Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~   作:ジンクルタニ

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共闘

俺たちの目的地はホルンカという小さいが武器屋や道具屋、宿屋などがある狩りの拠点に最適な村だ。さらにそこでは俺とユウキの使う、片手剣を報酬としたクエストがある。

 始まりの街を出て少しするとオオカミ型のモンスターが索敵スキルに引っかかった。ユウキにそれを告げると飛び出していき、モンスターのタゲを持って行ってしまったが、ユウキはあの男から戦闘について教えてもらっていたらしい。ソードスキルを難なく使いこなして俺が何かを言う必要もなく倒し切っていた。

 

  初めて見るユウキの戦い方は端から見ると安定している様に見える。戦闘中にスイッチと言ってみたが、よっぽど集中しているのかターゲットを譲ろうとしない。

 仕方なく別のモンスターを相手にする事にしていた。

 俺は何を話しかければいいのか分からず、ユウキもこちらをちらちらとうかがうのみで話しかけてはこなかった。気まずく感じつつも道にいたモンスターを倒しながら移動すると、町の外壁が見えてきた。二人ともダメージを受ける事なくホルンカに着いたことに安堵しつつ、そういえばと思いだした事を聞く。

 

 「ユウキ、今何かスキル取れるだろ、何取るんだ?」

 「何が良いの?」

 初めに取得可能なスキルは二つで、一つは二人共片手剣スキルで埋まっている。俺はユウキの安全性を高める為に索敵スキルを取った。

 「う~ん人に決めてもらうもんでもないしな~。あ、さっきユウキがmobに気が付く前に俺がどこに居るか教えてただろ、あれは俺が取った索敵スキルの効果だ」

 「そうなんだ…そういえばキリトが言ってたスイッチって何?」

 ・・・ユウキは初心者だったな

 

 スイッチのレクチャーをしている内にホルンカの村に入る。俺は真っ直ぐとある家を目指して歩き、ユウキがその後を続く。先に家に入るとユウキはためらったものの

 「お邪魔します」

 と呟いてキョロキョロしながら入って行く。そこには火に掛けた鍋をかき混ぜる痩せた女の人がいた。

 

 「もてなしたいのですが、うちは貧しくて水しか有りません」

 と声をかけてもらい、ここで断らずに水をもらう事で目的のクエストを受けられるのだが、ここで大丈夫ですなどと言うと・・

 「そんなに気を使わないでいいですよ。」

 「すいません、貰えないでしょうか!」

 危うく女の人が鍋を再びかき混ぜ始めるところで水の入ったコップが一つだけ出てきた。すると女の人の頭の上にクエスト発生を知らせる黄色のビックリマークが出てきたのだが、やはりユウキには見えていない様だ。NPCは言葉通りにしか受けないのでぐいぐい水を勧めて来る事が無い。結局、ユウキは水を貰うことが出来なかった。

 

 「そんな行儀の悪い奴を見る様な目で見ないでくれ、これはクエストを受ける為に必要なんだ」

 「…先に言って欲しかったかなぁ」

 「申し訳ありません…」

 

 そうこうしていると、閉まったドアの向こうからこんこんと咳の音が聞こえてくる。

 これはユウキにも聞こえたらしい、何故かとても悲しそうな顔をしている。

 その音をきっかけに女の人が話し始める。まとめると、彼女の子どもが病気で薬を作っているが材料が足りない。その材料は森に居るモンスターから取るしかなくて困っている。といったところだ。

 話しを聞き終わり

 「クエは始まったか?」

 「クエスト受けられてない…」

 結局クエストの報酬を受け取りに戻ることになるのでその時にクエストを受けることにした。

 

 素材を落とすモンスターが出る森に行くと、リトルネペントというウツボカズラに似たモンスターがpopしている。さっきの二の舞にならない様にユウキに

 「ネペントには普通の葉っぱ付きの奴の他に2種類存在しているんだ。一つが花付きで、今回のクエストで必要な植物種の胚珠を落とす。次に実が付いている奴がいるんだけど絶対に攻撃しないでくれ。実に攻撃が当たると実が破裂して周りのネペントを呼び寄せてしまうんだ」

 「そうなんだ。ところでキリト、ここで武器は買わないの?」

 ユウキのゲーム感のよさに少し驚きつつ、

 「ここで売られてる剣は攻撃力は高いんだけど耐久値が低いんだよ。これからネペントを百何匹と狩らなきゃいけないから都合が悪いんだ」

 「百何匹・・・」

 「とりあえずもう夜になるけど大丈夫か?」

 「まだ大丈夫だよ」

 「よし、行くか。相手の攻撃は実際に戦いながら説明するぞ」

 「うん」

 

