Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~   作:ジンクルタニ

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今回はオリジナルと原作が少しずつ入ってきます。過去に起きた事をあっさりとしか触れないので詳しくは原作をお読みください。(原作読まずにこの作品を読んでくれている人はいないと思いますが)


黄金林檎

翌日、始まりの街に転移すると、転移門の四隅にあるオブジェに軽く寄りかかり、私服に身を包んだアスナがすでに待っていた。

 「おはよう!アスナ」

 ユウキが近づくとアスナがメニューから目を離し、体を起こす。

 「おはよう、ユウキ」

 「待たせたか?」

 「大丈夫よ。それじゃあ…確認しに行きましょうか」

 ゆっくりとかぶりを振って否定した後、少し声のトーンを下げてアスナが答えた。

 「ああ…」

 転移門広場の後方にそびえ立つ黒鉄宮へと向き、小さくため息を漏らした。

 

 本来ではプレイヤーがリスポーンしてくる筈だったその場所には全プレイヤーの名前が記された石板があり、死亡したプレイヤーの場所には死亡した日時と原因が記されている。

 ヨルコに教えてもらっていたカインズのスペルを確認しながら名前が書かれている場所を探していると、アルファベット順に並べられているためその名前はすぐに見つかった。

 「日付は昨日で時間は同じ…死亡原因も貫通継続ダメージによるものってなってるな…」

 「じゃあ…」

 「圏内でPKが出来たって事になるわね。この事件、解決しないと大変だわ」

 「それじゃあ、ヨルコさんにもう一回話を聞きに行くか」

 「それしか無さそうだね。じゃあ行こっか」

 圏内でPKが起きて人が死んだという事実が3人に衝撃を与え、転移門広場につくまで誰も喋りだす事が出来なかった。

 

 ヨルコの泊まっている宿がある層まで転移してくると、ユウキが沈黙に耐えかねたようにアスナに話しかけた。

 「そういえばアスナのその服可愛いね。どこで買ったの?」

 話しかけられたアスナが服の裾を少し引っ張りながら答える。

 「この服?アシュリーさんっていうお針子さんに注文したんだけど…そういうユウキは戦闘用以外に服は無いの?」

 アスナに逆に問いかけられてユウキが一瞬固まった。

 「あはは…実はこれと寝間着くらいしか持ってなくて…」

 アスナの目が見開かれ、同時にこちらを向いた。服を買う時間くらい作りなさいといった幻聴が聞こえてくる。

 「休日はとってるぞ…一応…」

 「君達の事だから買い食いしかしてないんでしょ」

 アスナの目が少し怖い。流石攻略の鬼と呼ばれるだけのことはあるなと失礼な事を考えていると、アスナの追求の矛先がユウキに移った。

 「…はぁ、それにユウキもユウキなんだからね!この人につれ回されてるからといって全身黒ずくめになんてしなくて良いのに。身だしなみはちゃんとしなきゃ」

 休日の食べ歩きに誘うのは6:4位でユウキの方が多いんだけど…とか良いじゃん黒。カッコいいじゃん…などと言ったところでやぶ蛇になるだけなのはわかっている。ここは2人の会話を見守ることにしておこう。

 「今度の休みはいつなの?」

 「5日後の予定だったけど…今前線離れちゃってるしなぁ」

 「5日後ね。時間を開けておいて。服、買いに行くから」

 「う、うん。わかった」

 勢いに飲まれ、断りきれずにユウキが頷く。

 ユウキと並んで話していたアスナが俺の前に出てきて振り返る。

 「君も良いよね?」

 「5日後は休日にします…」

 気がついたら首を縦に降っていた。まぁ、ユウキの格好について気にしてるところが無いとは言えなかったし別に良いのだが。

 「よろしい」

 少し満足げなアスナの後ろ姿に、ユウキが着せ替え人形にされてへとへとになっている様子が目に浮かんだ。

 

 そうこうしているうちに待ち合わせをしていたレストランに到着した。

 レストランには既にヨルコが来ており、同じテーブルに1度黙礼をしてから座る。

 全員が着席した後、アスナが話を切り出した。

 「ねぇ、ヨルコさん。あなた、グリムロックっていう名前に聞き覚えある?」

 ヨルコがいぶかしむように小さく頷いた。

 「はい。昔、私とカインズが所属していたギルドのメンバーです」

 「実はカインズさんに刺さっていた黒い槍、その武器を作った人がグリムロックさんだったんだ」

 ヨルコの目が見開かれた。

 「何か思い当たることはある?」

 ユウキが訪ねると、ヨルコは顔を伏せながら話し始めた。

 「昨日話せなくてすみません。忘れたい、思い出したくない話しだったので。昔、ある事件が起こりました。そのせいで、私達のギルドは消滅したんです。ギルドの名前は黄金林檎って言いました」

 

