男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
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今回、ボクの戦闘において、ヤヨイからかけられた制限は三つ。
一つ、全力を出しすぎないこと。ボクのステータスは今、間違いなくこの闘技場の中でもぶっちぎりで最強だ。多分、モナブリムと戦った時に比肩する強化を得ている。
つまるところボクの攻撃にまともに当たれば基本的に死ぬし、めちゃくちゃ速いということだ。なのでボクが本気で戦ったら、敵の戦闘員を一瞬で蹂躙して勝利してしまう。それはヤヨイの目的にそぐわないので、ある程度手加減した上で戦闘を行うことになった。
次に、大げさに舞うこと。
……ちょっと何言ってるかわからないだろうけど、大雑把に説明すると、実用性より美麗さを意識した状態で戦え、といった感じだ。まあボクは実用性を意識してても美しく舞えるんだけど、今回の戦闘では手加減しているという不自然さを隠すため、『魅せる』ことを心がける。まあそこに注視させて違和感から逸らそうってわけだね。
最後の一つは——そう、このように。
「ヤヨイー、スイッチー」
「OK」
一定時間、あるいは一定数の戦闘員を倒したら、ヤヨイと居場所をスイッチする、というものだ。
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<ヤヨイ視点>
決闘での敗北条件は、代表者たる“船長”のHPが50%を切るか海に沈むか、船内に隠されたフラッグを取るか、船を沈めてしまうかだ。ちなみに海に叩き落とされた船員は、HPが50%を切らなければ船に登ってくれば復帰可能だ。まあカグラの手加減した蹴りを喰らったからHPが大分減ってるだろうし、復帰は難しいだろうけどね。
「よっしゃ、行くぞアルマ!」
『ん』
ちょうど第一形態時に相当するアルマだけを持ち、船を走る。残りは船と船員の肩の上に置いといて、遠隔操作で守る予定だ。【カリュプソー】の守護結界がある上にアルマの純粋防御力を合わせれば、基本的に沈むことはないだろう。
装備した【天界飛翔 ラッダリト】の効果で、背中に翡翠色の翼が生える。それは周囲の空気を通し、ふわりと俺の身体を宙に浮かせた。俺のカスAGIに頼るより、こうやって空を飛んだ方が速い。
『速攻で飛び出し、敵船へと乗り込み大立ち回りを披露したカグラ氏と入れ替わったのは、カグラ氏らを率いる“船長”ヤヨイ・ベルダーウッド氏だーっ!』
『ジョブの名前から察するに、おそらくEND系の超級職だろうね。瀕死になったら終わりの“船長”としては、かなり相性が良いだろう。今空を飛んでいるのは、特典武具の能力かな』
響く実況の声を聴きながら、俺はアルマを大ぶりの槍に変化させる。そのまま空気抵抗を削減し、さらに空気を通して加速する!
そのまま、相手の船に突撃した!
『おーとぉ、ここでヤヨイ氏が船に突撃しましたー! これは自爆かー!?』
『いや、自分のENDを理解しているからこその一手だろう。それにあの<エンブリオ>は、見たところスライム状で形状固定の能力持ちだ。そしてスライム系は、大概が《物理無効》を所持している。あの程度なら問題にもならないさ』
そして、……よし、狙い通り来た。
「これはまた、随分と贅沢なチームメンバーだな。超級職が一人もいない我らに申し訳ないと思わんのか?」
「俺が知ったことじゃない。ロストジョブでも探すんだな」
「ふんっ、その態度が仇にならんといいがな。……さて改めて名乗ろう」
目の前の、船長と思わしき……頭にシャケの被り物を被った男が、独特なポーズを決める。
「我こそがトロ・サ・モーン、我がチームを率いるサーモンキングである!!」
『「キングサーモ」』
「それ以上言ったらぶち殺ォす!!」
こっわ、そのツラで凄まないでくれる!?
