Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~ 作:ジンクルタニ
ほとんど原作の説明なので原作を読んだことのある方は2話からお読み下さい。
原作を読んでない人もユウキが出てくるのは2話目からになるので、ぜひ2話までは読んでほしいです。
(ほんとは9話に一度目の区切りがあるのでそこまで読んでほしいなぁ…なんて)
初めての作品なので読みにくいかもしれないですが、最後まで付き合っていただけると嬉しいです。
突如現れた天才物理学者の茅場晶彦が作った最新型VR機器のナーヴギア。それは脳の信号で直接ゲームのキャラクターを動かせ、ゲーム内の刺激を直接脳に与えることが出来るハードだ。つまりナーヴギアを使うことで五感のすべてでゲーム世界を感じられ、ゲームの世界に入れるようになるのである。
しかしながら情報量の増加などで複雑なソフトを作るには金がかかりすぎたためにいまいちパッとしないゲームしか販売されなかった。そんな中でとうとう戦闘をメインとしたMMORPGゲーム「ソード・アート・オンライン」通称SAOが販売された。
机の上の3面PCを見ると初回生産版一万本の中の一つを運よく手にいれた人が苦労話や自慢を書き込んでいる。
俺は幸運なことに更に少ない1000人しか参加できないβテストに当選し、それにはなんとSAOソフトの優先購入券がついていた。おかげで楽に購入することができたから良かったものの、もしも買えていなかったらきっとショックで3日は部屋に閉じ籠もってしまっただろう。
SAOは空に浮かぶ鋼鉄の城であるアインクラッドを舞台としている。この城は百階層の構造となっていおり、各階層は迷宮区というダンジョンで繋がっている。βテストの時は10層目まで行き特殊な剣技を操るトカゲ男と広すぎる迷宮区に手こずり、残念ながらそこでβテスト期間の1ヶ月を迎え終了してしまった。当時は自分のデータが消される事に我が身が削られるような感覚を覚えたものだ。
サービス開始の30秒前、開始と同時に入れるようにベッドに寝て楽な姿勢になる。そして、俺をあの世界へと送り出してくれるナーヴギアを頭に被り、起動の言葉を唱えた。
「リンクスタート!」
フルダイブ開始時に視覚、聴覚と順番に5感の全てがクリアされて再び接続されたのを感じると、そこは再び見ることを待ちわびていた異世界が広がっている。
ここは始まりの町。中世ヨーロッパをモチーフにしたのであろう光景が広がっている。二三度手を握ってみて久しぶりの感覚を確かめえる。そして込み上げてくる喜びに言葉が漏れた。
「帰って来た、この世界に!」
俺のアバターの名前は本名の桐ヶ谷和人をもじってキリトにしてある。身長は現実と感覚が変わるのを避けるために変えていないが、ゲームの中だしせっかくならと顔をいじり、どこかの伝説に出てくるようなカッコいいものにした。
早速狩りに行くことにして、この街で一番近くの武具屋に走り出す。すると後ろから、
「ちょっと、そこの兄ちゃん」
と声を掛けられたため振り替えると、そこには派手なバンダナを頭に巻いた男が立っている。
「その迷いのない動き方、兄ちゃんβテスターなんだろ。ちょっとレクチャーしてくれよ。俺はクラインって言うんだ」
不意を付かれたため、
「あぁ、俺の名前はキリトだ。よろしくな、クライン。とりあえず武器屋まで案内するよ」
とNPCのように答えて近くの武器屋まで連れて行った。
この世界には魔法というものが存在しない。しかしこの世界にはソードスキルという必殺技のようなものがある。ソードスキルは特定の体勢になるとシステムが実際に動かないような速さで体を動かしてくれたり、慣性を無視したような連続攻撃が出来るようになったりととても便利なものだ。このゲームでは、ソードスキルをいかにうまく扱えるかが攻略の難易度を決めると言っても過言では無いだろう。
