英雄伝説『外伝』 刻の軌跡   作:雨の村雲

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3-12 そして夜は明ける

――時間を少し遡り、遊撃士協会帝都東支部。その一室で先程まで大量の札を作っていたナギサは、疲労困憊した様子で机の上に伏せていた。無理もない、僅か一晩で数百枚もの札を作るというのは並大抵のことではないのだから。

 

「お疲れ様です、ナギサさん。……よく頑張ってくれました」

 

「……ありがとう、ございます……」

 

伏せた彼女の側に、コトンとナギサが好むお茶を淹れた湯飲みを置き、労いの言葉をかけるダーゼフ。細目の好々爺に対し、ナギサは顔を持ち上げる気力さえ沸かないのか伏せたままである。彼は気にした素振りも見せず、むしろ彼女に無理をさせたという罪悪感の方が遙かに強かった。

 

「いえ、お礼を言うのはこちらの方です。ナギサさんががんばってくれたおかげで、大きな被害もなく、事態は収束に向かいつつあります」

 

ダーゼフの言葉通り、当初はどうなるかと思った大事件は収束に向かっているのだ。入ってきた情報によると、彼女の推測通り、例の光の柱が要となっていたらしく、柱が消えると一部の区画では緋色の空が消え、本来通りの”星空”が姿を見せていったらしい。

 

そして肝心要の光の柱も、帝都支部が誇る精鋭遊撃士達の尽力と、鉄道憲兵隊や帝国正規軍、一部の”怖い民間人”の協力もあってあっさりと制圧できたようだ。そして制圧した後、柱の発生源とみられる”ペンダント”も、彼女の札を貼り付けると瞬く間にその力が消えていったらしい。

 

今回の大規模な異変解決に関し、一番の立役者になったのは間違いなく彼女だろう。彼女の推測とお手製の札がなければ、こうもあっさりと異変解決には至らなかったのではないだろうか。しかしナギサは首を振ってそれを否定する。

 

「そんなことないです、私はただ、こうやって札を作るだけですし……ダーゼフさんは皆さんとの連絡役をこなしながら指示を出して、サリスは怪我して運び込まれた皆さんのために走り回って……」

 

走り回りながら働いている二人の傍らで一人黙々と札を作り続ける自分は、事情を知らなければなにやっているんだろうと首を傾げられる場面だっただろう。実際一部の遊撃士達から最初胡乱げな目で見られもした。――最も彼女の札が効果を発揮したとわかれば、その目もすぐに消えたのだが。

 

「それにこの札だって、効力が一日も持たない粗悪品だし……」

 

(……粗悪品であの効力なら、純正品なら一体……)

 

早く、そして大量に札を作らなければならなかったため、どうしても効力が弱まってしまう。しかしダーゼフは思う。素人目線だが、複数枚合わされば簡易的な結界を張れて、瘴気を払い、危険物であるペンダントを封じることが出来るのならば充分以上というか。

 

むしろ純正品の方が危ないのではないか、とそんな危惧を抱いてしまう。――ダーゼフは知らない。すでに”純正品”がとある遊撃士と元ヤクザの堅気が持っていると言うことを。

 

「――夜分に失礼する」

 

薄ら寒いものを感じながらナギサへ視線を向けていたが、協会の扉をノックする音と共に、来訪者が姿を現した。ダーゼフはそちらの方へ視線を向け、そして細目を見開かせる。

 

「これはまた珍しい……一体何のようですかな?」

 

本当に珍しそうな声音で告げるダーゼフに首を傾げ、ナギサも扉の方へ目を向ける。そこにいたのは黒髪の大柄な男性。スーツ姿で目にはサングラスをかけており、”そちら側”の人間のように見えてしまった。大柄な男性はダーゼフとは知己なのか、コクンと一つ頷くのみで、

 

「外の騒ぎが騒ぎなのでな、あっちこっちに出歩いているところだ」

 

「貴方なら心配はないでしょうが……まぁいいです。それよりも、何かありましたか?」

 

