Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~ 作:ジンクルタニ
お気に入り20突破有難うございます。
今回のオリジナル展開はちょっと迷走してる感が自分のなかに有って少し不安です。
少しのダメージで決着が付くため、攻撃を貰いにいこうとしても向こうは大技しか使おうとしない。ユウキのソードスキルは恐ろしく速い。1度発動されたら避けきれる自信がないので発動させないために段々と攻撃が激しくなる。
「しっ」
レベルに物をいわせた速度重視の突きを放っても剣を弾きあげられ、逆にユウキがソードスキルを構える。
自分とここまで戦える相手は今までに会ったことが殆ど無い。そういえば最後にここまでお互いに渡り合っているデュエルをしたのはいつだっただろうか。
ソードスキルの発動をキャンセルさせるために剣を横に大きく振る。
バックステップでかわすのを予想して仕掛けようとするが、ユウキの動く気配が全く無い。そのまま剣は当たり、ユウキが弾き飛ばされた。
その光景が、今の自分の喪失感が、ある時とぴたりと重なった。それはβテストの、一番SAOを楽しんでいた時期。プレイヤーが主催したデュエルトーナメントの決勝で 、ライバルだと思っていた相手が八百長でわざと負けた時だ。
同じように攻撃が当たった事に呆然としているとwinner表示がでかでかと現れた。
相手の口許を見ると少し笑っていて全く悔しそうじゃない。その瞬間、相手がわざと負けたことに気が付いてしまったのだ。本気だったのは自分の方だけだったのかと思うと凄く悔しく、デュエルの余波で気分が高揚していた俺は気がついたら相手を強く責め立てていた。
しかし、その時と違うのはこれで決着が付かなかったこと、そして負けようとしているのが自分だということだ。
本気で戦っている相手にわざと負けられること。その悔しさを俺は知っている筈なのに、同じ事をユウキにしようとしていた。
もうデュエルを始めた切っ掛けなど、頭の中から吹き飛んでいた。
「これで条件は一緒だね、キリト。ここからが本当の勝負だよ!」
この一言に、本気で勝ちたいという感情が芽生えた。ユウキの姿勢、重心、目線などあらゆる情報を読み取って次の動きを考える。
合図もなしに、今度は互いに駆け出した。剣同士がぶつかり、火花が飛び散る。本気のデュエルが、今始まった。
切り下ろし。ステップで避けられる。突き。剣を跳ね上げられた。横なぎ。しゃがんで避けられる。上段からの大振りと見せかけて途中で攻撃を止めて突く。当たると思った瞬間、体術単発ソードスキルの水月で横に弾かれた。正面ががら空きになった俺にユウキが突きを放つが、それは予想していたので体をひねって避ける。手数やスピードで勝っているのに、一撃がどうしても決まらない。
何合も打ち合ううちに一発鋭いカウンターが体をかすめ、あともう一発でもかすってしまったら負けになってしまった。焦った俺は、一か八かソードスキルを放つ。
青く発光した剣がユウキに迫るが、ソードスキルで照らされたユウキの目はその剣先をしっかりと捉えていた。
しまったと思ったときにはもう遅く、ユウキの剣にソードスキルを弾かれていた。
技後硬直で動けないところに繰り出された剣は心臓を貫いたりせず、頬を掠めて決着がついた。
デュエルのwinner表示がでかでかと2人の頭上に表記された時、最後の瞬間まで黙って見守っていたクラインが急に立ち上がった。
「後はユウキちゃんに任せるぜ。ま、こいつは貰っていくがな。よしお前ェら、蘇生アイテムゲットの祝いに宴会を開くぞ!今日は俺様が奢ってやるぜ!」
よっしゃーなどと口々に言い合いながら風林火山のメンバーが転移していく。
ニコラス戦の疲れもあって立っていられず、その場に座り込むと、すぐ隣でユウキが座る音が聞こえた。
ふと隣を見ると、ユウキの装備が俺と同じ位ボロボロになっている。俺がニコラスと戦っていたとき、ユウキも激しい戦いをしていたのだとその時に初めて気が付いた。
見られている事に気が付いたのかユウキが顔をこっちに向ける。
目と目が合うとユウキが静かに口を開いた。
「ねぇキリト。何があってそんなに自分を責めてるの?何があったのかちょっとだけ知ってるけどキリトの口から直接聞きたいな」
動ける気がしないので逃げる事も出来ず、ぼそぼそと黒猫団を壊滅させた話をした。話している内にデュエルの高揚感は無くなり、気持ちが沈んでいく。
「俺のエゴが皆を殺したんだ。…頼みの綱だった蘇生アイテムもなんの意味もない。…俺にはもう、生きている価値なんて…」
無い。と言おうとした時、いきなり視界が塞がり、体が温かくなった。3秒ほどたってユウキに抱き締められているんだと気づく。
「キリト、それ以上はダメ」
「…ユウキ?」
「何でボクがデュエルを仕掛けたと思ってるのさ」
