Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~ 作:ジンクルタニ
1話のUAの1000突破、全話UAの5000越え、お気に入り40人と色々ありがとうございます!
今週から圏内事件編が始まりますが、原作から大きく改変した部分があります。
一部の人は嫌な展開かもしれないですが、自分の小説ではこの設定でいかせてもらいます。
昼寝
攻略に必要そうなものをある程度買って店から出るとぽかぽかとした気温に柔らかく日が差し、いがらっぽくも湿っぽくもないそよ風が吹いていた。
こんなに気象条件が揃う日は年に5日も無いのでじめじめとした迷宮区に入るモチベーションがだだ下がりとなっているのだが、ユウキはそんな事無いのだろうか?
芝生の広場で昼寝でもしたらさぞ気持ちがいいだろう。
それに、ユウキに休んでもらう良い機会にもなるだろうしな。
「今日は攻略を休んで、昼寝でもしないか?」
「うーん、攻略をお休みするのは申し訳ないよ。それに、あれも早く使えるようになりたいし」
あれとはユウキに発現した、おそらくユニークスキルとなる二刀流のことだ。
50層のボスを倒した翌日にドロップ品をチェックしていたら見つけたらしい。アルゴにも聞いてみたがそのようなスキルが見つかった事は無いようで、やっかみなどが起こらないように情報は伏せてもらっている。
「ここんところ休んでないだろ?オフにした日もスキル上げしてるの、知ってるからな」
ユウキが気まずそうに頬を掻く。
「クラインさんから聞いたの?」
心当たりが有ったらしい。
「まぁな。1人でいたからどうしたのか気になってたみたいだぞ」
見捨てて行ったにも関わらず俺の事を気にしてくれているようで、ありがたい反面申し訳なくなる。
「あはは、ばれちゃってたか」
「SAOじゃ何があるからわからないんだから体調をちゃんと整えておこうぜ。昼寝でもしてリラックスししてさ」
ユウキはユニークスキルを得た時からどこか焦っている気がする。ユニークスキルを得た責任を感じているのか、それとも別の理由か…。
俺が譲らないことを確信したらしい。ユウキが渋々といったようで首を縦に振る。
「良さそうな広場があるからそこに行こうぜ」
「しょうがないなぁ…」
2人で広場へ歩きだした。
広場に生えている木の元まで行き、芝生の上に寝っ転がる。
索敵のアラーム機能をセットしたので後は昼寝を楽しむだけ。なんだかんだいってユウキも横になるなりすぐに寝息を立てていた。
俺も寝ようとうつらうつらしていると、ザシッとブーツが芝生を踏みつける音が耳元から聞こえてきた。それと同時に鋭いお叱りの声が上から降ってくる。
「あなたたちは皆が必死に迷宮区に挑んでるのに、何をのんびり昼寝しているの!」
目を開けるのも辛いのでまぶたを閉じたまま適当なことを言って誤魔化すことにする。
「ユウキが起きるからもう少し静かにしてくれ。それに今日は年間を通して最良の気候なんだ。これを堪能しないでどうするんだよ」
「天候なんて毎日一緒でしょ」
もう説明もめんどくさいので話を打ち切る。
「お前も隣に寝てみればわかるさ。じゃあ俺はもう寝るから」
アスナが何か言ってるが、ぽかぽかとした陽気に意識を拐われ、そのまま眠りに落ちた。
30分程うたた寝したあとはっと目を覚ます。
左ではユウキが未だに寝ていたのだが…何を考えたのかアスナが俺の右側で眠っているではないか。
SAOの中で5本の指に入る(と俺が勝手に思っている)2人の間に挟まれて寝るのはさすがに気まずい。
1度大きく伸びをしてから立ち上がり、近くにあったちょうど良い高さの瓦礫の上に座り込む。
時刻は昼前。最前線の街で呑気に昼寝しているプレイヤーは目立つ。
あるものは俺たちとアスナが一緒にいることに驚き、あるものは笑いながら通りすぎていく。
帰りたくなってきた…が、それはできない。
2人がハラスメント行為を受けるかもしれないし、場合によってはPK行為が行われる可能性まである。
圏内では基本的に体力が減らないようになっているのだが、それにも抜け道がある。
