Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~   作:ジンクルタニ

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遅くなってすいません!
先週中に更新しようと思っていたのですが、思ったよりも本編が長くなってしまい間に合いませんでした。
今話でようやくシリカ編が終わります。


黒の騎士

「どういうことかしら?」

 「10日位前にシルバーフラグスっていうギルドを襲ったよね?メンバー4人が殺されちゃって、リーダーだけが逃げられた」

 「ああ、あの貧乏な連中ね」

 「リーダーだった人はね、最前線の転移門広場で泣きながら仇討ちをしてくれる人を探してたんだ。しかも、話を聞いたボクたちにそいつを殺してくれなんて一言も言わないで、監獄に閉じ込めてくれって言ってたんだよ。あなたにはこの人の気持ちがわかる?」

 その問いに、ロゼリアが面倒臭そうに答える。

 「わかんないわよ、マジんなっちゃって馬鹿みたい。私、嫌いなのよね。そうやってこの世界に法律とか持ち込んでくる人。この世界で人を殺したって現実で裁かれる訳ないじゃない。それにその人が本当に死ぬのかなんてわかんないんだし」

 殺人を何とも思っていないその態度に怒りがわいてくるが、全員を捕まえるチャンスが来るまで我慢しないといけない。握り締めた拳に更に力が入る。

 

 「餌に釣られたのは癪だけど、2人だけでどうするつもりなの?」

 ロゼリアが片手を上げて2回揺らすと、道の脇に生えている木々の裏からカーソルをオレンジ色に染めた男達がぞろぞろと表れた。

 その数、10。

 じゃらじゃらと色んなアクセサリーやサブ装備やらを身体中につけ、粘つくような視線でボクとシリカを見つめてくる。

 「ゆ、ユウキさん…数が多すぎます、早く脱出しないと…」

 少し後ろに立っていたシリカがボクの袖を引っ張って提案してくれているけど、正直この人達のレベルじゃあソードスキルを使われても全然HPを持っていかれないだろう。

 

 「大丈夫だよ、シリカ。ボクが脱出してって言うまではそこで転移結晶を持って待っててね」

 安心させるように言うと、ボクは剣も抜かないで橋を渡りきる。

 「ユウキさん!」

 ボクを心配してくれるのはありがたいけど、今は少しだけまずい。

 「ユウキ…?」

 盗賊の1人が何かを思い出そうとする。

 「その服装に盾無しの片手剣。それに僕っ子…。もしかして黒の騎士か?」

 50層のボス攻略で何人かの死人が出てレイドが崩壊しそうになった時、我慢できずに咄嗟に飛び出してキリトの制止も聞かずにボスのタゲを取ってしまった。

 その時、血盟騎士団団長であるヒースクリフと2人でその後もターゲットを取り続けて前線を支えていたら、ヒースクリフの騎士っぽいキャラメイクに引っ張られたのかヒースクリフが白の騎士、ボクが黒の騎士と呼ばれる様になった。

 ちなみに、キリトはその時にアタッカーをしていて、黒の剣士なんて呼ばれている。

 

 殆ど2人で活動してるとはいえ、ボス攻略等には参加するため新聞の様なものに顔や格好が載る事がある。この男もそれで知ったのだろう。

 「や、やばいよロゼリアさん。こいつ、いつもビーターと一緒に居るっていう、こ、攻略組だ」

 盗賊達が一斉にどよめき始める。 

 一斉に転移結晶を使われたら全員を捕まえるのが難しいし、逃げられて潜伏されるとこの世界では見つけるのが難しくなる。

 フレンドリストから追跡出来るかもだけど、最近はその事を気にしてフレンドにすらならない犯罪者が多い。

 「こ、攻略組がこんなところに居るわけ無いじゃない!どうせ名前を借りたコスプレに決まってる。それに、攻略組でも1人くらいこの人数なら余裕だわよ」

 「そうだ、それに攻略組ならレアなアイテムもコルも沢山持ってるに違いない!」

 ハラハラして見ていたが、向こうは戦闘を選んだようだ。ボクとしてはこれが1番都合が良い。

 