「あぁ。……それよりも、ここに遊撃士達はいるのか?」

 

「今は皆さん出向いてましてね。怪我をした市民が数人運び込まれたぐらいですよ」

 

若干呆れながらも苦笑するダーゼフ。その様子から大柄な男性を信頼している節が見えてきて、ナギサは興味深そうに二人の会話に耳を傾けていた。大柄な男性の顔がこちらを見た瞬間、彼女は首を傾げる。

 

「……………?」

 

なぜかはわからないが、どこかで見たような気がするのだ。直接会ったような気もするし、何かの占いの時か、もしくは突発的に反応した”瞳”が見た光景のなかにいたか。サングラスを外してくれれば気づけそうな気がするが。

 

「実は少々、厄介な問題が発生してな。……しかしすまないが、水を持ってきてくれないか? ずっと動いていたから、流石に喉がかわいた」

 

「わかりました。……作り置きの軽食も持ってきましょうか?」

 

「……遊撃士協会はそんなサービスも行うようになったのか?」

 

ナギサからダーゼフへ視線を移した彼は申し訳なさそうに頼み事を口にする。彼の立場を知っているダーゼフは、ずっと動いているという言葉に頷き、軽食がいるかどうか問いかけると、大男は逆に苦笑を浮かべる。細目の好々爺はまさかと肩をすくめて否定し、

 

「皆さん働き詰めですからね。こういうのも用意した方が良いかと思っただけです」

 

「なるほど、用意が良いな。……では頼む」

 

苦笑から一転感心したように頷く男性は、こつこつと受付席へ近づいていく。

 

「…………」

 

傍らからその様子を見ていたナギサは、なぜか嫌な予感を覚えた。男性をそのままにしていてはまずいと。しかしなぜそう思うのか自分でも分からず、ただじっと男を見つめるしか出来なかった。

 

――この既視感はなんだろう……――

 

見たような気がする――この感覚の正体を掴もうとして。それより先に、受付のすぐ側まで近づいた男は、軽食と飲み物を持ってこようと踵を返したダーゼフが、男に背を向けた――次の瞬間。

 

――男の手刀が、ダーゼフの急所を捉えた。

 

「っ!!? なっ……!」

 

――何があった、信じられない――瞳を見開き、驚愕にそまった表情を浮かべて大男を見据えながら、ダーゼフは前から倒れていった。物音を響かせながら倒れたときには、好々爺は瞳を閉ざし、完全に意識を失っていた。

 

「だ、ダーゼフさん!?」

 

「………」

 

「――ぁ………」

 

慌てて彼の元へ駆け寄ろうとするナギサだが、それを阻むように大男が立ちふさがる。そして彼の体から滲み出る威圧感に気圧され、思わず体を震わせながら後ずさった。

 

「………」

 

無言でナギサに詰め寄る大男。蛇に睨まれた蛙のように、動くことの出来ないナギサを捉えようと腕が伸びて。

 

「――ナギサ? 今の音って何?」

 

「っ!?」

 

「サリス――っ! 来ちゃダメッ!!」

 

部屋の奥の廊下側から何者かが近づいてくる。その声からナギサは友人であるサリスだと気づき、慌てて悲鳴じみた叫び声を上げた。――だからこそ、大男も驚きの表情を浮かべたことに気がつかなかったのだ。

 

「へ? 一体どうし―――え?」

 

首を傾げながら廊下から姿を現したサリスは、倒れたダーゼフと、大男に詰め寄られた状況を見てぽかんとし、そして大男を見て瞳を見開かせた。彼女は明らかな異常事態よりも、男の方が遙かに気になったらしい。――信じられないと言うように、サリスは震える声音で男に呼びかけた。

 

 

「……”ガシャド”……おじさん……?」

 

