Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~ 作:ジンクルタニ
原作とは色々と違いますが大筋は一緒なので大目に見てください。
「ほ、本当か?」
思わず詰め寄ると、ユウキがどや顔でのたまった。
「圏内でPKすることなんてできないんだよ!」
「…?でもさっき事件のトリックがわかったって言ってたでしょ」
ユウキが気づく直前に見ていたのは耐久値の無くなった壺。それはプレイヤーが死亡する時と同じように消滅して…いや、1つだけ違う。
「そうか!俺たちが見てたのはポリゴン片と共にプレイヤーのアバターが消える現象だったということか」
「だ、だから、それがこの世界における死でしょ?」
未だに混乱しているアスナにユウキがメニューを可視化して見せる。
「ほら、フレンド欄のところ。ヨルコさんの欄がグレーになってないでしょ?」
アスナが自分のフレンド欄も開いてヨルコが生きている事を確認する。
「本当だわ…。でも、どうして死んでないってわかったの?」
「ボク、カインズさんが消滅するときに何かがおかしいなって感じてたんだ。死んじゃった人はなんにも残さずに消滅したっけ?」
アスナが顎に手を当てて考える。
「確かに、アクセサリーはその場にドロップするけど…。そうね、確かに圏内でフルプレートアーマーを着けたままの人が一切アクセサリーを着けてないなんてことは考えにくいわ。でもそれだけだったらポリゴン片と一緒に消滅した方法はわからないじゃない」
「人がアイテムと一緒に消滅する方法は…これだよ」
喋りながらメニューを弄っていたユウキが取り出したものは…
「転移結晶?それならポリゴン片はどうして出たのよ」
「実はシュミットを待っている間に実験してたんだけど、圏外で体に刺した武器は圏内に入っても体に刺さったままだったんだ。圏内に入ったとたん俺、つまりプレイヤーのHPは保護されたんだけど…」
「アイテムの耐久値は保護されない…。成る程、私達が見てたポリゴン片はフルプレートアーマーのものだったってわけね」
流石の頭の回転の速さで俺達と同じ結論に達した。
「圏外でアーマーごと自分を刺して目立たないように回廊結晶で教会に移動。その後ロープで首を結んで窓から自分で飛び降りたんだろうな。アーマーの耐久値がきれると同時にテレポートすればポリゴン片と一緒にプレイヤーが消滅するっていう死亡エフェクトにそっくりな現象が起きるってわけだ」
ユウキも同じ意見のようでしきりに頷いている。
「それならヨルコさんは?圏内なら武器を刺すどころか体に触れることも出来ないはずだわ」
「刺さってたんだ、最初から。思い出してみろよ。俺達が部屋に入ってから事件が起こるまで彼女、1度もこっちに背中を向けてないぜ」
「窓から落ちたのは転移の時にコマンドを聞かれないようにするためだったのね。…てことはあの襲撃者は…」
「カインズだったんだろうな」
いつの間にか話の流れから完全に置いていかれていたユウキがそこで話を遮った。
「そこまではわかったんだけど、どうしてそんな事したのかがわからないんだよね。結局シュミットさんが追い詰められただけでしょ?」
言われてみれば確かにそうだ。逆にシュミットを追い詰めることが目的だったら、追い詰められたシュミットは何をする…?