 男達がそれぞれの武器を抜き、短い橋をドタドタと駆け抜けてボクを半円状に囲む。

 ニヤニヤとした顔が気持ち悪いので、目を合わせないように視線を下げていると、それを諦めと取ったのか盗賊達の威勢が良くなる。

 「死ねやぁぁ!」

 「くたばれぇぇ!」

 男達が口汚く罵りながら武器を振る。

 体を通り抜ける刃物の嫌な感覚を味わいながらその場で攻撃を受け続ける。

 「いやぁーーー!やめて、やめてよ!ユウキさんが、…し、死んじゃう!」

 シリカが後ろで叫んでいるが、男達がそれで攻撃を止めるわけがない。

 HPバーを見ていると、攻撃を受けても少ししたら全部回復できてるのがわかる。

 

 しばらく攻撃が続いたけど、一向に倒れないボクに男達が動揺し始めた。

 それはロゼリアにも伝わったようで

 「お前達、何をやってるんだい!さっさと仕留めな!」

 再び攻撃が来るが、ボクのHPを減らすことはできていない。

 攻撃が止み、盗賊達が動揺している今がチャンスだろう。キリトの1層で見せた不敵な笑みを意識して作る。

 「無駄だよ。君たちの攻撃じゃいくら攻撃してもボクは倒せない。ボクのバトルヒーリングスキルで回復しきれちゃうからね。倒せるか試してみる?何時間でも付き合ってあげるよ」

 やけくそになったかのように武器を振るい続けた男達だったが、一向にボクが倒れないのでさっきの言葉が本当だとわかったのだろう。

 力の差を思い知ってもらうためにやったけど、ここまでうまく行くとは思っていなかった。

 「ボクがその気になれば全員を相手にしても大丈夫だけど、降参して投降してくれるとありがたいかな。…レベル差がありすぎて加減できないかもしれないしね」

 男達が諦めて項垂れる。しかし、そこでまだ諦めていない人が1人いた。

 

 ロゼリアが転移結晶を掲げてどこかの町へ転移しようとする。

 「転移!…っ!?」

 掲げられた結晶にピックが突き刺さり、手から落ちる。地面にぶつかった結晶は効果を発揮することなくポリゴン片となって宙に消えた。

 これはボクがやった事じゃないので、キリトがやったのだろう。ロゼリアがピックの飛んできた方向を凝視する。

 「逃げられると思ったか?」

 木の輪郭が揺らいでキリトが現れた。

 「なっ…いつから!」

 キリトがロゼリアの前に歩み寄る。

 「ここに俺達の依頼主が全財産をはたいて買った回廊結晶がある。これでお前達には監獄まで飛んでもらうぞ」

 まだ逃げる余地が有ると思っているのか、ロゼリアがその顔に再び笑みを浮かべる。

 「もし、嫌だと言ったら?」

 「全員殺す」

 ロゼリアの笑みが凍りつく。

 「と言いたいところだけどな。仕方ない、その場合はこれを使うさ」

 キリトが取り出したのは毒を塗った短剣。

 「レベル5の麻痺毒だから10分は動けないぞ。その間に放り込まれるか自分から入るか…好きな方を選べ」

 

 ある男がこちらを見てきたので同じ短剣を見せつける。

 「コリドー・オープン!」

 キリトが短剣を仕舞うと回廊結晶を掲げて叫んだ。結晶が砕け散り、その前の空間に青い光の渦が出現する。

 「畜生…」

 男達が次々にその中に入っていき、光の中へ消えていった。

 後に残ったのはボクとキリト、シリカと…地面に胡座をかいて座るロゼリアだけになった。

 「やりたきゃやってみなよ。グリーンの私を傷つけたら今度はあんたがオレンジに…」

 ロゼリアが発した言葉は最後まで続けられなかった。

 キリトがロゼリアの襟首を掴み上げる。キリトがかなり怒っているのがわかってたから剣を取り出さないか心配だったけど、ただの杞憂に終わったようだ。

 「言っておくが俺はコンビでギルドに入ってる訳じゃない。1日2日オレンジになっても、まあ大したことじゃないぞ」

 キリトがこっちを見てきたので、頷いて肯定しておく。

 