 

 ~~~~~

 

「―――今度は何だ?」

 

「……どこだ、ここは……?」

 

アニーの大技が魔人化したネシードに叩き込まれ、彼の意識が失われたと同時に、辺り一面の景色が歪み、光に包まれる。そして、何かが変わる感覚と共に光が消え去ると、そこは以前訪れた建物の一室であった。

 

ネイリ一家の拠点となっていた建物。生憎と調度品その他諸々に関しては、すでにビックスロープが片付けた後であるため殺風景極まりなかったが、辛うじてここが組長であるネシードの部屋であることが判明する。

 

「……どうやら、異変は解決したようだ」

 

「え? あ、空が……」

 

辺りを見渡していたレオンは、窓から差し込む光に気づき、近寄って外を眺めるなりホッとしたように息を吐き出した。それにつられてエルガも近寄り、窓から外の景色を眺めて表情を綻ばせる。

 

――そこには、異様さしかなかった緋色の空はなく。いつも通りの、見慣れた夜空がそこにあった。それは空が元に戻った、という単純なものだけではなく、一連の事態が収束したという証でもあった。

 

「……ビックスロープの人達も無事みたいだ」

 

外から景色を眺めていたエルガは、雄叫びのような歓声を上げる協力者――ビックスロープ達を見て、ホッと息を吐き出した。最初に見たときと同じ人数であることから、けが人はいても死者は出なかったのであろう。

 

「……三代目もマルコも無事……意識を失っているだけか。……さて、大変なのはこの後だろうが……それよりもまず」

 

倒れていた二人の安否を確かめた後、レオンはやれやれと首を振って今後の大変さを思いをはせた。

 

この後に待ち受けるであろう被害状況の確認と、遊撃士協会だけではなく帝国政府や正規軍、TMPや近衛士隊にも詳しい説明をしなければならない。だが事情が事情故にあっさりと信じてくれるはずもなく、頭痛のタネにしかならない問題であった。

 

しかしレオンには、それよりもまず付けなければならない”ケジメ”があることを忘れてはいなかった。視線を窓から部屋の中央――気絶しているネシードと、その傍らで健気に治癒系のアーツをかけ、手持ちの包帯を巻いて手当をしていたアニーの元へ歩いて行く。

 

「良いのか、アニマ嬢。そいつは――」

 

――君の母と父を奪い、夢を壊した男だぞ――そう続けるよりも先に、アニーは首を振って良いんです、と頷いた。手当を続けながら、彼女は平静さを保った声音で告げる。

 

「どんな事情があっても、けが人はけが人。医術を噛んでる者として、出来ることはしたい。それに……多分母さんだったら、手当てしただろうから」

 

「……そうか」

 

「………」

 

アニーの言葉に、レオンはしばし押し黙った後にそれだけを呟いた。笑顔を浮かべている彼女だが、どうしてかレオンとエルガは今にも泣き出す一歩手前のように見えた。彼女は甘い――だが、その甘さは、大事なものでもあるのだろう。

 

ブレイツ時代からの因縁も含めて、一発ぶん殴ってやろうと息巻いていたのだが、彼女に免じて拳を下げてやろうと思う。だが、拳と共に告げようと思っていた言葉は、そのまま吐き出させて貰おう。

 

「俺はもう若頭じゃねぇ。だから何も言わん。……だがな……”この程度で済んでラッキー”、などと馬鹿げたことを考えているようなら……指の五本十本じゃすまないと思え」

 

自分で責任を取る――その言葉の意味を理解させるために、気絶しているネシードにしっかりと釘を刺すレオン。聞こえていないだろう、と首を傾げるアニーだったが、側にいるエルガも気づいていた。

 

魔人化の影響なのか、話す気力も体力もないみたいだが、それでも辛うじてネシードは意識を保ち、レオンの言葉を素直に受け入れている様子であった。そんな彼を前に、息を長く吐き出すことで色々と言いたかったことを飲み込むエルガは、彼を見下ろして告げる。

 

