Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~   作:ジンクルタニ

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ユウキが登場しますが、メディキュボイドの個人スペースに居た時の格好をイメージしています。
少し設定を都合良くしてます。



始まりの日
出会い


「繰り返す。これはソードアートオンライン本来の仕様である。君たちがこの世界から出るには100層に居るボスを倒し、この城を攻略するしかない。また、この世界でアバターが消滅した時、ナーヴギアが諸君らの脳を焼き切る。今後はいかなる蘇生手段も存在しない。」

 「おいキリト、本当に脳を焼き切るなんて事ができんのかよ?」

 「ナーヴギアはマイクロ波を出して神経を遮断しているんだ。つまり電子レンジと原理は同じなんだよ」

 「じゃあよ、ケーブルをひっこ抜いちまえば--」

 同じ事を考えていた俺は直ぐに答えてやる。

 「いや、確かナーヴギアの重さのほとんどがバッテリーの重さだったはずだ」

 「マジかよ・・じゃあいったい何のために・・・」

 「きっとあいつが答えてくれるさ」

 空に浮かぶアバターを指さす。

 

 「諸君はきっと何のためにと思っているだろう。私はこの世界を作り出し、観察するためだけにナーヴギアを作った。そしてここに目的は達成された。最後に私から、諸君らに一つプレゼントを用意した」

 俺は急いでウィンドウを操作するとメッセージに何かが届いている。それを実体化させると、

 「手鏡・・?」

 突然アバターがひかりに包まれ、再び目を開ける。

 「あれ、転移してない」

 何か変わったところを探すとなぜか周りの人の身長が低くなっている気がする。手に持っていた物を覗き込むと、そこには俺のあまり好きではない、見慣れた中性的な顔がこちらを覗いていた。

 「この顔・・現実の!!」

 周囲を見渡すと派手なバンダナを頭に巻いた男がこちらを見ている。

 「もしかしてお前クラインか!」

 「もしかしてオメェキリトかよ。それにしてもどうやったら現実の顔になるんだ?」

 「ナーヴギアはフルフェイスだから顔のスキャンはできるはずだ。でも何で体格まで変更されてるんだ?」

 「あの時じゃねーか、ほら最初に体のあちこちを触ったろ」

 ナーヴギアの初期設定にそんなものもあったかとようやく思いだす。性別も統一されたようで女の初期装備をした男性があちこちにいた。

 「これにてチュートリアルを修終了諸君らの検討を祈る」

 その一言を残しアバターは来た時を逆再生したかの様に空に消えた。この時、俺は茅場が嘘を言っていないことが確信できていた。

 

 不安が人々の間に広がる。一人の少女の叫び声を皮切りに、帰らせろと怒鳴り初める人、その場でしゃがみこみ泣き出す人。この瞬間に世界は有り様を変えたのだった。

 しかし、そんな中にあってもなぜか冷静でいる自分がいた。

 (MMOは基本的にリソースの奪い合いだ…。なら、次にとるべき行動は)

 クラインに今後の行動を話すにはここではまずいと思い、クラインの手を取ると誰もいない路地に連れて行く。

 「クライン、この世界はMMORPGつまりリソースの取り合いなんだ。きっとこの近くの狩り場は人で一杯になるだろう。俺はそれを避けるために次の町に行く。二人ならレベル1でも安全に行けるルートを知ってる。だから・・」

 

 クラインは一気にまくし立てる俺に最後まで言わせず首を横に振った。

 「わりぃなキリト、俺はこのゲームを一緒に徹夜して買ったダチがいるんだ。そいつらもこの世界に閉じ込められただろう。そいつらをおいては行けねぇ」

 後二人までなら行けるか・・?三人以上になると厳しいな。黙り混んだ俺を見てクラインも悟ったらしい、

 「俺は大丈夫だ。そんなに甘えるつもりはねーよ。だからキリト、オメェは次の町に行ってくれ」

 

 クラインを置いて行く。そうしたらきっと後悔するだろう。しかし、そこで大丈夫とは言えなかった。一緒に行き、誰かが死ぬ。そうなった時のクラインの俺を恨む顔。それが怖くて、うつむいている事しかできなかった。

この世界で初めてできた友達を見捨てて背を向けようと顔を上げたちょうどその時だった。どこかへ走る二人が視界の中に入る。

たしかそっちはフィールドとは逆方向・・・!まさか外周から飛び降りるつもりなのか。

 「あっちはダメだ、自殺が起こるかもしれない・・・クライン、来てくれるか?」

 「誰かが死ぬとなってじっとしてられるかってんだ」

クラインが即座に返事を返してくれる。

 「・・・ありがとな、クライン」

 ばつの悪さもあってそう呟き、全力で走り始めた。

 

 

 少し走ると開けた場所に出た。ここは丸く飛び出したテラスのようだ。景色を見るためか回りと比べると柵が低い。すると女の子の大きな声が聞こえてくる。

 「ボクはそんな事許さないよ!」

 「本当に死ぬなんて事があるわけないんです。脱出するにはこれが手っ取り早いに違い無いのですよ!」

 男は20代後半位で髪は黒、誠実そうな印象を受ける顔を今は恐怖で歪ませている、一方女の子の方は同い年位だろうか、一人称はボクらしい。黒い色の髪を肩で揃えて、初期の装備に身を包んでいてテラスの柵の前に立って両手を広げている。

