食い止められる。木片が神奈美の顔に降り注いだ。

 笹川は逃げようと体勢を変えるが、既に後の祭りであった。椅子で突き飛ばされ、黒板との間に挟まれる。

 神奈美は笹川の手から白い筒を蹴り飛ばし、股の間に足を入れ、逃げ道を塞いだ。

 

 神奈美「はあっ、はあっ、[真実鏡]っ...」

 

 真希の目から吐き出された鏡が床から浮き上がり、笹川に向けて眩い光を放つ。

 

 神奈美「ハズレか...じゃあこっちに」

 

 神奈美は真実鏡を使う為、真希の方へ振り返った。しかし、そこに真希の姿は見えない。

 

 神奈美(なっ!どこへ!?)

 

 物々しい落下音が響いた。冷たい風が神奈美の頬を撫でる。窓が開いていた。

 嫌な考えが神奈美の脳内を駆け巡った。「ここは2階だったか?3階だったか?」「ギリギリ死なない高さか?」「頭からか足からか?」などという言葉が波のように押し寄せる。

 

 リンゴ[不安だよね。]

 神奈美「!?」

 

 床にがった携帯は、未だリンゴとの通話状態を保っていた。

 

 リンゴ[そういう状態の精神は侵入しやすいんだよ

 ほら貴女の意思はもう、私の手の中に...]

 

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