 事件は半年前の事。ダンジョンの探索中に敏捷を20も上げる事が出来る指輪がドロップし、その指輪を売却するかそのまま使うかで意見が割れた。多数決の結果5:3で売却に決まり、競売にかけるためリーダーのグリセルダという女性が最前線の街に1泊する予定で出掛けたが帰ってこなかったのだという。

 「後になって、私達はグリセルダさんが死んだことを知りました。誰が殺したのかは、いまだにわかりません」

 「そんなアイテムを持ったまま圏外に出るはずがないよな。睡眠PKか…」

 「半年前なら、まだ手口が広まる直前だわ」

 「偶然…ってことはないだろうな…」

 そこまで言うとユウキがまさかといった様子で口を開いた。

 「それじゃあ、指輪の事を知っていたギルドの人がやったってこと?どうしてそんな事を…」

 ユウキの手が強く握りしめられているのに気がついたが、今は事件について情報を聞き出さなければならない。

 「指輪の売却に反対した3人が怪しいって事か。それでグリムロックさんっていうのは?」

 「グリムロックさんはグリセルダさんと結婚してたんです。いつもニコニコ笑っていたグリムロックさんと強くて綺麗なグリセルダさんはとてもお似合いで、仲の良い夫婦でした。もし昨日の事件の犯人がグリムロックさんだったら、あの人は指輪の売却に反対した3人を狙っているんでしょうね。指輪の売却に反対した内の2人はカインズと私なんです」

 衝撃の告白に3人が息を飲む。

 「じゃあもう1人は?」

 「シュミットというタンクです。今は、攻略組の青連合というところに所属していると聞きました」

 「シュミット…聞いたこと有るな」

 あとちょっとで顔と名前が一致しないでいるとみかねたアスナが補足をしてくれた。

 「青龍連合のディフェンス隊のリーダーよ。でっかいランス使いの人」

 「あー、あいつか」

 俺もユウキも顔が思い出せた所でヨルコが少し食い気味に話しかけてきた。

 「シュミットを知っているのですか?」

 「ボスを攻略する時に時々顔をあわせる、って位だけどね」

 「シュミットに会わせてもらうことはできないでしょうか。彼はまだ今回の事件の事を知らないかも。だとしたら、彼も…もしかして、カインズのように…」

 「シュミットさんを呼んでみましょう。青竜連合に知り合いがいるから、本部に行けばなんとかなると思うわ」

 そこでユウキが立ち上がった。

 「それじゃあ急いだ方が良いよね?アスナはカインズさんを呼びに行って。ボクたちはヨルコさんを宿に送って行くよ。宿に着いたらすぐに合流するね。…何が起きるかわからないから」

 「わかったわ」

 「それで行くか」

 

 2人で索敵スキルを全開にして宿にヨルコさんを届ける。

 「ボクたちが戻るまで絶対に部屋から出ないでね」

 「わかりました」

 しっかりと釘を刺してから宿を出る。アスナの方は呼び出すまでに30分ほど時間がかかるようだ。

 「時間があるなら、1つ検証したいことがあるんだけど…」

 「…何がやりたいの?」

 昨日の事を思い出したのか少し声のトーンが低い。

 「その、貫通継続ダメージって圏外から圏内に入っても続くのかなって。ピックで手を刺すぐらいだし、危険は無いと思うんだけど…」

 ユウキが仕方ないといったようにため息をつく。

 「それくらいなら良いけど…」

 2人でフィールドに出る。圏外になった瞬間ユウキが呼び止めた。

 「ここでやろうよ。ここなら何が来ても圏内に逃げ込めるし」

 右手に握られた回復結晶を見て大袈裟だなぁと感じるが自分を心配してくれているのに変わりはない。

 グローブの耐久値を減らすのも勿体ないので外してからピックを構える。

 スキルが発動し、振り下ろされたピックは手の甲に刺さった。

 「思ったよりもダメージが入ったな…」

 「一昨日ピックを新調してたじゃん。えーっとHPは減り続けてるね。よし、じゃあ圏内に入って」

 ユウキが俺の体を圏内に向かって押す。圏内に入ったとたんに俺のHPは減少を止めていた。

 「HPの現象は止まったけど…感覚は残るんだな。町で武器を刺して歩くやつが出ないようにするためか…?」

 すぐさまピックを抜くが手の中に金属があるという違和感がなかなか消えてくれない。

 感覚を誤魔化す為に手をぷらぷらさせているとユウキがその手を両手で掴んで胸の前へと持っていく。

 「ぎゅーー。これで嫌な感覚も消えたでしょ」

 得意気に笑う姿に少しドキッとした。

 これは女の子に手を握られたからであってユウキだからじゃない。…じゃないはずだ。




結局書き上げるまでに時間がかかって反省してます…
ユウキがどう話に関わってくるか予想しづらいんですよね。
言い訳も程々にしてこんな不定期更新になった中でもお気に入り等が増えていてとても嬉しいです。ありがとうございます。
お気に入り登録、感想、評価などお待ちしております。
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