「……アニーさんがあんたのことを許したとしても、俺はあんたのことを許さない。あんたに直接何かをされたって言うわけじゃないけれど……あんたはナギサを、アニーさんを……いろんな人を傷つけ、苦しめてきたんだ。今回の一件だけじゃないんだろ? それをちゃんと償うべきだ」

 

鋭く、怒りが籠もった声音で口を開いたエルガに、アニーは苦笑する。自分のためではなく、他人のために怒れる彼が、少しだけまぶしく見えた。一つ訂正、と言うようにアニーは気絶している(と彼女は思っている)ネシードに向かって口を開いた。

 

「……私も許すつもりはないわ。でも、それとこれとは別問題。……それだけ」

 

「………」

 

許さない――彼女にそう告げられた瞬間、ネシードはどこか安心したような、納得したような、そんな雰囲気を一瞬だけ漂わせた後、今度こそ本当に意識を失うのだった。

 

 

 

倒れ、意識を失っている三人を連れてネイリ一家の拠点から外に出ると、ちょうど先輩遊撃士達が駆けつけてくる所だった。どこか安心したような表情を浮かべるサラや嬉しそうに肩を揺さぶってくるトヴァル、さらには初日に小言を言われたヴェンツェルからは「よくやった」と賞賛の言葉を貰うなどもみくちゃにされる始末であった。

 

後は任せてゆっくり休め、と言ってくれた先輩方に甘えて、三人は一度遊撃士協会に戻ることになった。何でも一休みしたら今度は多方面から色々と話を聞かされる羽目になるらしい。その前の最後の休息か、とエルガは内心ホッとしていた。

 

流石に色々と合った手前、疲労が溜まっているのは確かなようで自分でも分かるほど疲れていた。すでに怪我の手当も終わっているため、協会に戻ったらそのままベッドへ直行しようと思っている。

 

「……今回の一件、けが人は多数出たそうだが、幸い死者は零だったらしい。……どうやら女神は微笑んでくれたようだ」

 

「そっか……それはよかったわ」

 

レオンの言葉に、疲れた様子のアニーも軽く頷いていた。その情報は、一同にとっても驚きだった。突発的に起こった事件だったというのに、遊撃士のみならず鉄道憲兵隊や帝都に駐留している正規軍の対応の早さは見事の一言であった。

 

(……まるで”事前に起きることが分かっていた”かのような……っていうのは、考えすぎか)

 

その早さに、レオンは少々首を傾げざるを得ない。そもそも、遊撃士は軍と良好な関係を築けている、とは言いがたいものがあり、今回の一件の協力的な対応に、何か裏があるのではないかと邪推してしまう。しかし疲労が溜まっているのもあってか、レオンもそれ以上深く追求しようとは思わなかった。

 

「とりあえず戻ったら寝て……って、あれ?」

 

続かない会話を繰り返しながら遊撃士協会東支部に戻ってきた三人。とりあえず一眠りしようとエルガがドアに手をかけたとき、妙な違和感を感じた。彼の反応にレオンは首を傾げ、

 

「どうした?」

 

「……ドア開けっ放しだ」

 

ドアノブを回すこともなく、スーと開いていく。きちんとドアが閉まってなかったのだろう。しかし中にはダーゼフやナギサ、サリスがいるはず。閉まっていなかったら気づくはずだ。

 

「―――――待って」

 

と、そこでエルガは気づいた。――人の気配がしない。唐突に真剣な表情を浮かべた彼に、レオンとアニーも思わず身構えて、空いた扉から支部の中を恐る恐るのぞき込んだ。

 

「……アレは……」

 

受付の向こう側で誰かがうつぶせに倒れている。その姿を見て、誰なのか気づいたエルガは硬直し、アニーとレオンは驚愕の叫びを上げて彼の元へ駆け寄った。

 

「――ダーゼフさん!?」

 

「おやっさん! どうした、なにが……っ! サリスッ!!」

 

ダーゼフの元へ駆け寄る途中、すぐ側でぐったりと倒れ込む金髪の少女を見つけ、彼女の元へ駆け寄っていく。床に倒れた彼女を抱き上げ、口元に耳を近づけ――呼吸があることを確認する。

 