 なるほど、と思った。確かにこのゲームで人は無理やり動かす事が出来ない。自分が壁になることで男の自殺を止めようとしているのか。女の子の度胸に称賛を送ると共に一抹の不安を覚えていた。もし、あの男がβテスターだったら・・・

 

 その不安は男が距離を取り剣を抜いたことで確信に変わった。街中ではHPが減少しないようになっているため、いくら剣を振り回しても人に当たる前に障壁によって剣がはじかれる。

しかし、ソードスキルを使うことでHPこそ削らないものの相手にノックバックを発生させることが出来る。悪質な通行止めに対してβの時には時々見られた。

しかしこれは最後の手段で相手にかなりの恐怖を抱かせる。βテストの時にはそれを悪用した強盗も発生した位なのだ。流石に剣を抜かれた時は少し動揺していたが、その事は知らないのか手を広げて立ったままだ。

 

 「バカ野郎」

 そんな事したらあの子が・・

 俺も剣を抜く。あの子と男までの距離は4メートル、俺と男までが6メートル位。普通に走ったのでは間に合わない。

 「くそっ」

 俺は一歩を踏み出しながら片手剣単発突進スキル、レイジスパイクを発動させる。少し遅れて男の剣が発光し始める。

あの緑色の光は片手剣単発突進スキル、ソニックリープだろう。同じ突進技でも俺の技は突進の距離が長く出が速い。それに対して奴の技は突進の距離こそ短いものの空に向かって打つ事ができる。

男は少女が退かないのならテラスから突き落とすつもりのようだ。

 

 自分の剣に集中していく。段々足音が聞こえなくなり周りの物が遅くなっていく。俺の頭の中にはただ一つの事―あの子は必ず助ける―それだけ。

 「一緒に帰りましょう!」

 男がそう叫び、俺は気付かれない様に静かに地面をおもいっきり蹴る。俺の狙いは男の剣。男の体が滑らかに動き始める。

 

 俺は体を意図的に動かして威力や速度を上げる。しかし、男のソードスキルが思ったよりも速い。これでは剣を狙っても間に合わない。

 レイジスパイクの軌道を少し変えて自分が間に入り込む。瞬間、男のソードスキルにかかっているシステムアシストの標的が俺に移る。

 

 男は驚いた顔をしていたが、ソードスキルは一度放つと急にはキャンセル出来ない。紫色の障壁が出てソードスキルによる嫌な衝撃が体を襲う。柵を使ってノックバックを軽減させようとするが高さが足りない。

 

 二人でもつれ転がる様に柵の外側に投げ出される。空中で右手に握っていた剣をテラスへ投げた。

そのまま外周部を右手で掴んで先に落ちた少女の真っ直ぐ伸ばされた腕を左手でなんとか掴む。そんな姿の俺たちを見て

 「そんなにこんな場所に居たいんですか?なら良いです。ですが私は先に帰りますね」

「ダメーーー!」

 

 少女が叫ぶも止まらず、そう言い残して男はテラスの柵を越えるとそのままオレンジ色に染まった空に落ちて行った。

 「もう、ボク嫌だよ。こんなのはもう・・・」

 そう呟いた声はテラスを掴むのに必死だった俺には聞こえていなかった。

 

 

 クラインにどうにか引っ張り上げてもらった。助けた少女の方を見ると、人が死んだショックに耐えられないのかうつむいている。どうしよう、泣いている女の子を慰めるスキルなんて持ってないぞ。どうした物か考えているとクラインが、

 「俺の名前はクラインだ。お嬢ちゃんはこのゲームに知り合いは居るか?

 と優しく話し掛ける。

 「ボクの名前はユウキです。あの・・・助けてくれてありがとうございます。さっきの男の人と一緒に来たん・・ですけど・・・」

 「そうか…嫌なこと聞いてすまねぇな。ところでユウキさんはこのゲームをクリアするために戦いに出るのか?」

 俺はクラインが何を言おうとしているのか理解した。

 「おいクラインそんなの無・・・」

 「もう誰かが死ぬのは嫌なんだ・・・だからこの世界はボクが終わらせたい」

 今にも消えてしまいそうな細い声で、しかし、きっぱりとそう言いきった。俺はユウキがこのままでは一人でも町の外に行ってしまう事を確信した。

 

 覚悟は決めた。

 「俺の名前はキリトだ。俺はβテスターだからいろんな事を知ってる。ユウキ、強くなるために一緒に来ないか?」

 「…お願いします。キリトさん」

 「俺の事はキリトで良いよ。後、敬語もなしで。クライン、お前は大丈夫か?」

 「おうよ!オメェから教わったテクでなんとかしてやらぁ」

 と、胸を叩いて頼もしい返事をくれる。

 「何かあったらメッセくれよな、ユウキはもう行けるか?」

 「うん・・もう大丈夫」

 この世界で初めて出来た友人を置いていき、守るべき人を連れて次の町へ走り出した。

 

 

 

 

 




次の話を投稿したくてたまらないんですけど更新ペースがこれより速くなるとすぐに尽きてしまいそうでやめました。一緒に来ていた人は看護士さんです。原作には居なかったんですけど勝手に作りました。
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