男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
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クランについては後回しするとして、だ。
「この詳細不明の第二スキル……MPをいくら注ぎ込んでも、全然止まらない」
【山竜宝飾 ドラグベルグ】という神話級特典武具、その第二スキル。スキルの名前すらわからず、ただMPを貯められるとしか表示されていなかった。
俺のMPは数万ほど。魔法系超級職に比べれば低いが、それでも上級職よりは非常に多い。今は何か造る気も起きないので、部屋で寝転がりながらこうやって注ぎ込んでいるわけなんだけど……。
……全然、底が見えない。貯蓄ってもしかして限度ないのか?
「だとしたら……これ、スキルが解放されたらどんだけMP使うんだ?」
暇を見てずっと入れとかないと、いざ解放された時に使えない気がする。さすがに
そう思いつつ、あくびする。いかん、やることないから眠くなってきた。
……でも、もうMPもすっからかんだし、寝ちゃった方がいいかもなあ。
うつらうつらと、意識が薄れていく。
瞼が重くなっていき、目尻がとろんと蕩けていく。睡魔をそのまま受け入れて、柔らかなベッドに意識を沈めて——
「うわあああああああああああああああああああああああっっっっっっ!!??」
——って、なんだぁっ!?
「せっかく寝れそうだったのに……」
か、身体が、無理やり起こされたせいで怠い……! あと意識がものすごく緩慢で不快感がやばい。
でもあんな絶叫、聞かなかったことにするなんて……そんなつまんないことはしないぞ!
にしても今の声、カグラ……だよな。
カグラがこんなにビビるなんて、そんなの幽霊とかしかないはずだけど……え、もしかして幽霊出たの?
疑問に思いつつ下に降りると……何故か布団に包まって震えているカグラと、その脇で困ったようにプルプルと揺れている火の玉のような霊魂と、それを手の上に乗せたメルクがいた。
——すっごい、カオス。
「やだやだやだやだやだやだやだ……お化けやだ、やめて、ホントやだ……なんでこんな調整したのクソシステムじゃないかぁ……!」
「うーん……これが神話級<UBM>の成れの果て、かぁ。あっ、ポヨポヨしてて気持ちいい」
抗議するように震える霊魂……えぇ?
カグラは、うん。宗教的な家柄とかそういうの抜きにしても幽霊が大の苦手なんだ。昔一緒にホラー映画見たときにガタガタ震えてたからよく知ってる。
メルクも虫大っ嫌いだし、わりとビビリな気がしたから、普通にアレに触れられるのは意外。
「……メルクってそういうの大丈夫なんだな」
「え? だってこの世界だと魂とか普通にあるでしょ。存在が証明されてるものになんでビビる必要があるの? 虫とかは気持ち悪いから無理だけど、別にこういうのは大丈夫だよ。リアルでも、こっちでもね」
あー、メルクって生粋の理系脳だから幽霊とか信じない系の人なのか。だから恐れる必要もないと。
……メルクがビビってる姿面白いから、少し残念な気もするなあ。
「ちなみにラトラナジュは苦手らしくて、今は外に果実水買いに行ってる。彼女が帰ってくる前に、こいつをどうにかしなくちゃね」
「いや、そもそも……それ、何さ。うちらの中に霊魂系のジョブ持ってる奴いないだろ?」
強いて言えばメルクは人間を生み出すジョブだから、関係しているのかもしれないけど。
「あぁこれ? カグラ君の特典武具のスキルさ」
「……ってことはまさか」
いやいやいや……だってそんな調整する意味ないだろ。
チラリとカグラに視線を向けると、震えていたカグラがちょこんと顔だけ出してこちらを見る。
「不意打ちだよ……だってスキル説明には、魂そのものを使役するとか書いてなかったもん」
「えー……マジ?」
「大マジだよ。こいつは……この青白く光ってる謎の物体は、僕が倒した<UBM>」
