男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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急展開。


第11話 出航、——そして

 □【鉄人王(キング・オブ・アイアン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 短くも充実した日々であったと、潮風に我が身を晒しながら懐旧する。

 いやそんな昔ってわけじゃないけども。

 

「みんな忘れ物なーい?」

 

「ないわー」

 

「ないねー」

 

「ないぜー」

 

 班長みたいに色々と確認しているメルク……右手の【ジュエル】に何かを入れているのが気になったが、メルクにも何か考えがあるんだろう。

 そういえば、俺も【ジュエル】を一つくらい持っとけば、緊急用にモンスターでも呼べるのかね……と考えた時、満面の笑みのラトラナジュがこちらに宝石を差し出してきた。

 鑑定してみると、それは【ジュエル】。

 

「……おいくら?」

 

「お仲間割引で1000リル」

 

「随分と安いじゃないの、買った。……良い勘してるね」

 

「これでも鍛えられてるからね」

 

【ジュエル】を右手に装備しながら、不敵に笑うラトラナジュに笑い返す。まったく、予想以上に商売人として上物じゃないか……これは将来、宝石部門でも新設して本格的に取り込むか? 

 メルクはあいつ用に大学病院でも建ててやるからいいとして、ラトラナジュはどうしようか。将来二人の子供ができたときに親がいないと悲しい(実体験)から、あんまり世界を飛び回るような仕事はよして欲しいんだが……。

 

「マスター、気が早い」

 

「おっと、先のことを考えすぎてた」

 

 まずは普通のお付き合いから。手っ取り早く既成事実を作らせるのもいいかもしれない。

 ラトラナジュの特典武具、【遊蟲輪 グルーピート】の、この前見つけた活用方法があれば簡単なことよ……。

 

「ヤヨイ君、なんかすっごい邪悪な気配が漂ってるんだけど」

 

「気のせいさ!」

 

「めっちゃ嫌な予感がするよぅ!」

 

 草食動物の本能かな? 

 

 ともかくそんなわけで、俺たちはグランバロアから出向したのだった。

 

 

 /

 

 

 とは言っても、俺がやるのは【ブラック・デンドロン】に乗り込んでの海域掃討と船の護衛だ。周囲がメルクの【フランケンシュタイン】から放出された無数のホムンクルスで囲われていくのを見つつ、操縦桿を握る。

 

「やっぱりさー、メルクの【フランケンシュタイン】って性能おかしくねー?」

 

「まあ、ホムンクルス特化の<超級エンブリオ >と超級職のコンボだからねー。これで強くなかったらダメだろ?」

 

「こういう光景を見ると、メルクも超越者の一人だって実感するわ」

 

 本来ホムンクルスは、そこまで高性能なものは造れない。リソースの問題もあるし、大量生産を基軸にすればするほど性能は均一化していくからだ。

 しかしメルクの【偽創生命 フランケンシュタイン】は、【禁忌王】のスキルである《ホムンクルス・デグラデーション・プロダクション》の補助もあって、瞬間的に大量かつそれなりの性能を持つホムンクルスを生産できる。その上で【禁忌王】の奥義である《ライフ・フォース・バイタリティー》で性能を大きく引き上げているらしい。

 本人曰く、いざというときに扱いづらい必殺スキルといざという時の最終奥義を使えばさらに性能は上げられるようだけど。

 

 そしてオーダーメイド型である【機械天使(ヴァルキュリアル)】も合わせて、ぶっちゃけメルクって一人で街をいくつも制圧できるよね? レベルの戦力を擁しているのだ。

 

「だから広域殲滅型……【地神】とか、グランバロアの【大提督】、アルターの【破壊王】、海中覇者の【海皇】とかには相性がめちゃくちゃ悪いんだけどね」

 

「そのときには【機械天使】でどうとでもできるだろーに」

 

「いやいや、さすがに魔力馬鹿、触られたら終わり、リアルチート、ドン引き変態野郎みたいなのと戦ったらだいぶ戦力が削られちゃうよ」

 

 それでもまあ、勝てるけどね、と確信を帯びた笑みを浮かべる。いいね、かっこいい自信だ。

 ところでその、ドン引き変態野郎ってなんです? え? 雑種交配(クロスブリード)? クソかっこいいんだけど……! 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

「そろそろポイントに近づいてきてるから、作戦内容をもう一回確認しておこう」

 

 それもそうだな。一度通しで確認しよう。

 