「指輪の件について自白させることが目的、かしら。圏内どころか自分の部屋ですら安全じゃない。そうなったらお墓に行って洗いざらい全部話してグリセルダさんに許しを請うしかない。って思うでしょうし」
「そう…だな…」
唸っているとアスナが答えを出した。墓標があるなら俺でもそうするだろう。今でも時々、彼らがホームにしていた宿屋の木の下にお酒や食べ物を供えに行っているのだから。
黒猫団の事を思い出して少し気分が落ち込んでいるのを感じたのか、ユウキが勢いよく立ち上がった。
「事件も解決したし、これ食べたら打ち上げしようよ!アスナも良いよね?」
「もちろんよ」
アスナが笑顔で答えると、ユウキが再び二人の間に座ってクリームを取り出した。
「いっただっきまーす」
ずっと持っていた黒パンにクリームを塗ってかぶりつくユウキはとても楽しそうで、沈んでいた気持ちも少しだけ晴れた。
久しぶりに食べる黒パンは甘く、自然と俺も笑顔になっていた。
「今日はボクたちが奢るよ。久しぶりに一緒に食べれて楽しかったしね」
レストランでの打ち上げも終わり、席を立つ前にユウキが会計を済ませようとする。
「私が払うわ。昨日の護衛のお礼、まだしていないし。そういえば昨日からユウキがご飯代を払ってるけど、どうして君は払わないの?もしかして全部ユウキに払わせたりなんてしてないでしょうね?」
ニコニコしていたアスナが半目になってこちらを睨む。
「き、聞いてくれ。実は1週間に1回程飯代を2人で稼ぎに行ってて、その時の儲けをユウキに預けてるんだ」
険しい表情をしていたアスナが途端に呆れた表情になった。
「週に1度ご飯代を稼ぎに行くってどれだけ食べ歩いてるのよ…。でも稼ぎを共有してるってなんだか2人、結婚してるみたいね」
「へ?け、結婚?」
「ボクたちがけ、結婚してるみたいってどういうこと?」
慌てる俺達を見てアスナがニヤリと笑った。
「知らないの?結婚するとアイテム・ストレージが共通化されるのよ。今まで隠せていた物が隠せなくなる。それって凄くプラグマチックなシステムだけど、同時にとってもロマンチックだと私は思うわ」
その言葉がどこかで引っ掛かった。
「お前、結婚してたことあるの?」
何も考えずに発した言葉に対する返答は底冷えする殺気と中腰で構えられた攻撃姿勢だった。隣でユウキもそれは無いよと言いたげな表情をしている。
「違うんだ、そうじゃなくて。さっき言ってただろ?ほら、ロマンチックだとかプラスチックだとか…」
コードが発動するギリギリの強さで脛を蹴ってから俺の記憶を補正する。
「だれもそんなこと言ってないわよ!ロマンチックでプラグマチックだって言ったの。プラグマチックっていうのは実際的っていう意味ですけどね、念のため!」
「実際的…SAOでの結婚が?」
アスナも怒りが収まったのか普通に答えてくれた。
「そうよ。だってある意味身も蓋も無いでしょ、ストレージ共通化なんて」
ストレージの共通化。その言葉がどうにも引っ掛かる。その時、ある発想が頭に浮かんだ。
「なあ、結婚相手が死別した時って共通化されてたストレージに入ってたアイテムはどうなる?」
ユウキとアスナが一瞬遅れてはっとした。
すぐさまSAOのシステムに詳しいであろうアルゴにメールを送る。約1分後に帰って来たメールには、最悪の内容が書かれていた。
「死別の場合、ストレージに入っていたアイテムは全部結婚相手の物になるって書いてあるね…ということは…」
ユウキが返信メールを読むうちに青い顔になっていく。完全に途切れてしまった言葉をアスナが引き継いだ。
「指輪は…奪われて、いなかった…?」
小さな声に、俺はすぐには答えられなかい。1度、大きく息を吐いてから呟く。
「いや、そうじゃない…。奪われた、と言うべきだ。グリムロックは自分のストレージに存在する指輪を奪ったんだよ。彼は、幻の圏内事件の犯人じゃない。半年前の、指輪事件の黒幕だったんだ!」
衝撃の事実に3人とも愕然としていたが、ユウキが不意に気になった様子で言葉を発した。
「それなら、どうして圏内事件に協力したのかな?協力して犯人じゃないって思わせるため?」
ユウキの考えもあながち外れでは無いだろうが、事件のことが第3者に知られるリスクの方が大きい。それよりも大きな利点は何だ?今、恐らくカインズとヨルコはグリセルダが死んだ場所に居るだろう。未だに指輪事件の事を掘り返し、犯人を見つけようとしている2人が。もし、そこにシュミットが現れたのならば。もしも、シュミットが何らかの形で事件に関わっていたとするならば…。
「事件の関係者をまとめて始末できる…。まずい!もしかするとレッドが出てくるかもしれない!今、ヨルコさんは何処に居る?」
アスナがすぐさまフレンド欄を開いた。
「今、19層のフィールドに居るわ」
「行くぞ、ユウキ!」
「わかったよ!」
すぐさま立ち上がり、店を出る。
「ちょっと待ちなさいよ!」
遅れて出てきたアスナが後ろから呼び止めているが止まっている暇はない。
「俺達は先に行くから、アスナは応援を呼んでくれ!」
間に合ってくれと願いながらひたすらに走り続けた。
あれ?圏内事件終わらせようとしたのにまだ終わってない…?
行き当たりばったり気味だったのですが伏線を回収しきれたかなーと思います。
流石に次回で終わるよね?
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