男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第10話 そろそろ

 □【鉄人王(キング・オブ・アイアン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 すでに長い間住んでいる部屋のリビングで、ソファーに横たわりながら、ラトラナジュから買った宝石を手の内で転がす。

 

「……なんか最近マンネリだなー」

 

「ん」

 

 側に近寄ってきたアルマの頭を撫でながら、息を吐く。

 

「刺激がないっつうか……ロマンがないっつーか」

 

 よく考えてみりゃ双王なんて大物撃破したせいで、その後に起こる出来事の刺激がない。

【ブラック・デンドロン】もそろそろ再生するけど、面白そうなことがない。

 

 ぶっちゃけると飽きた。カルディナに。

 

「元々世界中回りたかったはずなのにここに定住してる……」

 

 例のオアシスに建てる予定の家は別として、だ。

 

 そろそろメルクと相談してカルディナを出る手筈を整えていた方がいいかもしれない。このままデンドロへの熱意が冷めるのは……万が一とかそのレベルだけど、絶対に避けたい。

 

「移動もメルクのラボってのも風情がないし……」

 

 アレは快適だけど……どっちかと言うとキャンプで言うグランピングだ。快適で楽しいけどなんかキャンプとは違うよね、みたいな感じ。いやまあキャンプなんて言ったことないけどさ、行ったとしても普通にホテルだし。

 

「……船?」

 

「やっぱ船かー」

 

 船……さすがに売ってない。確か水陸両用戦艦の……なんだっけか、<IF>には【テトラ・グラマトン】っていう超兵器が存在するらしいけど、そこまでは求めないからとりあえずどんなどこも行ける乗り物が欲しいな。

 というか兵力で言えばメルクのホムンクルスを投下すれば……あれ、これってラピュ、

 

「やっほーヤヨイくーん、ってどうしたの?」

 

「いや、ちょっとアウトな気がして」

 

 にしてもオメーテンション高いなぁ。着ぐるみモードからいそいそと白衣を着るイケメンを不思議なものを見る目で見ながら、宝石を投げ渡す。

 

「っと」

 

「やるよ」

 

「……これって素材じゃないの?」

 

「まぁな。ただ気が乗らん」

 

 最高級でもなく、言ってしまえば二等星。ラトラナジュならいくらでも仕入れられるし、手放して惜しいもんじゃない。つか鉱脈巨兵の余りで俺も結構持ってるし。

 

「ふーん……まあくれるならもらっとくけど」

 

「おー……ふわぁぁ」

 

 あぁくそ、退屈すぎて眠気が……。

 

「もしかして……っていうか間違いなくヤヨイ君暇だね?」

 

「だって双王なんて特大のイベント起きたあとだからさぁー……」

 

「まー確かにね……あんなイベント起きたらそりゃそうかー」

 

 ずいっと。

 ……おいおいメルクさんや、何突然身を乗り出して満面の笑みでこっち見てんだよ。

 

「そんな退屈なヤヨイ君に朗報だ」

 

「突然どうした」

 

「実はねー、ゼタ……僕の知り合いの<超級>からの情報提供でね、良いコト思いついちゃったんだ」

 

 ほほぅ。

 

「詳しく聞かせてもらおうか」

 

「うん、予想通りの反応で何より——というわけで、今から全員招集!」

 

 うーんこの行動力、若さに満ち溢れていて大変素晴らしい。いや、俺の方が歳下なんだけども。

 

 

 /

 

 

 というわけでラトラナジュもカグラを招集。具体的にはメルクのホムンクルスが上空から滑空してキャッチ……これ拉致では? 

 

「君が言うな君が」

 

「だからと言って正当化して良いわけじゃないけどね」

 

 へっ、怒られてやがる……あの、怒られながら甘い雰囲気出すのやめてもらえます? 思わず銃にしたアルマで後頭部撃ち抜いたけど是非もないよね、大丈夫レールガンじゃないし非殺傷だ。HP2割削れたけど。

 

「いっったいなあヤヨイ君!」

 

「痛覚ほぼ切ってるでしょあんた、何過剰に言ってんだ」

 

「衝撃が来るんだよ!」

 

 ったくもう、と悪態を吐きながら息を吐く。一応これでも脱線しかけた雰囲気を矯正してるんだから、何も考えず撃ったわけじゃないのだ。

 

「で、それでどうしたのさメルク。わざわざコントやりにきたわけじゃないでしょ」

 

「あはは、うんまあそうなんだけど——とりあえず、これを見て」

 

 そう言ってメルクは、俺たちが囲む机の上に世界地図を広げた。ちょうどアバター作製の時に、あの悪魔みたいな管理AIが広げたのと似たものだ。

 

 メルクはその、西方へと指を当てる。それを徐々にずらして行って、海に出た。そしてそこには「グランバロア」の文字がある。

 

「わりと最近の話だけど、グランバロアに<SUBM>——【双胴白鯨 モビーディック・ツイン】が出現したのは知ってるよね。それで、当時から<超級>だったゼタと“人間爆弾”が協力して打倒したんだ。ここまでOK?」

 .

「OK」

 

「続きどうぞ」

 

「ん。でも当然、被害ゼロとは行かなくて……いくつかの船が沈んだんだよね」

 

 でもその沈没した場所を覚えていたゼタが、沈んだ船を引き揚げ……それを素体として件の【テトラ・グラマトン】に改造したらしい。それって窃盗……いや沈んでるんだし、元々犯罪者だから別に良いのか。

 

 って、今その話題を出すってことは……まさか。

 

「なあメルク、もしかしてだけど……同じことするつもりか?」

 

その通り(Exactly)!」

 

 イイ笑顔のメルクの言葉に、全員の目が驚きで見開かれる。

 はは、マジかコイツ。わざわざ沈んだ船を引き揚げて、その上改造するつもりかよ。グレーにもほどがあんだろ、最高じゃないか。

 

「んで、船の形状は?」

 

「30m級コルベット」

 

 コルベット……【テトラ・グラマトン】が300mとかそこらだった気がするから、十分の一か。

 

「そして、僕たちが目指すのは——これだ」

 

 ……おいおい。

 

「……翅つき?」

 

「……飛んでるわね」

 

「……メルク、お前最高だよ」

 

 ロマンを本当に理解してる! 

 

「ふっふっふ、実は今マイと計画を練っててね……それに必要な素材がレジェンダリアにあるから、目指すは飛行船——グランバロアからレジェンダリアまで、行っちゃうよー!」

 

 

 ——双王という、刺激的なイベントがあった。

 それが過ぎて、退屈していた頃に始まったメルクの提案。

 

 まったく……ほんっと、楽しみだなぁ……!




そろそろカルディナもマンネリなので、思い切ってグランバロアへ……!
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