 まず、今回の作戦の要は俺だ。俺がアルマを伸ばし、海底に沈んだ船を引き上げる、足りない場合はメルクの対水圧調整を行ったホムンクルスで、時間はかかるだろうがゆっくりと引き上げる。

 

 そのあとは、ラトラナジュの《グレードアップ・ストレージ》を適用させた大容量のアイテムボックスに沈没船を収納。そのあとグランバロアに持ち帰り、メルクの保管している特典素材や俺の金属加工、そしてラトラナジュの宝石を交えて船を造っていく。

 

 なので、カグラは今回マジで出番がない。精々後ろで踊って応援するくらいだろう。

 

「言っとくけど僕がおかしいんじゃなくてヤヨイがおかしいんだからね?」

 

「ハハハ、聞こえない聞こえない」

 

 カグラがすごい目で見てるけど勤めて無視。いやだってお前純戦闘員じゃん……。役割分担だよ役割分担。

 

「【建造王】の方とは面識がないからね僕……だから建造特化型ホムンクルスで造っちゃうことにする」

 

「ホントおまえなんでもできるな」

 

「あははやめてよ褒めても何も出ないよー」

 

 すごいすごーい、と適当におだて——!? 

 

 かつてのラッダリトにも似た寒気、あるいは天上からの洗礼という致命撃。あれを経験した俺だけがいち早く察することができ……。

 

 

『《我は原初の道具に通ず(アルマトゥーラ)》……!』

 

 

 とっさに必殺スキルを発動して、空から降ってきた雷を防げたのは、単に俺の運が良かったからなのだろう。

 

 必殺スキルで膨れ上がったアルマを、全力で船を守るように展開する。周囲を守るホムンクルスを守れるほど余裕はない……! 

 

「——ッ、おいおいおいおい、冗談だろ……!」

 

 メルクが立ち上がり、空を愕然とした様子で見上げる。あるいはアルマで覆われた空の先、俺から見て天上に在る、黒い黒い雲の中。

 

 俺は《遠視》と《透視》、《暗視》に加えて《鑑定眼》を発動して……そして、前に見たことのある名前を見て、舌打ちした。

 

 

「グランヴィル・ガスターニュ……! 【空賊王(キング・オブ・スカイパイレーツ)】、“雷雲堕とし”か!!」

 

 そしてその手に持つのは——【黒雲刀 ゼノフォルテ】。

 古代伝説級の、特典武具!! 

 

 

『はい、テステス。聞こえてるかー? つってもこっからじゃそっちの声聞こえねーけどよ』

 

『ばっちり聞こえてるよクソ野郎、雷の不意打ちとは随分物騒なことじゃねえか……!』

 

『あ、そっちも遠隔会話できるのね。ならよかったぜ、手間が省けた』

 

 かつて見た、軍服に黒い長髪を持つ、不敵な美丈夫。

 遠く離れた俺たちを、まるで見えているかのように指差して……そして、告げる。

 

 

『今から俺ら、空賊クラン<GAL/TITE(ガルタイト)>は、総力をあげておまえらをキルする。死にたくなけりゃとっとと降参するんだな、そしたらデスペナにはしねーでおいてやるからよ』

 

 

 ……随分と上から目線じゃねえか。

 

 気に入らねえな——ああ、気に入らない。

 

『メルク、ちょっと行って——』

 

「待ってヤヨイ君、多分君じゃ無理だ」

 

『あ?』

 

 どういうことだ、理由を説明しやがれ。

 その言葉と湧き上がった苛立ちは、空を見上げるメルクの目を見た瞬間に、ほんの少しだけ霧散して、紡がれることなく消えていく。

 

 怒っていた。

 あのメルクが。

 

「ああ、まったく……本当に面倒な手合いだよ。……ヤヨイ君、君の<エンブリオ>と火力じゃ、多分あいつには勝てないよ。あいつは<マスター>版条件特化型みたいなもの、空から一方的に雷に撃たれて終わり(THE END)さ」

 

 それでもメルクは冷静で、俺たちの相性を鑑みて、一つ一つ言葉を吐き出していく。

 

『ならどうすると? ラトラナジュはもちろん、今回ばかりはカグラも戦力外だぞ』

 

「……僕の秘蔵っ子を出せば、勝てる。確証は出来ないけど」

 

 ……メルクの秘蔵っ子——ああ。

 

 ……もしかしたら、今回の一件は僥倖だったのかもしれない。なにせ、謎に包まれていたメルクの最大戦力の一つを、ここで見れるのかもしれないのだから。

 

