Sleeping Legend ~もしSAOにユウキがいたら~   作:ジンクルタニ

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今回でようやく白い大蛇から貰った黒曜石の剣について説明します。


鍛治士の少女

 あれから何度か換装を使ってみた結果、カカシ相手には3連続ソードスキルが成功するようにはなった。しかしフィールド上、よもや1つのミスが自分のみならず部隊の壊滅につながるボス戦で使おうとするには剣のもつ慣性の違いに不安が残ってしまう。

 使うにしても最低限剣の重さを揃える必要があるとの結論になったが、63層まで登ってきた今でもエリュシデータはトップクラスの魔剣。そうそう同じスペックの剣は売られておらず、そこそこな性能の武器を買って重さを強化するにしてもかかる費用が馬鹿にならない。結局は作るしか無いということで、ユウキの友人であり現在の鍛治士でもトップクラスの腕前を持つリズベットを訪ねることになった。

 

 50層から転移で飛んできたのは48層リンダース。リズベットはここで川沿いの大きな水車のある工房に店を構えている。ちなみにユウキはここでちょくちょく武器のメンテナンスをしてもらいにきていたようだが、いつも近場のNPCに頼んで済ませてしまっている俺は行ったことがない。

「お邪魔しまーす」

「いらっしゃいませ」

「あれ?リューイさんが接客してるってことはリズは工房かな?やっほー、リズ!」

 NPCが接客しているのを見るなりユウキは勝手知ったる様子で工房に繋がるドアをバタンと開ける。一連の動作があまりにも自然だったので止めなかったのだが、鍛治士が工房にいるという事はもちろん鍛治をしている可能性があるわけで…。

 ユウキの肩越しにうわっという声と共に明らかにインゴットではない何かをハンマーで打ち付けたガイィィンという物音が聞こえてきた。

「あちゃー。ごめんね、リズ。次から気をつけます」

「その台詞何回聞いたかなぁ。全くユウキもアスナも変なところで似てるんだから。……まぁ叩き始めてからじゃ無くて良かったけどさ」

 工房の中は他に人がおらず、ため息をつきながら金属を炉に入れ直しているのがリズベットだろう。ユウキはずんずんと工房の中に入っていき鍛治台の隣に置いてある木製の椅子に腰をかけたが、いきなり無断で入っていくのはどうかと思ったので俺は入り口に留まることにした。ユウキが勝手に中に入っていくのもいつものことのようでリズベットは気にする様子もなく話し始めた。

「あれ研ぎ直すんだったら先に打ち直しやってもいい?あれ、もう硬くなりすぎて時間がかかりすぎるのよね」

 炉の様子を確認し始めたリズベットをユウキが慌てて止める。

「まってまって、今日はそれじゃないよ。まだ研がないといけないほど耐久値が減ってないし」

 今ユウキの使っている黒曜石の剣は入手した当時では棒状の鈍器であったが、54層にいた研摩士と名乗るNPCに持っていくことで黒紫色の細身な長剣へと生まれ変わった。研磨という方法で生み出されたためか素材を使った強化ができず、代わりに研げば研ぐほど鋭さと丈夫さが上がっていき最大の耐久値と重さが減っていくという少し変わった特性を持っている。

「遊びに来んなとは言わないけどさ、もうちょっと時間を選んでくれないと…」

「あ、そうだった。今日は遊びに来たんじゃなくって新しい片手剣が欲しくって来たんだけど…おーいキリト、そんなところに立ってないでこっち来なよ」

「ここ、あたしの工房なんだけど…まぁいいわ、あんたもそんなところに立ってないで入って来なよ」

 「お、お邪魔します…」

工房の中に入り、ユウキが席をポンポンと叩いているのでそこに腰掛ける。3人全員が腰をかけたところでユウキが話を切り出した。

「2人って初対面だったよね?紹介するね。こっちが鍛治士のリズベットで、こっちがえぇ〜っと、パ、パートナーのキリト」

「何でそこで照れるのよ…はは〜ん」

 パートナー発言で少し赤くなっていたユウキの顔が、今度は耳まで真っ赤に染まる。

「いやいや、キリトとは…とにかくそういうのじゃないから!」

 リズベットの顔が獲物を見つけたとばかりにニヤリと歪んだ。

「ふ〜ん、それで“そういうの”ってどういうのかなぁ?」

「いや、えっと、それは…その……うぅ」

 

