Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~   作:ジンクルタニ

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今回の完全オリジナル展開難産が多すぎる…
突っ込みどころが多いかもしれませんが暖かい目でやさしく指摘していただけると幸いです。


黒曜石の剣

大穴の側に座り簡素なスープとパンを食べきると、流石に疲れが出たのかユウキがうつらうつらとしていた。

 「何かあったら起こすから先に寝とけ」

 「あー。うん、わかった。ありがとね」

 ユウキがヘビーゲーマーでは無さそうだったのでそこまで多くはないが、フィールドが広かったり複雑だと圏外で一夜を過ごすこともあった。最初の方は先に休むことに抵抗が有ったようだが体調が万全ではない人に見張りを任せられないと何度か説得したことで今ではすんなりと受け入れている。

 申し訳なさそうに寝袋に入ったユウキだったが5分後には寝息をたてていた。

 なんとなく眠るようすをまじまじと見ていたが、寝ている女性を観察しているのは変態じゃないかと思い顔を背ける。

 すると真っ黒な床の一部が光を反射して輝いているのに気がついた。近づいてみるとどうやら少し濡れているようで湖から一本の線のように洞窟へと続いている。

 昼に来たときは濡れていなかったはず。まるで濡れている何かを引きずったような…。

 何かいないか確認するためにさっき山程獲得したゴーレムのドロップ品(恐らく体を構築していた黒曜石のような掌サイズの石。使い道がないくせに重量が大きいので厄介)を投げてみる。3回程投げたとき、暗闇からズルズルと何かを引きずる音が聞こえてきた。寝ているユウキに気づかれないように少し距離を放しながらもう1つ投げつけると、暗闇から2つの光る目が。右手に剣を構え直し、左手に石を持っておく。鱗に覆われた頭部には切れ長な目と人を1人丸飲みにしても余裕がありそうな程大きく裂けた口。足はなく、ズルズルと体をくねらせてやって来たそれは全長10~20メートルはありそうな白い大蛇だった。

 攻撃されるのを警戒していたが4メートル程離れた場所で頭をくねらせてこちらを観察するだけで攻撃してこない。更に10秒程経ち、ようやく注視しても頭の上にモンスターの名前やHPゲージが表示されていないことに気付く。

 「お前、クリッターだったのか」

 クリッターとはいわゆる環境モブとも呼ばれ、主に背景として設定されている攻撃的な行動をとらない動物。大蛇がクリッターに設定されているのは初めて見たが、ドラゴンでさえクリッターとして登場しているのだからそんなこともあるのだろう。

 取り敢えず危険は無さそうなので剣をしまってみると、大蛇が更に近づいてきて左手をつつき始めた。チロチロと出し入れされる舌がくすぐったい。

 左手を拡げると蛇は器用に石を咥えてそれを飲み込み、堪能するように動きを止める。黒曜石を食べる不思議な生態をしているが、この空間もこの蛇が黒曜石を食べて広げたのだろうか。そんなことを考えているうちに蛇は再び動き始めると、もっと欲しいというかのように今度は体をつついてくるのでストレージに入っていた石を全部実体化させる。ゴロゴロゴロッという音と共に横に自分の腰くらいまではある石の山が出来た。

 それを見た蛇の目が一瞬輝いているように見えたのはきっと見間違いでは無いだろう。口の端からはよだれが垂れ、尻尾が振り回されている為かブン、ビタン、ブン、ビタンという音が鳴り響いている。

 食べていい?と聞くかのように頭を傾ける蛇に苦笑しながら良いよと許可を出すと、待ってましたと言わんばかりに飛びつき夢中になって食べ始めた。

 その間もブン、ビタンと蛇がたてる音は止まなかったのだが、ユウキが起きてくる気配は全くしなかった。

 

 それから20分ほど食べ続け、大量にあった石は全て蛇が食べきってしまった。しばらくその場で満足そうに舌をチロチロさせていたのだが、何を思ったのか急に湖へとスルッと入っていった。

 湖が波立ち、写っている星や月が揺れる。その光景をみて、昼に来たときと夜に来たときで印象がガラッと変わったのかわかった。昼はあの蛇が泳いでいるせいで湖面が揺れ普通の湖と変わらないが、夜になると洞窟へと上がりあの鏡のように空の景色を反射するようになるのだろう。夜にだけあの鏡のような湖面を演出するためだけのクリッターが、あの白い大蛇なのだろう。

 そんな事を考えているうちに蛇はすぐに穴へと戻ってきていた。真っ白な口元には何かを加えている。湖から体が上がりきったとたんこちらへと向かってきた。1メートルほど手前で静止すると口に咥えていたものを落とす。カーンと高い音をたてて落ちてきたものは棒状の鈍器のような物だった。

