男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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怨念操作系の<エンブリオ>ってどんなのが良いんだろ……。


第7話 タイマンバトル

 □【鉄人王(キング・オブ・アイアン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 渦巻く水と風、それらは寸分たがわず互いの穂先に衝突し、互いの回転を相殺して、スキルを無効化した。よし、狙い通り。

 

「ふんっ!」

 

「っと」

 

 眼前に薙がれた槍を前に、「アルマ、流せ」とそう伝えれば、すぐに『ん』と簡潔ながらも頼もしい返事が返ってくる。すぐにアルマが形を崩し、槍を変形した状態で受け流した。

 

 さらにそのまま触手状の不定形のままサーモン氏に向かわせるが、それを察していたのか返す槍で弾かれる。しかしそれに反応してサーモン氏の槍に絡み付き、ぐっと固定して徹底的に邪魔をする。

 

「これだから不定形は厄介だ……!」

 

「ごもっともで、っと、お返しだ!」

 

 槍を固定したまま残ったアルマで殴りかかる。しかし俺のAGIとこの水中環境の中ではその攻撃はあまりに遅く、おそらくはSTRが俺よりも上であるサーモン氏に弾かれてしまう。

 

「やっぱ十分な量のアルマがないと火力が足りねえなあ……!」

 

《天属性付与》は雷が爆発するかもしれないし、炎はそもそも機能しないかもしれないので、あまり使いたくはない。

 

「今更後悔しても遅——」

 

【ジョブクリスタル】使用。【金工王(キング・オブ・ハードウェア)】をメインジョブに指定。

 

「スキル発動、【金工王】奥義」

 

「いっ!?」

 

 再度取り出した【ジョブクリスタル】で【鉄人王】に戻りながら、ほくそ笑む。

 人間、未知の情報が出ると、思わず硬直してしまうものだ。ましてそれが、普通二つ持つことなど叶わないはずの超級職であるならば。

 

「《天上の金工具(ヘヴンリー・クラフター)》起動!!」

 

「ッ、貴様、一体どれだけの超級職を独占している——!」

 

 えっ、どんくらいかって? 

 

「ん、クランで八つ予定」

 

「貴様ふざけるのも大概にしろこのクソがハァー!?」

 

 ブチ切れた鮭頭の鳩尾に拳に変形させたアルマを叩き込む。代わりに槍が解放されたが……問題ない、すでに仕込みは終わっている。

 

「く、そっ、っ!?」

 

 ハハ、驚いてら。まあそれもそのはず、まさか今まで自分が使っていた武器が、振った瞬間に一瞬でぶっ壊れたんだからな! 

 俺がやったことは単純だ。固定していると見せかけて、内部に入り込ませたアルマが、内部の芯としての金属の棒をクラッキングしてボロカスにし、木の部分に針を突き刺して自分を注入し、破壊しただけ。

 

「そぉらァっ!!」

 

「ぐふおっ」

 

 再度鳩尾に一撃。水中で勢いこそ落ちるが、後方へとサーモン氏が吹っ飛ぶ。しかしそれで仕留めることはできず、くるんと反転すると泳いで逃げようとするが……それを逃す俺ではない。

 アルマの風噴射で水中を滑る。回収したアルマを手の中で捏ねて……スキルを発動した。

 

『ヤヨイ氏が優勢かーっ!?』

 

『うん、見ている分にはよくわからないけれど、どうやら彼の<エンブリオ>は相当汎用性が高いようだ。それでいて、能力は多段変形型ではなく自在造形型だから、使っているリソースも少なくその分量に注ぎ込めるんだろう。よくできているね』

 

 なんか一人だけすごい洞察力の人いません? 

 

 俺は短剣に拵えたアルマを構えて、サーモン氏に突撃する。サーモン氏は俺のSTRと短剣程度なら普通に弾けると、拳を構えて迎撃の構えを取った。

 ハ、かかったな——! 

 

「! 重いだと!?」

 

「悪いが圧縮してるんでね!!」

 

 この特典武具、【山竜宝飾 ドラグベルグ】のスキルでな! 

