男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第12話 《クラッキング》

【クロマドーラ】が造られたのは、古くに先期文明と先ヶ期文明との戦いにまで遡る。

 

 その当時、名工フラグマン製の数多の兵器が“化身”と激闘を繰り広げていた時のことだ。

 

 とある国の賢者たち……フラグマンに【大賢者】の座を奪われ、上級職である【賢者(ワイズマン)】に甘んじることとなった魔術師たちは、自らの国を襲う“化身”……その中の一体である“武装の化身”を倒そうと躍起になった。それを倒せば、自分たちはフラグマンよりも上だと証明できると考えたからだ。

 

 なれど彼らの力では、“化身”に何の痛痒も与えられない。

 ゆえ、彼らは恥知らずにも自らが敵視していたフラグマンの製法に則り、彼ら数多の賢者の知恵を尽くし、たった一体の兵器を創り出したのだ。

 

 伝説の武器を幾万と、雨のようにばらまく“武装の化身”。そのばらまく武器を最低限でも受け切れるよう、全身を神話級金属(ヒヒイロカネ)で覆った。

 そしてそのばら撒かれた武器を“吸収”し、自らの武装に転化する能力——《物質吸収(マテリアルアブソーブ)》を与え、効率良く吸収が可能なように人型へと整形した。

 

 燃料に関してはフラグマンのものは使用せず、《物質吸収(マテリアルアブソーブ)》を応用して周辺物質を取り込み、バイオ燃料として動力炉を作動させる彼ら独自の仕組みを創り上げた。

 同時に人工知能を埋め込み、この仕組みと合わせて自律稼働する兵器として完成の目を見たのだ。

 

 “武装の化身”が武器をばら撒けばその分強くなり、いずれ全身を伝説の武器で覆って“武装の化身”を打倒する。

 

 それを果たすために造られ……そしてその本懐が果たされることはなかった。

 

 

 造られ、起動した瞬間に、【クロマドーラ】はエラーを発生した。単純に、フラグマンであろうとも避けられなかったエラーを、彼らが避けられるはずもなかっただけ。

 その結果として誰の制御も受け付けなくなり、その瞬間襲来した他の“化身”によってコンテナごと封印され、地中に埋められたのだ。

 

 

 そして先ヶ期文明と先期文明の戦争が終わり、そのどちらも滅んだ頃。

【エデルバルサ】がそうだったように、【クロマドーラ】もまた<UBM>として認定された。

 

【骸収機兵 クロマドーラ】として。

 ——また一つの、歪んだ希望として。

 

 誰の制御も受け付けない、万物を取り込む破壊の暴君。

 賢者たちの夢の末路。鋼の夢、人々を守るという希望も果たせぬ夢の遺産。

 

 今もなお暴れまわる鋼の悪夢は、一直線に皇都を目指す。

 ティアンもろとも、<マスター>を……<エンブリオ>を、滅ぼすために。

 

 

 /

 

 

【気絶】が覚めて、俺は身体を起こす。

 無言でアイテムボックスからありったけの回復薬を取り出して、浴びるように体力を回復する。

 

「……さて」

 

 俺の周囲を囲っている金属の球(……)を叩いて、どろりと崩れたそれに微笑みかけた。

 

「護衛ありがとう、アルマ」

 

『ん』

 

 金属が解け、収束し、一人の少女の姿となる。

 姿は変わってないが……明らかに、質量が増えたな。新しいスキル以外にも質量が増えるとは、非常に嬉しい誤算である。

 

「それじゃ、やるか。あの鉄屑野郎、俺たちの手でぶっ壊してやろう」

 

『ん!』

 

 そのために必要なものは——あれだな。

 

 吹っ飛ばされた先で、派手に破損しているそれに近づく。どうやら持ち主はすでにデスペナになったようだ。

 

 ……ごめんなさい。少しの間お借りします。

 その代わり——俺たちが、仇を取るから。

 

「よし許可取ったから好きなように使おっと」

 

「どうせ死んでるから、何しようが私たちの自由」

 

 ドライだなあ、アルマは。

 まあ目の前で遺骸があっても邪魔だったら畑の肥やしにするのが俺だから人のことは言えないけどね! 