ソードスキルを教えるために来た町の近くのフィールドは草原と丘がメインのステージで、今日はよく晴れている為に心地よい。
そんな中、クラインは目の前のイノシシ型のモンスター相手に曲刀を滅茶苦茶に振り回しては空振り、イノシシのカウンターを食らい続けている。
「一瞬の貯めを作るんだ。そうすれば後はシステムが勝手に攻撃を当ててくれるよ」
「そんな事いってもよぅ、あいつ動きやがるんだぜ」
一度クラインが相手にしていたイノシシを倒すと、近くにいた別のイノシシに向かって拾った石を投げつける。命中率を上げるために投擲スキル、シングルシュートを発動させる。
「いいかこうして貯めて、ズパーンと一気に放つんだ」
ソードスキルを発動したため手がひかりだし、直後に一瞬で石を放った。
石を当てられたイノシシは怒ってこちらに一直線に向かって来るからそいつをクラインに誘導してやる。
「ズパーンて言われてもなぁ」とぼやいていたがようやく感覚を掴んだのか動きを止めたクラインの曲刀がひかりだす。
「うぉりゃぁぁ」
野太い掛け声と共に剣が凄い速さでイノシシの首に吸い込まれて行く。曲刀単発スキル、リーバーだ。それで体力がゼロになったイノシシは青いポリゴンの破片となり爆散した。
「うおっしゃあああー」
クラインが持ち上げた手にパシィンと手をぶつけると、クラインはようやくイノシシを倒せた事が嬉しかったのか満足そうな顔をしている。
「初勝利おめでとう。今の他のゲームで言うところのスライムのようなもんだけどな」
「マジかよおれぁてっきり中ボスクラスかと」
ひとしきり二人で笑い合い、次の獲物を決めて駆け出した。
しばらく狩りを楽しんだ後、感覚を覚えるためにソードスキルを空うちしていたクラインが、ふと赤く染まった空を見て何かを思い出したのかメニューを突然開く。
「チキショー、もうこんな時間かよ。今日は出前にピザ頼んでんだ。俺先に落ちるわ。サンキューなキリト。あぁそうだ!フレンド登録しとこうぜ」
クラインとならこの世界でいい友達になれるかもしれないと思っていた時だった。フレンド登録を済ませたクラインがログアウトボタンを押そうとホロウィンドウを操作していると急に
「ログアウトボタンがねーぞ」
と言い出した。
「いや、さすがにそんなわけないだろ。」
慌てて確認すると…
「・・・俺のも無い」
「おいおい大丈夫かよ初日からこんなミスしたら運営も大慌てだろうな。いや、ちょっと待てよ、あぁー俺様のピザが冷めちまう。ログアウト!おーい運営さんログアウトさせてください」
「無駄だよクライン、この世界はログアウトボタンを押すしかログアウトできないんだ。これはおかしいぞ本当なら全員を強制ログアウトさせてメンテ入れるなりするべきなんじゃないか」
何か嫌な・・・とんでもないことが起こるのではないか。そう思っていた時ゴーンゴーンと鐘の音が流れだし体を転移時特有の青い光が包んだ。
思わず閉じていた目を開けるとそこは始まりの町の中央広場だった。周囲に次々と人が転移しているため、きっと全員が集められたのだろう。クラインは俺の近くに転移されたようだ。
すると空を埋め尽くす様に何個もの赤い六角形のパネルが出現し、そこにはWARNINGの文字が。その隙間からどろっとした赤い何かがまるで血が垂れるかの様に出現し、空中で赤いローブを形成した。このゲームのGMアバターのようだ。
周りはセレモニーかよと安心したようだが、どこかに違和感を感じる。そしてその違和感の正体はGMのアバターだった。いつもはその中に魔導師の様なおじいちゃんかメガネをかけたお姉さんがいるのだが、その赤いローブのなかには何もなく裏地が見えている。
アバターからいつものアナウンスと異なった声が聞こえてくる。
「私の世界へようこそ。私は唯一この世界を操作できる茅場彰彦だ。諸君らの中にはログアウトボタンが無いことに気がついている者もいると思う。しかしこれは不具合ではない。ソードアートオンライン本来の仕様である」