 「相手が膨らんだ、消化液が来るぞ!」

 俺が手本を見せた時の様にユウキが右に飛び退くと、ソードスキルを発動させて相手にダメージを与える。弱点である頭と胴体の間には当たっていないものの、正直ユウキの戦闘センスは目を見張るものがある。敵の攻撃が当たらないのだ。敵の鞭での攻撃は全てパリィし、消化液は最小限のステップで回避しきってしまう。

 その戦い方を見て一人で大丈夫だと判断し、目の届くところで別のネペントを倒しに行くことにした。

 

 数十分がたち、まず俺のレベルが2になり、次にユウキのレベルアップを知らせるファンファーレが聞こえた。そろそろ頃合いかと思いユウキに休憩しようと声を掛けようとしたその時、茂みから音が聞こえてきた。

 まずい、レベルアップで警戒が緩んだか。

ユウキを俺の後ろに隠し、俺は剣に手を掛けた。すると、茂みから男が拍手しながら出てきた。

 

 「ごめん、驚かせるつもりは無かったんだ。君たちも剣のクエスト受けたんだろ。僕の名前はコペル。パーティーを組んで一緒に狩らないか?」

 ユウキは相手がモンスターで無いことに安心したのか俺の横に出てきた。しかし俺の方はパーティーという言葉に置いて来たクラインを思いだし、体が強張ってしまう。

 それを見たコペルがなにか勘違いしたようで

 「ああ、ごめん急にパーティーを組もうなんて信用出来ないよな。とりあえず見つけたら先に君たちに譲るから同行させてくれないかな?」

 こうゆうクエストは数を狩れば狩るほど目的のモンスターが出やすくなる。彼はそれを知っているのだろう。ユウキの方を振り返るがユウキが何も言わないので、

 「了解。とりあえずよろしくな。俺の名前はキリトだ」

 「僕の名前はユウキです」

 「しっかし僕より速くこのクエストを受けてた人がいるなんて驚いたよ」

 「いや、俺達も今来たばっかりさ」

 「少しステータス更新の確認をしたいから先に狩り始めてくれ」

 コペルは一瞬怪訝そうな顔をした。それも当たり前だろう。βテスターは一度経験しているはずなので、そんなに時間がかかるはずがないのだ。俺がユウキの方を見るとコペルは何故か一瞬驚き、

 「了解。じゃああっちの方で狩って来るよ」

 コペルが驚いた意味があまり分からないが、きっとニュービーを連れて来ているのが原因なのだろう。気にしないでユウキにステータスの更新について説明することにした。

 

あれから4時間が経過し、すっかりあたりが暗くなった

 「ぜんっぜん出てこないぞ」

 「前の確率ならもう三個出てきてもいいぐらい狩ったよね」

 「ああ、確率を本サービスで変えたんだろうな。まったく運営も要らないことするよな」

 かれこれもう2百匹は狩っただろうか、これでは徹夜もあり得るかと思った時、ユウキが、

 「あの頭についてるのは花?」

 その方向を索敵。もう1体近くに居るな。気づかれない様に慎重に近づくと、そこには木に囲まれた少し広めの空き地があり、花付きと実付きが近くでポップしていた。

 

 「なぁ、これどうする?」

 「倒しておきたいけどあれは危険だよね」

 「そうんなんだよな~」

 「ねぇキリト、何が危険なの?」

 「あぁ悪い、さっき実を攻撃するとネペントが集まるって言っただろ、あれ今だと100匹以上集まるかもしれないんだよ」

 「ひゃ…100匹!?」

 「ただ花付きが時間たつと実付きに変わるかもしれないんだよ」

 「実を攻撃しなければ良いんでしょ。じゃあ行って来…」

 駆け出そうとしたユウキの手を掴む。

 「まだ行こうとするなって。このままじゃ2体が近すぎる。あの実、プレイヤーだけじゃなくて他のモブの攻撃が掠っても割れるんだ」

 「じゃあ僕が実付きのタゲを取って花付きから引き離すから、君たち二人で花付きを速攻で倒してくれ」

 「それが良いか…任せたぞ」

 「わかった」

 「ユウキ、戦闘開始だ!」


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