「…」
問いかけられても全くわからない。ユウキの胸の中で小さく首を横に振った。
「あのままだとキリト、自分で死んじゃいそうで…それだけは止めないとって思ったんだ。ああでもしないと話も聞いてくれなかったでしょ」
「俺なんかに何でそこまで…。俺は1つのギルドを壊滅させて…誰かを守る事もできず、強くなった所で誰も救えない…」
すると、頭に回されていた腕の力が少し強くなった。
「デュエルじゃ伝わらなかった?」
ユウキの手がゆっくりと頭を撫で始める。
「ボクは強くなったんだよ。今じゃもうキリトより強いんだから。守ってもらわなくても大丈夫」
「…」
「それに、キリトが誰も救って無いなんて事はないよ」
「…?」
「ここにいるよ。あの日、無駄に命を散らす所だったボクを救ってくれたのは、キリト。君なんだから」
「それでも、俺は…」
「ようやく出来た仲間がキリトを責めるだけの人だと思ってるなら、それは死んじゃった人たちに失礼だよ」
「…」
「信じてあげなよ。キリトが自分で見つけた居場所だったんでしょ」
そこまで言われて思い出さないようにしていた黒猫団の皆で攻略していた頃を思い出す。あの時は皆で笑ってて、俺も自然と笑えてて…。思い出と共に、あれほど出てこなかった涙が頬を伝って落ちていく。
「俺は…俺はっ…何をすれば 、皆に報いれるのかな」
「ずっと忘れないで、でも前に進んで欲しい。ボクならそう思うかな」
その一言は生き残った人を慰める時によく聞くようなもの。しかし俺にはそれが、切って捨てる事の出来ない程重い言葉に聞こえた。
「そうか…そうだと良いな…」
抱き締められる形で頭を撫でられ、そのまま泣き続けた。弱くなった雪が2人を優しく包み込んでいた。
涙が止まり嗚咽も止んだ頃にゆっくりとユウキが抱擁を解いた。
「ユウキ、迷惑をかけてごめん」
「そういう時はごめんなさいよりもありがとうの方が嬉しいんだよ」
「そっか…、ありがとな」
「どーいたしまして!じゃあ宿屋に行こっか」
「そうだな」
2人で会話もせずに並んで歩く。宿をとろうとしたが1人部屋が取れず、2人部屋を借りることになった。
部屋に入りベッドに座る。歩いている内に頭が覚めて落ち着くと、だんだんと恥ずかしさが沸き上がってくる。
自分よりも年齢が下であろう女の子を本気で心配させてしまったうえに、すがり付いて泣き止むまで慰めて貰ったのである。
どう話しかけて良いのかわからず、ずっと黙っていると聞き慣れないアラーム音が耳に届いた。
ユウキの反応を見たところ気付いた素振りがないので、これは俺にシステムから届いた通知なのだろう。
ウィンドウを出して確認すると、サチとの共通タブが光っていた。そこに何かの時限起動アイテムが入っていたらしい。アイテムを取り出すと、それはメッセージ録音クリスタルだった。
「それ、どうしたの?」
「サチからのメッセージらしい」
「ボク 、席を外してようか?」
「いや、一緒に居てくれ」
明滅するクリスタルをクリックすると、懐かしいサチの声が聞こえてきた。
メリークリスマス、キリト。
君がこれを聞いているってことは、私はもう死んじゃってるんだと思います。
キリトは毎晩絶対に死なないって言ってくれたよね。だから、私が死んだときは自分を凄く責めるでしょう。だから、これを録音することにしました。
あのね…本当はキリトがどれだけ強いか知ってるんです。実は一度だけキリトが操作してるウィンドウを後ろから覗いちゃったから。
何でキリトが一緒に戦ってくれる理由はわからなかったけど、いつか自分から話してくれると思って他の皆には黙っていることにしました。
君がすっごい強いんだって知ってから、君の隣なら怖がらずに眠ることが出来たよ。
えっと…何が言いたいのかっていうと、もし私が死んじゃってもキリトは頑張って生きてねってことです。生きて、この世界が生まれた意味、こんなに弱虫な私がここに来ちゃった意味、君と私が出会ったことの意味を見つけてください。
時間余っちゃたので歌を歌おうかな。曲は《赤鼻のトナカイ》にします。何でこれかっていうと、どんな人でもきっと誰かの役に立っているってキリトに言って貰ったときに嬉しくって思い出したからです。
ふっふふふっふふっふー…
…私にとって、君は暗闇の先にある星のようでした。じゃあねキリト。君と出会えて、一緒に居られて本当に良かった。
ありがとう、さよなら。
最後の言葉が、死ぬ直前に見せたサチの口の動きとぴったり重なった。
生きて、100階層を攻略しよう。
サチがこの世界に来た意味があったと、そう教えられるように。
おんなじ所を何度も書いては消して書いては消してを繰り返してやっと書き上げたんですが、気に入って頂けたでしょうか?
ユウキはこれから他人に対して距離とらなくなっていきます。
お気に入り、感想、誤字報告などお待ちしています。