Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~   作:ジンクルタニ

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はい、バックレていて本当に申し訳ありませんでした。
ユウキをどんなポジションに落ち着けるか決めかね、決まらないまま段々と書くのが億劫になり…と負のスパイラルに入ってしまったために更新できませんでした。
今回は大体いつも通りの文量です。


鑑定

「すまない、さっきの1件を最初から見ていた人、いたら話を聞かせてほしい」

 広場にいる人達に呼び掛けると、数秒経ってから1人の女性がおずおずと進み出てきた。

 不本意にも俺に少し怯えている様子だったのでアスナが代わりに対応する。

 「ごめんね、怖い思いをしたばっかりなのに。あなた、お名前は?」

 「あ、あの…私、ヨルコっていいます」

 「じゃあ…最初の悲鳴も、君が?」

 「は…、はい」

 声が似ていると思ったがあっていたようだ。

 「私、さっき殺された人と、友達だったんです。今日は、一緒にご飯食べに来て、でもこの広場ではぐれちゃって…それで…そしたら…」

 もうこれ以上は言葉に出来ないといったように両手で口許を覆う。

 「大丈夫?無理して話そうとしなくても良いんだよ」

 ユウキが駆け寄って長椅子まで誘導する。腰を掛けさせ、ユウキとアスナが背中をさすっていると少し落ち着いたらしい。ぽつり、ぽつりと喋り始めた。

 「あの人…名前はカインズといって…昔、おんなじギルドに所属していたんです。それで一緒に食事に来てたんですが…広場で見失って」

 1度ぎゅっと目を瞑ってから震える声で続ける。

 「周りを見渡したらいきなり協会の窓からカインズが落ちてきて、宙吊りに…しかも、胸に、槍が…」

 「その時、誰かを見かけなかった?」

 アスナの問いにヨルコは一瞬固まった後、ゆっくりと首を縦にふった。

 「一瞬なんですが…カインズの後ろに誰か立っていた気がします」

 「その人影に見覚えは?」

 今度はわからないといったように首を横にふる。

 「失礼だけど…カインズさんが狙われる理由に心当たりは?」

 友人を失くしたばかりの人に聞くのは酷だろうがこれは聞かないわけにはいかない。

 ヨルコは目に見えて体を硬くした後、そっと首を横にふった。

 「そうか、ごめん」

 ヒントが無かったことに少しばかりの落胆を抱いた。これでSAOにいる数百人のオレンジ、レッドプレイヤーが捜査の対象になったといえる。ユウキは気づいてないようだが、おなじ結論に至ったのであろうアスナは力なく息を吐いていた。

 

 1人で帰りたくないと言ったヨルコを宿まで送った後、広場で報告を待っていたプレイヤー達に圏内でも注意するよう伝える。

 解散したのを尻目にどうやって犯人を絞り出すか考える。

 「これからどうしよっか?」

 ユウキが訪ねるとアスナがすぐに答えた。

 「手持ちの情報を検証しましょう。出所がわかればそこから犯人を追えるかもしれない」

 「うーん、そうなると鑑定スキルが必要だよね?アスナは上げてたりしない?」

 「あげてないわ。君たちもよね?」

 女子二人の会話に割ってはいる度胸など無く、ただ眺めている。

 「今が1番忙しい時間だし、リズには今すぐ頼めないからなぁ」

 「そうよねぇ」

 武器や防具、アイテムの発注はふたりのプレイスタイルの差もあって別々に行っている。リズはきっと俺の知らない生産職のプレイヤーなのだろう。

 話が詰まったところでようやく口を開く。

 「だったら俺の知り合いの雑貨屋斧戦士に頼むとしよう」

 アスナがすかさず口を挟む。

 「エギルさんよね…雑貨屋も今の時間は忙しいと思うけど…?」

 「しらん」

 アスナの言葉を気にも留めず、容赦なくメッセージの送信ボタンを押した。

 

 50層に転移し、いつものように猥雑な通りを歩く。小汚ないこの町に白い騎士服を纏ったアスナは目立ち過ぎる。

 俺としてはとっとと目的を果たしたいのだが、さっきお預けを食らったせいかユウキが食べ物の屋台に興味深々だった。匂いを嗅いだりして世話しなくキョロキョロしている。

 「しょうがない…あそこで良いか?」

 「やったー!行こ、アスナ!」

 「え、ちょっとユウキ!」

 なるべく混んでいない屋台を指差すと、ユウキがアスナの腕を引っ張って買いに行く。

 串焼きを買い、食べながらこっちに戻ってきた。よっぽどお腹が空いていたのか満面の笑みである。

 「うん、これ結構美味しいよ!はい、これキリトの分!」

 差し出された串焼きを齧りつつ歩き、丁度無くなった頃雑貨屋の前に着いた。

 