 ユウキが机に突っ伏してちがうもんと呟やき始めたのを見てようやく満足したのか、リズベットがこちらに向き直った。

「そうそう、今日は片手剣が欲しいって言ってたけどあんたので良いのよね?性能の目標値とかはある?」

「あぁ、成る程……それならこの剣と同等以上の性能って事でどうかな」

 エリュシデータを実体化して手渡す。こちらが手を離した瞬間にリズベットは1度剣を取り落としそうになっていたものの、机ギリギリのところで踏ん張り鑑定を始めた。

「…作れそう?」

 鑑定結果を見て少し考え込んでいたようだが、声をかけると工房を出て店のエリアから1振りの剣を持ち出してきた。

 「これならどう?私が鍛え上げた最高傑作よ」

手渡された剣は緑色の鍔がついたシンプルな細身の長剣。近くの物に当たらないよう気をつけながら振ってみるが、エリュシデータと比較するとどうしても軽いように感じてしまう。

「少し軽いな…」

「スピード系の金属を使ったからね」

 性能を表示したりせずにそのまま剣を返す。

「あら、気に入らなかった?」

 最高傑作を突き返されたせいかリズベットの声に少し棘が入っているように感じたので、慌ててフォローを入れる。

「言い方が悪かったよな。さっきは性能って言ったけど、そいつと重さが近いやつを探しに来たんだ」

「えぇ…、両手剣ならまだしも片手剣でそれと同じ重さの剣なんて鍛えた事ないわよ。それにこれから作るとしても、それと同じくらいの重さにしたいってなると材料がないわ」

「うーん、レアなインゴットは今持ってないし困ったな…」

 剣が作れないなら換装をスキルスロットから外すべきだろうか。そんな事を考えているとリズベットから声をかけられた。

「あたし、レアな金属になら当てがあるわよ」

「本当か!?それはどこで手に入るんだ?」

「55層にある西の山に水晶を餌にしているドラゴンが居るらしくってね。そいつがレアな金属を体内に溜め込んでるって噂よ」

 そういえば最近そんな噂を最前線で聞いたような気がする。確かあれは…

「それ、誰もゲット出来てないんじゃなかったか?」

「そうなのよ。それで金属を手に入れるにはマスタースミスが必要なんじゃないかって話になっててね。どう、試してみない?」

 55層程度の敵なら油断していても負けることは無いだろうが、リズベットもとなると月夜の黒猫団の最期が脳裏にチラつく。行こうとなかなか言い出せない中、いつの間にやら復活していたユウキが話に入ってきた。

「リズの事はボクが守るから任せてよ」

 その言葉は俺の迷いを断ち切るのに十分な力強さがあった。

「了解、じゃあそれで行こう。それと、これからパーティーを組むわけだしリズベットって呼んでも良いか?」

「呼ぶならリズで良いわよ。よろしくね、キリト」

「よーし、そうと決まれば55層にしゅっぱーつ!!」

 ユウキが席を立ち工房のドアへ歩き出した。ついて行こうとしたその時、リズベットが近づいて来て耳元で囁かれる。

「全くの脈なしってわけじゃなさそうじゃん。良かったわね」

 突然の出来事に頭がフリーズする。

「ぷっ、何よその顔。バレてないとでも思ったの?でも…ま、頑張りなさいよ」

 そう言って工房を出て行くリズベットをただただ見送ることしかできなかった。

 

 

 

「良いなぁ。あんた達には本物があるんだね」

 工房を出る直前に思わず口から出た呟きは誰にも届かなかった。




(ユウキの)友達の友達という形で出会ったキリトとリズベットの掛け合いが思いつかん…
そんな感じでずっと執筆の手が止まってしまいました。これからもゆっくりとにはなってしまうと思いますが更新は続けていくつもりなのでよろしくお願いします。
ここすきが投票されているのに気がつきました。1文1文考えながら書いているのでここすきって投票して貰えると少し恥ずかしいですけどめっちゃ嬉しかったです。
投票なんかもしていただいて(しかも高評価)嬉しい限りです。
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