「……ほんっとうに、ふざけた真似をしてくれる。楽しい気分に水を差して、あまつさえここで(・・・)襲ってくるだと? カルディナからどんだけ時間かかったと思ってるんだ。What a fuckin doing(なんてことしてくれたのか)……fuck you(クソが)

 

 あ、やばい、スラングと英語が漏れ出てる。感情を抑えきれてないぞマジで。

 

 そう思い、慌てて俺がメルクに声をかけようとする前に。

 

 メルクは、右手を掲げた。

 

「《喚起》——グレイ、フレイ。起きろ、久しぶりの仕事だぞ」

 

【ジュエル】から、光の粒子が漏れる。

 ある種<エンブリオ>にも似たそれは、しかし決定的に違うことがある。

 

 それは、二人の男女を形作ったこと。

 そしてそれは——正真正銘の、人間(ティアン)であることだ。

 

「待ちくたびれたぞ、マスター」

 

「うふふ、久しぶりの戦いです。少々、胸が躍りますね……!」

 

 男の方は、灰色の髪と青い目をした、メルクに似た、けれど彼よりも幾分か精悍な容姿を持つ青年だ。

 女の方は、金色の髪に青い目をした、メルクを女性にしたらこうなるんだろうな、と察することができる美貌を持った少女である。

 

「グレイ、好きに暴れて構わない。フレイ、……そうだな、手始めに処置を施したホムンクルスを998匹」

 

「命令は?」

 

Slam into hell(空にいる馬鹿野郎をぶっ飛ばせ)、以上」

 

「「OK!!!」」

 

 そう言って、男は……【呪拳王(キング・オブ・カースフィスト)】グレイ・オッドソンジュは、背中に翼を広げた。

 それは悪魔のようにも、蝙蝠のようにも見える、不思議な翼だったが……一つ不思議と伝わってくることがある。

 

 この男なら、あの空にいる相手にも、あるいは届き得るのではないか、と——

 

 そして少女の方は、メルクの背後に出現した(俺がアルマを広げて守った)【フランケンシュタイン】から吐き出された大量のホムンクルスを妙に嬉しそうに眺めて、呟いた。

 

「まず手始めに——《造人強化》」

 

『……うーわ』

 

 思わずその声が漏れてしまったのも仕方ないだろう。

 なにせ、俺の視界内に映る、グレイや彼女自身を含めた吐き出されたホムンクルスたちのステータスが、一気に倍化していたのだから。

 

 一匹一匹が純竜級にも匹敵するステータスとなった、998匹に及ぶホムンクルスの軍団。

 

 それを統括する彼女のジョブは——【造将軍(ホムンクルス ・ジェネラル)】と言った。

 

 

 いやでもそれにしたって、倍化で純竜級になるなんて素の値が相当優れてないと……。

 

「そういえば君たちには、僕の必殺スキルのこと、説明してなかったね」

 

 まるで俺の思考を読み取ったかのように、メルクは言う。

 

 怒りを瞳に宿しながらも、薄く微笑むと言う器用な真似をしながら、彼は謳うように告げるのだ。

 

「——僕の必殺スキルは、《狂気に依りて偽りの理想を夢む(フランケンシュタイン)》」

 

 

「製造段階で言語能力・思考能力・生存本能を剥奪し、その程度に応じてステータスを強化するスキルさ」

 

 

 ……前言を撤回しよう。

 メルクは、街どころじゃない。

 

 それこそ彼は、国にも匹敵する。

 断言しよう。その総合力は、<超級>の中でも最上位だと。




ようやく出せた必殺スキル&最高戦力たち。
なお最強は別にいる模様。

—情報開示—

狂気に依りて偽りの理想を夢む(フランケンシュタイン)》:
【偽創生命 フランケンシュタイン】の必殺スキル。必要リソースなし、ハイコストハイリターン。
製造段階で言語能力・思考能力・生存本能を剥奪し、凶暴性を付与する代わりに基礎能力を大幅に強化する。その強化幅、ある程度剥奪するだけで亜竜を超えるようになるほど。
これを付与した後はオンオフができないため、この能力で量産型ホムンクルスを大幅に強化している。

《造人強化》LvEX
配下のホムンクルスのステータスを100%上昇させる【造将軍】のスキル。
必殺スキルと組み合わせることで純竜級モンスター並みのステータスを持つホムンクルスが998体生まれた模様。
なおグレイやフレイにも適応されるのでグレイがさらに化け物化する。

グレイについて:
グレイに搭載された改変兵器や化け物スキルは次話で。


あれ、おっかしーな……グランヴィルの影が薄くなった気がするぞぅ……?


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