 店に入り、こちらに背を向けているエギルに声をかける。

 「うーっす。来たぞー」

 「…客じゃない奴にいらっしゃいませは言わん」

 ムクレ声でそう告げると店のなかにいた客を謝罪しながら追い出した。

 閉店の操作を行ってからようやくこちらを向く。

 「エギルさん久しぶりー」

 「久しぶりです、エギルさん。どうしても火急にお力を貸して頂きたくて」

 ムクレていた顔がすぐさま崩れ、任せてくださいと胸を叩いた。

 

 2階で事件のあらましを聞いたエギルは事の重大さを認識したようで両目を鋭く細めた。

 「圏内でHPが0になっただとぉ?…デュエルじゃない、というのは確かなのか?」

 「ウィナー表示をあの人数で見逃すとは思えないし、夕食を食べる前にデュエルを、しかも全損決短着モードで受けるなんてあり得ないよ」

 「ヨルコさんと直前まで歩いてたから睡眠PKの線も無いしね」

 出されたお茶菓子を摘まみながらユウキが補足する。

 「突発的にしては手口が複雑だと思うし…事前に計画されていたPKで間違い無いと思うのそれで…」

 アスナがこちらを見て頷いたので現場から回収していた縄を取り出す。

 「これを鑑定して欲しい」

 

 男がぶら下がっていた側がまだ大きな輪になっているロープを見て、エギルが嫌そうに鼻を鳴らした後鑑定を行った。

 「残念だがこれはNPCショップの汎用品だ。ランクもそう高くない」

 ロープの耐久値は男を吊り下げる一瞬だけもてば良かったのだろう。

 「まぁそっちには期待してないさ。本命はこっちだ」

 長さは1メートル半、柄にはびっしりと逆刺が生えている。突き刺さったときに抜けにくいようにしてあるのだろう。

 ぶつけないようにエギルに渡し鑑定してもらう。

 対した手がかりは得られないかもしれないと思っていた矢先、エギルが驚くべき事を口にした。

 「PCメイドだ」

 俺、アスナ、ユウキに3人が体をガバッと起こす。

 「本当か!」

 プレイヤーメイドの武器には必ず鍛治師の銘が記録される。作ったプレイヤーに聞けば誰が発注、購入したのかがわかるはずだ。

 「誰ですか、制作者は?」

 アスナの声も切迫したものになっている。

 「グリムロック…聞いたことねぇな。少なくとも、一線級の刀匠じゃねぇ。それに武器自体も特別なものって訳じゃなさそうだ」

 

 返された短槍を受け取り、眺めてみる。鑑定結果では何の変哲もない武器のようだがどうなのか。エギルの鑑定スキルでは読み取れない効果があるのかもしれない。

 短槍を逆手に持ち、自分の手に突き刺そうと振りかぶる。

 振り下ろされた槍は、刺さる直前で止まっていた。

 ユウキが少し涙目になりながら手首を掴んでいた。

 「キリト!死んじゃうかも知れないんだよ!ボク、キリトにまで死なれたら…」

 泣いて訴えてくるユウキを見たら、流石にもう検証をしようとは思えなかった。

 「わるかったよ…もうしないから」

 「…ほんとに?」

 口だけでは許してくれなさそうだ。そっぽを向いてしまっている。

 「わかった。疑うならこれを預かっててくれ」

 未だに手に持っていた短槍をユウキに渡すと、ようやく少しだけこっちを見た。

 「何が起こるかわからないんだから!そういう無茶はやめなさい!」

俺が何をしようとしたのか気づいたアスナが遅れて声をあげる。

 女性人2人の反対もあって検証するのは無しとなり、話し合った結果ヨルコさんにグリムロックを知っているか聞くと決めた所でその日は解散となった。




気がついたら半年弱放置してしまっていた…
1周年を放置で過ごす奴なんて他におる?
お気に入り50人、評価、UA7500超えと色々ありがとうございます。
次回も気長に待っていただけたら嬉しいです

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