「――意識を失っているだけ。レオンさん、サリスちゃんの方は……」

 

「……無事だ。サリスも気絶しているようだ。……だが一体誰が……!」

 

うつぶせから仰向けに体勢を変えて脈を測っていたアニーが少し安心したように呟き、レオンとサリスの方へ目を向ける。問われたレオンも答え、怒りを抑えきれないというように体と語尾を振るわせている。

 

「…………」

 

二人の無事を確認し、エルガもホッと息を吐きながら周囲を観察していた。――例の札は貼らさったまま。結界はまだ生きていることから、古の兵士やガーゴイルの仕業ではないだろう。そして室内も荒らされてはいない――争ったような形跡はなかった。

 

ダーゼフを相手に、特に争うこともなく意識を奪ったと言うことか。――相当な手練れか、と思うもののそれも難しいだろう。何せダーゼフ自身元A級遊撃士であり、二つ名持ちである。そんな相手を無抵抗で倒すことなど相当な困難だ。

 

――ということは、油断していたところを一撃で倒されたと言うことか。それこそ、襲われるとは露も思わない――“警戒されない相手”によって。

 

「……あれ、ナギサは?」

 

そこまで考えたところで、黒髪の少女の姿が見えないことに気がつく。アニーも首を振って、

 

「分からないの。彼女の姿だけ見えなくて……」

 

「…………」

 

彼女の呟きに、レオンも顔を歪めていく。嫌な予感が一同の頭を過ぎる中、彼の腕の中にいたサリスが身じろぎをしてうっすらと目を開けていく。

 

「っ! サリス、気がついたか! サリス!?」

 

「――……おじさん……あたし、なんで……っ!」

 

ぼうっとした瞳でレオンを見た後、彼の後ろにいる気絶したままのダーゼフを見て、一気に覚醒した。すぐさまレオンの服の裾を掴み、

 

「おじさん、ナギサを助けて………」

 

「――落ち着け、何があった」

 

凄まじく慌てた、切羽詰まった様子の彼女を前に、レオンは彼女も、そして自分さえも落ちつかせるかのようにゆっくりとした口調で問いかけた。そんな彼を前にして、サリスも少しは落ち着きを取り戻したのか、

 

「誰かが協会に入ってきたの。ダーゼフさんと親しげに話しているのが聞こえてきて……

それで、大きな物音がしたと思って受付の方に顔を出したら……ダーゼフさんが倒れていて……」

 

やはり親しいものの犯行だったのか。ならばその人物を、彼女は見たはずだ。その特徴を知れば、何者の犯行だったのかがすぐにわかるはず――それに。

 

「それで……?」

 

「それで……その人は、すぐにあたしの顔を布で覆って、急に眠くなって……けれど、まだ寝ちゃダメって思って、顔を上げてたら……”ガシャドおじさん”に似た人が、ナギサを連れ去るのを見たの」

 

「――――――――何?」

 

彼女の言葉が信じられなかったのか、レオンは絶句して思わず聞き返す。その間にエルガとアニーは顔を見合わせた。ガシャド、という名に覚えがあったからだ。

 

「ガシャドって……もしかして、ブレイツロックの”二代目”……?」

 

「でも……二代目って確か、クロスベルで暗殺されたって……」

 

「………」

 

どういうことだ、とばかりに視線を交差させる二人。その二人の会話が耳に入ったのだろう、サリスもどこか悲しげな表情を浮かべていることに気づいた。――直接的に聞けるわけもないが、彼女がレオンの元へ引き取られた時期を鑑みるに、暗殺事件に彼女も関わっていたのかも知れなかった。

 

「……まさか……そんな………そんな……っ!」

 

信じられない、とばかりの表情を浮かべて呟くレオン。普段からは想像も出来ないほど取り見出し、尋常ではない様子の彼に、二人は困惑して――しかし、同時に確信もした。ダーゼフを襲った人物に、レオンは心当たりがあるのだと。

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