 

「アルマ……覆え(……)

 

「了解」

 

 

 /

 

 

 そもそも、アルマの効率的な使い方とは何か。

 

 ありとあらゆる武器に整形が可能な汎用性? ——それもある。

 

 高い硬度や物理耐性による耐久性? ——確かにそうだ。

 

 だがそれらを最大限活かすならば——それは、全身を覆う方が効率が良い。

 簡単に言ってしまえば、全身鎧(フルプレートアーマー)だ。

 

 ぶっちゃけると、この使い方はアルマが【装甲乙女】の名を冠していることから早期に予想がついていた。全身をアルマで覆い、余った部分で武器を造形しそれによって敵を殴る。非常に理にかなった攻防一体の使い方だ。

 

 遠距離攻撃に関しても、わざわざアルマで銃を造るよりもアルマを線状にして突き刺すように伸ばせば良い。眉間でも突けば傷痍系状態異常で即死するし、どんな部位からでも伸ばせるから初見殺しにはぴったりである。

 

 

 だが俺は今まで、アルマの質量が足りずに全身を覆うことができなかった。

 それが今回の進化によって質量が増大したことで、アルマは俺の全身を覆って余りあるだけの質量を手に入れた。

 

 けれども、それだけではアルマの新たなスキルを試す暇もなく奴に殴り殺されて終わるだろう。俺と奴の間には、それくらいの隔絶したステータス差がある。

 

 ゆえにこそ、策を講じる。

 単純な力で勝てないのならば、それを他の力で上回ればいい。俺とアルマの新たなスキルと、アルマを利用した初見殺し。この二つの性質があれば、まだ運要素や不確定要素があるものの勝てる確率はだいぶ上がる。

 

 せめて奴の装甲を引き剥がし、俺がそれまでに死ななければアルマは奴に勝てる。

 

 そう数多の並列シュミレーションによる結果と過程を並べながら——俺は、機体に搭乗した(…………)

 

 

 /

 

 

【クロマドーラ】は、ガチャン、ガチャンと音を立てながら平原を移動していた。

 ソレが身にまとった<マジンギア>の残骸は、【クロマドーラ】のMPを支給されることで起動し、本来想定されていない速度での走行が可能となる。けれど元々破壊したものを《物質吸収(マテリアルアブソーブ)》で装備に転化しているため、無理をさせればすぐに使えなくなってしまう。

 

 それをわかっていたソレは、歩きでゆっくりと皇都へと向かっていた。

 

 すでに近辺の<マスター>は殲滅を終えていたのだが——突如、背後に新たな反応が発生する。しかもこれは先程殴り飛ばしたもので、けれど反応が増大している。

 

 ——? 

 

 振り向いた【クロマドーラ】は、背後にいたソレを見た。

 

 全身がボロボロの<マジンギア>、その片腕と破損した脚だけが金属質の何かで覆われている機体の中央に——一人の、男がいた。

 

「あー、テステス。聞こえてますかーポンコツくぅーん?」

 

 ——何故だが無性にイラついた。

 

「あ、これは聞こえてますねー。ハハッ、ポンコツのくせに苛立ってるのが見て取れるわ」

 

『笑止』

 

 ケラケラと笑い声が響く。

 

「どうも、さっき吹っ飛ばしてくれやがった【クロマドーラ】サン。ヤヨイです」

 

『リベンジ。ぶっ壊す』

 

「うちの相棒物騒でしょう? いやー実は思ってるんですよねー」

 

 そうやってひとしきり笑った後。突然その男は、真剣にこう叫んだ。

 

「——つーわけで、雪辱戦(第二ラウンド)だ。ぶっ飛ばしてやるからかかってこい!」

 

 そう言い終える前に、【クロマドーラ】は動いていた。

 装甲によって青く彩られたその腕を振りかざし、遅れて出た腕ごと粉砕——

 

 ——する前に、その腕を覆っていた金属製の何かが剥がれ、【クロマドーラ】の腕にべちゃりと張り付いた。しかし【クロマドーラ】は焦らずに、《物質吸収(マテリアルアブソーブ)》を起動して……。

 

 

吸収したな(…………)?」

 

 

 そんな男の悪意に満ちた声とともに。

【クロマドーラ】の腕は、転化した武装を全てひっぺがされて。

 

 そしてその上で、【クロマドーラ】は——続けざまに、己が片腕の制御権を失った。

 

 

 ——ソレを成したのは、アルマの新たなスキル。

 

 その銘は、《クラッキング・オブ・メタル》。

 対象が金属であるならば、無理矢理な干渉すらも可能とする、金属に対して多大な万能性を誇るスキルであった。




アルマ(ちょいわるな私のマスターかっこいい)

全身が金属で構成されているがゆえのぶっ刺さり案件。
最初に一撃食らった時には、おそらく「壊したものを武装にする」能力だとヤヨイは考えていました。実際には当たらずと雖も遠からずと言ったところでしたが、武装をひっぺがすための能力が本体もヒヒイロカネで形成されていたせいで片腕の制御権を奪われるという悲劇。

なおとんだチートスキルにも見えるが、わりと代償は大きい。

まず直接触れないとクラッキングができないこと。

次に金属しかクラッキングできず、不純物が混ざりまくってるとクラッキングがうまく働かないこと。

そして一番デカイのが……。

質量とスキルを両立させた進化をしたせいで、ステータス補正が第一形態時よりも弱まりました。
内約を言うと、HPがE、ENDがF、他全部オールGです。
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