 「これ、くれるのか?」

 そう聞くと首を上下に振り、まるで頷いているようだったので近づいて拾い上げてみる。

 自分のSTRなら余裕だろうと片手で拾おうとしたが、予想以上に重かったため両手でエイヤッと持ち上げる。

 アイテム窓を開いてみると、そこには《sword of obsidian》と名前がつけられていた。obsidianは確か黒曜石という意味だったので、直訳すると黒曜石の剣となるだろう。表面に張り付いている岩でわかりづらいがよくよく見てみると黒く鋭い先端が見えている。

 詳しく窓を見てみるが現在は装備不可となっており、ステータスも?マークがついているだけで一切わからない。

 「ありがとな」

 一言感謝を伝えると先程まで寝ていた場所へと蛇は戻っていく。暗闇に消えていく体を見ながら、ユウキに白い大蛇が居る事を説明する時どうすれば衝撃が少ないか考え始めるのだった。

 

 ユウキが自発的に起きるか心配だったのだが、予定通り3時間半後には起きてきた。蛇の事を説明してから見張りを交代し、再び起きた時には空が薄紫色になりもうすぐ日が昇る時間帯だった。

 まだ少しだけ眠気を訴えている脳を無視して周りを見渡す。未だに洞窟の中は真っ暗だったが、横穴から差し込む光でユウキが景色を眺めているのが見えた。その横顔は、どこか強張っているように思える。

 「おはよう」

 「あ、起きたんだね。おはよう、キリト」

 1つ伸びをしてから寝袋をしまい込み、昨日から出しっぱなしだった椅子に座る。

 「昨日の夕飯キリトに作って貰っちゃったし、朝ごはんはボクが作っておいたよ」

 「ありがとな。それじゃいただきます」

 そう言って渡されたのは俺の好きなサンドイッチだった。キャベツのような葉っぱやハーブで燻製された肉とチーズを挟んだだけの物だが、ユウキが作ったソースのおかげでメチャメチャ旨い。

 さっそく頬張っているとユウキの顔から力が抜け、薄い笑顔が浮かぶ。ユウキも食べ始め2人でご馳走さまをした時、太陽が顔を出して洞窟内を赤く照らし出していた。

 

 「ボク、二刀流を公開しようと思うんだ」

 空と湖に写る太陽を眺めていると、ふとそんな言葉が隣から発せられた。

 「大変になったら言ってくれ。サボり方なら教えてあげられるから」

 思っていたよりも早かったが近いうちにそう言い出すのはわかっていた。

 「キリトには迷惑かけると思うから。…えっと、その…一緒にいるのはもう…」

 隣を見ると、ユウキは両手で顔を覆って俯いていた。

 「あれ?なんで?とまらない」

 うつむいているユウキの頭をわしゃわしゃっと乱暴に撫で付ける。

 頭を押さえてこちらを見上げてくるユウキの目からはボロボロと涙がこぼれていた。

 「アインクラッド初のユニークホルダーならともかく2人目なら大したことにならないって。それこそビーターの称号に比べたらなんてことはないさ」

 そう言って慰めても、ユウキの嗚咽は止まらなかった。

 「それでもっ!…それだけじゃないんだ。ボクと一緒にいると、後悔することになるから!今じゃないと、手遅れになっちゃうんだ!」

 その時、ズルズルという音が聞こえてきた。振り向いてみると、寝ぼけているのか目をつぶったままの蛇がこちらへと這いずってきている。急いでユウキの手を取り引っ張りあげると、蛇はユウキのいたところを通過して湖へと入っていった。

 ユウキが突き落とされることはなかったが、勢い余って抱き寄せる形になってしまう。泣いているユウキの体は、なんだかとても小さく感じられた。ぎこちない手つきでゆっくりと頭を撫でる。

 そのとき、不思議と聞くなら今しか無いと思った。それはネットゲームではタブーとなる質問。しかし、ユウキが俺から距離を置こうとしている理由がそこにあると確信していた。

 「ユウキのリアルについて、教えてくれないか?」

 胸の中で、頭がゆっくりと縦に動いた。




中途半端な形に終わってしまい反省しています。次話をなるべく早く投稿できるようにがんばります。
伏線?を回収しようとしたせいで展開が無理矢理過ぎやしないか心配です。
恐らく次でオリジナル展開が終わると思います。
今回でようやく10万字を越えたのですが、これを数ヵ月で書ききってしまう小説家の方々ってやっぱり凄いんだなって思う今日この頃。
感想、評価、お気に入り登録等していただけると嬉しいです!
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