英雄伝説『外伝』 刻の軌跡   作:雨の村雲

42 / 63
5-03 扉が開くとき

「…………」

 

遊撃士協会受付――先程急に来ていた客人が帰っていった後、受付のソファに座り込み、手にした書物に視線を落としていたサリスはずっとあることを考えていた。

 

「………まさか……でも、もし本当なら………」

 

先日帝都の地下道で起きた親友が攫われた事件。その事件のあらましを聞いた彼女は、拳を握りしめ、胸の内で燻る疑惑にひどく動揺していた。――それはナギサが攫われたから、という理由もあるが、何よりもそれ以上に――

 

「……本当に……………なら、あたしは……」

 

「――サリス」

 

「ひゃいっ!? お、おじさん……」

 

一人ぶつぶつ呟いていた所、横手から急に現れたレオンに声をかけられ、文字通り飛び上がるほど驚き彼の姿を認めて、サリスは深く息を吐き出した。

 

「急に声をかけないで、びっくりしたよ……」

 

「すまん」

 

彼女の隣に腰を下ろし、レオンは仏頂面を浮かべながら頭を下げる。――以前は「お父さん」と呼んでくれたのだが、あれはサリス本人も恥ずかしいらしく、結局はいつも通り「おじさん」呼びに戻ってしまった。――少しだけ残念に思うのは気のせいだ、とレオンは自身に言い聞かせ、

 

「何を悩んでいる?」

 

「………それは……」

 

レオンに向けていた目を、再び手元の本へと戻したサリス。彼女が手にしているのは最近帝都で流行りだした娯楽小説。彼女の視線を追って本の題名を見たレオンは何とも言えない表情を浮かべた後、そっと口を開く。

 

「……まぁいい。それよりサリス、またここに泊まって貰ってもいいか?」

 

「それは構わないけど……どうしたの?」

 

ブレイツロックの件でゴタゴタが続いていたときと同じく、自宅ではなく遊撃士協会で泊まって欲しいと告げられたサリスは頷きつつ、保護者を見やった。

 

「しばらくの間は家に戻れないだろうからな。ここで寝泊まりしてもらった方が、俺は安心できる」

 

レオンは彼女の返答にホッとしたように頷き、家にはしばらく帰れないと言う。サリスも瞳を見開いてその真意を察して頷き、

 

「わかった。……その、ナギサちゃんのこと……助けてあげて」

 

「あぁ、もちろんだ。……お前の友達、必ず助けてやる」

 

“娘”の頼み事に、力強く頷くレオン。まだ空賊団がどこに潜伏したか、どこに逃げたのか分からない状況ではあるが、それでも何とか数日のうちに見つけ出さねばならない。そのための手段を脳裏で考えていると――

 

「――おや、レオンさん。ちょうど良いところに」

 

「ダーゼフのおやっさん。何をしていたんだ?」

 

「いえ、各方面に連絡と相談、そして手回しを少々」

 

受付カウンターの奥から、姿を消していたダーゼフが現れる。ようやく出て来た彼は導力通信を用いて何かをしていたらしい。それも一区切りついたのだろう、ダーゼフは手にしていた手帳をしまい込み、改めてレオンへ向き直った。

 

「所でレオンさんに、報告と頼みたいことがありまして」

 

「何だ?」

 

「――ブレイツロックの方から、飛行艇を一隻貸しだしては貰えないでしょうか。それもとびきり早い奴を、明日の朝までに」

 

「ずいぶん急な話だな。まぁ何とかなるだろうが……」

 

とびきり早い飛行艇と言われ、スミットウェール物流商会と、その他の傘下組織が保有する数隻の船が脳裏に浮かび上がる。多分大丈夫だろうと内心で頷きながら声をかけた。

 

「しかし高速飛行艇など、一体何に使うんだ?」

 

「ナギサさんの救出です」

 

「ほう……………なに?」

 

あまりにも平坦な声音で告げてくるため、思わず聞き流してしまいそうになったが、レオンはダーゼフの言葉に眉根を寄せる。――ナギサを救出するための足として使う――

 

「――彼女がどこに連れ去られたのか、わかったのか?」

 

「えぇ、アイゼンガルド連峰です。例の占い師からもたらされた情報で。……皆さんから話は聞いていましたが、確かに胡散臭さの固まりのような人物ですね。とはいえ、信用はしてもいいかと思います」

 

