男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第5章 名を冠するがために
第1話 アクセサリーと、クラン


 □【鉄人王(キング・オブ・アイアン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 オフ会ののち、デンドロにログインした俺は、同じくログインしてきたらしいメルクらに、完成したアクセサリーを渡した。

 

「なにこれ。……あ、この前言ってたオリジナルアクセサリーってやつ?」

 

「そうそう。俺の耳に付けてるピアスをモチーフにして、あとラトラナジュからエンチャントした宝石を買って埋め込んでみた。間違いなく俺が今まで作った中で最高傑作だよ」

 

 とにかく頑丈さを追求した逸品である。神話級金属で構成されているから、並大抵のことでは壊れないし、壊れたとしても俺の《リワインド・メタル》でなんとかなるからね。

 付与効果は実用性第一。デザインにも気を使い、耳に繋ぐ部分は今後どこに行っても大丈夫なように対策済み。たとえ<厳冬山脈>に行ったとしても凍傷にはならないはずだ。

 

 メルクがいそいそと着ける。メルクは竜の意匠に加え、フラスコを抱えているようなデザインにしている。メルクの【フランケンシュタイン】から取ったんだけど、うん、良い感じ。

 

「へぇ……かっこいい、気に入ったわ」

 

「あ、僕のには……ありがとね、ヤヨイ。猿の意匠も入れてくれたんだ」

 

 ラトラナジュは、彼女自身の美貌を損なわないような、小さいおまけのような形にした。竜が宝石を抱いているような、デザインが一目でわかる丁度良い大きさで、実際に着けたラトラナジュを見れば間違っていなかったとわかる。

 

 カグラは舞の邪魔にならないように小さな形で、竜に加えて猿の意匠も盛り込んだ。あの特典武具……【猿王襲装 モナブリム】に調和して、良く似合う。

 

 さすがに丸パクリは気が引けたし、何よりプライドに障るからね。こうして個々人で違うような、けれどすぐに同じ所属だとわかるような形にしたのは正解だった。

 

「みんな、かっこいい」

 

「ありがと。アルマちゃんも可愛いわよ」

 

「えへん」

 

 アルマの耳に着いているのは、俺と同じ形のピアス。俺とアルマの関係を一目で示すようで、こんな形にアジャストしたシステムにありがたいやら悔しいやら、そんな複雑な心境。

 

 皆も結構気に入ったようで、耳に手をやって優しく触れている。貰ったものって無性に触りたくなるよね、わかるよ。

 

 が、カグラは何故か釈然としない顔でピアスから手を離した。

 

「というかさー」

 

「どしたの?」

 

「パーティーっていうより、クラン作った方が良くない?」

 

 ……おー。

 

「……なんか変な雰囲気になってるけど、まあこのまま続けるね。パーティーって結構曖昧だし、明確に僕らが組んでるって形にするならクラン作った方が早いでしょ。無所属でも<IF>とかあるんだし」

 

「あー……」

 

 なんていうか言いにくい……全部俺のわがままだからさ。

 

「うん、まあ多分アレでしょ。ヤヨイが他の人の下に入ると地位を簒奪しそうになるから作らなかったんでしょ? リアルでも父親除いて誰かの命令聞くの大っ嫌いだったもんね」

 

「まあ、そうだな。昔出張先のクソジジイに上から目線で命令されたから、社会的に抹殺したこともある」

 

「何してんの君」

 

 鋭いツッコミどうもありがと。いやだって気持ち悪かったんだよあの色情魔。俺の尻ばっか見てくるし酒注がせようとしてくるし。酒に睡眠薬混ぜようとした瞬間にキレてブタ箱送りにしてあげたのも悪くないと思う。

 

「いや、気持ちはわかるわよ実際。明らかに自分よりも劣ってるのに指図されるのは……虫酸が走るっていうか」

 

「キミも大概プライド高そうだものね。まあヤヨイのは重症というか、自分でマジでなんでもできるから許されてただけ……みたいな? まあそんな感じなんだけど、ぶっちゃけよく考えなくても解決策はある」

 

 そう言って、カグラはビシっと俺を指差した。

 

 

「キミがクランオーナーになれ。少なくとも僕は支持するし、メルクとラトラナジュも賛成だよね?」

 

 

 ……そう来たか。

 いや、考えてなかったわけじゃない。でも悉く俺より到達段階が高い中で俺がクランオーナーってダメだろうと思っていたんだけど。

 

「ま、<セフィロト>のオーナーも<超級>じゃないし。面倒な勧誘を避けるためにも、やっといた方がいいとは思うけどね」

 

「なにせここには<超級>と、神話級を倒した二人の第五形態がいるんだもの。パーティーなんて曖昧な集団で行動してたら、間違いなく煩わしくなるわ」

 

「ラトラナジュもラトラナジュで【魅売(チャーム・バイヤー)】だし、そう考えると僕たち全員の身を守るためにもクランは必要だと思うけど?」

 

 こ、ここぞとばかりに理詰めで攻撃してきやがって……でもよく考えても確かにそれが最適解なんだよな。一度クランに所属しておけば他のクランの勧誘は消えるだろうし、アクセサリーと一緒に仲間だってことを強く主張してくれるだろう。

 

「つっても造るにしたってクランネームがな……」

 

「ヤヨイにお任せ」

 

「「同上」」

 

「おまえらなァッ……!」

 

 ちくしょ、ノリ良すぎるだろ。部下に聞こうにもこればっかりは俺がやんなきゃいけないし……。

 

「わーったよ、俺が決める。でも時間をくれ、さすがに今決めるのは無理だ」

 

「うん、大丈夫。そんな早急に決めることでもないしね。特にクランネームは一度決めたら変えられないし、じっくり考えるといいんじゃないかな——僕が考えると全部漢字になるからアドバイスもできないし」

 

 まあ、カグラって国語全般俺と張り合えるくらい得意だけど英語だけは壊滅的だったからな……。一回試験で30点取って泣きそうになってたのを覚えている。

 

「こりゃ辞書とか引っ張り出すしかないかな……」

 

「僕はネーミングセンスないから、ごめんね」

 

「……私が考えると宝石の名前になりそうだから……」

 

 メルクは薄々察してたけど、ラトラナジュってポテンシャル高いのに妙なところで雑っていうか。わりと仕事人間な気質があるよね、俺も人のことは言えないけども。

 

 ……うん、変なこと言ったら暗殺されそうだし、必殺スキルの生贄にしたらしいクランの名前みたいにならないように気をつけなきゃ。

 

 

 ——そんなわけで、俺の日課に、デンドロに入る前にドイツ語の辞書をペラペラめくる事が追加されたのだった。




多分今章で色んなトコ行くと思います。
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