 襟首を掴み上げられて尚抵抗しようとするロゼリア。

 「やめろ!やめろっての!…そ、そうだ、あんた達アタシと組まないかい?あんた達の腕ならどんな獲物だって…」

 しかし、ロゼリアが言えたのはそこまでだった。

 キリトが渦巻きの中にロゼリアを放り込むと共に渦が消え、また元の景色へと戻った。

 そこで橋で待機してもらっていたシリカの事を思い出す。

 「ごめんね、シリカ。本当は全部話したかったんだけどどこで聞かれてるかわからないから隠してたんだ。それに…怖がられるかもって思ってね」

 シリカが首をブンブン首を振っていて、その様子だと許してくれたと思う。

 やっぱり怖がられたみたいでシリカは言葉が出ないようだけど、まだモンスターが出現するフィールドなので町までは送っていかないと危ない。

 「ボクが町まで送るね。キリトは先に戻ってるらしいから」

 シリカにそう言って歩きだす。するとシリカがボクに声をかけた。

 「あ、足が動かないんです」

 振り替えって顔を良く見るとその表情に怯えた色は見えなくて、少し嬉しくなって笑みがこぼれる。

 手を貸して立たせてあげると、シリカも少しだけ笑ってくれた。

 

 シリカを35層の風見鶏亭まで送る道中、2人の間に会話は無かった。

 ボクの部屋まで来ると、シリカが震えた声で話しかけてきた。

 「ユウキさん…行っちゃうんですか…?」

 襲われた直後で不安なのはわかるし、ボクたちが居れば大体の敵には対処できる。

 でも、ここに留まってしまうと現実世界に帰るまでの時間が長くなってしまう。そうなったらボクと姉ちゃんがもう一度会うことが難しくなるだろう。

 ボクたちが前線に戻った後不安が残らないよう、徹底的に組織を潰すためだけにあんな芝居までしたのだ。

 「…5日も前線を離れちゃったからね」

 「…そう…ですよね。あ…あたし…」

 シリカが急に泣き出してしまい、慌てる。

 怖いから引き留めたんじゃない。ボクたちと一緒に行きたくて、でもレベル差のせいでどうしようもない。

 そんな風に感じているのかな。

 「この世界の強さなんてしょせん幻想でしかないんだよ。そんなものよりもずっと大事なものがある。だから、ボクが現実世界に戻れたら…」

 ボクにとっての現実世界に戻ることはSAOのクリアとイコールではない。

 病気が治ってメディキュボイドの外に出られる時。そんな望みの薄いことだけど、今はこう言うのが正解な気がする。

 「その時は友達になろう」

 「…っ!はい!」

 シリカもようやく落ち着いたのか、今は笑みを浮かべている。

 

 「じゃあ、蘇生してあげようか。その花の蜜を羽根にかけてみて」

 「わかりました」

 シリカが花を傾け、蜜を羽根に垂らした。すると一瞬眩い光が視界を覆い尽くし、シリカの膝の上にふわふわの羽根が生えた小さな竜が現れた。

 ピナと呼びながら竜に抱きつくシリカを見て、さっき交わした約束を思い出す。

 死ぬために生まれてきたボクだけど、もう少しだけ前向きに生きてみようかな。

 そう、思うことが出来た。




ここまで読んでくださっている皆さん。本当にありがとうございます!
もうすぐでUAが5000を越えそうなので、明日は越えないかそわそわしながら何度もスマホを確認することになりそうですw
深夜に書いた部分もあるので誤字脱字が心配…。
見つけたら教えてもらえたりすると嬉しいです。
リアルの方が忙しく、更新がいつになるかわからないのですが、失踪だけはしないので気長に待っていただけると幸いです。
感想、評価、お気に入り登録をお待ちしています!
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