その発言だけを聞けば、一体どこに信用できる要素があると突っ込みを入れたくなったが、今は置いておく。なぜなら、ダーゼフが受付カウンターに立てかけられていた、布で巻かれた”ソレ”を持って近づいてきたのだから。

 

「これを。申し訳ないのですが、これの修繕、頼めないでしょうか」

 

「…………」

 

レオンは即決しない。ダーゼフが差し出してきたソレの布をそっとめくり中身を確かめ、彼は目を閉ざした。――布で巻かれていたのは、真っ二つに折れたエルガの短槍。内心で燻る思いを抑えたまま、彼はぶっきらぼうに言い放つ。

 

「……折れた得物をなおしても、担い手が折れたままでは意味がないだろう」

 

「確かに、この短槍をなおしても、今のエルガには無用の長物でしょう。ですが――」

 

レオンの言葉に頷きつつも、しかしダーゼフは否定する。今のエルガに槍を持たしても、以前のように戦えることは絶対にない。だが――

 

「彼は必ず立ち上がります……その時に、守るための”力”がなければ、彼は後悔する。そうなって欲しくないんです、私は。だから――」

 

そういってもう一度、ダーゼフは短槍を差し出した。差し出された短槍を見下ろして、レオンは深くため息をつく。

 

「まぁいい。どのみち船を借りるのに、例の工房にも顔を出さなければならん。その時、ついでに頼んでおく」

 

「ありがとうございます」

 

例の工房、とはブレイツロック傘下の武器工房であるEXE(エグゼ)。色々とぶっ飛んだオリジナリティ溢れる武具を製作することで有名だが、職人達の腕は確かであり、下手をすればRF社やヴェルヌ社のような大企業に匹敵しかねない技術力を持つ。

 

――そもそもが、そういった大企業、大手の工房に勤めていたものの、技術力”以外”の問題によって追い出され、行き場を失った者達の集まりがEXEである。おまけに良い意味で互いにインスピレーションを受けた結果職人たちの腕はさらに上達しており、大企業と街工房という格差を質で補っている状態であった。

 

勝手にやらせれば何をするか分からないが、ただ修繕するだけであれば余計なことはしないだろう。彼らも職人、一から作るのであれば好き勝手するが、修復であればきちんと元の形に直そうとする。変な改造がされることはないだろう。布で包まれた短槍を受け取り、レオンは最後に一つだけ問いかけた。

 

「……坊主は、立ち上がると言ったな。その根拠は何だ?」

 

「根拠ですか? そんなの簡単ですよ」

 

レオンの問いかけにきょとんとした珍しい顔を浮かべた後、ダーゼフは微かに笑みを溢して口を開いた。

 

「あれが誰の弟子だと思っているんですか?」

 