「HEYキングサーモン、アナタの名前マスノスケYO!!」
『サーモンキングもキングサーモンも、どっちも意味は同じでしょ?』
「言ったな貴様らァ……!」
でもそれはそれとして、煽る! いつも舌戦は突然に、だ、精神攻撃ほど有効なもんはねえんだよ!!
『おーっと、ここで双方煽っていくぅ!!』
『まあ、トロ・サ・……トロサーモン氏の場合、基本みんなそう思うからね……』
「実況もわりと煽ってるけどそれはいいんですか?」
「あそこには攻撃は届かぬ……!」
あっ、届いてたらやるつもりなんだこの人。危険人物では??
「まあそれはいいとして……さて、やろうか!」
「チィ、過程に関しては物申したい気持ちもあるが……良かろう!」
トロサーモン氏は<エンブリオ>の紋章を掲げる。事前情報は仕入れているけど、行けるかな。
「我が<エンブリオ>は【蒼海寛 サケノオオスケ】、TYPEはワールド……能力は——!」
トロサーモン氏を中心として、突如青い円球状のエリアが広がる。
「《遊泳観念》……周辺環境を海と同質へと変え——水を操ること!!」
まるで海を泳ぐかのように、トロサーモン氏が宙に浮かぶ。俺の方はと言えば、呼吸はできるようだが、何故か特典武具が機能しない。空気はあるはずなのに——なるほど、これがワールドか。理屈はわからないけど厄介だ、手札が一つ潰された。
まあ手段は他にも色々とあるんだけどね、っと。
腕に装備した白い手袋でアルマに触れる。
「《天属性付与》……アルマ、行けるか?」
『ん』
アルマをサーフボードのような、スケボーのような、どっちとも取れるような形状に変化させる。それに俺は飛び乗って、残ったアルマ部分で造った槍を構える。
『風力放出……ゴー』
ぶおんと、アルマから風が吹き出す。この空間に元からある空気が機能しないなら、新たに造ってそれに乗ってやればいいだけのこと。なんか昔見たロボアニメのリフを思い出すな……あのヒロイン髪下ろしてた方が絶対かわいいだろ。
向こうも渦巻く貝殻が先端付けられた槍を構える。お互いに相手を見据えて——
「《スワリング・スティンガー》!!」
「《天属性付与》……逆回転だ、擬似《スパイラル・スティンガー》!」
渦巻く水を纏った槍と、相対する槍と逆の回転を成す空気の渦が、激突した!
—情報限定開示—
【蒼海寛 サケノオオスケ】
TYPE:ワールド
能力特性:遊泳領域展開・領域内の水操作
到達段階:Ⅵ
紋章:鮭
固有スキル:《遊泳観念《ウィズアウト・スイミング》》・《
必殺スキル:《
リアルで素潜りを生業とする<マスター>の、鮭を愛する気持ちから生まれた<エンブリオ>。なお海から川に戻るとか、もっと言えば鮭は川魚だとか言ってはいけない。
《遊泳観念》
周辺を空気を残したまま泳げるようになる空間を展開する。非常に範囲は広く、《鮭王権限》と併用すれば擬似的な海流操作も可能。グランバロアでは無用の長物と思われがちだが、擬似的な空中浮遊も可能なので汎用性は高い。
なお<マスター>の泳ぎを補助する効果はない。そこらへんは<マスター>のリアルスペックに左右され、その分を展開に注ぎ込んでいる。
アクティブスキル
《鮭王権限》
《遊泳観念》の範囲内にある水を操作する能力。ネタ全振りだが強し。
ジョブスキル
《スワリング・スティンガー》
穂先に水の渦を纏った槍での一撃。【槍士】系統のジョブスキル。上位ジョブスキルに《ヴォルテックス・スティンガー》が存在する。
アクティブスキル
擬似ジョブスキル
《スパイラル・スティンガー》
穂先に風の渦を纏った槍での一撃。本来【槍士】系統のジョブスキルだが、ヤヨイの特典武具によって擬似的に再現され、《スワリング・スティンガー》を無効化するために水の渦とは逆回転の風の渦を纏って放たれた。