男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
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まずはジョブチェンジ。こっからは間違いなく集中力を使う作業になるから、MPポーションを飲みつつ保管している金属を確認する。
その後帰ってきたラトラナジュも迎えて、三人とマイでメルクのラボで計画を練る。
「外見はどうする?」
「そりゃあ美少年でしょ。昔倒した猿の<UBM>の遺伝子と特典素材を使っちゃおう」
「才能の全解放はお任せください」
「……ノリノリねあなたたち。まあ、私はあの魂が見えなくなるならなんでもいいんだけど」
まずメルクは、外見及び追加する能力の設定を行う。もちろんのこと【フランケンシュタイン】の第三スキル《メイド・オブ・ヴァルキュリアル》を使用するので、【機械天使】としてカスタマイズ——ナンバリングされるだろう。
もっとも、メルクの護衛じゃなくて、カグラの相棒的な意味なんだけどね。
ラトラナジュには、俺が小分けして保管していた一部の
そこら辺の調整はかなり面倒くさいらしいが、余った分は好きに使っていいからと交渉すると快く引き受けてくれた。あとはその分の埋め込みだけど、それはメルクが解決できる。
そして俺の仕事は——骨格の作製だ。
普通の骨より硬く、それでいて重くなく、固まることなく、どんな状況でも一定のパフォーマンスを発揮する金属製の骨格を。冷帯であろうとも、熱帯であろうとも、金属の骨格が常に最高峰のパフォーマンスを発揮できるように。
俺がこれを作製できて初めてこの計画は完了するのだ。当然責任重大だけど……やってやれないことはない。
とはいえそんな金属なんてヒヒイロカネくらいしかない。でもそんな大量にヒヒイロカネを用意するのは不可能だ。
なので——人工的に作ることにした。
既存金属を掛け合わせた……合金として。
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まず、実用性だけでなくデザイン性も重視しなければならない。これは俺の、生産職としての意地みたいなもので、たとえ誰にも見られない場所であっても手を抜くつもりはないからだ。
使用金属は、高い金を払って手に入れたドライフ皇国を原産地とするミカル鉱石と、鉱脈巨兵内部にあった
それらをアルマで包んだ容器に入れ、アルマの伸縮性を活かしてその金属の塊を包み込み、空気を全て排出した上でアルマを広げ、内部を真空に変える。
その上で【ジェム】を使って温度を高めていく。《クラッキング・オブ・メタル》で融点を操作し、不純物が抜かれてどろどろに溶けた金属をアルマをくるくる回すことで結合させる。
あとはミカル鉱石の量を調整して、白を基調とする色に変えて……完成。
「成長はしないらしいから……」
……うん、これでよしと。
その後は骨格の造形だ。
メルクと一緒に、元々作られるはずの骨格に応じた型を取ってそこに金属を流し込む。その上でさらに調整を施し、とにかく造形美と実用性を追求した。
「んしょ……マスター、持てた」
「アルマでも持てるくらいだから……うん、かなり軽量だな。成功だ」
いえーい、とアルマとハイタッチ。ヒヒイロカネに比べれば大分簡単な加工だった。……加工なのかなこれ。
見た目的には白銀に輝く骸骨で、芸術品としても美しい。その上で軽く、硬いのだから、大成功と言えるだろう。
それにそこまで貴重な素材は使ってないから、破損してもまた作ることができる。融点とかは記録としてまとめてるから、再現も可能だ。まあ金はかかるだろうけども。
「まあ破損したらしたらで俺とかメルクでメンテナンスできるからいいんだけど、っと」
あとは《
「マスター、早く持って行こう? カグラのアレ、早く、解決」
「はいはい、わかってるって。……アルマ、いつのまにかカグラにも懐いてたんだな」
「マスターの友達は私の友達。それにカグラ、色々と教えてくれるから」
……?
色々……カグラが色々……?
……嫌な予感しかしないのはどうしてだろうなぁ。
まあ、さっさとカグラが元の調子を取り戻せるように頑張ろう。カグラは明るく振る舞ってこそ、だからね。
/
完成した骨格を持ってラボに行くと、そこにはすでに作業を終えていると思わしきメルクと、俺のオーダー通りの拳大の大きさの宝石……それもトパーズを脇に置いているラトラナジュがいた。
「やあ、加工は終わったのかな?」
「おう。そっちも終わったの?」
「私はとりあえず、オーダー通り用意したけど……これで良かったの?」
うん完璧、と二人でグッジョブ。それに呆れたような顔をしながらも、グッジョブし返してきたラトラナジュはやっぱりノリが良いのだろう。
メルクは俺たちから受け取った素材をマイさんに渡し、彼女がラボの中心にあった巨大なフラスコの中に素材を投入するのを確認した後、自分はキーボードと巨大な液晶画面の前で何やら操作を始めた。
「マイの遺伝子操作で、ジョブカンストできるくらいの才能は引き出す準備はできてる。保管してる特典素材と組み込む遺伝子の吟味も終わったし、容姿に関してはカグラ君の協力を得て最高峰のものになる予定だ」
カチャ、とエンターを叩く。
「肉体精製時間は1時間。三人の超級職と<エンブリオ>の力を注ぎ込んだ素材群だ……。
……宣言しよう、素晴らしいものができるぞ——!」
フラスコの内部が白い膜に覆われ、蛹のような状態になる。
薄皮のような状態なので内部の様子がわずかに伺えるのだが……骨格や宝石がひとりでに動くのは、生命の神秘を感じさせるとともに、少しの薄気味悪さを演出した。
「あとは……マイ」
「YES、主人様」
マイが自分の手から細い樹木の枝を伸ばし、フラスコの表面を貫通して内部の蛹にぶすりと刺す。
「——遺伝子構造改変、潜在能力全解放」
機械のような無機質な響き。普段の流麗な言語能力を聞いていれば、違和感しかない。
しかし、俺は理解した。おそらくは今のイントネーションこそが、本来彼女らに与えられた言語能力……それも、その身に携える改変兵器を解放する時に使われるものなのだろう、と。
「《ライフ・ディストーション》……」
「——《
彼女の腕が一瞬緑色に輝き、その光は枝を通じて蛹の中へと浸透していく。
これこそが、メルクが埒外の戦力を誇る<超級>となった秘密。
潜在能力——つまりはジョブカンストにすら至れるほどの才能を、人工的に引き出す力。
ホムンクルスという生命の創造に長けた<超級エンブリオ>である【偽創生命 フランケンシュタイン】は、特注のホムンクルスには必ずジョブカンストに至れる才能の可能性を与える。しかしそれはランダム性が高いため、あまり褒められたものではなかった。
しかし、彼女が……名工フラグマンの製造した煌玉人の一つ、【
数分ほどスキルを行使していたマイだったが、どうやら完璧に作業を終えたようで、わずかに誇らしげな様子で蛹から枝を引き抜いた。
「これで、目覚めればカンストに至れる才能は引き出せたはずです。……少し疲れたので、お先に失礼させて、いただき、ますぅ」
「うん、お疲れ。ゆっくり休んでおいで」
脇に控えていたホムンクルスに抱えられて、自室に帰るマイを優しい目で見たメルクだったが、モノクルをかちゃりと上げるとキーボードを叩く作業に戻った。
「二人も楽にしててよ。少し時間がかかるし、カグラ君も起こしておいて」
「了解。行こうぜ、ラトラナジュ」
「そうね。頑張ってね、メルク」
「んー」
ひらひらと片手だけ振って返事したメルクに苦笑しながら、ラボを出る。
さて、後はカグラを起こして……一体どんなのが完成するのか、楽しみだ!