――それは、”師弟”に向ける全幅の信頼を示していた。

 

 ~~~~~

 

「――そうですか。わかりました、情報提供ありがとうございます」

 

『いえ、お気になさらず。こちらはこちらで、私達のなすべき事をなすまでですから』

 

鉄道憲兵隊の詰め所に戻ってこられたクレアは、ダーゼフからの通信に応対いていた。さらに遊撃士協会からもたらされた情報は、例の空賊団と攫われた人質の行方が分かったという連絡であった。

 

一体どのような経緯で空賊団の行方が判明したのかはさておき(匿名情報と言っていたがいまいち信用できない)、その情報はTMP、ひいては正規軍にとっても貴重なものであった。

 

「なすべき事をなす、ですか。――………我々はすぐには動けません。軍の再編などで後二、三日はかかるかと」

 

だがすぐには動けなかった。アイゼンガルド連峰となればTMPの管轄外であり、表だっての介入行動は出来ない。正規軍の方でも、空賊団の“討伐”のため部隊を編成するのに時間がかかる。

 

おまけに軍隊としての主目的は空賊団の方に割合がさかれ、”たった一人しかいない人質”(おまけに東方民族出身)の安全に関しては、大きな声では言えないが二の次になっているのが現状であった。その現状に、クレアは思うところがある。

 

「――なのでこの二、三日の間、我々はあなた達の行動には”一切関与しません”。空賊団の件もありますし、大地震の支援復興、よろしくお願いしますね」

 

『………ふふ、わかりました。では、年長者として一つアドバイスを』

 

通信越しにいる年配の元遊撃士は微かに笑ったような気配を漂わせる。関与しない――つまり好きにやって良いと言う言葉の裏に隠した気遣いを読み取ったのだろう、こちらを思いやるような声音で、

 

『軍人というのは、時に冷酷な判断も下さなければならない職業だということ、忘れてはいけませんよ』

 

「………」

 

言われ、クレアは口を閉ざした。それはわかっている。現に、過去に冷酷な判断を、身内に下しているのだ、今更である。そっと息を吐き出して、クレアは通信機を切ろうと手を伸ばした。

 

「……ご配慮、ありがとうございます。ですが私は大丈夫ですよ」

 

『そうは感じられないから、助言をするのですよ。まぁ、年寄り特有のお節介と思って、聞き流して貰ってもいいですが』

 

「はぁ……」

 

通信機ごしに伝わってくる朗らかな笑いに手を止め、思わず生返事をしてしまうクレア。年寄り特有のお節介という自覚があるのなら、まだ良い方か。

 

『軍人として冷酷な判断を下すときは必ず来ます。ですが……貴方はきっと、その判断を下せても、後になって些細なことで後悔するタイプの人間です』

 

「………」

 

――お節介にしては的確な発言に、思わず息を呑むクレア。判断を下しても後悔する――脳裏に、叔父を断罪したときの事が蘇ってきた。不正を働いていた叔父を断罪したことに後悔はない。しかしその一件により親戚との仲は完全に断たれてしまったのも事実である。

 

そのことに関しては、後悔が全くない、とは言えない。心に突き刺さった小さな針は、数年経った今も彼女の胸にある。

 

『しかしそれは貴方の優しさの証明。その優しさ、完全に捨て去っては行けませんよ』

 

「えっ……」

 

そしてダーゼフから告げられたのは、思いも寄らなかった言葉。目を見開いて驚きを露わにするクレアは、やがて頬を緩めて独白する。

 

「…………。てっきり、その甘さを捨てないと大変な思いをする、というようなことをおっしゃるのかと思っていました」

 

『確かに大変な思いをするでしょうね。そこは私も保証します』

 

「保証するんですか」

 

苦笑を浮かべるクレア。通信機越しのダーゼフには伝わっていないだろうが、声音で読み取ったのだろう、微かに笑いが漏れてくる。

 

『えぇ、保証しますよ。……ですが、それで良いんだと思います。迷ってこその人生、強さのために、感情を捨て去る馬鹿者に比べれば、全然マシです。むしろその迷い、後悔を乗り越えて得た力こそ、本当の強さだと私は考えていますから』

 

「……後悔を乗り越える……」

 

『リーヴェルト少尉にどのような過去があったのか、私は存じません。……ですが後悔を引きずり続けるよりも、それを己の糧とする……それが一番ではないでしょうか』

 

 

 

「………」

 

ダーゼフとの通信を終えたクレアは、しばし思案顔を浮かべていた。遊撃士達はおそらく明日にも動き出すだろう。攫われた人質の救出は、時間がかかればかかるほど、生存する可能性は低くなっていく。

 

そんな彼らを助力する方法はないものか。そう考えていたクレアは一人苦笑していた。遊撃士達との交流はさほど深くはなく、個人としてそこまで肩入れするのはどうなのか、という気持ちはあった。

 

――しかしここで手を貸さねば――あの少女を見殺しにすれば、きっと後悔する。かつて家族を失ってしまったクレアには、そんな予感があった。だから――

 

「……今回は手を貸します、遊撃士の皆さん」

 

意を決したように頷いて、彼女は通信機の受話器を取った。

 

「失礼します、”オズボーン宰相閣下”」

 

『――ほう、君から直接の通信とは珍しい。何かあったのかな?』

 

「はい、実は――――」

 

 

 ~~~~~

 

 

――――その翌日、アイゼンガルド連峰にて。例の洞窟の横穴に座り込んでいたくすんだ金髪の男は、何者かが近づいてくる気配に気づきそっと顔を持ち上げる。見ると褐色肌の少年が手にバスケットを持ってやってきた所だった。

 

「……交替はいらんと何度も言ったはずだ、カイト」

 

「違う。飯の時間」

 

首を振って手にしたバスケットを持ち上げるカイト。そういえば今日の食事当番は彼だったなと思い出す。一晩中洞窟の奥の気配を読み取っていたネモは、流石に疲労を感じたのか、思わず深くため息をつく。

 

「飯ぐらいゆっくり食え、てことか?」

 

「ん。今のレヴァナントで、ロゼリアを見張れるのは俺とあんたしかいないし」

 