 しかし始めて使ったが、これはいい。俺は武器が<エンブリオ>ゆえに重さを感じないのに、相手だけに圧縮した分の重さが乗っかった攻撃を行える。余ったアルマを圧縮しとけば持ち運びも楽になるだろう。

 

「ぬおお、一体いくつの特典武具を……いやいい、やっぱり言わなくていい!!」

 

「四つだ!!」

 

「言わんでいいと言っただろうがァァァ!!」

 

 ハハハ持たざる者の悲鳴は心地いいなあ!! 

 ん、待てよ、もしかして……おっ。

 

「……風の刃、か?」

 

「《エアサーベル》と名付けよう……そらっ!」

 

 刀身に付与した風属性で刃渡りを延長、ついでにそれを飛ばすことで擬似的な遠距離攻撃とする……いいね、これは良い! 

 

 風剣を突き出し、それをサーモン氏が左に避けて躱す。お返しとばかりに突き込まれた代わりの槍をボードを一部削って作った盾で防ぎ、返す刀で横に薙ぐ。それすらも一気に宙返りすることで避けたサーモン氏だったが、すでに俺がアルマによって加速している。加速した状態で懐に突っ込めば、そら、槍は使えないだろう? まあ俺の皮膚にささるかも不明なんだけど。

 

「おいおい、追い込まれてんぞ船長さんよぉっ!!」

 

「ぬぅっ……斯くなる上は……ク、仕方あるまい! 《遊泳観念》解除!」

 

 な、……クソ、そういうことか! 今俺たちが戦っているのは擬似的に泳げるようになった空中……そこで解除しちまえば、俺を下に落とせるってわけか! 

 自分はすぐに効果範囲を狭めた《遊泳観念》を再度展開すればいい……単純に厄介だな! 

 

 海に落ちそうになるが……というか自分でも落ちたと思ったが、自船から伸ばされた網のようなものに絡め取られ、引き上げられた。どうやらこれはうちの船員の<エンブリオ>らしい。

 

「悪い助かった!!」

 

「はいはい、そんじゃ次はボクね」

 

 バトンタッチしてカグラが敵船へ。非常に高いステータスを持つカグラに、敵船の緊張が嫌でも高まる。

 

「遊んであげる」

 

 そう言いつつ一瞬踏み込む。刹那、カグラの姿が搔き消え、警戒していたマスターの後ろに現れた。あれは転移じゃなくて、純粋なAGIによるものだろう。単純に俺が目で追えてないだけだ。

 マスターが気付いた時にはもう遅く、素手でなぞるように殴られてHPをちょうど半分程度にカットされたのち水に投げ込まれた。

 

『カグラ氏の手加減が炸裂ゥー! これは普通にできることなのでしょうかーっ!』

 

『普通はできないね。でも、繊細なインパクトコントロールができれば可能だろう。もちろん難しいけれど』

 

「次」

 

 ただひたすら、戦闘員だけに的を絞ってHPを減らし、水に叩き込んでいく。あえてフラッグを探そうとはせず、対人戦闘を学ぶように手加減込みで放り投げる。カグラが学んでいるのは舞術と剣術だけのはずだったけど……俺が病院にいる間になんかやったんだろうか。

 

 まあ、カグラはもう大丈夫だろう。

 俺は俺の仕事をしよう。

 

「防壁を一部分離……とりあえず、なんでも良いから武器になってくれ」

 

『ん』

 

「ドルドット、いけるな?」

 

「おうともよ」

 

 10本くらいにはなるだろうアルマを変化させた武器を、ドルドットに預ける。ドルドットの【ヒッタイト】なら、俺のアルマを遠隔操作することで隙はなくなる。アルマに俺以外を守らせるのは癪だが、<エンブリオ>の相性ということで受け入れよう。

 

『私は、本気で守るけど……全力で守るのは、マスターだけ』

 

「……おう!」

 

「お熱いねぇ」

 

「うるせぇルー」

 

 さて、あとの不安要素は一つだけだが……。

 ——どう出る? トロ・サ・モーン。




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