【砂猿王 モナブリム】の魂だ——と。
心底嫌そうな、でも完全に拒否しきれていない表情で、カグラはそう呟いたのだった。
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カグラが見たスキル説明では。『技巧などをそのままに、猿王の意思を持つ精神生命体を使役する』と書いてあったらしい。なんだその詐欺みたいな文章。
「……こいつが? 技量を? 持ってるとでも?」
「いや、こんな球体じゃあ持ってるものも使えないでしょ」
チョンチョン、とつつく。あ、結構良い感触。ひんやりしてて気持ちいい。
まあ、意味不明なスキルも使い方次第で強くなるのがデンドロだ。ひょっとしたら、何か要素が足りないからこんな変な状態なのかもしれない。俺の【鉄人】だって、育て上げるまではクソだったし。
「デンドロは<マスター>へのアジャストを怠ることはない。だから、この一見使い道がなさそうなスキルも、絶対に使い道があるはずだ」
モノクルを着けて霊魂を鑑定しているらしいメルクは、そう言って布団に包まってこちらを見ているカグラを見返した。
「……偵察、とか?」
「さっき確認したけど、どうやらカグラ君……というより特典武具から5mが射程限界らしい」
「つまり偵察にも使えないってことか」
……あれ、これ普通にクソスキルじゃね?
「……もしかしたらこの状態が完成しているわけじゃないのかも」
「……ああ、素材的な意味か」
スキルの一部が、他者前提になっていると。それもある意味カグラにアジャストした結果なのかもしれないけど……それならそうと言ってくれって話。
「魂を素材に使うとなると……シャーマン王的なアレか?」
「いつの時代の話を……でも、幽霊が大の苦手なカグラ君にそんな形でアジャストされないと思うよ。憑依でも過剰生命的な意味でもね」
しっかり理解してくるメルクはさすがだね……とはいえ、わりと最有力候補だったんだけど。猿王が喋れればどうにかできたかもしれないけど、こんな頼りない霊魂状態じゃなあ。
「魂に作用する能力……そんなもの、僕らは持ってないよね」
「アルマ……もさすがにそこには手を出せないし。カグラも心当たりはない?」
「……うーん……僕もわからないな。というか、思い付いたのヤヨイと同じやつだし」
物は試しとばかりに霊魂を引っ掴んで胸元に押し付けるカグラだったが、まったく中に入る気配はなく。カグラ、それはいいんだけどすごい目が据わってて怖いからやめてくれないかな?
とはいえ、これでカグラ自身でどうにかできるもんじゃないのは確定した。
ということは、だ。これは俺、メルク、ラトラナジュの三人の『生産系』がいるからこそ発現したスキルと言える。このうちの誰かか、それとも全員の力を利用したものかはわからないけど。
「……カグラの特典武具はステータス補正にもある程度リソースが割かれてて、その上で第一スキル、第二スキルがある」
「なら、どこかでリソースが足りなくなるはず」
「特に生前の技量などを保護できる第二スキルなら、その分外部リソースが必要で——」
猿であったモナブリムが、技量を発揮できる姿は、すなわち人型。
この中で人型を用意可能で、その上で魂をどうにかできる……つまり魂の再現が可能な存在。
……でも、それだけだと足りない気がする。
俺は必要なさそう……違う、発想を変えろ。魂に関する伝承……魂の入れ物。本来あるはずの、あれば別の魂が目覚めるはずの必須器官を省いた上で、外部からの
身体の構成……骨? 技量と、ステータスの問題……うん、いい感じにまとまってきた。
「メルク……こいつは、一大プロジェクトになりそうだぜ」
「フフフ……そうだねヤヨイ君。これは僕らの美意識にかかってるよ……!」
「……?」
今はまだわからないか……クク、だがねカグラ君……。
待っていたまえ……君の素晴らしい相棒を……用意してあげようじゃあないか……!
アーッ!統一王者ー!アルマのバグー!
これが原作に刺される感触か……!