カイトはバスケットから朝食のサンドイッチを取り出して手渡す。今のレヴァナントは、あの女狐ことロゼリアがかけた呪いの影響により、魔女の私兵と化しているのが現状であった。

 

今朝見た段階では、団員達は自我を持ち普段通り行動できていたが、一度ロゼリアが呪いを強めれば、自我を封じられ彼女の命令に従う操り人形と化してしまう。現に帝都の地下道ではそうなっていた。

 

この呪いに抵抗できているのは、ゾルダのようなノーザンブリア公国軍時代からの古参兵のみであり、その彼らとて長時間意思を保つのは難しいようだ。

 

ネモはその異常な精神力と何らかの特性(ロゼリアは“特異点”と漏らしていた)によって呪いが極端に効きづらく、カイトに関してはその身に宿した“異能”によって完全に無効化していたのだった。そのため魔女を見張るのであればこの二人しか行えなかった。

 

「それで、女狐は何かやってた?」

 

「――――っ。いや、例の怪しげな儀式の準備ぐらいだ」

 

サンドイッチを飲み込み、彼はちらりと洞窟の奥へ視線を向けた。距離があり、さらに暗がりにあるため最奥は全く見えないが、それでも気配は感じ取れる。ロゼリアと連れ込まれたナギサの二人は、ほとんど微動だにしていなかった。それを聞いたカイトは頷き、

 

「そう。なら交替しよう。少し休めよ」

 

「だからいらん。あの女狐は信用ならんし、何よりもお前が心配だ」

 

交替の申し出をあっさりと突っぱねるネモ。若干視線を落として彼は呟く。

 

「……そんなに信用ないか、俺」

 

「そうじゃない。ただ……お前に向ける奴の目が、捕食者のソレだったからな」

 

「……流石に食おうとしないだろ」

 

「違う、そうじゃない」

 

眉根を寄せ、首を傾げるカイトに対し、ネモはどう口を開くべきか若干悩む。あの女狐が船内で何をやらかしていたか、何人喰われたかを知っている彼は、必死に言葉を選んでいた。流石にそんな下世話すぎる話を十三歳の少年に聞かせる気にはなれない。

 

「とにかく、お前の力を信用していないわけじゃない。そこは本当だ」

 

「……ならいいけど」

 

重ねて言うと、まだ不満げな表情をしてはいる物の、ひとまず矛を収める気にはなったらしい。カイトはネモの隣に腰を下ろして水筒を手渡した。

 

「む。……紅茶か」

 

「明け方だし標高も高いし、寒いだろ。あとこれも」

 

湯気が立ち上る紅茶を口に含みつつ、手渡された包みをあけると良い具合に焼き色のついた、焼きたてのアップルパイが姿を見せる。――仏頂面を浮かべるネモの頬が緩むのを、カイトは見逃さなかった。

 

「貰っておこう。だが朝から作っていたのか?」

 

「暇が多いから。二、三日に一回寝られれば充分な体質だし」

 

若干遠い目をしてため息をつくカイト。確かにそうだろう、彼の活動時間は常人のそれと比べて遙かに長い。――例の”教団”とやらで行われた人体実験の賜だろう。彼の異能は全て、それによって与えられた物だ。

 

「そうだったな。とはいえ、休めるときは休んだ方が良い」

 

「………その言葉、そっくりそのまま返すよ」

 

ネモも異能について言及する気はないのか、あっさりと話を切り替える。だが切り替えた先が地雷原だったようで、呆れたジト目を貰ってしまう。貰ったパイを口に含みながら、

 

「だからこうして休んでいる。……お前も、心配してくれてありがとうな」

 

「……別に。そういうわけじゃないし」

 

ぷいっと視線を逸らすカイトに、ネモは内心苦笑する。手間がかかる好物を、わざわざ朝早くから作ってくれた辺りから、彼の心情は伝わってくる。顔を背けたのはただの照れ隠しだろう。ネモもそれ以上口を開くことなく、焼きたてのパイを咀嚼する。

 

「………あの遊撃士達……来ると思う……?」

 

しばらくの間無言が続き、食べ終わったネモが紅茶をすすっているとき、ポツリとカイトが聞いてきた。横目で彼を見やると、顔を背けたままである。

 

「追跡を完全に巻いたから、追ってこれる可能性は低いだろう」

 

