男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
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ううむ……これは予想外だった。
今日はラトラナジュがいない(どうやらオアシスの進行状況を見に行ったらしい)ので、自分で淹れたコーヒー(美味しくない)を飲みながら、新聞を眺めていたんだけど……。
『ドライフ皇国の不意打ちにより、アルター王国王都に壊滅的被害。現在<マスター>、ティアン総出で復興作業に……』
「ついにやったかー」
第一次騎鋼戦争の時は知らんぷり決め込んでた僕が言うのもなんだが、これは第二次起きちゃうかなー。
個人的にドライフに王国の<超級>が吸収されると色々面倒だから、第二次起きそうになったら王国側にでも参加するかなー……面倒だけど、国が一つ消えるよかマシだ。
まあクラウディアちゃんには警戒されてるだろうけどね……そういえばハイエンドだったな彼女も、ヤヨイ君とは毛色が違うけれども。
「どーせフランクリンはまたエグいモンスター作ってるだろーし」
っていうかこの前ホムンクルスで様子探ってきたら、僕が遺跡で見つけてたのより数倍ヤバイやつバラしてましたよね。もしかして【MGD】完成しちゃう……? アレが?
「先手打って潰しとこうかなァ……」
アハハ、あいつのことだ。僕の渡した遺伝子は徹底的に検査した上で組み込んでるだろ。だが甘い、僕の必殺スキルは確実に君を殺すぞフランチェスカ……いやまあやらかしたらやらかしたで死ぬまで粘着されるからやらないけども。
……整備不良で肝心の戦争の時に出撃できないようにしたりとか、色々手はあるさ。
「どったのメルク」
「んー? いや、なんだかねー」
ほい。
「っとと……これ、新聞? っていうかヤバくねこれ、王国大丈夫なの?」
「見事な他人行儀だねぇ……まあヤヨイ君らしいっちゃらしいけど」
ヤヨイ君、メイデンの<マスター>だから、この世界の命を現実と同じように捉えているんだけど……だからこそというか、自分が世話になった人以外への被害は意に介さない傾向にある。
端的に言うと僕以上に命に対してドライなんだよね。現代日本では珍しくないけど、ヤヨイ君の怖いところは、自分たちに被害が及ぶかもしれない段階になったら容赦なく排除するところ。人を殺すことに対する忌避感がないんだ。
僕がホムンクルスで解剖及び手術の経験を積んでるってわかってる上で黙認してくれてるのは、そう言う一面からなんだろうけども。
「それよりも俺はこっちの、やたら香ばしい格好のプレイヤーが気になる」
「香ばし……ああ、“雷雲堕とし”か。彼、第六形態で超級職の<マスター>の中ではトップクラスだから。それにこの世界で唯一、まともに飛行船持ってる<マスター>だし」
飛行船っていうのは、大概飛竜に撃ち落とされる。飛竜の火力、防御、飛行能力……その全てに劣るからだ。
でもその<マスター>、ロストジョブだった【
クラン全員が飛行可能な<エンブリオ>の所有者のみで結成される、強盗クラン。
乗る船は小規模ながら、船員らの能力によって補助され、高い制空能力を持つ。無論クランオーナーの“雷雲堕とし”の力あってこそだけども。
「っていうか軍服に黒刀って盛りすぎでしょ……クソかっこいいじゃん」
「だよねー」
男のロマンを刺激するっていうか。その上物品を盗み出しても後日謝礼を付けて返却するとか、よくわかんない手合いだ。だからこそ指名手配もされてないんだろうけど。
「ぶっちゃけそれはいいよ。っていうか彼、<マスター>版条件特化型みたいなやつだし。関わらない方が吉ー」
「嫌な予感……はぁ、まあそうするけど」
新聞をポイっと机に放り、アルマちゃんを膝に乗せて髪をいじり始める。
女の子の髪ってなんでか柔らかいしツヤツヤしてるんだよねぇ……最近はラトラナジュの髪に触れることも増えたから気付いたんだけどさ。
「アルマは<エンブリオ>だから参考にならないけど、ラトラナジュは多分、キチッと整えてるでしょ。俺とか全部侍従にやらせてるからわからないけど」
「……前から思ってたんだけどさぁ、ヤヨイ君ってわりと私生活終わってない?」
金銭感覚破綻してるし、付き人多いから基本全部任せてるみたいだし……。
「楽だから任せてるだけだよ、失敬な。別にやれって言われたらやれるさ」
「どうだかねー……1日100万円生活で死にそうだけど君」
僕だったらもったいなくて5万も使えなさそうだけど。
「100万……? 100万で……?」
ほぅらやっぱり動揺してるー!
「一体何をしろと……飛行機代で詰んで仕事できなくなるぞ……」
……あっ。
別の意味で詰み……。
「……実際のところ1日どんくらい使ってるの?」
「……メルク、一ついいことを教えてあげよう。お金は貯めるのも楽しいけど、使わないと腐るんだ」
「つまり?」
「数えてない」
あ──────っ、こんな話振っといてなんだけどいつか僕もこんな生活送りたいなーっ!
朝起きたら
「……メルク、それは普通の幸せだと思うよ」
なんだか苦笑しながらも、可愛い子供を見るような目のヤヨイに、ちょっぴりムカついた僕だった。
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その後、ラトラナジュが帰ってきた、のだけれど。
「ええ、っと」
「あ、アハハ、ハ」
彼女の人差し指に嵌っている、見た覚えのない指輪。
それを鑑定すると……こんな文字が浮かび上がった。
【遊蟲輪 グルーピート】
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好奇心のままに飛び回る蟲を使役する王蟲の力を具現化した逸品。
所有者の周辺の蟲を操作し、手足とする能力を持つ。
※譲渡売却不可アイテム・装備レベル制限なし
・装備補正
なし
・装備スキル
《採蟲使役》
《偵蟲使役》
《喰蟲使役》
……逸話級特典武具だね、これ。
「一体どうしたらこの短時間で倒せるのさ……」
「いや、あのね、その……」
曰く、ラトラナジュはレプリカに乗って砂漠を駆けていたらしい。
そして何故か途中の区域で、蟲がめちゃくちゃ出るわ出る。レプリカの速度で集られることは避けられたが、元々蟲が大っ嫌いであるラトラナジュは悪寒に襲われ、面倒だから余り物の宝石をリソースに変換して巣がある場所に叩き込んだらしい。
そしたらアナウンスが出てきて、この特典武具を手に入れたらしい。
「……私、蟲を使役するとか無理なんだけど……気持ち悪いわよぅ……」
「ま、まあまあ」
いずれ役に立つかもしれないし……逸話級でも特典武具は特典武具なんだから、コストとしてもかなり良質だろう。とりあえず取っとこう、ね?
指輪を投げ捨てようとするラトラナジュを必死に止めながら、そうか、アジャスト以前に蟲が苦手だとこうなっちゃうのか……と、僕はシステムの無常に遠い目になったのだった。
入れるタイミングを逃して死蔵していた奴を今ぶっ込みました、大きなイベントがない今しかない、今しかないんだぁ……!(苦肉の策)
ちなみにグルーピートは元々肉だろうが物だろうが食い荒らす肉食性の蟲でした。
それが本来他個体を操作するのはできなかったはずなのに、特殊なフェロモンの放出で操作できるようになったため、UBMに認定。
なので本来逸話級だけどエグい殺し方してくるんですが、レプリカの速度がわりと早かった上で、ラトラナジュが即決して巣を消し飛ばしたので死んでしまいました。出オチ二体目ェ!