昔俺が2人にした様に寝袋に入れてしまえば圏外へと人を動かせるし、眠っている人の手を勝手に操作してデュエルを申し込むといった方法だ。
暇潰しにボックスの整理をしているのだが、一向に起きる気がしない。
きっと、疲れてるんだろうな。ユウキはユニークスキルの熟練度上げをしながら、アスナはKoBメンバーのレベリングを手伝いながら攻略のペースを一切落としていない。
ユウキは俺と一緒にやっているからある程度は休憩してるだろうがアスナは睡眠時間を削って深夜にmob狩りでもしているのだろう。
その辛さは身に覚えがある。あの頃の俺も1度眠ったら数時間は絶対に起きられなかった。
寝ろと言ったのは自分なので起きるまで付き合う責任があるだろう。ストレージから飲み物を取り出して長期戦に備えることにした。
すっかり日も傾き夕方になった頃、アスナが小さなくしゃみと共に起きた。
時間を見てみるとたっぷり8時間程爆睡していた計算になる。せっかく待ったのでどんな面白い寝起きが見られるか楽しみにさせてもらおう。
「…うにゅ…」
謎の呻き声を出しながらアスナが体を起こす。ぽけーっとしたまま辺りを見回して状況を確認し、俺と目が合うと一瞬ビクッとしてから固まった。
アスナの表情が驚愕、苦慮、そして激怒と目まぐるしく変化する。
「な…アン…どう…」
謎言語を発したアスナに、最大級の笑顔を向ける。
「おはよう、良く眠れた?」
アスナはすぐさま立ち上がり、右手をレイピアの柄に当てた。剣を抜くか抜かないか葛藤している様にしか見えず、緊迫した空気が流れる。
しかし、そんな空気を壊すのんびりとした声が2人の足下から聞こえてきた。
「ふわぁー」
ユウキが回りを見て状況を確認する。
「あれ、ボク何で外に?って何があったの!?」
第3者の登場でアスナも正気に戻ったらしく、剣の柄から手が離れる。
「は~~。ご飯何でも幾らでも1回奢る。それでチャラ。どう?」
この一瞬で俺が何で寝かせたのかまで理解したようだ。このような直截さは嫌いではない。今度は本心からニヤリと笑う。
「だそうだ、ユウキ。じゃあ57層に結構いけるNPCレストランがあるからそこに行こうぜ」
「えっ?えっ?どういうこと?」
説明もそこそこに転移門へと向かった。
レストランに着いて着席した後、NPCを呼んで注文をとってもらう。早速来た食前酒で口を潤していると、アスナがギリギリ聞こえるくらいの声で囁く。
「まあ、何て言うか…今日は…ありがとう」
「へっ?」
驚愕した俺をジロッと見てもう一度囁いた。
「ありがとうって言ったの。ガードしてくれて」
「ま、まあユウキのついでだったしな。大したことじゃないさ」
そこで隣に座るユウキに視線を向ける。
「それより、あんなに寝てたってことはそれだけ疲れが貯まってたってことだろ。もっとしっかり休んどけよ」
「うっ…わかったよ」
そんなやり取りをみてアスナがニヤリと笑う。
「それ、君が言えた事なの?ユウキが居ない時変なことしてるでしょ。わざわざ下の層まで行ってかかし相手になにやってたの?」
「な、なぜそれを」
ユウキの視線が刺さる。
「1回用事があって下の層に降りた時に君の姿を見かけてね。広場から出てきたからそうなんじゃないかなぁって」
嵌められた!いや、でも何をやっていたかは見られていない様だしセーフだろう。
「い、いや、あれは遊びだからノーカン…」
「そのわりには大分消耗してたみたいだけどね」
「…キリト?」
ユウキの視線が俺の顔に穴が開くんじゃないかという位までに鋭い。
「じゃあ…これからは一緒にやるか」
この答えはギリギリ及第点だったらしい。ユウキの視線が柔らかくなる。
「そうだね。じゃあ今度の休みに一緒に特訓しよっか」
「それ、休みになるのか…?」
皆がプッと吹き出した、その瞬間だった。
「…きゃぁぁぁぁ!」
どこからか、紛れもない恐怖の悲鳴が聞こえてきた。
二刀流をキリトではなくユウキに習得してもらいました。
理由としてはメディキュボイドがより強い電磁パルスを使っていること、さらにキリトよりも半年以上ダイブ歴が長いことでキリトよりも信号の伝達が速いためです。
しばらく更新ペースが落ちるかもしれないですが、失踪はしないつもりなので待っていていただけると嬉しいです。