そう告げた彼の脳裏に浮かび上がるのは、例の短槍使い。己の身に”獣”を宿した、あの白髪の少年である。一度目はハイジャックした飛行艇の中で、二度目は帝都の地下道で戦い、そして横やりが入ったとは言え、二度とも決着はつかなかった。――白黒はっきりつけたい、という気持ちは多少ある。

 

それにあの“獣”が妙に引っかかっていた。なぜなのかは分からないが――アレを“脅威”だと感じている自分がいるのだ。確かに厄介ではあるが、所詮は厄介止まり。対処などいくらでも出来るというのに、なぜ――

 

――アレを放置すれば、自分が”捨て去った何か”に敗れる――そんな予感を感じて――

 

「……だが、願望混じりではあるが……”支える篭手”は来ると思っている」

 

「………」

 

それに例の巫女のこともある。彼女を何とかしたいという気持ちは、おそらく団員全員の共通認識だろう。だがそれは出来ない。他ならぬ団員達自身が、人質になっているこの状況では。

 

この状況で、もし遊撃士達が現れれば――何とか出来る可能性は零ではなくなる。そうなることを期待している自分がいるのは確かであった。

 

「後は空の女神が、あいつ等に――――どうしたカイト?」

 

「――――」

 

ネモの言葉の途中で、突然カイトは何かに気づいたように立ち上がり、洞窟の奥へと視線を向けていた。眉根を寄せるネモも、数秒遅れて気づいた。――洞窟の奥から、嫌な気配が漂ってくる。――これは。

 

「……この感じ……”上位三属性”か……?」

 

「………思い出した。あのときと同じ」

 

警戒心を露わにさせて立ち上がるネモの言葉に重ねるように、カイトは体を震わせながら呟く。その瞳が、異能を発動させていることを示すかのように紅から金へと変わっていた。

 

「”緋色の空”のときと同じ……!」

 

「っ! 緋色の空……まさか!?」

 

以前それとなく探りを入れた感じでは、カイトも帝都で発生した”緋色の空”の一件を忘れてしまっていたようだったが、このタイミングで思い出したらしく、金色に輝く瞳を見開かせながら口を開く。そして緋色の空と同じと言うことは――この辺一帯は、おそらく――

 

 

――パキン――

 

 

「っ!?」

 

「な、なに……!?」

 

どこからか、何かが割れる音が確かに届いた。その謎の炸裂音は次第に連続して響いていき、やがて音の発生源に気づいた二人は振り返り、”それ”を見た。洞窟の入口という、”何もないところで発生した”亀裂――言わば”空間の亀裂”に。

 

「――ちぃっ!」

 

咄嗟に少年を洞窟の外へ放り出そうとするも、間に合わなかった。彼がカイトを放り投げるよりも先に、空間の亀裂を固定するかのように”門”が現れ、そして――そこから発生した光に、二人は視界を塗りつぶされた。

 

 

 

「――これは……やはりあのときと同じ……!」

 

――光が収まった先で目を開けたネモは、その光景に驚き、そして顔をしかめる。洞窟にいたはずが、いつの間にか周囲が見たこともない場所へと変貌していたのだ。

 

ゴツゴツした岩肌は消えてなくなり、綺麗に整えられた石床は見たこともない材質が使われ、壁と天井はなくなり、”外”は夜空を思わせるような星々と巨大な月が浮かぶ景色へと変貌を遂げていた。――まるで何かの”回廊”を思わせるような場所へ変わったことにカイトも驚きを隠せない。

 

「――――あの女狐め……周辺を”異界化”させやがったな……っ!」

 

 




サラスバティーの復讐鬼 4巻を入手しました。

レオンがEXEに行く際、1~4巻を持っているとゼムリアストーンによる強化武器を造ってくれることでしょう。残念ながらストーリーには反映されませんが。



そしてカイト君の異能の正体が判明、例の教団絡みです。他の団員にはツンな彼ですが、ネモに対しては若干のデレがあります。助けてくれた恩人なので懐いている感じですね。


ちなみに彼はノーザンブリア出身。ノーザンブリア出身の子は、北の猟兵に対して感謝と憧れを抱いていそうですよね。彼らは傭兵稼業で稼いだミラを使って食料を買い込み、無償で配っているという印象がありますし。

彼らの力になりたい、大きくなったら北の猟兵になる、なんて思っている子も多いことでしょう。そんな純粋な子供達に対して、「彼らの力になれる」なんて囁かれたら……やっぱ連中外道だわ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。